もう離れない
キョウコさんが面白過ぎて、なんか長くなってしまいました。
R15の部分だけ
微睡の中、隣にいるキョウコさんを引き寄せる。しかし、その手が空をかいた。
驚いて飛び起きると、ベッドには僕しかいなかった。
「まずい」
斜め上をいくキョウコさんだから何をしでかすかわからない。
慌てて部屋を見ると、バッグも服もある。ほっとして、バスルームに向かう。
もう脱力感しかない。キョウコさんの姿を確認するとその場に座り込んでしまった。
その上、
「一緒に入る」
なんて言ってくる。
もう、なんか悩んでるのがバカらしい。
一緒に浴槽に浸かり、キョウコさんに告げる
「昨日の事、一晩の過ちにしないから」
と。そして、それから…。
これからのこと話し合いたいと思っていると、突然、
「お腹空かない?」
とか聞き出した。
で、
「ウチくる?」
と、自宅?とハテナマークをぶら下げていたら、ヤバイって顔する。こういう時のキョウコさんは分かりやすい。
無論全てを話してもらうために、着いて行く。
で着いた先は、創業時に事務所兼倉庫として使っていたマンションだった。
「コレ、どう言うこと?会社の持ち物だよね、ここ」
と詰め寄ると、食事の時に話すと。
僕は食事を待つ間、考えを巡らす。
キョウコさんが1人暮らしするとしても、ひとりではできない。物件を探せ出しても、保証人の問題、彼女の年齢、後、頭痛いくらいの格安物件に住んでしまうだろう。
1、じゃ誰が、アドバイスなり、ここが空いてる事知ってるのか? コレは簡単。
2、そして何時からか? そう僕に内緒出来たのは?
3、そして、あのキョウコさんが「私のおウチ」を出なくてはいけなくなった理由、何故?
そんな疑問が出る。
1の答えは、まあこのマンションを使えばなんて言うのは、ヨッシーだよな。説得したのは師匠か? 保証人を頼まれた? うん多分。
すると、2の何時がわかる。
僕が趣味の会社を作っていると噂になった時だ。同時期にキョウコさんが、毎週末家を空けてた。それで、家族にとやかく言われてたのか。あの時は僕、こっちの会社に来るのを控えて、自分の事務所で仕事していたから。だから、相談が僕に出来なかった。うん。
なら、3の何故?が必然になる。
アレだ主婦が家を云々だ、旦那が手を上げたとか?身の危険があったのか。もしかしたら出かけられない様にされた? どちらかか、多分、両方。
キョウコさんはあの時から少し変わってきたから、仕事に対して、お手伝いとか言ってたのに、突然、コレが私の道みたいに。うん、覚悟を決めた感じだった。そうか、あのおウチを出たからだ。
全てが僕の中でジグソーパズルのピースの様にピッタリとハマった
その時、ご飯ができたと、キョウコさんから声がかかる。
そして、考えにはまって黙ってる僕にいたたまれないのか謝罪をしてくる。
「ごめんなさい、引っ越した事と、ここを使ってる事、黙ってて、一応お家賃払っているし」
「はあ? 家賃払ってるとかでなくて、なぜここにいるか知りたいんだよね」
僕は思考を中断したためちょっと荒い声がでた。
「須藤クンが、私が家を出たのを自分の所為だと思うのが、嫌だったから、内緒にしたの」
「でも、家をキョウコさんの言うところの「私のおウチ」からでなくてはいけなくなった、責任は僕にあるんだよね。
こちらのビジネスという世界に連れてきて、社長にしたから」
「違うの! もう前々から色んなことが動いていて、たまたま時期が今だったのよ。そうよ」
珍しい大声で、納得する様に否定してきた。
それからキョウコさんが、思ってる事を自分がしてきた事を話してくれた。そこには、昨日僕に告げてくれた、キョウコさんの想いもあったけど、それは内緒。
僕は、キョウコさんの夫には思う事ありすぎなので端折りたい。でも、キョウコさんは聞いてと、
「私たちの夫婦生活は色々ありすぎて、私離婚したかったでも、この歳になって世間にでても仕事すらないし、いつもやっている事を諦めて、旅行とか、ワインとかをやめて、生活の為に生きるのが不安だった。なら、ハンクラの講師も考えだけど、あの世界が狭すぎて無理だった。で夫は私がまた…って感じだった」
と、キョウコさんは、
「これでも、一応お花とお茶はお免状は持ってるのよ」
と付け加えた。そして、
「私、ずーっと、自分らしく生きたいって、思っていたの。何が、どれが自分らしいのか、迷っていたのは確かね。
そう、更年期のせいか、イライラして頭に来て、きっかけは夫婦喧嘩なんだけど、飛行機のチケットとパスポートを持って空港に行き飛行機に乗ったの。で、ちゃんと香港に着いたの。当たり前な事なのに、嬉しかったの、私」
そこで、お茶を飲んた。僕は色々突っ込みたかった。
「飛行機がその時ディレイして、着いたのは真夜中。もう焦って、空港で色々聞いても予約してるホテルまで、タクシーしかないと言われて、でも勿体ないじゃない、バスだと15香港ドルなのよ、タクシーはその10倍。でも、バスは朝6時までないし、疲れたし、しかなくタクシーに乗って、ホテル無事着いたの。その時はもう明け方だったわ」
