マネロン騒動の内幕
記者会見の少し前のちょっと前の話。
ピッーとドアのロックが外れる音がした。
僕はモニターから目を動かし扉を見る。
「今回の内幕分かったぞ」
そんな事を言いながら、林田さんが入ってきた。
「山田耀司という男だ」
僕は打ち込みをやめ、林田さんを見る。
「山田か」
僕は手を止め、ため息を吐く。
僕が大学の時入っていたインカレサークルで、里依に粉かけていたヤツだ。僕が行方不明になった時、付き合っていたとも聞いてる。そして、僕が復活したら、僕と里依との仲も復活というか、あの時は付き合っているとけかでなく、ただ一緒に社会科見学をしていただけだけど、まあ男と女の関係はあった。
里依には、僕が居なくなると
「須藤みたいな、あんな突然いなくなる無責任な男よりオレの方が絶対良い」
とか言ったらしい。復活したら僕に、
「里依さんに、あんな無責任な仕打ちしておいて、戻ってきたからって以前と同じ様に関係が元に戻ると思うなよ」
とか言ってきた。里依と、まあ付き合っている時には、僕を敵対視していたらしく、
「須藤? あのくらいオレだって儲けられる」
とか、
「オレの方が経営センスがいい」
と言い、これは爆上げ確実なんだとボロ株掴んでしまったり、天井買いしてみるみる底値になり大損とか、インカレ内で起業し友達を数人なくしたらしい。
僕にも訳の分からない牽制を仕掛けてきた。僕の記憶に残っているのは単にしつこいあの性格のせいなんだけど、顔も薄らとしか思い出せない。
まあ大学時代の甘酸っぱい思い出だよなあ。頭は良かったのか、上級受かったとか聞いたし、卒業後は、官僚になり役所に入ったはずだ。そうか国税に行ったんか?
それで、今回、僕の噂の愛人が、海外に会社を設立するという事に、僕が投資会社の方で出資するとなったので、須藤が隠し財産を海外に持ち出すんだ、マネロンだ、と言ってきたのか。そんな想像を確認する。
「そいつ国税ですか?」
「知っているヤツか? いや、税務署だ」
「はあ? 一介の税務署で、こんな案件動けるのですか? ソイツ、昔の知り合いです、インカレの仲間というか、僕をライバル視していたヤツです」
「ああ、そうかやはり。出向中らしい。財務省からのなあ」
「その辺もちょっと洗っている。そうかサークル仲間か。まあ、あまり煩いようなら、出世コースから外れてもらうつもりだ」
林田さんが唇を薄く伸ばして顔をすくめる。林田さん、その顔怖いから。僕、おしっこちびりそう。
「強硬手段は取らない方がいいと思います。そいつ性格悪いから。後からネチネチくると思うんですよね」
「ボンは甘いのう。そんな性格なら尚のこと、こちらに手を出した時点で、敵認定でいいだろ、ああ。徹底的に潰すか? うん? 昔からウザいとか思っていたんだろう。それに、其奴についてる政治家も、ウチの佐々木の義弟の邪魔にもなる。だから、丁度都合がいい」
さらに林田さんの口角が上がり、時代劇の悪代官そのものになる。やはり怖い。この人を敵にするのは止めようと思うくらいだ。義弟と言うが、それ薔子さんとの自分の可愛い息子だろう。それなら全力で潰しにかかるよな。そう思い聞いてみた。
「でどのくらい、相手はこちらの情報を握っているんですか?」
「ああ、情報を何も持ってなく騒いでいるだけで、何故ここまで大きな事をと不思議に思ったからここにきたんだ。ボンと何かあるかと、知り合いだろうと思ってなあ」
「そいつのこと、僕は詳しくありません。里依に聞いた方が早いですよ。たまにサークルで会っても、僕、無視されてましたから。ああ、もしかしたら、里依の為にとかかな? ふふふっ、笑ちゃいますね。おバカで」
「嬢ちゃん絡みか。それはそれで面倒だな?」
「聞くところによると、性格はねちっこいけど、頭は単純なヤツですから、義憤に駆られてですね。結構、燃えていそうですね。なら、今回のシナリオも分かります。愛人に金出して、脱税とか、マネロンとか。アレのチンプなシナリオですね。想像力がないからこんなシナリオなんだと、まあセックスもつまんなそうなヤツだしね。僕は愛人に札ビラ切ってまで繋ぎ止めたりしてませんからね。僕ケチだもん。うーん? 違うか、あんな年上の女なら、有名にしてやったんだから、代わりに、僕の為に動けよって事か? そっちだな。そして、愛人と一緒に僕を始末して、里依に感謝されるって、分かりみ深い。」
「ほう、ボンはテクニシャンなんだ。いいのう、自信があってなあ。ああ、ワシはそっちはからっきしだからのう。札ビラ切らんでも繋ぎ止められるテクニックかあ、ちょっとどんなモンか知りたいがのう。それであのババアを繋ぎ止めているのか、ああ?」
と林田さんが言う。なんでそっちの方にポイントを持って行く? 今はマネロン騒動の出どころの話でしょう? ねっ、ねっ、ちゃんと話戻そうよ。キョウコさんと僕の話はいいから。
林田さんは、こちらを目を窄めてチラッと見る。揶揄われているのはわかるけど、僕は話しませんよ、キョウコさんとの事は。秘密です。キッパリっ!
