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シンガポールへ

 

 そんな事を思っていた時だった。資格試験に合格してあとは、卒業制作かな? と余裕のをかました里依から、

「ねえ、夏休みにシンガポールへ行きましょう」

 と言われた。

「えっ! なんで?」

「卒論、研究発表の題材にしようかな? って思っているの。『知的財産権の現状と未来について』って感じにそこにNFTアートのブロックチェーンの現状と未来、応用として何があるか、キョウコさんが今、自分の作品のデジタルコンテンツ化をNFTに絡めるとかなんか言っていたんで、まだ漠然となんだけど、なら、エンジェルとしてどんな支援ができるか、そんな事思っているの。学生にはできない題材よね」

「何、それ」

「もう、旬。シンガポールの会社で、NFTアートの管理始めたんでしよう。その現状を見れる立場にいるって事に気がついたの。それに、諒子と話したら、向こうの現状が面白いんでね。ほらキョウコさんが、NFTアートのキャラクターグッズ作るとかで動いてるでしょ? それもどんな感じになるか見てみたいの。後、明日香がばーばに会いたいって言っているのよ」

 そんなことを言い、貴方もでしょうという感じでふふふと目が笑う。

 僕の心の中の気持ち。明日香のキョウコさんに会いたいと一緒なんでしょう。と、そんな事を、僕が愛人に会いたいなんて、妻に見透かさている事に、ちょっと 後ろめたかった。

「それと」

 再び、里依が口をひらく。

「シンガポールにミッドシズンから人、出すんでしょ? 今回のキャサリンのペナルティとして。それ私がやりたい。今、会社に、シンガポールへ人をやるだけのリソースないわよね。それに代表となるもんね。公私混同かもしれないけど資格取れたから、今ってね。兄にも承諾をもらったわ。ふふふ」

 また、ふふふだ。

 そうんなんだ、里依が非常勤になってからは、会社はいっぱいいっぱいで廻すのも大変。あの若松のおかげでどうにかなっていたが、奴もウチの会社辞めてシンガポールへ行ってしまった。まあ、奴がまとめた者達がいるので、どうにかなっているのが現状。役員クラスをシンガポールに出すとなると本当に人がいない。でも、

「代表となると、シンガポールへ行きっぱなしになるんじゃん。明日香とかどうするだ」

 僕の不安、明日香を一人で見ないといけない、そんな我儘な不安を聞けば、

「えっ! シンガポールに常駐するつもりはないわ。リモートでも大丈夫でしょ? まあ月に2〜3回、長い時に一週間くらい、向こうにら行くかも知れないけど、貴方も明日香のお世話に慣れてきたんだから、それに

明日香も幼稚園に通うし、大丈夫かな? ってね」

 意地悪そうな目つきでこちらを見る。

 そう、僕も他の男と同じ、自分を里依を、家庭に縛りつけるのかと訊ねている様にだ。

 僕は、そんな事を思っていなくても、いざ育児をしようとしたら、何も分かっていなかったし、何もできなかった。だから、何も言えないんだけども。

 なんか僕は、里依の掌の上で踊らせられているみたいだ。

 それはそれで癪なんだけど、もう、それが僕なんだろ。もう仕方ない。そう思う事にした。

 するとふと、突然、思い出した、昔の事だ。

 ナンパした女の子に見ぐるみ剥がされて、ホテルにひとり置き去りにされた事があったっけ。財布も洋服も靴、下着まで全部持ち逃げされたんだ。

 その事件あの後、マスコミにバレて記事になったよなあ。記事から社内の誰がチクったと分かるけど、犯人探しをしたけど、誰もそれらしい者がいなく不思議だったんだ。アレ流したの、もしかして、里依なのか? なんかそんな気がしてきた、今更だけど。あの時は里依がそんな事やるなんて思いもしなかったから調査対象にもならなかった。ああ、そうか、僕にお灸をすえるために、週刊誌に売ったんだ。

 もう一度読めば、確証をつかめるだろう、あの記事。週刊誌に載ったから、多分スクラップされてる筈だ。いつだっけ、そう、キョウコさんと出会うちょっと前だなあ。すると6年くらい前だなあ。

 僕はタブレットで、会社ウチのデーターベースで過去の記事を検索し始めた。

 あった。これか。僕はその記事を読む。

 うん多分、チクったのは里依だ。

 だってあの後、その日の予定全てキャンセルさせられて、急病と病院に放り込まれたから。その事情、知っているの里依だけだもん。里依も少し詰めが甘いよ。まあ、今だからわかるのかも知れないけど。うん。その頃から、僕の周りにいる女の子達にヤキモチ妬いていたのかー。そんな素ぶりなかったのにね。面白いね、里依。

 そんな、こんな事を思い出し、里依の僕に対する新たな気持ちもわかり、なら、里依の提案を受けるのも悪い手ではないと、まず代表のことは置いといて、見てからと、三人でシンガポールに行く事にした。

