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エピローグ20 side 須藤旬

 まあ、記者はスキャンダルが好きなんだと。一連の動きを見ても分かる。マネロンと言われてもなにがなんだかわからないんだね。だから愛人を使って、海外へ資金を動かした。その金は、不正に手に入れたものだからと、したいんだ。


 ソレ、どう違法なのか分かってるのか? そして、僕は一円もお金を動かしてない。それなのにだ。

 今回の司会は里依にした。まあ関係者全員いれば明け透けな質問が来ないと思ったからなんだけど、そんなことはなかったね。

 里依は、質問を穏便に止めようと


「個人のプライベートに関する質問は…」


 と言ったけど、キョウコさんは、すかさず、話をはじめてしまった。


「まあ、それならわたしが何もしてないと、記者さんはおっしゃりたいんですか? お飾りだなんて」


 にっこり笑う。ああ、キョウコさんが、ヤバい。もう僕は止められないからね。知らないからね。


「まず、わたしと須藤社長の関係ですか? もうすぐ養子縁組みして、義理ですけど親子になります。須藤社長がわたしに資金提供すればこのように下世話な話がでますので。さっさと親子になりますよ。ええ、だから、わたしが、義理の母のやることが危なっかしいと、口とお金を出してくれるのです」


 なんて言い、にっこりした。

 そんなこと言えば、場内から失笑か漏れる。


「そして、わたしが社長業をやってないと、なぜ、記者さんがご存知なんですか? まず、それを知りたいと思います」


「情報ソースは教えられません」


 なんて言うからさあ、キョウコさんは


「教えられませんですか? まあ調べればすぐ分かりますから、何せ、ウチの会社って記者さんが言うように小さい会社ですからね」


 とキョウコさんに黒い微笑みが出る。そして、


「そうですよね。世間からしたら、手芸とかハンドメイドとか言っても、女子供の手慰みとかお思いなんでしょ、だから、須藤COO が、わたしの為に仕事を作ってくれたと。まあ、そう思うんでしょうね、世間は。

まあ、手作り品に特化して作品を作るとなると独りでは無理ですし、ウチの売上からしても、わたし独りでは作れない金額ですからね。まあ、下請けに出しているはずとなりますね。で、誰かに作ってもらっているものを、わたしの名前で出してるとかお思いなんでしょ?

 ただこれだけは言いたいのは、作品のデザインや製作方法等は、全てわたしが考えて作ってます。そして、クオリティーのある物を作りたいと新しい会社のシステムを作り、新しい作家の産まれる環境を作りました。

 従来の内職に下請けを出すことのないように。

 そして、好きな事を仕事にできるよう、手芸の好きな人達を集め、手芸の地位を上げようと努力しております。その為に、今回の香港のファクトリーショップとのコラボとなりました。そこまではお分かりでしょうか?」


 件の記者に訊ねる。 


「ええ、わかります。ただ、その作品はともかく、その会社のシステムも須藤社長が貴女の為編み出したアイデア、案ではとの噂がありますよ」


 その記者はニヤリと笑う。


「まあ、そうなんですか? それは知りませんでした」


 そのひとことで、キョウコさんの返答で、その記者はキョウコさんをやり込めたと思ったんだろうね。

 だからキョウコさんが、再び口を開くと思わなかったんだろう。

 キョウコさんが再び口を開いた時、その記者が目を見開いた。キョウコさんを見くびっていたんだね。


「分かりました、須藤COO とのことをお話します」


 なんてキョウコさんが言い出したのを見てその記者が、表情を変え、ニヤリとした。

 まあ、それからは無双だった。


 「まず、須藤COO は、わが社のCOO である前に、ミッドシズンのCEOとして、わたしの才能と手腕を買ってくれて、先ほど申し上げたようにエンジェルとしての金銭面も含めですが、面倒な事を起業に付随することは引き受けてくれています。それは否定できません。事実ですから。

 そして、わたしがやりたいと思うことを優先できるように環境を作ってくれたことも、そう采配してくれたことも事実です。それを言えば、わが社は須藤COOの経営手腕で利益を上げてるのかもしれません。でも、先程も申し上げたように元となるアイデアはわたしからです。そのアイデアがなくして、今の形にはなり得ません。

