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閑話 旬という義弟

 自分は、ずっと根なし草のように、ここアジアで、ただ、漂うだけだと思っていた。日本人として産まれたが、父の仕事の関係で、東南アジアの幾つかの国で育った為に、ちょっと日本人のナショナリティがないんだ。日本人だけど日本人らしくない。

 そんなことでと思うだろうが、日本っていうより、日本人はアイデンティティーが元々ないみたいだし、そこに、俺はアジア各国のナショナリティがのかっている。

 友人達を見れば、華人の華僑だったり、マレー人なら、そこにしっかりとした文化なり宗教なりがあるようで、こんな感じにふらふらしないのかと思える。

 そう、そんなことを考え、自分のアイデンティティーは? ナショナリティは? なんて悩んでいた頃だった、妹が彼氏が出来たとよく家に招いていると、母からのこっちへの定期連絡で知った。

 妹は、日本で暮らしてる。ちょっと前にアジアがきな臭くなった為に、父は母と二人帰国させた。アジアの中で、治安も生活も最も安心安全な母国へと、避難させたんだ。

 俺は、大学は現地を選んだので、大学は寮に入って、長期休暇は色んな国を見て回っていた。見た事もない国へ向かうのが楽しくって、殆ど日本には帰っていなかった。

 妹がどんな男を恋人に選んだのか興味が出た。そう妹の彼氏を見て見たかった。

 それは、単なる興味からだが、妹が選んだ男を見て、俺たち兄妹のアイデンティティを確認ができのではないかという思惑もうあった。どんなヤツを選んだのか分かれば、そこに投影された憧れがあるのでは?と思ったから。

 それで、今年の夏休みは、久しぶりに日本で過す事にした。

 その数年後、里依の、そう妹は、里依という、里依の夫婦問題が没発したとき、母は人一倍激怒し、相手の、旬のね、相手に、凸ったと聞いた。自分には腹違いの姉がいると知った後だったので、まあそうだよなあって程度だった。

 そう、現地にいた父は、腹違いの子がいるくらい、まあ、宜しくやっていたんだ。現地の屋敷には、お手伝いさんも運転手もいたので、別段生活に困ることはなかったからね。母も必要なかった。それ以上は、自分には関係なかった。仕事を手伝っていたが男同士なので、そんなに話すこともなかった。


 ああ、妹の彼氏の事。

 彼を初めて見た時、ひょろっとした、神経質そうな細い体付き。好奇心が旺盛なのか、小学の男の子みたいな目をして、キョロキョロとあれこれ観察している。まあ、ちゃんと不躾にならない配慮はあるが…。

 その辺にいる平凡な男という感じで、学校のレベルからもいい家庭の子なんだろうと感じた。全体の印象も薄い。

 そう、そいつを見た時の印象は、どこが良くてこんな地味な男を妹は選んだだった。そこに俺が期待したような、妹の憧れが投影されてる感じはなかった。

 妹はその年、4月に大学に入った。そこで其奴と知り合ったということだった。ただ、なんていうのか、俺には二人が恋人同士に見えなかった。

 母は娘の初恋を応援する体で、ウキウキして接していた。もう、娘が普通に恋して、親に、母親に好きな人を紹介にきたと、そんな話を信じていた。

 妹は、帰国後、入れられた女子大付属校に飽き飽きして、高校は外部受験をして国立付属校に入るくらい、なんか、頭がいいっていうのか、頭の回転のよいタイプなんだよ。そんな女が、大学に入って直ぐにボーイフレンドを作るか? そんな疑問も持たない母は、多分自分がそうだったんだと思った。まあ母は女子高から付属大学に上がりって感じだったと。そこは良妻賢母を育成するって学校だったからね。それが普通だったんだよね。

 で、目の前の二人は、別段イチャイチャするわけもなく、お茶を飲みながら、今は一番の株の投資先は、どこがいいと話し合っていた。

 恋人同士の会話なのか、それが。

 自分は、信じられないモノを見るように、眺めてしまった。ただ、其奴が選ぶ投資先が年若い者が選ぶような会社でなく、しっかりとした経営体制のある、面白いモノを作る製造業だったのが、ちょっと不思議に思えた。

 このくらいの子供が投資となれば、経済関係の新聞、週刊誌などからの情報を元で投資するはずだ。しかし、妹の彼氏、旬は、違ったんだ。だからその不思議を解明するために、其奴に色々と聞いて見た。

 その中にはたまたま、二人のなり染めもあった。すると妹が言ったことと少し食い違っている。

 ふーん。何かかくしているなあと、そんな感じかした。

 なら、何を隠しているのか探って見たくなった。

 だから、兄を全面に出して、妹の彼氏と親交を深めた。

 分かった事は、付き合ったきっかけは、そう、セックスに対する好奇心からのだった。ただ、普通に付き合ってそうなると、彼女面されるのが嫌だったと。四六時中付き纏われるのも嫌だと。その反面、ウチの妹は会話も楽しいし、興味の対象も同じ。分を知っているので、他の女みたいに煩くまとわりつがないだろうと。

