エピローグ1 side 須藤旬
キョウコさんとの旅行からの話。
僕の周りはお金で変わってしまった奴しかいなかった。ずっとそう思っていた。
最初に豹変したのは父だった。そうお金に目が眩んだのだ、しかも自分のではない、息子の金で。
週刊誌にFXで大金を手にした大学生と出てしまった。
僕として何かをやりたかった。
何ができるか分からなかった。
ちょうどFXが流行り出した頃だった。そして僕はプログラミングを勉強していた。なので、自動売買システムを作りFXをやってみれば面白いかな? そんな感じだった。その時は場が良かった、タイミングも。そして、自分で売買しなかったのもよかった。欲がでないからね。たまたまだったんだ。ラッキーだったんだ。ラッキーは続かない。
それなのに、そんなことは分かろうとせず、父は会社を辞めた。
なぜ辞めれるんだ。子供の僕はまだ大学生なのに、学費をどうするんだ。生活は?
そう父は、僕の手に入れた金を当てにしたんだ。
あー、この辺がアイツ、キョウコさんの夫にいい思いをしなかった原因か。納得。
そう、大黒柱の父が会社を辞めれば、家庭に入ってくる収入がなくなるのに、なんでそんな事分からないんだろか?
父からは、簡単に
「旬が億のカネを手にしたんだから、今までのようにあくせく働かなくてもいいだろう。今まで、頑張ってきたから親孝行してくれよ」
と、母も
「そうね、旬が億万長者になったんだから、少し贅沢できるね」
だった。
僕は、親の豹変を目にして、何も言えなかった。
サラリーマンにとって、億の金は魅力的であるのだろうけど、よく考えればわかるはず、それで一生賄えない。
そう、サラリーマンの生涯賃金は3億、4億円とか言われるんだよ。よく考えて欲しい。
このくらいのお金で贅沢はできないと、分かるはずと。それでも、人間は変わるんだと目の前の金で。それが例え、数年の年収としても。
そして、僕は大人の社会を全然知らなかった。そう、税金もガッツリと取られるんだと。
キャピタルゲイン課税だから安いとか言ってる奴に言いたい。儲けた金から20%なくなるんだ。1億円で2千万円。1億円儲けても8千万円になってしまう。子どもだった、扶養家族だった僕は驚いた。そのサラリーマンの年収以上の取られてしまう税金の金額にも、そして儲けたことから扶養家族から外れてしまったり、確定申告をしないといけないとかも。そう、年金も住民税も納めるように役所から言われた。
何それ?というくらい世間知らずだったんだ。そんなことを母親に相談しても
「知らないわよ、かーさん専業主婦だし」
そんな一言だった。
なら、あとの事など僕も知らないと、家を出ることにした。ここにいても搾取されるだけだからと。
そもそも僕が得た金額は億とかいってなかった。親からは確認もされなかった。せめて確認してくれたら、儲けた金額位は言ったと思う。
本人の言うことより、何故マスコミの報道を信じるのか、この辺の認識が甘かく、僕は無垢だった、親は子を信じてくれると護ってくれると、その時までは思っていたくらい。
僕が家を出ると、案の定、生活が苦しくいなった母から連絡はきたが、バッサリと切り捨てた。
「退職金があるんだろ」
「そんなにあるわけないし、老後の為にもある程度とって置きたいのよ」
「なら、なんで父親が定年前に辞めるのを止めなかった?」
「あんたがお金持ちになったんだからいいと思ったのよ」
「知るか。大体、まだ僕、大学生で学費とかどうするつもりなのか知りたい」
と、至極当たり前の事を言うと
「そんなに冷たい子だとは思わなかった」
と言われたので、
「最初に無責任なことをしたのはそっちだよね。そんなこと言われても、僕はひとりで学費出して、生活しないといけないのわかってる?」
と言い返した。
だって、学費も生活費も自分で賄い、その上、家に金入れろだよ。
まあ百歩譲って、学費出してとかならわかる。でも子供に学費出させる親って何と思わないか?
20歳の大学生に向かって、親が言うことでないと思う。おかしいだろう。ここまでおかしくなるのがカネの力なのかと。カネで人が変わる。それは親でもと。悲しかった。子供としては最後まで守ってくれるのは親だと思っていたからね。
そんな感じて、親と縁を切って、まず住む所と思っても、今まで実家暮らしだったので、途方に暮れた。
須藤クンの方が分かりやすく書ける