 また、そのアイデアの実現で、須藤CEO の出資に見合う利益を出しています。

 なので、ミッドシズンとラディッシュの関係では、エンジェルとその非支援者のそれ以上それ以下関係はありません」


 きっぱりとキョウコさんは言いきり、相手の記者に向き合う。

 相手の記者は、言われた事でやっぱりと思ったのか、ニタニタ不穏な笑みを浮かべた。しかし、その後キョウコさんは爆弾を落とした。


「ああ、そうですか、貴方は、肉体関係がある人には何のリターンも求めず、ポンとお金を出せるから、そんな事を聞いてくるのですね。さすが大手の新聞記者さんですね」


 キョウコさん、その言はヤバい。

 その記者、この間、マスコミに就職という餌で、女の子をホテルに連れ込んだと、その上、食ったらポイだったと。案の定、約束が違うとその子が訴えた。そしたらさぁ、その声をマスコミに上がらないように、圧力までかけたらしい。まあ、それはどこからともなく出てしまい、過去のやらかしもついでとばかり出てきている。同業者には周知の事実だったらしい。


 僕は今回の記者会見で、何が質問されるかヨッシーからレクチャー受けた時に聞いたんだ。自分がそうだから、質問しそうだねと。で、何も知らないキョウコさんの口は止まらない。


「では、逆にお聞きしはます。そんな太っ腹な人達がいる世界なのに、なぜ未だに、ここのにいらしゃる女性の数が少ないのですか? この記者会見は、日本の手芸を世界に向けて発信するお話なのに、半分も女性がいませんよね。あなた方がいう所の女子供の手慰めものなのに、大人の男性が嬉々としてやってこられ、ご質問をなされる。それはお仕事なのだから、ビジネス関係だからと言うなら、まあいいでしょう。仕方なく来ていただいたのでしょうから。申し訳ない気持ちもあります。では、マネロンの話かと思えば、出た質問は、わたしがお飾りの社長で須藤COO の愛人だと。個人のプライベートに関する質問ですよね。それが大事な質問なのでしょうか?

 そう、今のご自分の質問を奥様とか彼女さんが、お嬢様でもいいですね、身近な女性が、それを聞いて、あー、ウチの夫、彼は、お父さんはいいこと質問していると思ってくれるんですね」


 会場から笑いが漏れる。キョウコさんは何もなかった様に続けて先に進む。


「先ず、わたしが何もやってないかとのお話ですが、ウチの会社ラディッシュで、わたしが考え、それを実現した事をお話ししたいと思います。

 わたしは、ご存知のように、結婚後専業主婦で過ごしてきました。そして、家庭が大事だと思わされてきました。それが自分の幸せとね。では果たしてそれは本当なんだろうかと。そんな疑問を漠然と思っていたことが前提となります。

 まず、わが社では、わたしの作品を作る作家さん達は雇用契約でなく、業務請け負いにしています。そして、出社義務がありません。パートだと子供が病気になり仕事をお休みすれば収入が減ります。それではいい仕事ができません。また以前のわたしのように、外に働きに行いけない人にもいます。だから、そんな人にお仕事ができるようにと、おうちでもお仕事できるように、そう思いこのシステムを考えました。

 そして、この作家さんは独立の道があります。わたしと同じように作品を商品化して、それをECで売る。そんな道も用意してます。リアルショップにしなかったのは、作家からダイレクトにお客様へメッセージを伝えたいと思ったからです。初期費用もお安いこともあります。

 その上、先程の作家さんはウチの会社の業務請け負いにしたことで、個人自営業者となっておりますから、独立しても、作品作りに専念できるくらいの経営スキルを身に付けてます。

 本来、作家さんを手助けすることは、わたしのライバルを作ること、競合してしまう事ですが、しかし、手芸の裾野を広げると考えると必要な事です。沢山の作家さんがいないと、商品の選択すらできません。なので、作家さんを増やすことにしました。

 それで身を立てる人がでなければ、やろうとする人が増えませんし、そうなれば、技術やその物が廃れていくでしょう。それは自然の摂理なんですよね。だからこそ競合しようが、作家さんを増やす事を目指してます。