 そんな本音を実の兄に話すなよ~とは思った。

 しかし、手筈が上手い。ウチの母に外泊を認める為のカモフラージュ。初めての娘のBFとして面識を得て、安心させ外泊を可能にすると。その用意周到な考えに、コイツってなんでそんな事を考えられるんだ。まだ今年大学に入ったばかりだろう?そう少し旬には興味が出た。ただ、妹のそういう事を、男と女の事を聞くのも知るのも躊躇いがある。いや兄としては知りたくないからね。

 本人達がそれでいいなら良いかな? と遠くから眺めることにした。

 すると、妹が2年の夏か秋かだったね。母からは、振られたとか別れたという話がないのに、土曜日にひとりで昼食を摂っていた。

 そうだ、ちょっと妹たちの関係が面白いので、近くで観察するために、日本で働き始めたのだ。

 建前としては、自分の会社は日本に作るかなあって事で、父の会社に入り、日本の会社組織を見るために、日本法人のアジア担当幹部として、日本側からの要望を上げるという事にした。


 その時まで、あの2人は、よくデートと言って、土日はお出かけしていたし、長期休暇ではお泊まりもあったようだ。それが、土曜日に1人。そんな事、付き合い始めたと聞いた頃からなかった。妹本人は気がついてなかったけど。

「何? 旬とは別れたんだ?」

 なんとはなく聞いてみたら、驚いた妹は、

「お兄様ったら、なんでそんな事を言うの? 別れてないモン」

 ぷんと顔を横に向けた。その様子を見て、図星らしいと思った。追い討ちをかけるように、

「いや、土曜日にひとりって珍しいからね」

 と言ってみると、

「えっ!」

 と目を見開き驚いた。今まで、そんな事も気がついてなかったんだ。すると、神妙に声を顰めて、

「うん、お兄様には言っても大丈夫かな? 私たちの事知っているし。実は旬が学校に来なくなったの。噂では学校をやめたとか〜」

 と話始めた話は、驚くばかりだった。

 旬がFXで大金を得だらしく、そのせいでマスコミに追われ、学内でも女の子に付き纏われて、学校に来なくなった?

「なんで、親だっているんだろう?」

 そんな疑問を声に出したら

「うん、そうなんだけど、旬のお父さんが会社辞めたとか聞いたの。旬の金を当てにして、それで家を出るとかまで話があって、やめなよとか言ったら、私がいいとこの娘だから、お嬢様だからそんな事言えるって言われて、それから、それから…」

 と言い出すと、涙を薄ら浮かべてきた。

 おい、奴のこと、そんなに好きだったのか?

 それよりなんで、そんな事が。

 妹から渡された週刊誌、億の金を手に入れたと書かれた記事を読んでみた。まあ大学生がなら納得のいく記事だった。センセーショナルに書いてあるから、周りは煩いだろう。旬の家はサラリーマンだと聞いたから。それでか、親も騒いだんだと。

 それ息子の金だろう。なんで、それで親が会社を仕事を辞めるんだ? 

 そんな考えが声になったのか、

「旬も同じ事言っていたの。でも、私が、聞いたのはお父さんが会社を辞めた後だったの。早期退職に応募したらしいの。それ以外でも学校では他の女の子達が、旬の彼女って事で私に牽制してくるし、なら、旬以外にって思ったら〜。うぅん、ぐすん。ただ私、学校に友達いなかったの。そっちの方がショック」

 そんな事いいテーブルに顔を伏せて手でどんどんと叩いてる。

「はあ? 2年も学校に通っていて?」

「うん、いつも旬といたから、旬の女だよねって感じで。すんっ」

 鼻を啜り、涙を隠しながら答えるのを聞いていると、旬と1年の夏くらいから一緒に過ごすようになり、周りは恋人認定となったみたいで、遠巻きになる。毎週土曜日にデートとかお泊まりとかしてれば、流石に、二人がいいのだろう、忙しいのだろうと誰も誘う奴もいなくなるよなあって思った。それを妹は気が付かなかったみたいだが。里依は、いつも人の中心だったかなあ。

 そしてサークルの方もそんな感じに見られていたから、ひとりで行けば、別れた、捨てられたと、謂れのないことを言われ、居た堪れない感じで、余り出席できないと。

 そんなうんざりする話を聞いて、おいおいと思ったが、可愛い妹の事なので、俺は一応、

「なら、今からでも大学に入ってやりたかった事を、チャンスだと思って、ひとつ一つやればいいじゃん」

 なんてアドバイスをした。

「そうか、そうだよね。旬といるのが自然だったから忘れていた」

 って、突然、笑顔になり、『そうよね。バイトとかしたいと思っていたし、そろそろインターン先も探さなくっちゃ』とブツブツ言っていた。

 さすがに、そのやりたいバイトがキャンガルとは思わなかったけどね。早々に母親にバレて、もうバイトはしないと約束させられたと聞いた。

 里依は、そのバイト代で、プレゼンが上手くなるためにアナウンサー養成スクールへ通おうと思っていたらしい。その学費を賄うつもりのバイトだったので、それを辞めさせたんだからと母親に出してもらってる。本当にチャッカリしているよな。

