エピローグ7 side 須藤旬
日本に戻って来た二人。新しいプロジェクトも始まります。
そう、慌てて日本に戻った。
僕としてはもう少し二人でいたかったけど、僕の起業家としての血が沸き立って仕方なかったから、早く煮詰めて、形にしたかった。だから、急いで帰国した。
羽田に着くと迎えの車も来ており、早々に事務所に向かう。
事務所には宇津木先輩も来ていて、
「旬、お愉しみを途中で切り上げて、慌てて帰国なんて」
そんな風にからかわれたけど、無視してすぐに打合せをする。
方針を決め、どこでどうやるか、資金はいくら出す?そんな事を決めていく。
手持ち無沙汰なのかキョウコさんが、
「わたし、先に荷物、おうちに置いてくる」
と言い出して、
「当事者がいなくってどうするの?」
と聞くと、素直に「ハイ」と椅子に座っている。
もうもう、キョウコさん。話が大きくなっているのは分かるけど、これ望んだのは君なんだよ。分かってる?
まあそれを軌道に乗せるのは僕らの仕事だけどね。
「これは面白いですよね、私がやりたい案件なのに、何故、もうすぐ子供が産まれるのよ」
と里依が喚いているけど、それ自分のせいじゃんと思ってしまった。まあ原因は僕にもあるけど、産むって決めたの里依だよね。その上、僕を脅して入籍したし。
話を聞いて真剣になった、宇津木先輩が、
「旬、資金はどこからいくら出すんだ。それによって規模が変わる」
と、僕の思考を戻してくれた。
「もう、これはこの間の売却した会社の利益、全部注ぎ込んでみたい」
と僕が言うと、二人が驚いて、
「あのカネか」
「おかしいと思ったのよね。金額が大きかったので、会社の案件ではと、向こうからも言われたし、そんな事考えていたんだ」
そんなこと言いながら、里依がキョウコさんを見る。その目が羨望が滲んでいたのは気のせいではないだろう。僕自身、なんであんなにあの売却を個人事務所にこだわったのか、分からなかったんだから。そして、こうなると、、
まあキョウコさん関係はよく『運』を運んでくる。そう、落ち着く先を知っているみたいな感じ? うん、そうジグソーパズルのピースがぴったりと填まるように、行き着く先がある。
この間売却したあの会社というのは、その実、アイデアは、キョウコさんの会社で、『社内メリカリ』を見てヒントを貰ったんだ。
『社内メリカリ』は、新しく会社を起こしたいけど資金不足で後少しということが多かった。なら、その少しを余剰資金を社内で貯めようと、不要品をタダで集めて社内で売って、資金の一部にしていた。
まず、服とか小物はその場所にスペースがあり、置いておく。大きな物は写真とかでね。欲しい人が、そこにあるものを持って行くときQRコードを読み取ってお支払。そんなことをしていたんだ。
そしたら、服とかは流行遅れとか古いとかで売れ残りが多くなって、処分するにもお金がかかると、ならちょっと改造しようとかになり、あそこは基本手作り大好きな集まりなので、リメイクは得意。すると今度はお手製の新品を置いた人がいた。最初は保育園バッグとかの簡単な袋モノだったんだけど、何故か、七五三の服から始まり、卒業式用の服のオーダーまで始まった。それにキョウコさんは小物作りなので、服の作品なかったからね。作りたいという人がいたということ。
で、それを買った人がそこに『社内メリカリ』にそれを置いた。半額位で次々に値段が安くなるし、使うのも一度きり、というので、ひとつの商品が何回も買われた。
そういう式服って需要があり、中古でも買う人がいると分かった。まあメリカリなんだから中古OKの人しか使わないんだけど。
すると、キョウコさんが、新しい物は材料費を取るように言った。材料費の三倍以上の値段にしてと。ここは手作りに特化しているから余計に、手作りを搾取しないように、できるからとかダメよと。中古品を売るとのと手作りを売るのは違うよ。と怒って決めたとか。
