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エピローグ2 side 須藤旬

須藤クンの若い時の話。

親から独立って大変だよね

マンションとか、買うとき何であんなに大変なのかね、と思ったから。

 そう、まず住む所と思っても、今まで実家暮らしだったので、途方に暮れた。


 金があるならマンションでも買えば良いって。それ何処のどんなマンションを買えばいいのか? って事が分からないんだよ。20歳を迎えたばかりの子供? おとな? どっちでもいいけど、不動産の買い方なんて知らないよ。


 そうだから、まず、不動産屋さんだなと行ったよ。でも、名前と学校名を書いた途端、身バレしてぼろ物件とか分不相応な物件を紹介された。ぼろ物件はもの知らずの泡銭を手に入れた大学生を騙せると思っての事なんだろうけど、これは分かる、しかし、なんで、高級マンションをと思う。


 今、金があるとしても、毎月の管理費、毎年の固定資産税を払ってとなると数年で無理が出てくる。そんな話をしてもさすがですねと、揉み手をしてくるだけだ。じゃあ、賃貸をって思っても、保証人をとか言ってくる。もう八方塞。


 ちょうどその頃、興味のある会社経営論の論文を書いている教授が同じ大学という事で、色んな質問をして、話を聞いてもらっていた。先生も僕の考えに共感を持ってくれて、仲良くなったんだ。


 その時は、周りにいる大人に警戒心はあったせいで、その先生しか相談できる人はいなかったんだ。そう、まあダメ元で、自分の事、家を出ざるを得ない話をした。

その教授は


「あはは、あれだけ派手に雑誌に載ればそうなるね。有名になると普通に部屋借りても大変だよ。私のマンションに部屋空いてるから住む? まあ、条件はあるけど?」


 と、警戒心がMAXになる、ヤバそうな話をしだし、また金かよと、一瞬思ったが、教授って資産家の御曹司とかだったはず。じゃあ何?と共に、その時教授が言った普通に部屋借りてもヤバイという事がピンと来なかった。なので、まあ、話をと思い聞いてみた。


「どうしてですか?僕は保証人がいれば、普通にアパートでいいと思ったんです。お金は使えば減るし、僕は後2年間の学費と生活費を賄ないといけないんで無駄遣いできないんですよ」


「うん、そんなに切羽つまった顔して言わなくても。ふふ、知ってますよ、今学内でも騒がれているでしょう? 追いかけ回されているんでしょ? 安い物件だと部屋に戻ったらそんな女の子いたりするんですよ。安いアパートなら鍵をなんて簡単だからね。まあ、そこまでもなく、たぶん隣とかに住まわれたりとかされて、つけ回されるとかはよくある話だね」


 と、信じられない事を言い出した。

 そんな事するんだ、なんのため? 

 そう世間ではよくある話なのだと。


 お金に目が眩むんだと、親だけでなく、赤の他人まで? その時初めて気が付いた。全くの他人でなく、ちょっと身近というのがポイント。努力は僕を落とすことだからと、僕の金を手に入れられると。


 そんな事言いながら、クククって笑ってる教授に


「条件ってなんですか? 僕ですか?」


なんて聞いたら、


ぶっ、ははあー、と今度は派手に吹き出し、手を左右に振りながら


「違う違う、私、そっちじゃないというか、僕は女性に対しても、セックス全般に、いや日常の全てに興味がないタイプなんでね。

 条件は、家事をして欲しいんですね。生活全般のサポートかな? まあ家政婦兼秘書みたいなもの。私、研究始めると寝食忘れるし、学校も忘れるので、そういう管理をして欲しいんですよ。貴方なら、論文の資料作りもできるからね。それを最初に目にできるメリットもあるでしょう」


 と、至極健全な仕事だった。


「それならお手伝いさんとか秘書でもいいんでは?」


 と聞いたら


「うん、そういう人達こそ、私には面倒なんですよ。貴方の問題とその辺は同じですね。たまに勘違いするんで。うちは所謂、資産家として昔から名が通っていますから。その上、私は独身、家は兄が継いで、女性から見れば美味しい物件らしいですね。過去には色々ありました。そういう事好きなら楽しめたのでしょうが、私は面倒なんでね。それよりその時間でもっと研究していたいんです」


 と微笑んでいた。


 そうか、教授も僕と同じなんだ、興味のない事を求められて、その上、家の内情を知ってる。何時出かけて、何時帰る。何が好きでと。そんな人が、家にいる。そしてそれはその人の仕事なんだ。自分の全てを知ってる人が、家の中で自分を狙っている。それは怖い。