 そうあの後にも、家に連れてきたBFも何人かいたけど、みんな小粒だったね。すぐに、自分の軍門に落ちた。そんなに簡単にこっち側に落ちるヤツなんか相手にするなと、妹に言ったら。

「酷い、お兄様が可愛い妹のBFに手を出すなんて、信じられない」

 って怒った後に、ボソッて

「私、この頃、男の子とは付き合えるだけで、女の子達には、私が彼女達のBFを横取りするって思われて警戒されるから、友達になれないのよね」

 なんて言い出した。まあ自分から見ても、妹はぱっと見、美人だ。キャンギャルのバイトが母親にバレた原因も週刊誌に『今どきの大学生のバイト』という連載記事に国立大生の才媛がキャンギャル! って載ったからだ。

 そんな世間知らずの妹が連れてきたBF達はまあ、妹の見た目に惹かれてきたんだろと分かるくらいの小粒だった。だから俺は可愛い妹の為に

「友達は自分から動いて作るモノななんじゃない? 簡単にできる友達は別れるのも疎遠になるのも簡単だよ」

 と一応兄として、その辺もアドバイスしておいた。

 まあ今までを見ていると、女友達ができなかったのは大学だけで、妹は実際、面倒見が良いのか、高校の後輩達には慕われているらしく、女子会などやってるみたいだし、学校見学の手伝いとか進学のアドバイスはしているみたいだった。

 しばらくすると、すげー地味な女を家に連れてきた。インカレ仲間で同じ学校の子だとか。専攻は違うらしい。

 なんなんだよ、そいつ。大学生で三つ編み!

 すると、妹は、

「彼女は佐々木冴さん」

「こんにちは、初めまして佐々木です」

 と挨拶されたので、こちらも

「兄の純です。よろしく」

 そう挨拶を交わしていると、

「お茶を淹れてきますので、お兄様、お相手お願いします」

 と妹が、キッチンへ向かってしまった。俺は、女の子と話すこと苦手なんだよなあって思っても、妹の頼みは無下にできないから、

「所で佐々木さんは専攻は?」

 と、当たり障りのない話題を振る。

「はい、会社会計です。里依さんからのアドバイスをもらい、会計士を目指してます」

 その回答を聞いて、丁度、お茶のワゴンを押してこちらに向かってきた妹の方を見る。

「ええ、私は栗山の事業を継ぐつもりも関連会社の人と結婚するつもりもありませんから。なので、いつか会社を作る時の下地として、必要な人材は学生の時、確保しておくものですよね」

 そう微笑み、ゆっくりとお茶を淹れている。

 全くぶれない。いつも起業や投資、投機とかを考えている。そこまで、ウチは困窮していないのに、何故、こんなにアグレッシブなのかと不思議だ。

 そういえば、

「お兄様は、男でしかも長男。皆んなに、家を継ぐって思われているから分からないんです。私は女だからいいお家に嫁に出されるだけ、理不尽ですよ。自分の人生は、自分の可能性にかけてみたいんです」

 分からないでしょうと、そんな顔で尋ねられたのは、妹が国立附属校に入った辺だった。その後、国立大学へ進学した。

 そんな妹は、ウチの会社や、関連企業に入る事を拒み、全く関係ない外資系投資会社に就職した。

 そうだ、あの旬のアドバイスだと言っていた。彼奴とも関係が復活していたんだ。三年の時、ゼミが一緒だと妹から聞いた。

 あんな仕打ちをされたんだ、そのまま別れたと思っていたが、しかし、こっちの思惑と違い、関係も復活してしまったらしい。そもそも、旬は手にした金で企業投資を始めたらしい。それも食べ物関係の。それに、その老舗支援に。それに妹は興味を持ったんだ。絶対に旬にではないはず。

 俺は、凄く地味な事だなあって思っていたら、旬は美味しい物が好きらしいく、自分の好きな物を残す為に動いたりしていた。長期休暇に地方の老舗メーカー、店舗にテコ入れに向っていた。そんな老舗に乗っかっての支援なんて甘い。そう思った俺は

「企業支援といっても老舗あるき、学生の甘さがあるなあ」

 ウチに久しぶりに遊びにきた旬に向かって言ってやった。旬は

「まあ、製造業を最初からするには、僕には分が多いから、まず老舗の美味しい食べ物がなくならないようにと思ったんです。どこもバブル期に過剰投資や地上げなどしすぎた関係で、中は真っ赤ですからね。あのお菓子が食べ物がなくなるのはボクが許せないんです」

