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『藍より出でて ~ Bubbles on indigo river~』  作者: 錆鼠
第7章 2017
229/279

5404 干渉(下)①

本文・題名ともに修正が続いています。

諸事情を御了解の上、お楽しみ頂ければ幸いです。

5404 『干渉(下)①』


「これ、どういう事ですか?この子達の尻尾...マウスじゃない。」

「母親はマウスです。Lさんも、その眼で見たでしょ。」


「じゃあ、この子達は。」

「ロボロフスキーハムスター。」 「ハム、スター?」


「以前Lさんに卵と精子を採取してもらったでしょう。

人工受精し、凍結保存しておいた受精卵。

20日前、6個をマウスの卵管に移植したんです。

黙っていて御免なさい。Lさんの、驚いた顔が見たくて。」


「マウスから、ハムスター。どうして...そんな事が。」


「マウスはネズミ亜科のハツカネズミ属。

ロボロフスキーハムスターはキヌゲネズミ亜科のヒメキヌゲネズミ属。

身体の大きさこそ似ていますが、かなり系統が違います。

普通なら妊娠自体不可能、まして出産など有り得ない。」


「なのに、この子達が生まれた?」


「臓器移植の鍵は『拒否反応の抑制』。

そして、今までの研究はレシピエント側の拒否反応が対象でした。

私は、逆方向からのアプローチを加えたんです。

つまりドナー側の細胞で起こる拒否反応を抑える方法。」


「マウスとハムスター、両方の遺伝子をノックアウトして...」

「鋭いですねぇ。流石に詳細はノーコメントです。」


「でも何故、マウスとハムスターで研究を。

臓器移植の基礎研究。そのゴールは人間、なのに。」


「もちろん、ゴールは人間。

そして、また一歩。この実験が成功した事でゴールが近付きました。

つまり私の研究も一区切りと言う訳です。

そこで、今週末の会合は特別なものにしたい。」


「特別な?」


「はい。週末の会合も丁度10回目。

実験の成功と研究の区切りを祝って...Lさんに大切なお話も有りますから。

記念すべき会合の会場は◎◆ホテル、和食の『吉▽』。」


「賛成です。でも『大切なお話』って?」

「それは食事をしながらの楽しみということで。」


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「予定時間通り、標的とLさまを確認。エレベーターへ向かっています。」


「監視カメラは?」

「10分前に電源を切りました。

『断続的な故障』により、標的とLさまの姿が録画される事はありません。」


「●国の工作員がホテルに潜入している様子は?」

「宿泊客や従業員に工作員の気配は無し。

現在、ロビーと『吉▽』に監視を置いています。」


「標的が予約したのはスイートルームだったな。」

「はい。既にカメラとマイクを設置済み。

万が一の事態にも即時対応可能。『上』へ提出する記録も万全かと。」


「今の所万全。しかし、決して油断するな。」 「了解。」


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「実は、私、近々大学を去るつもりです。」

「研究が区切りを迎えるのに、ですか?」


「●国の大学に、教授として移籍します。次の段階の研究を、そこで。

いよいよブタを材料として、ヒトへの臓器移植の研究を完成させるために。

そしてこれが...●国で私の身分を保障するSSD。

研究の成果をまとめました。研究室の記録は全て削除済みです。」


「●国の大学?」


はい。それで、出来ればLさんも一緒に来て欲しいと思っています。

実験の技術だけでなく、Lさん、あなたはとても美しい。

プライベートでも、パートナーになって頂ければ、と。」


「魅力的な、お話ですが...」


「そう、決して悪い話じゃ無いですよ。

潤沢な研究費。そして事実上、研究を縛る制限が無い。

勿論、準貴族待遇と相応の収入が保証されています。

良く考えて、返事をして下さい。」


「将来に関わる事ですから、即答は出来ません。

でも、もう少し、お話を聞かせて貰えたら...その、二人きりで。」


「二人きり、願ってもない事です。

私も、腹を割って話をしたい。それで、どうでしょう。

今夜、このホテルの部屋を予約しているので、この後の話は部屋で。」


「是非、お話を聞きたいです。聞かせて下さい。」


『干渉(下)①』了

本日投稿予定は1回、任務完了。

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