 なので、教授のお家に厄介になることにした。しかしすぐに、割りの合わない条件だと分かった。


 まあいい話には裏があるって事だね。勉強になった。


 その頃は、学校に行くと女の子が寄ってくるし、講義に出ようとすると、女の子達が『こっち』と言って手をふってきたりする。また、授業中に、その女の子同士で言い合いになり、教授から『うるさい』と教室から追い出されたしと、散々な目に会う。

また、男子からは、変な牽制がくるので、必然、学校に行くのか億劫になり、そこにマスコミが加わり、もう、登校さえ無理となった。

 そんな時だったので、現実逃避のように、教授に振り回される事を是とした。そう、やっと頑張っ努力してやっと入った学校を、こんなことで卒業を諦めなくてはならないなんてと、ちょっと腐っていたのもあるかな? 


 でも実際は教授(センセー)は、もうハチャメチャな人だった。まず、時間に起こすのも大変、そして起きたと思ったら、本を読み始める。論文をその辺に書き出す、食事は取らない寝ない。で、寝ると起こすのが、となんかループしている。


 人間としてどうなのという、そんな感じな人だった。でも論文とかはさすがという感じで、もうそれだけで敬服できる。


 そして、案の定出席日数が足りず、その上試験も受けられず、単位が危なってオロオロしている僕を尻目に、他のセンセに交渉してくれて、レポート出せばOKを取ってくれた事で、全てチャラにできたが、したくないほど僕は教授に振り回されて疲れていた。

 だってさあ、ゼミの飲み会は頻繁だし、教授のこのマンションで行われていたんだよね。それは、教授自体の人間としてどうなのという点が、外で飲むと大変というのもあった為だ。そして、僕の仕事に、その飲み会のセッティングとかも入っていた。


 まあ、そこで、今の顧問弁護士の宇津木先輩にであった事で、飲み会であったことはすべて過去のこととした。いや、記憶から消したかった。そんな2年後期を過ごし、3年になると、あれほどまとわりついていた女の子達は新しいターゲットを見つけたのか、ほとぼりが覚めたのか、落ち着いてきたので、学校へも行けるようになった。


 その教授のゼミで、里依と再会した。

 里依は変わってなかった。その事に少しほっとする。その上、佐々木さんと友達になったと。へぇーって思った。里依がヒトのアドバイスを聞くのかと。


 なので僕は三人で、経営を学ぼうとゼミの研究と兼ねて、僕は食べることが好きなので、地方の食品製造業を立て直ししてみようと、株を買って経営に口を出してみた。僕の持ってるお金だと、それが精一杯だったから。


 もちろんアドバイスは教授だ。


 面白い物を、美味しいお菓子を、変わった食品を、昔ながらの食べ物を作っているが経営がいまいちな所を探し、経営改善してきた。そう企業支援を始めた。金だけでなく口も出す株主として。

 

 最初の会社は、創業者一族が職人を技術を搾取している和菓子メーカーだった。都会でもその商品名が出るくらいの有名店。

ネームバリューに惹かれ、手に職をつけようと、入ってくる者はそこそこいるのに、定着率が悪い。その理由は給料が安いのに、上司に職人に毎日怒鳴られるからと聞いた時には、腰から力が抜けた。

 そう職人達は、俺たちもこうして仕事覚えたからという感じ。その上、創業者一族は伝統にあぐらをかき、職人を道具としかみてないお店だった。


 未だにこんな昭和な事やってるのかと。だから、株価はイマイチなんだ。そう、そんな会社は、もう変わらないし、創業者が職人を搾取している事に、そのカネは汗水垂らして職人達が作った商品を売ったカネはなのに、自分達は湯水のように使い、職人に還元してない。そんな所に僕は嫌悪が出たので、投資分損しないように、工場設備や創業者一族の金の使い方をチェックして、ちょっと株価を上げて売り逃げした。その後は知らない。


 その経験から、そんな所は御免なので、少し調べることにした。経験から立て直すなら創業者一族が職人という所とか、工場長が社長とかがいいと思った。そういうところを何軒が当たってみた。


 売上があるのに、赤字、もしくは経常利益がないという時点で、もう経営センス以前の問題なんだけど、そんな所の経営者はいいものを作ってお客様が喜んでくれてる、だからいいものを作れば売れると信じていた。

 お客様に喜んでもらえるのはいいとして、いいもの作れば売れるって言うけど、それ誰がいいものだと知る?うん、どうやって?と聞いてみたかった。で、そんなに頑張って売っても現実は赤字だよ。その赤字とかどうするの? 無駄だよね、その原動力がと訊ねて見たかった。