 と。そんな金持ちの遊びと疑われるような事と、何も持たない者の下からの下剋上のような起業練習のような中途半端な分からない事を繰り返した旬は、就職できなかったと。

 旬は、老舗支援を始めて、在学中からある程度、有名になっていたのだ。老舗支援の方法がちょっと変わっていたので、その辺から経済誌の記事になっていた。その上、旬自体も変わっていた。以前、ウチに遊びに来ていた頃の人畜無害な陰の薄さは無くなり、逆に、カミソリの刃みたいに、触れば切れるようにピリピリしていたし、存在感も増していた。

 企業支援をする経営者としては利益配分に長け、しかも、冷酷で傍若無人になっていた。本当に一端の実業家となっていたんだから。

 親を切り捨て、一人で生きると決めて、色々と苦労していると思うが、あそこまで変わるか? と思うほどだった。

 まあ、事情はどうあれ、あれほど有名になれば、普通の会社なら入れないよなあ。どうするのかと思っていたら、今まで作った会社を一つにまとめ、地方の老舗を支援する投資会社を作った。

 その資金をどうやったと、妹に聞けば、

「老舗チームからの申し出で、数社再建できたの。まあ、その再建する会社の株式を最初に手に入れて、再建したから、必要分だけ、文句言える分の株式を取っておき売ったはず。それ以外にも、旬は株売買やFXをやっているので、手にしたお金は週刊誌に載った金額の倍にしているはず」

「はあ?」

「倍って、何をどうすれば資金を、それだけにできるんだよ」

「分からないわ、旬だもん。私も冴ちゃんにも就職のアドバイスは旬からもらって、成功したのよね。なのに、旬ったら、自分の事を蔑ろにしてて〜」

 そんな話を妹から聞いた。やはり、あの冷酷で傍若無人な態度は、ポーズではなかったんだと。だから、ウチは様子見を決めていた。

 すると、それから数年後、財界が煩くなった。鷹司家当主が、旬の会社を支援すると。その為、顧問となったと。

 俺は驚いた。いつどこで旬は鷹司家に繋がったんだと。

 妹はまだ旬と付き合っている。なら旬を家に呼び出した。

「鷹司家がお前の会社のバックについたとか顧問になったと聞いたが、なんでだ?」

「鷹司家? なんですそれ、僕は知りませんよ。僕の会社の顧問の話なら機関投資家の林田さんが、指導してくれるって言われたので、お願いしたまでです」

 旬は、機関投資家の林田修が鷹司当主と知らなかったようだ。なら問題は無い。知らないということは、そういう事。旬の会社は新興の会社だから財界の繋がりが薄いんだろう。

 しかし、鷹司家の思惑はわからない。なんで旬なのか。確かに、投資や投機などやっている旬は、色々な場所で鷹司当主とかち合うこともあったんだろう。それでか? 何が鷹司の当主の気を引いたんだ。そんな時だった。妹が旬の会社に入ると聞いたのは。

 まあ、妹は旬との関係も続いていたのだろう。旬の投資会社も大きくなってきたから、旬は、自分の個人事務所を作るとなった。そこの秘書として里依がヘッドハンドされたと。

「なんで、大手投資会社から小さな個人事務所へ行くんだ。それも肩書きは秘書だろう。自分のキャリアを大切にするべきだ」

「うーん、旬から頼まれたから。それに、私も旬の側にいたかったから。旬の仕事の手伝いをしたいの」

「はあ? そんなに旬の事好きなのか?」

「恋愛感情でなく、旬は面白い投資しているし、これからはベンチャーやスタートアップの支援は個人事務所でするって言っているの。なら私の手伝いが必要よね。まあ会社の方の役員にもしてくれるって言うし」

 就業条件は順当な感じで、里依は自分の実力が認められたとか思っているようだが、その実、旬も世間が煩いのだろう、それで里依を側に置くんだろうと、そんな予測もつく。ある意味、妹はその辺の女では太刀打ちできないからなあ。見た目も頭も良いし、キャリアもある。家柄、特に新興の企業なら欲しい財界の伝手もウチにはある。そんな意味でウチの妹を会社に入れるだろう、その布石に個人事務所を作ったんだと思う。そこで、会社と事務所の連携を取る為、聞こえの良い個人秘書とするんだ。それは里依を恋人パートナーだと対外に知らせるためだ。

 そんな事を考えの裏付けが欲しい。俺は個人的に鷹司当主に会う算段をする。旬の事もある。旬を鷹司の後継にするなら、俺は里依を説得し、旬から離すつもりだ。普通の一般人には鷹司は無理だ。

