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『藍より出でて ~ Bubbles on indigo river~』  作者: 錆鼠
第7章 2017
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5504 まよひくら(下)②

『まよひくら』、年内の完結に向けて、何とか頑張ってみます。

5504 『まよひくら(下)②』


次の日は金曜日、下校時間。


校門の前に、みどりさんが立ってた。

「希一君、・・・・・。一緒に帰ろうよ。」

ドキッとする。ニコッと笑った顔、僕を待ってたって事は。もしかして。


「昨日聞かせてもらった話の事で。少し、ね。」

そういう、事か。まあ、そうだよね。


「学校じゃダメな話だったの?」

「昨日の事が有ったばかりだから。

あそこの角を曲がるとき、そっと後ろを見て。」


言われた通り、左に曲がりながらチラッと。


少し離れて3人の姿。

間違いない、敬君と健二君、それに実ちゃん。

3人は自称オカルト研究会だし、気になるよね。絶対。

僕の話に、あんなに食い付いてたし。


「どう、するの?きっと、あのまま尾行するつもりだよ。」

「大丈夫。少し速く歩くけど、付いてきてね。」


みどりさんは下を向いて、早足で歩く。僕はその後を追う。

早足といっても、そんなに速くない。

ただ、何度か角を曲がっているうちに、どこを歩いているか分からなくなった。


「着いた。」 「えぇ?」


何時の間にか、目の前に公園。昨日の。

一体どうなってるんだろう?

あんなに角を曲がったのに...この公園、こんなに近かったっけ。


そうだ、後ろを振り向く。もう3人は見えない。尾行を振り切った?


みどりさんはどんどん歩いて、お弁当を食べたベンチに座った。

少し離れて、僕も座る。


「ええと、これ。」

みどりさんはランドセルの中から小さな紙袋を取りだした。

ポチ袋みたい。白いのと黒いの、2つ。ベンチの上に並べる。


「中を見て。」 「どっちからでも、良いの?」 「うん。」


まず白い袋。中身も白い紙、こけしみたいな形。

「これで名前を書いて。」 みどりさんが差し出したのは筆ペン。

書道は不得意。でも、そんな事言ってる雰囲気じゃ無さそう。


「これで良い?」 「そのひとがたを袋にもどして。」


あの紙『ひとがた』っていうのか...人型かな?

みどりさんに筆ペンを返して、黒い袋の中身を。

黒い紙。すごくキレイな、花みたいな星みたいな形。

今度は何も言われない。そっと袋に戻す。


「もうすぐあの3人がここに来る。急いで説明するね。」

「うん。」


みどりさんはすごく真剣な顔。しっかり、聞かないと。


「家に帰ったら、希一君の髪の毛を一本、白い袋に入れて。

それで白い袋をベッドの枕元に置く。枕の下とか。分かった?」

「うん、分かった。」


「黒い袋は、使う時まで、机の引き出しとかに隠しておいて。」

「使う時って、どんな?」

「本気で困った時。それで大事なのは。」

「うん。」

これ以上はムリってくらい、必死で話を聞いた。


「使うのは家じゃ無くて、別の場所。例えばこの公園、そして。」


みどりさんが指差したのは、トイレ?


「袋の中身を水でぬらして鏡に貼る、できたら一人で。それから鏡を見て。」

「水でぬらした中身を貼り付けて、鏡を見る。それだけ?」

「そう。説明はこれでお終いだけど、憶えた?」

「大丈夫だと思う。」

「良かった。じゃ、私行くね。その袋はすぐランドセルにしまって。」


みどりさんは、もう、歩き出していた。なんか、速い。あっという間に。

そして、みどりさんと入れ替わりで、3人の姿。

色々聞かれたけど適当にごまかして、紙袋の事は言わなかった。


家に帰ってから、みどりさんの言った通りにした。

いや、枕の下とか枕カバーの内側だと母さんが見つけちゃうかも。

だから枕本体のジッパーを開けて、白い袋はその中に。大丈夫だよね。

黒い袋は机の引き出しの中、一番奥。


それにしても、何で『ひとがた』に僕の名前を。

もしかして、みどりさんは。



次の週末。

父さんと真次は朝早くから釣りに出かけた。

船に乗って...僕は少し熱があって、一緒に行けなかった。

まあ、そんなに釣りが好きな訳じゃ無いから、良いけどね。

昼過ぎまで寝てたら熱も下がって、楽になったし。


二人が帰ってきたのは3時過ぎ、『午前船』に乗ったんだって。


「希一、父さん達、帰って来たよ!」

呼ばれて台所に行くと、父さんがクーラーボックスから魚を出してる所。

真次は多分、先にお風呂かな。


「どうだったの?」 「まあまあの釣果だな。」


タイ2尾、イナダ3尾。ギラギラ光るタチウオ1尾、そして。

タチウオのお腹から黒いもの、尻尾だ。

まさか、こんな所に。


「父さん。エラと内蔵は僕がやっておくから、お風呂入って。」

「だって希一は熱が。」

「もう熱は下がったし。ねぇ母さん。」

「そうね、随分良いから、下拵えくらいなら。」

「じゃあ頼む。ありがとな。」


何度も手伝った事があるから大丈夫。

タイ、イナダ。最後にタチウオ。

タチウオのエラを取ってから、お腹を裂く。


...黒いトカゲが這い出して、頭をこっちに向けたように見えた。

すごく、気持ち悪い。


父さんが作ったイナダの刺身、タイの塩焼き。とっても美味しかった。

でも、太刀魚の天ぷらは、それだけは...ゴメン、やっぱムリ。


『まよひくら(下)②』了

本日投稿予定は1回、任務完了。

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