 そういうお店に、僕は里依と佐々木さんと行く。チャラ男を演出してみる。だって、泡銭を手にした大学生が自分の店の株買い占めて乗り込んでくるんだから警戒するよね。なので、女連れ、しかも両手に。 

 そう安心を売っておいた。向こうが油断するように。


 で里依にはお店や工場へ。人間関係を調べに、販売、作業をメインにしてもらい、表の社長の顔を見てもらう。里依は僕が行方をくらました時、バイトでキャンガルとかやっていたので、その辺がうまい。見た目も中身もお嬢様なので、人の中に入っていくのもソフトで上手。で方や佐々木さん、お金の流れを掴むのかうまい。見かけが、地味なのもしっかりしているように見える。なのでバックで金の流れを。


 大体、同族だと奥さんが経理というか裏方感じなので、そちらをみてもらった。

 そう里依みたいなタイプは奥さんが警戒するけど、地味な佐々木さんは奥さんが面倒を見てくれる。まあそこそこドジっ子みたいな感じだしね。


 地方のお店は、いい顔する旦那と裏で締めている、金を握ってる妻とが多い。で自分達は苦労したりしてきたからある程度節度があるけど、何であんなに子供に甘いのかな? と思うこと多かった。大体、お店がうまくいかない原因の大半は旦那のロマンと、若旦那が会社の金と自分のカネ一緒にしていることが多い。

旦那が遣い込みなどした日には、烈火のごとく怒るクセに、息子には「もうしないよね」「次はないからね」と甘い。


 まあそれ以外にも原因はあったんだけどね。まあ。そっちは僕たちがフォローした。


 僕はというと、スーツ着て金融機関へ行く。地方なので信用金庫や農協だったりすることもあるけど、そこで、どんな風に融資して、返済計画があるのか、今いくらくらい借金があるか聞いてくる。


 まず金融機関。

 もちろんちゃんと審査しているんだから、ちゃんとしていると思うよ。でも、金を貸すだけ貸して、その後のビジョンがないとはどうなのとは思う。担保取っているから大丈夫なのか? とかね。僕はそれ以外にも、経理や業績改善、業務計画を携わる者をお店の中に入れられるかな? そんな担当者がいるか、見ていたんだけど、緩い、ぬるすぎる。もう少ししたら日本の人口が半分になってしまうんだよ。バブルが終わって何年経っているの。それでいいの? その時に慌ててももう遅いんだよね。特に地方は簡単に切られてしまうよ。


 まあ中には面白いヤツもいて、話を聞いていく。そして面白いビジョンは、その場で、使ってみたいと言ったが、上司は首を縦に振らない。面倒になった僕は、札びらで頬を撫でるように、移籍を求めた。そんな分からず屋の上司より僕の方が絶対に面白いと。


 それでも、僕のオファーを受けたのはまあひとり、ふたりだった。

 そうだろ、地方なら金融機関はエリート職、それも融資担当なら出世コースだ。そんな場所から飛び出すやつは、馬鹿とか言われる。でもさ、男なら可能性にかけないか? なんて夜の反省会(飲み)で言ったら、里依が


「もー、男ならとか、旬もそんなやつなの? できるヤツは、可能性にかけるとか言いなさいよ。全く!」


 とか言われてしまった。その隣で、佐々木さんが黒い微笑みを浮かべている。僕はしまったと思ったたが、もう遅い。淡々と里依の男女間に対する愚痴を聞かされてしまった。フェミ怖い。


 この二人は、そういえば、里依は僕が金を儲けたとなっても全然態度も変わらず側にいる。佐々木さんも須藤君の近くにいると面白い事起きるからとか、大学の間に経営の実践ができる機会そうないからね。というヤツだった。まあ里依は、お嬢様なので、同級生では相手にならない位金遣い荒い。本人はそんな事ないとかいうけど、就職したら給料足りなくなるだろ、きっと。里依が僕の側にいるのは、まあ半分は僕の金だと思ってる。


 えっ? 佐々木さん? コメントは控えさせてもらう。でも僕が投資会社を作った時、経理担当できてもらった位、会社会計や投資関係の実力は認めているよ。事実、佐々木さんがいなければ、僕の会社も大きくなるの数年遅れたと思う。



 そう思うと、僕の周り、女の方が金に目が眩んでない?

 まあそんな事ない、宇津木先輩かいると。後、教授も。


 そう、会社の再建には、ちょっと法律を知る必要も出てきた。だってダメな会社って借金をどうにかしないと先に進めないんだよ。だから民事再生とかの手段をとるにしても弁護士が必要になった。

 その時先輩は司法試験に受かり司法研修生だったので、アドバイスをとお願いした。研修が終わってからは、その再生される会社の顧問弁護士との折衝をお願いした。



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