 それは、鷹司家は戦後最強のフィクサー鷹司宗一郎の起こした家だからだ。昔は仕手株など、裏方の仕事をしていた。その跡を継いだのが林田修。彼は政治家、佐々木修造の庶子。本妻に嫡子が生まれ、祖父の家へ出された。その祖父が鷹司宗一郎だ。しかもそこは本妻の実家だ。そんな所で育った林田修は、機関投資家となり、歳若く鷹司を継いでもフィクサーとしての立ち位置より、機関投資家の立場を優先しているように見えた。が、しかし、佐々木家のフォローはちゃんとやっているんだ。まあそうだろう。

 今更フィクサーなど必要ない。そうは思っていたが、しかし、そんな社会の裏側に、そんな場所にウチの妹を置くとはできない、確認は必要だ。

 栗山本家筋から面会予約を入れた。なので、数日後に会うことが叶った。

 挨拶も簡単に、本題に入る

「鷹司様、本日の面会を早々、承諾いただきありがとうございます。本日、確認したい事がありまして…」

 それなのに、どう話始めればいいのか分からず、歯切れが悪い。

「ああ、今回は栗山家からの申し出だ、なら、其方の嬢ちゃんの事だろ、ああ?」

 こちらの事はお見通しとの回答をもらい、俺は狼狽える。

「はい、妹の事もありますが、須藤旬の事もありまして〜」

 更に言葉を詰まらせる。

「あはは、栗山、それは、お前さんの独断専行か? 妹思いの兄だなあ」

 こちらの思いはバレバレだった。それなのに、鷹司当主は、未熟な俺を叱責することもなく、笑いながら、色々と教えてくれた。

 旬の事は、よく分からないが、今は後継とかではない。ただ、とても気になり、気がつくと顧問になっていたんだと。

 彼の家の事も知っているし、ウチの家の事も、妹の事も、旬の相手だし、新しい個人事務所の秘書に、会社の方の投資担当役員になるという事も知っていた。そしてこちらを優しい目で見て

「だがなあ。其方の妹とボンは、今はお互い仕事が面白いじゃろう。そして、周りが煩いからのう。そんな時期だなあ。だから一緒にいるんだろう。お互いにその方が便利だから。まあ、今迄もこれからも二人の関係は変わらんと思う。其方の心配は分からんでもないが、男と女のことなどなるようにしかならん。後、其方が心配している鷹司のことだが、ワシがボンを鷹司の跡を継がせるとなっても本人が了承しなければ難しい。ワシは自分の意思でこの地位に継いたのではないから、余計、後継は意思のある者が成った方がいいと思っておる。それだけは言っておく」

 そんな事を、鷹司当主としての本心まで話してくれた。

 ああ、俺の狭量も笑って許してくれる懐の広さ。流石、鷹司当主。

 そんな俺の心の焦りも、のんびりとしたあの二人には伝わる事もなく、旬の個人事務所に入った里依は、旬と同じマンションの隣の部屋へ引っ越した。

 里依を側においた旬は、安心したのか、派手な私生活が週刊誌を賑やかにすることもあったが、若手実業家としては順調に成長していた。

 そんなある日、俺は、顔馴染みの経済誌記者から、驚く事を聞かされた。

 旬が趣味の会社を愛人のために、興したと。そして、その会社に入り浸りで、自分の会社は放り出していると噂になっていると。

 まあ旬は独身だから、愛人だろう恋人を作ろうとなんの問題もないはずだが、公私ともパートナーとなっている里依を蔑ろにしているように見える。それで栗山家と袂を別ったのか? と、質問としてこちらに持ってきた。

 まあその記者は、里依にも旬の会社ミッドシズンにも確認したと。その返事は

「須藤の考える事など、一般人の私たちには分かるはずのない事。きちんと発表できるまでお待ちください」

 といういつも通りの返答だったと。

 しかし、その記者から知らされた状況は、驚くことばかりだった。

 まず、相手とされている女は、旬の母親と言っても不思議と思えないほどの年上で、ハンドメイド作家。

 その会社の事業は、その女の作品の商品化という話だ。

 そのため旬は、友人を使いその女のプロモートしている。今では主婦雑誌やTVではカリスマ主婦とチヤホヤされていると。

 その雑誌にも目を通した。俺は怒りが溢れる。

 大学から付き合っている里依の事をどう思っているんだ。あれほど、望んで自分の事務所の秘書にしたのは、旬の会社を里依が廻すためなのか?。

 旬は、何をしても良いと思っているのか? ウチの妹の事を。その無責任さに怒りが溢れる。

 そう思うと、やはり、このままにはして置けない。我が家もバカにされているのだ。泥を塗られたも同然だ。


 怒りにかられた俺は、再び、鷹司当主に連絡を入れて、旬の会社を揺さぶる事を告げる。すると

「あはは、ボンが腑抜けになっておるからな。ワシも嬢ちゃんも色々言っおるが、大丈夫だしか言わないんだなあ、ここまで我儘を通していれば、出資者からそっぽ向かれるのも幾ばくもないとワシも思っておる。ならというこか。よし、やってみろ。これで潰れるなら見込みがかなかったという事だ」