「林田さん、そいつの手は大体想像つきますから。やはり里依にキョウコさんの所へ行ってもらいましょう。里依には僕が頭下げます」
「ボンがいくら頭下げても、嬢ちゃんは動かんじゃろう」
分かっているみたいな顔された。まあそうだよね。里依は里依だからね。自分から動く理由なくては動かない。それは里依の近くにいる者は知っている。だから、あの時、僕がキョウコさんに現を抜かしていた時、あれだけ執拗に、純兄はぼくを揺さぶったんだ。妹が可愛いから、妹の恋心を応援する為に。里依が僕のことを何も思ってなければ、僕の会社を潰して、キョウコさんはダーティーなイメージを付けてと、そんな感じお終いにしたはず。それだけの力を里依のウチは持っている。で顧問の林田さんにも当たりはつけられる。林田さんに顧問を外れてもらえば、僕は敵だらけになる。いくら新進気鋭の投資家と言われても、そうなると、出資者がいなくなり、もう太刀打ちできない。
「自分の無力さが嫌になる」
だから、その時を思い出しながら、つい溢してしまった。
「柄にもなく弱気じゃのう」
「今回はキョウコさんが絡んできているから、余計なんです。僕、キョウコさんに何かあったら、自重捨てて助けに行きます。もうTV局のカメラ回っていようと、マスコミがいようと、キョウコさんを助けに行きますから」
「いいのう、若さって、バカさと紙一重だが、バカにはない、心を揺さぶる何かがある。で、其奴はどうする? そこまで自重捨てたいなら、こちらに手を貸さんか?」
うん? 林田さんからの不思議なオファーに首を傾げる。
「手を貸して欲しいのはこっちの方ですよ。何かあるんですか?」
「ああ、ヤツの後ろは、さっき言った様になあ、義弟の絡みというか佐々木の、ウチの政敵、敵対派閥なんだ。この際だから、ココで潰そうかと。まあ今の与党保守派の最大派閥だから、ちょっと色々影響が出そうなんだ。数ヶ月、株価を支えて欲しいんじゃ。資金の提供はある程度できると思う。株価安定していれば、財界も文句ないだろうし、気がつかんだろう、世間は」
「えっ! そんな怖い事、僕嫌ですよ。まあ、でも相場だけなら、いいかなあ? この所、場の動きが悪く、思うよに動かないので、つまんないと思っていたので、儲けさせて頂けるなら吝かではありません。どうせ、キョウコさんが動けば億単位でカネ必要なんだから。そのくらい儲けておきたいかな?」
「ああ、だなあ。与党は、今の場は政治的に安定しているとの結果と言いたんじゃろう。クソしかいない与党の寄せ集め派閥政党で、うまく行くわけないじゃろう。現に官僚の独り善がりで、世間は混乱させられてる。今回の事では、有名になってもやはりってなぁ。ああ。カネ儲けに走るんだと見えるからのう、世間はそれに付随するだろう。全く、あのババアの本来のビジョン見せられて、どのくらいの者が分かる? これからの日本をと、あのババアほど思っている政治家がどのくらいのいる? 現に、先行き不透明感が払拭できないでいる。だから皆んな不安になり、カネを溜め込むじゃろう。カネさえあればとなあ。それが今回の事でさらに投資が白熱するだろ。しかし、そのカネは、日本がお終いになればただの紙屑だ。そんな事わかっているのに何をしているか、あの派閥は。ああ、年寄りの愚痴になってしまった。そうじゃ、なら徹底的に潰すぞ。後ろを任せた。指示は庄田からもらえ」
そう指示がきた。
それから、林田さんは暗躍しているらしく、殆ど会社にも来る事はない。その上、キョウコさんと僕の釈明会見は待ったが入った。黒幕に尻尾切りされる前に抑えたいとのことだった。
そして、僕は林田さんに言われたように、数ヶ月間株価安定の為、本業の方につききり、かかりっきりになってしまった。そう、キョウコさんをフォローも出来ず、マスコミ対策もうまく行かず、キョウコさんはマスコミの格好の餌食になってしまった。本当にキョウコさんのネームバリューが、色んな意味で影響して、こちらが何の対策を立てられない事をいいことに各TV局の情報合戦が激化していった。そして、マスコミにレポーターに始終追われ、とうとう部屋から、お家から出られなくなってしまったらしい。林田さんのフォローで動けない僕は、里依に頭を下げ、キョウコさんの所へ行ってもらう事にした。渋ると思った返事も、里依は、二つ返事で承諾。まあ、その理由は、林田さんの言ったように、
「旬と一緒に起業支援してきた中で、一番面白いし、これからの為になるから。ここで頓挫したら、自分の感情で何もしなかった、自分が許せないから」
と、やはり仕事の事、自分の事からだった。
この話を『欲張りな私』の方にするか悩んだけど、やはり須藤クンのモノトークなのでこちらに
しかし、ここまで、リアルな方の日本の国力が落ちると思わなかった。もっと貧乏になる前に色々やらないといけないのに、と思う今日この頃。
コレを書き始めた時はコロナ禍に入って、終わればきっとという感じだったんだよね