 また、会社は傘下に手芸材料店を持ってます。そこで作品の為の材料を買うことはもちろん、教室等で技術を伝えることができます。そう作家さんとお店は、持ちつ持たれつの関係を作ってます。そして、その教室では、新しい作家さんの育成にも力を入れてます。

 そう、なによりも大事な事は、手芸が好きな人を増やすことです。

 その為、作家さんを手作りの作品を作る人をフォローできる環境に身をおきたいと思う人にも、その周りで仕事をしてもらいたいと思ったからなんです。そこで材料の販売はもちろん、新旧の技術の伝承をしてもらいたいと。

 また、作家活動は好きなこととしても辛いことも大変なこともあります。なので、作家になることだけでなく、手芸が好きな人が好きな事の周りにいいられる事や、作家を応援するだけでもと、その方法を考えだしました。その最たるものが、クラファンです。

 それによって今は、素材関係も関連会社にして支援をしています。ファブリック、布帛も子会社に、ビーズを作る会社も、そう手芸に関連する素材会社も子会社として関連企業として手に入れてます。そして、クラファンにこの企業を結びつけ、頒布会とかで支援をして貰っております。

 それは、素材を作る、職人を育てていきたいと思ったからです。今はもう布もビーズも外国産が多くなってきているので、ならと、今ならまだ技術の伝承ができるのでは?と思い、ただ、製造業は畑違いなので、須藤COOにお願いし、ミッドシズンから支援をいただきました。

 しかし、この手に入れた会社はとても出資分を、当分稼ぐことはできないものでした。

 そう、この事業はエンジェルとしてなら反対しますね。出資以上のリターンが見えませんからね。多分数年は持ち出しばかりですから。

 でも長い目で見ればリターンになります。技術を保護する伝承するという点でね。その為には太い資金提供者が必要だったんです。

 それで須藤CEO がウチの会社のCOO として、自分の出資分利益を守るために采配しております。

 今、申し上げたことが、わたしの考えた事を事業としてやって来た事です。

 まあ、最後の所だけ見てわたしが社長業をやってないとおっしゃるのかと思いますが、こんな話、時間の無駄ですよね。貴方は、須藤CEOより潤沢な資金をお持ちでリターンなくて、出資できるのですから」


 とその記者に向かい質問を投げかける。

 そのあと、小さな声だけど、


「ウチにもリターンが必要のないお金が十億円位欲しいですね」


 と周囲に聞こえるように言ってる。今度は会場からクスクスと笑い声が漏れる。

 その十億円は、僕がキョウコさんに提供しようとした金額だ。そう、マネロン疑惑の為出資出来なくなった金額だ。


 記者を周りの人達が、遠目に見ている。その記者は、ぱくぱく口を動かすだけ。そして、キョウコさんは、彼の記者を無視して続けた。


「まあ、女性にお仕事をと言っても能力の問題はありますからね。そして、誰も彼もが仕事をしたいわけではないでしょう。

ただ、男だから女だからと言って性でいろんな事を分別する事をそろそろやめた方が、風通しがよくなると思いますよ。特に、母だからと子供を育てる為に仕事を制限しない生き方とかできないとか。

 そのせいで、きっかけやチャンスが少なかったり、若しくはヤリガイを餌にアシスタント代わりにコキ使われますからね。それよりは好きなことを仕事にしませんか?

 だからこそわたしは会社を起こし、これからはアジアの一国として、アジアの良さを発信する事ができるように、その時に、作品のライセンスや作家の権利保護の為に、この会社を作りました」


 ふふと笑うキョウコさん。

 こうなると、もう記者会見ではない。キョウコさんの独演会だった。質問したその記者は、何も答えてこない。

 それを確認したキョウコさんが、


「あと、付け加えさせて頂きますが、先に工場のある香港や版権を置くシンガポールで、今回の話をしましたが、『お店開くなら、是非ウチで』、『ぜひとも出資を』とか、『イベントを開催しませんか?会場を提供します』というお話や、『ウチのアーティストを使って欲しい』というお話は沢山いただき、早々動くように準備を始めました。

しかし、須藤社長の愛人だからとか、須藤社長に貢がれてとかのお話はひとつもありませんよ。この程度のレベルだから、日本は世界から見放され、凋落の一途をたどっているんだと思います」


「あとね、もうひとつ言わせて下さい。何で今みたいに、日本は重箱の隅を突っつきあい、足の引っ張りあいばかりなんですかね。つまんないことを掘り下げて、上に上がる人に声援を送ることもできないんですか? 今回もマネロン疑惑がありました。そしてわたしと須藤COO に対して心ない発言もありました。何故わたしたちがマネロンしないといけないんですかね? そんな事実がないのに、ほら見た事かと、愛人を使っていい思いしていると。金を人一倍以上稼ぐと、何故そんなことを見ず知らずの人から言われるのでしょうか?