 顧問である鷹司からも匙を投げられている状況なのか。まあそうだろう。旬は投資会社の経営者だ。資金を出資者から貰い投資先を見つけ投資する。それで、その資金を増やして出資者を満足させるのだ。それを怠っているんだ。数字はちゃんとしているが、挙動不審な就業状態なんだ、それがどこからか漏れるか、社内の反発もあるだろ。ならそこから揺さぶるか。彼奴はあれで優秀な反面、敵も多い。それを鷹司の力で押さえていたんだ。それにも気がつないなど、経営者としてもあまりに未熟だ。

 なので思う存分、ヤツの会社を揺さぶった。しかし、なんで旬は、ああ運がいいのか。

 週刊誌が動いているのが旬にバレた。早々、里依を動かして、其奴らの動きを止めた。それだけならまあ分かるが、なんとその時、妹は旬の子を妊娠したと、そして旬と入籍したんだ。

 なんなんだ、彼奴ら、里依が妊娠? 愛人騒動はなんなんだ? そんな疑問も出るが、俺の妹が好きな人と結婚したんだからこれでよかったと、俺も思った。だから、俺のやっていた旬の会社を揺さぶるのを止めるように指示して、安心して自分の仕事に、インドネシアに戻った。これで里依も大丈夫だと。


 しかし、そんな安心は、俺がインドネシアに行っている間に崩れる。

 俺がやっと日本に戻ってきた時、里依は、身重なので一人だと不安だからと、実家に帰ってきていた。里依から伝えられた言葉は、

「旬は、キョウコさんと旅行へ行っている」

 だった。

 俺は驚いた。なんでそんな事になってるのだ。身重の妻を放り出して。

 俺の言葉が漏れたのか、里依が

「ねえ、お兄様、昔、えりさんが私に見せびらかしたネックレスって覚えています?」

 突然何を言うのか? といぶくっていたら、昔、本家の従姉に意地悪された話をする。本家の従姉が自分の父親から貰ったと、エキゾチックなネックレスを見せびらかせていたんだ。その時、哀しそうにしていた里依の顔が蘇る。

「あのネックレスどうしても欲しかったの。それなのに、えりさんたら私が欲しいって思っているの分かったら、意地悪して触る事どころか、見せる事もしないの。ちょっと見ようとしたら、ケースをパタンと閉めるの。だから余計に、見たかったし身につけてたかったの。そのネックレスが今ここにあるわ」

 そんな変な事を言う、里依の首には手作りな感じのエスニックなネックレスがある。しかしそのネックレスは、全く、あのネックレスには似てない。

「ふふふ、似てないのはわかってます。でも、これはあの時、欲しかった手に入れられなかった私のネックレスなのです」

 そう言い、そのネックレスに手をかけ、優しく撫でている。愛おしくってたまらないように。

 そうか、里依は旬の相手と勝負しない事を決めたんだと。

 それから、里依は、その旬の愛人のキョウコという女の事を淡々と語る。そして、最後に

「キョウコさんは旬のやりたい事を、旬の前に、ポンと出せる人なの。今までの旬の側で問題を起こしてきた女たちとは違うのよ。レベルも次元も。だから、お兄様が焦ったと思うの。だけど、もう、同じステージで戦う事は不毛なんだと気づいたの。私は一人でもこの子を育てます。鷹司ご当主にはそう告げてあります。そしたら、ご当主は、笑って

『嬢ちゃんがそこまで覚悟を決めているなら、ウチの跡取りとして育ててやるぞ。ボンと嬢ちゃんの子なら遺伝的に申し分ないからなあ』

 そうおっしゃってくださいました」

 少し悲しく微笑み、もう旬の事は終わった事のように言う。

 それなのに、やはり不満な思いのある母は、里依が出産の時に里依のフォローの為、里依の側にいたその女に文句を言ってしまった。激昂した旬が

「キョウコさんに何がしたら、僕は里依と別れます」

 そんな事をほざき、母の言動を止めたんだと。

 俺は憤ったさあ。可愛い妹の事どう思っているんだと。

 しかし、その事をどうにかしようにも、丁度、自分の会社を起こしたばかりで、自分の会社と、父の会社の役員とで、日本―インドネシア間を行ったり来たりしていたんで、プライベートな時間など全くなかった。

 そして、出産後、里依は何を考えているのか、その女の会社へ毎日通っていると。心配した母はシッターさんをつけてると。報告してきた。

 その後、子育てして、初めて子育てに対する問題点を見つけた里依は、少子化対策の諮問委員会に入ったと。

 経営者サイドにいた里依は、育休を取るメリットも無く、高額納税者だという理由で保育園にも入れなかった。それを、憤っての行動だった。

「キョウコさんの会社に行くと、育児のアドバイスはもちろん、様々な立場の人達の夫婦関係も分かるの。人って社会的立場が違っても本質は余り変わらないのね。だから、私は、自分の立場でできる中の最良をするの」