そうしたら、材料費がでるならと逆に作品が増えたし、今度は、業務Slack にそのルームができてより一層過激になってきた。作家さんも自分の腕前ご披露できるって。
そうそれが僕には凄く新鮮で、もしかしてとなった。そして、材料費の管理も大変になったと聞いた。なので、そのシステムをCOO. 権限で乗っ取り、服を作っていた人に頼んで服を作ってもらう。材料費と手間賃を僕が払い、一度買い上げる。そして『社内メリカリ』においた。定価はその費用の3倍。何回も買う人がいるならと、その8掛でレンタルした。
そして回数毎にレンタル料金を安くしていた。最初は高いので借りられなくても数回目になると安くなるので借りられる人も増える。人気のものは本当にボロボロになるまで使われていた。そして買い取りも、着て見てということも可能となので、借りて安くして買い上げという荒業まで出た。
借り手が多いのはもちろん式服、そしてワンピ、スカートとかで、ブラウスは殆どいなかった。
そこで式服レンタルは既存にあるので、普段着というか、お仕事着をメインにした。ワンピ、ジャケット、ボトム、スカートとラインナップを絞り商品を作り簡単なECサイトを作り一般向けにレンタルサービスを始めた。
しかし、キョウコさんの会社にはなんであんなに人材が豊富にいるんだろか?
まず服の作成をと探すと、最初に『社内メリカリ』に服をおいた人物が、メーカーにいたとかだったので、そいつをチーフにして、ネットワークから人を探させた。社内にも、キョウコさんのファンクラにも告知したら直ぐに4~5人集まった。
なので、キョウコさんの会社内に別部門を作って、デザイン、製作をやらさせた。僕は会社の起業は分かるけど、アパレルの業務形態は門外漢なので、その辺はその部門に丸投げ。で運用したら、ちよっとアパレルメーカーに文句言われて、頭に来たので、即効、その会社を色んな手を使い揺さぶり、商品提供を求めた。
既製服の方が、客受けがいいだろうと思ったから。まあメーカーは、最初は渋って売れ残り品とかだった。で、まさか借りる人いるわけないよねなんて思っていたら、蓋を開けると『借りるならと』結構注文があった。そう、普段、手を出さないちょっと派手なものや奇抜なものがレンタルならと人気となった。
メーカーも販売分と競合しないことが分かると、途端、掌を返して、イケイケになってさあ、社内コンペの作品など投入して、どれが一番レンタルされるかとか市場調査も行われ、一番人気の作品に賞まで出した。まあ、面白くなってきたので、文句はないけどさあ。
でも作っていて、なんだけど、レンタル洋服屋が流行るとは思わなかった。新品服が8掛で着れる新品レンタル服屋。中古を古着を買うより高いけど、品質はいい。だって着た人は3人で位だしね。一回戻ると検品するんで殆ど新品だし、で、その人数で元の値段の倍以上は稼ぐ。ユーザーは自分の部屋が服で溢れる事もないし新作が気軽に着れる。そんなメーカーもユーザーもwin-winな商業形態。
そう、この会社はこれからも充分利益を望めるし、新しいシステムなので、話題性がある。なので、その部門ごとアパレルメーカーに売却したんだよね。もう小さい工房では手に余るほど人気がでて商品が足りなくなったし商品提供よりもっといい方法をアパレルメーカーなら考えられると思ったから。これ以上の展開はアパレル門外漢の僕の手に余ったから。
その収益を今回のキョウコさんとのコラボに会社起業につぎ込んでみたい。
次世代のために日本より上手くいきそうな国へ投資し、そのリターンを次世代が甘受できるシステムを作らないとと思っていたから。日本に居ながらでいいからさあ。
でも今切実に思うのは、旧態以前スタイルを壊したい。
新しい事よりもね。だから、外から揺さぶりをかける事を決めた。
服ってさあ、買うときはいいんだけど、仕舞うとき面倒!ってなるよね。だから、ワンシーズンだけ借りたい。
まあ、わたしは、ワンシーズンで着古して捨てます。