 そんな事ばかりして面白いんですか?それがマスコミのお仕事なんですか?

 それよりは、楽しいワクワクする事を仕事にしましょうよ。それをマネタイズする道をわたしたちの世代が若い世代に見せなくてどうするんですか?

 あー、貴方はその道を知ってらっしゃるんですね。だから何の見返りもなく、肉体関係だけで、ポンと金を出して、もうけられる。だからこんな質問ができると。

 なら是非その道を示してください。わたしも出資しますよ。

 そして、こんな感じで急にお仕事が大きくなってしまったので海外でお仕事できる広報を募集しています。そんなにお給料は払えませんが、女子率が高い職場です。その上、自分のペースでお仕事できます。よかったら見に来てください」 


 会場から笑いがこぼれる。さらに、その笑いが質問者を追い詰める。

 こんな場所で求人迄やるキョウコさんを見て、僕はとても疲れてきた。そう、もう無理だって。キョウコさんを怒らせたんだから、誰も、僕も、止められない。


 質問した当の記者は、最初は真っ赤になって怒っていたが、だんだん旗色が悪くなってきたのを感じ、今は小さく見える。そりゃそうだよ、彼のしたことは、ここにいる人達の職業倫理に反してるからね。そんな自分をおいて、キョウコさんに対して、愛人だからなにもしていないなんて、言ってしまったんだから。そう、女ってこんなもんと見下したんだから。


 まあ、僕も思っているよ切にね。なにもしないでと。僕の側で笑っていてくれるだけでって。

 でもそれはキョウコさんじゃないね。キョウコさんは、自分のしたい事ぶちきりで、全力でして、周りを巻き込む方が彼女らしいんだよね。


 そんな感じで、最初に大きなダメ出しをしたせいか、その後の質問は、和やかになってきた。マネロン疑惑もちゃんと純兄が説明すれば、何故?こんな疑惑がでたのか不思議だよねって感じに落ち着いた。

 そして最後にキョウコさんが、


「今回このように数ヵ国の国と地域を跨ぐ版権、商標権をうまく整合させ、海外で知的財産権の管理会社設立に尽力してくださったのは、他でもないミッドシズンの須藤CEO の秘書であり奥様の里依さんです。里依さんが産後間もないにもかかわらず、精力的に動いて下さらなければ、この会社は設立できなかったと思います。なので陰の貢献者である里依さんにありがとうをこの場で言わせてもらい、記者会見を終了させていただきます」


 すると、キョウコさんは里依に向かって、


「里依さん、出産後直ぐから、わたしの会社にきて色々な細かい事まで教えてもらい、ありがとう。この会社はわたしの名義かもしれませんが、ふたりで協同で作った会社です。里依さんがいなければ、できなかった会社です。なので、今日は、会社のみんなとわたしの驕りで飲みましょ」


 里依は驚いて、目を見開き、次に目を何度も何度も瞬かせてしてる。

 隣にいる里依の後輩が、馬場さんだよね。ハンカチを渡してる。

 会場はシーンとして、その後、盛大な拍手が起きる。

 会場の後ろでは、このシナリオを作ったヨッシーがニコニコして見ている。となりにはミヤちゃんもいる。

 その目が


「やっぱりキョウコさん」


 って言ってる。

 こうなると、キョウコさんの勝ちだ。

 そうして、記者会見は終了した。

 もう、僕らの関係をとやかく言う人はいなくなった。はず、なのに、あの記者が自分のした事をバラされたと、記者会見で恥をかかされたとかで、なんか暗躍していると、ヨッシーから忠告を受けた。




記者会見のキョウコさんの無双はスカってしますね

あのレポーターとか自分の仕事に対して誇りがあるのか聞きたいんてすよね。

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