 そんな事を零し、少し切なそうに微笑む。なんか妹が少し大人びできている。

 そう出産後里依は変わった。その変化は見た目は少しなんだが、根本はすごく変わってしまったようだ。立場の違う人との交流で、自分の立ち位置が見えていたと。

「私は幸せなんですね。好きな人の子供を産んで、一緒に暮らしているし、食べるためにあくせく働かなくても、ちゃんと生活ができるんですから。保育園には入れないって憤れば、ママがシッターを、付けてくれるし」

 そう微笑んだ。夫の愛人問題など大した事ではないと言うように。


 俺はやっと仕事が落ち着いて、日本での地盤固めをする為に、戻ってきた所だった。そこで聞かされた事は、耳を疑うような事だった。

 里依が、子供を連れて、あの女の会社に行っているのは知っていたが、そこで、次の旬の大きな仕事、香港とのコラボを里依自身がやりたいと、色々とライセンス関係をその女に教えていると言うし、そのコラボ関係から、ガラス工場の支援を、旬の会社にさせるように仕向けたらしい。

 そして、今その女は、目の前にいる。どうしてこうなったのか。

 その女のライセンスをまとめる会社をシンガポールに作ると。その資本金を旬が出そうとしたら、マネロンだと言われたと。なら俺が資本金を支援するとなってしまった。香港のコラボの後、インドネシア、タイ、ベトナムなどで伝統技能を使い、日本のモノとコラボしていこうと考えていると。そんな話を昨日の夕飯に里依が語っていた。その時俺は、

「面白い」

 と一言、言っただけなんだけど、今株式20%で2千万円出資する事になり、顔合わせと言われて、里依の子。俺の姪の明日香を連れて食事に来ている。

 で目の前のあの女は、

「わたしのプランに出資していただきありがとうございます。素敵なバデックのシャツですね」

 と微笑んでる。

 この女っていうのが俺の最初の印象。

 そうだろう、今日の今日で、会うなんて、今日の話題、旬のマネロン疑惑が出た。そのニュースソースがこの女からなんだ。なら、二人は会っていたんだ。旬の妻、ウチの妹が実家に帰っている時に。何をやっていたか分かる。そう。言えば、

「お兄さんは妹思いですね」

 と応えてきたんだ。

 何故そんなに涼しく言えるんだ。


 その店に着けば、連れてきた姪っ子が、その女を見るなり、

「ばーば」

 って、両手を上げて抱っこポーズまでしている。なんだ、これは。悩んでる俺を後目に、その女は、明日香を受け取ると、

「まあ、明日香ちゃんお口が上手になだったのね」

 と優しい祖母の目で、ウチの姪を見ている。

 そして、

「明日香ちゃん、今度一緒にお出かけしましょうね。飛行機に乗るんですよ」

 と言いながらあやしている。

「鏑木さん、旅行って」

「ええ、みんなでシンガポールへ行く事になったんです」

 こちらに目を向けてそう言うと、隣から旬が、鋭い声で、

「キョウコさん、純兄は、出資者だが部外者だから情報ソースを漏らす事をやめて欲しい」

「えっ!」

 本当にこんなに甘くって経営などできるのかって思うほどだった。だが、旬のこの頃の仕事はこの女からもたらせたものばかりだった。

 香港の手芸作家とのコラボ、独立系の手芸店の組織化して、それをあの女の会社ラディッシュの傘下とした。それから、布工房の支援、ビーズ会社の再建とやって来て、今、昔の基幹産業だったガラス工場の再建を街ごと行うとなっている。

 何がどうしてこうなったらこんなに早く話が進むんだろうと。そして、今、その香港とのコラボが、マネロンではと、税務署から問い合わせが来たと。その事に、旬が、ちょっと頭にきたと、先に手を打つために、シンガポールに、知的財産権を管理する会社を作るとなった。その資本金を俺は出す事にした。どうして、と思うが、妹に見せられた作品を見て、今まで自分の中で漠然としていた、インドネシアのバデックの保護の行き先を示されたと思った。

 だから金を出すと決めたんだ。だが、心の中は違った。答えのない思いが渦巻いていた。

 だから、名前で呼んで欲しいと言う願いも、

「なら、旬の前で苗字を呼ぶのは良いことのような気がする」

 などと揶揄う。そして、

「知っていますか? 旬は、ウチの中で一番稼いでいてね。現業でないからそんなものと思っていました。ウチは『堅気な商売を』が信条でね、だから、旬がいくら稼いでも全然平気だったんですよね。なのに突然、ハンドメイド作家の支援しはじめて、だんだん規模が大きくなって、その上、今はガラス工場の再生とか、そう製造業の支援をしてきた。驚きですよ。そして、次はアジアの手工芸とのコラボ。手仕事を保護育成するなんてね。その裏に貴女が鏑木さんがいたと。しかも愛人だとねえ。愛人の貴女が旬にもたらしたものは、ウチからしたら色んな意味で驚異です。その上経営も業績もまずまずで、私としては里依の事もあり、ちょっと腹立たしいんですね」

