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『藍より出でて ~ Bubbles on indigo river~』  作者: 錆鼠
第7章 2017
233/279

5502 まよひくら(中)

クリスマスに合わせての次作投稿は厳しくなってきました。

でも、精一杯頑張ってみようと思います。まずはこの作品の完結を目指して。


12/21追記

やはり、この作品の完結後に次作を投稿するのは無理のようです。

この作品の投稿は一旦休止、クリスマスに合わせた次作の投稿を優先します。

申し訳ありませんが、宜しく御了承下さい。

5502 『まよひくら(中)』


『そなた。随分と、暇そうだな?』


え?

天井から響く声、いや、耳元から?


『そんなに暇なら、我が其方と遊んでやろう。』


ええと、これは夢?

天井にボンヤリとした影。聞こえている声は、この影から?


『良い、良いぞ。聞こえ見えるなら、見込みが有る。楽しみだ。』


うん。やっぱり、夢。それなら。


「学校で教わったぞ。『知らない人と遊んじゃいけない』って。」

『知らない人、か...我は人では無いのだが。』

「人じゃ無いって、じゃあ一体何だよ。」

『鬼だ。知っておろう?』


「おに?」

昔話に出てくる鬼、か?

でもそれは人型でツノが有って。


『無礼な。我は神にも迫る力を持っているのだぞ。

闇に隠れ忍ぶ強大な力。故に人は、我等を穏忍オニと呼んだのだ。』


何の話だろう...夢って、僕が知らない事も出てくるのかな。

これは、もう一回眼をつむって、寝た方が良さそう。


『ははは、まあ待て。簡単な遊びだ。そして、其方が勝てたら。』

「勝てたら?」

『何でも良い。1つ、其方の願いを叶えてやる。』


「何でも?」

『ただし、身の回りの事に限る。

『天下を取る』などと言われても、直ぐには対応出来んからな。』


天下を取るって、そんなこと願うわけないじゃん。

僕は戦国武将じゃないんだから。


「じゃあ、僕が負けたら?」

『負けたら...万が一にも、それは有るまい。

我が眷属を見つけ出す、只それだけの遊びだぞ。』


ヒラヒラと天井から降ってきたのは黒い紙(?)、お腹の上。

そっとつまみ上げる。トカゲのような形。


『数日に一度。それを其方の周りに隠す。

見つけて引き摺り出せば其方の勝ち、簡単だろう。』


「僕の願いを叶えるって言うのは?」

『続けて五度。見つけられれば遊びは終わりだ。其方の願いを叶える。』


僕の願い。一体、何だろう。今の生活に足りないもの?


「願いは、最初に決めないとダメなのかな?」

『いやいや。遊びながら考えて決めれば良い。決めた後の変更も可能だ。』


「それなら...まあ。」

『では、明日から遊びを始めよう。周りに注意を払い、それを見逃すな。』

そのとたんに手の中の黒い紙は消えてしまった。

僕はそのまま、寝てしまったんだろう。


次の朝はまだ『変な夢を見た』と思っていた。

でも、昨夜のあれは、夢じゃ無かったんだ。


夕方、明日から始まる2学期の準備をしてた。

ランドセルに教科書とノート、筆箱も。あ、上履きの袋も・・・


その時、見えた。

本棚の片隅からはみ出した、黒い尻尾。


本棚に顔を近づけて確かめる...間違いない。

ゲームの攻略本。その下側に尻尾。


本を取ってページをめくる。

何だ、これ?

ページとページの間にはさまってると思っていたのに。

ページの角から尻尾が出てる。


尻尾をつまんで軽くひっぱる。取れそうな感じじゃ無い。

どうやったのか全然分からないけど、このページの紙の中に...


ハサミで尻尾を切る?

それだとトカゲを引っ張り出した事にならない?

厚めの紙だから、このページを薄くはがせばいけるかも。

でも、このままだと細かい事はやりにくい。


2年位前に買った攻略本。

ゲームはクリアしちゃったし、このページは新作ゲームの予告。

じゃあ、良いかな。


ていねいにページを切り離す。

机の上で、ページをはがす方法を考えよう。

尻尾とページの境目をツメでひっかいたらはがせるはず、多分。

机のライトを点けて、ページの角を...え?


尻尾が、ズレた。


尻尾の先を押さえて、ゆっくりページを引っ張る。

やっぱり。


手品みたいにトカゲの身体が見えてくる。

後ろ足、前足、そして頭。


全体をひっぱり出したと思ったとたん、トカゲは消えた。


『見事、残りは四度。期待しておるぞ。』


耳元で聞こえた声。

怖いような、ワクワクするような。不思議な気持ちになった。



2つ目の尻尾を見つけたのは、新学期が始まって3日目。

学校から帰ってきて部屋にランドセルを置いた時。

ラジコンの車...タイヤの影から尻尾がはみ出してた。


尻尾をひっぱってもダメだったけど、

いくつかネジを外して車体を取り外したら簡単だった。



3つめの尻尾を見つけたのは、新学期2週目の火曜日。

夕ご飯を食べ終わって部屋に戻った時。


ブタの貯金箱、お金を入れるところから尻尾が。

何あれ...動いてる。


よく見ると、動いてるのは気のせい?

尻尾の端をつかんでひっぱる。

厚紙みたいな感触、やっぱり動かない。


それに、この貯金箱には、お金を取り出す穴がない。

でも、2つ目の尻尾までで何となくルールは分かってきた。


トカゲが隠れたモノをこわすか分解するか。

それでトカゲをひっぱり出せる。じゃあ、方法は1つだよね。


大きな音がしないように、貯金箱を新聞紙で包む。

それからパーカーで包んで、机の角にたたきつけた。


パーカーと新聞紙をほどく。


こわれた貯金箱。

破片の中からトカゲが這い出て、消えた。


ワクワクする気持ちは小さくなって、気味が悪い。

このまま、この遊びを続けたら、どうなってしまうんだろう?


『まよひくら(中)』了

本日投稿予定は1回、任務完了。

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