 キョウコさんの驚く顔が見たいので、キョウコさんには内緒でね。

 しかし、タイミングが悪く、キョウコさんはジャカルタに行っている日だった。

「キョウコさんは明後日にこっちに帰ってきます。連絡しますか?」

 そんな事を若松が言う。

「いや良い。驚かせたいから。ならそれまでに、一連の会社の流れを精査するか?」

「えっ、須藤さんはまだこの会社の人でないじゃないですか? 無理ですよ」

「ならエンジェルとして出資するから、そのプレゼンしろ、若松」

「命令形ですよ。須藤さん」

 若松は、「全く首藤さんはキョウコさん絡みだと言語が進化するんだから」など独り言を言いながらタブレットを渡してきた。

 そして、説明し始めた。

「資料はタブレットに入ってます。この会社の説明は端折って大丈夫ですよね」

 僕はそいつを睨みつける。誰がこの会社の形を作ったんだ。そんな顔していたのか、

「うわー、怖い怖い。で、エンジェルとしての支援をと言われましても、資金は、資本金分は僕とキャサリンがいるので、回収は済んでます。後、今回問題となった、NFTアートの件ですが、今回のアランの絵はこの会社が買いました。そして、そのキャラクターなどの版権も管理はこの会社。キョウコさんがキャラクターグッズを作るのでそれが売れたら、そのキャラクターの布とが作る? とかキョウコさんが言ってます。これもどうなるか分かりません」

 と言う感じです。

「何で事の収拾に来て、仕事増やすんだ〜」

 僕はそう叫んだ。本当に全く、何でこんな訳の分からない事が進んでいるだ。

 はあ全く。

「キョウコさんに使える駒を沢山与えたのが仇となってますね。須藤さん」

 何か、ボクには分からないんですが、今、インドネシアでキョウコさんが色々やってますよ。ラディッシュの仕事で、

 そいつはニタニタと嗤う。

 まあ、それは、もう決まっていた事だし、インドネシアは、純兄がアテンドしているから、そんなに心配していない。

 そう言えば、再びそいつ、ふふふと嗤う。

 何があるんだ。

 そうキョウコさんがシンガポールに戻るまでに、大体会社の業務内容は把握し、実績も精査できた。里依は里依で、キャサリンと話し、業務の大半を今までと同じ様にキャサリンに任せる事にした。ただ、前みたいに、突然、何かしない様に、新規事業する時は、取締役会の承認という一文を盛り込んだり、社内規定を馬場さんと決めていっている。

 明日香は、ユミさんと動物園に行ったり、遊園地で遊んだり、ホテルのプールに浸かったりと大人しくしてくれた。

 キョウコさんがやっと帰ってきた。

 部屋に入ってきたキョウコさんは、

「何でここに須藤クンがいるの?」

「ばーばー」

 と明日香は、キョウコさんに飛びつく。

「あら、明日香ちゃんまで、アレ、里依さんも」

 明日香は、キョウコさんに抱っこされた。キョウコさんは、

「明日香ちゃん、重たくなった。大きくなったね。今度は幾つになったの?」

「明日香、ちゃんしゃい」

 この頃やっと作れるようになった指で、三つを作くり、再び、口を開き、

「ばーばー、明日香寂しかったの。シンガポールに来れば会えると思ったのに、居ないんだもん」

 と目の下に両手を持って行き、泣くような仕草をする。キョウコさんは、

「大きくなったね。ごめんね、お仕事で、ジャカルタに行っていたの。明日香ちゃんの伯父さんと一緒だったのよ。そう、3歳なのね。あれ、じゃあ、もう直ぐ幼稚園に行くんだ。それと七五三もあるね」

 僕と里依は、顔を見合わせた。幼稚園! 七五三!

 何それ、って感じに。里依も学校に通っていたので、自分の事で精一杯だったし、僕は僕で明日香の日常の世話だけでいっぱいいっぱいだった。

 そんな雰囲気が出ていたのか、キョウコさんは笑いながら、

「大丈夫よ、幼稚園は薔子さんに頼めば、政治家の奥様だから私立の学校の理事やっているはずよ。もうそのコネ使いましょうよ」

 そんな事を言えば、

「うちの母校でいいなら、ちょっとしたコネならあるわよ」

 と馬場さんが言ってくれた。

「なら問題は七五三ね」

 そうか、こういうことって実家がとやかく言ってくるから、新米夫婦は気がつくのか。そう言えば、明日香が、一歳になる前に歩いたからって、キョウコさんは、一升餅を持ってきて、会社で、ラディッシュで明日香に背負わせたって、里依から聞いた。

 僕は何それって感じだったけど、そうやって『しきたり』みたいな事をする。それは大体、口伝なんだって気がついた。

 ああ、そうか、キョウコさんが言っていた、伝統技能とか郷土芸能系は殆ど口伝なんだろう、だから廃れてしまう。それは後継者がいなくなると一瞬でだろう。だから、それを伝える家系というのが昔はあったのだろう。そうか、それを今ならまだ伝えられるって、キョウコさんが頑張っているんだと気がついた。そう、その技術を持った人たちが居なくなれば、それはもう伝えられないから。

 もう、本当にキョウコさんのお陰だね。そんなことにも色々気が付いたんだ。

 シンガポールでは、明日香が

「ばーばーと遊びたい」

 駄々こねたお陰で、キョウコさんもお休みにすると決まった。休みの残りは、キョウコさんと一緒だと、やった〜って、喜んだのは明日香だけではない。僕もだけど、殆ど明日香がキョウコさんを独占していたし、キョウコさんまで、

「そういえば、須藤クン達、新婚旅行してないんだから、二人で一緒にお出かけしたら? 明日香ちゃんもウチでと言っても、馬場ちゃんちだけど、預かるよ。心配ならユミさんごと」

 とか言い出した。ちえっ!

 すると、

「ご飯はみんなで食べた方が、美味しいし、種類も取れるから、みんなで一緒に食べましょうよ」

 なんて里依が言い出す。里依の顔を見ると、貸しにしておくわって書いてある。

 こうやって、妻に貸しが増えて、僕は返せなくなるんですね。夫婦って。分かります。


須藤クンが、勝手にシンガポールへ行くから、キョウコさんの方も変えないといけなくなってしまった。

向こうに行っても、二人きりで会うことはないんだよね。

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