 心の内を晒してしまう。

 そして、続いて、お前たちは一緒に何していたと罵っていたんだ。

 それなのにあの女は哀しそうに静かに笑い、

「里依さんはどうか分からないけど、わたしは須藤クンの事、どんな事を言われても別れるつもり更々ないんですよ。不倫と言われる関係ですけどね。お兄さんにしてみれば、妹夫婦の夫婦関係を脅かす存在かも知れませんが、里依さんやご家族が、わたしに対して別れてとか言って来たら、多分須藤クンは分かりましたと言って、里依さんと即効、別れますね。だけど、わたしからしたら、明日香ちゃんをちゃんと里依さんと夫婦で、二人で育て欲しいんです。須藤クンに無償の愛を知って欲しいの。不幸な親子関係の系図は絶ちきって欲しいの。それを望むわたしがそれを提供できないから、須藤クンの子供を産むことも須藤クンがわたしの息子になることも不可能だから。

 だからね、明日香ちゃんを自分の孫のように可愛がるの。そんな偉そうな事を言ってるわたしは、自分の本当の血を分けた孫をわたしは抱くことはないから。ソレだけの事をわたしは自分の家庭にしてきたの、だけどそんな人生に後悔はないの」

 と溢した。それを見ていた明日香が、

「ばーば、ヨシヨシ」

 と、その女の頭を撫でいる。

 顔を下に向けていたので気がつかなかったが、涙が浮かんでいるんだろ。

 この女は、今の関係に、旬との関係に、ビジネスパートナーとの肉体関係に満足なんだろうと思うこちらの思いをぶち切ってくれた。

『旬の親に対する不幸な関係を断ち切って欲しい』

『明日香を二人で育てて欲しい』

『自分の孫を実際に抱くことはない』

 その願いと現実はどれも重い。彼女自身が、自分が身を引けばと思っても、それももう無理な立ち位置となっているんだ。

 だから強気な言葉、『ウチの家族が、里依と別れろと言われたら、旬を奪うと』言っているんだろ。

 誰にもウチの家族にも文句を言われないように。

 そんな事を考えていたら、

「にいにい、めっ!」

 と明日香が、俺に両方の人差し指でバツを作って向けてきた。

 あーあー、もう、俺の負けだ。可愛い姪まで敵にしたくない。

 その後、その女は、仕事に向かう妹夫婦に明日香を預かると言った。

 俺は旬の愛人が、姪を預かるなんて、ちょっと不安だった。だから

「キョウコさんは俺が送るから」

 と妹夫婦に告げ、送っていった。

 すると、その女は、寝てしまった明日香を持ってきてと、

「上まで明日香ちゃんを連れてきてくださいな、お茶でも淹れますよ」

 などと、会ったばかりの俺に言うから

「そんな、初対面な男を部屋にあげるなんて」

 と言えば、

「わたしの目は確かだから、わたしは安全ですよね」

 と俺の性的嗜好までバレていた。そう、俺はゲイなんだ。なんで分かるんだ?


 そんな感じに、その女と、親しくなりたくないのに、何故か親交がだんだん深くなってしまった。

 そして、あの女はシンガポールの会社で、問題が起きたと、こっちに来ている。

 近いから来ちゃったという、あの女を、そうキョウコさんをインドネシアでバデックを紹介するとアテンドしている。

 インドネシアで姉のネラを紹介すれば「ふふふ」と笑って、あーなるほどって感じで、こちらを見る。

 その上、二人は意気投合して、どの布が合うのかなんて言っているし、ネラはキョウコさんにクバヤの衣装を現代風にする仕事を頼まれたとか言っている。なんだコイツら。そんな俺の思いも、その後の百貨店のインドネシア展の催事でもっと大変な事になって、霧散してしまう。

 分かった事は、この女、鏑木恭子は、あまりにも型破りで、そんな女に使える武器(カネと会社)を持たせた旬は何を考えているのかという事だった。

 まあ、これは全ての布石だったと、今の旬を見れば分かるが。

 日本を面白くするって言う二人を見て、俺は疲れている。そういえば、鷹司当主が、キョウコさんに惚れて付き纏っているって里依から聞いた。まあわかる。

 あんな女一人でしておけば心配だからなあ。側に置いておけば、上手い話も面白い話も転がってくるだろという予測も立つ。

 そういえば、俺のアイデンティティとかナショナリティなどと悩んでいたのは嘘のように、晴れやかになって、こんな面倒な女の世話をできるのは日本人だからだと思うようになっていた。


純兄さんのモノローグ。

妹夫婦をどう見ているか。そしてキョウコさんの事。

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