あー、夫婦喧嘩してLCCのチケット買ったとかのあのブログの話だな。しかし、バスにこだわるとかキョウコさんらしい。
「チェックインしてシャワー浴びて、やっと寝れると思ったら、家族グルチャに色々メッセージが入ってるのよ、今日集金日とか靴下どこ?とかね。もう笑っちゃた。あれほど私を馬鹿にしていた家族が私がいないと靴下ひとつ見つけられないのよ」
そして、珍しいシニカルな微笑みを浮かべて、
「その時やっと分かったの、私は家族に便利に使われていたと。そう「外は怖いから、おウチに居るのか一番」と信じこまされて」
哀しそうな顔をして、無理矢理笑おうとしてる。
こちらが切なくなる。
「でもね、よく考えると、こんな家族にしたのは、誰でもない私なんだと。必要にされる自分が好きだったのよ。じゃあ私が、一やめたって抜けても、家族は困るのよね。その上、えっ!、どうして? えっ? ってなるよね。で、家事をまず手を抜く事にしたの。そしてその分、ハンクライベントに当てて、出店料取るイベントにもでて、色々な場所のイベントで、自分の作品がどんな位置なのか確認した。後、積極的に外に出ることにしたの。そうしたら、今度家族が何かやる時手伝ってくれる様になったの。あー、だから、夫は本当に私を手伝うつもりで会社辞めたみたいなの。収入は私を当てにしていてね」
頭痛いという感じで、笑った。
「夫の事はいいわ、私が変わって一番被害にあった人だし。
ウンウン、そう。私は、好きなこと興味があったら、何処にでも行って、気になる人がいたら会うって決めたの」
ふふふと笑う。
そう、その悪い笑顔がキョウコさんだ。全て知ってるのよ、という顔だ。
「須藤クンの事はちゃんと調べてあったの。デザフェスの時に名刺もらったじゃない。それで」
また黒い微笑みが浮かんでます。
「深セングループでその名刺見せたら、須藤旬の個人名刺って凄かったよ。で皆が言うには、投資家? 後、会社いっぱい作ってる人?と私の周りにいない人だった。
で、なんでこんな人が私の行くところ、行くとこにいつもいるの?と、不思議に思っていた時、作品を商品化しないかと言われて、納得したんだけど、なぜ?って疑問がでたの。
嬉しかったけど、こんな凄い人が、私の作品を商品化するメリットを感じなかったの。
この人まさか、私目当てのとかね。息子位の歳の人よ」
ふふふ。と笑う。そして「でしょ?」と訊ねられる。今この状態で、その微笑みでその質問は、僕にとってやばいです。でも、頷いてしまった。そしてやっぱりと。
「まあ、そうだとしても、話を聞こうと思ったの。チャンスだし。
実はその前に、あの30万円で、私が作ろうと思ってたのあの商品は。だから仕様書も書けたの。でも須藤クンが言い出した数字聞いて、そこで自分の甘さ知ったの。私が作ろうとしたの30個だもん。で、ふっかけて、100個と言ったら、千個だもん、主婦からしたらもう世界が違った。コレでは世間知らずって言われても仕方ない」
良かった僕、少なめに見積もって。
「だからね、その知らない世界に連れて行ってと。たとえ騙されても良いの、身体目当てなら御の字と思って、須藤クンの申し出受けたの。そうコレが最後のチャンスだと」
それをたった3ヶ月で売捌き、200万円の売上を上げ、法人化初期費用を得、1年後には知る人は知る会社にする。あり得ないよね。身体目当手の割には手を出さないし。
そんな事をボソボソとつぶやいてる。
僕の中では身体目当て御の字とか手を出さないとか、もういっぱいいっぱいです。
そして、あーそうそう、と言い出したと思ったら、
「あー、私のお給料の件も、あの後やっぱりよく分からなくって、どうなってるのか詳しく経理士さんに聞いたの。
驚いたわ。そういう風にするんだと。スペシャリスト使うのに一銭も使わず、相手がやりたいと思わせる。そうなんだ、すげーって。
あー、経理士さんは私に脅されて喋ったので守秘義務違反じゃないからね。
後、私をプロモートとか言って、売り出すって言われた時も、なんでって思った。ブランディングされて、段々自分が別の自分になって、ちゃんとカリスマ主婦になる。そうよね、どんな良い物もストーリーがないと売れないもんね、特にアクセサリー系は。で私のストーリーを作ったのよね」
首を傾け聞いてくる。
僕は頷く。
「ただ疑問だったのは、普通の主婦になぜ?と思ったのよ。作品売るならあそこまで、しないと思ったのよ」
「キョウコさんがあまりにも面白すぎたから。普通の主婦と言うのに、交友関係の広さ、ある程度売れる商品を作る発想力、着眼点があるし、それを活かせてる。それなのにアグレッシブに上に上にと上がっていくより自分の世界を大切にするという、アンバランスさに心を惹かれたんだと、今は思う」
僕はビジネストークになってるのを感じながら説明した。
そうだ、最初は愛玩動物の様に、僕の側に居ても大丈夫な感じに仕上げと思っていたんだ。ちょっと名前の知られた、ハンドメイド作家。憧れの奥様。そして僕はたまにキョウコさんと…。そんなはずだった。
いつから方向転換したのか? いや、最初から、あの最初3ヶ月経った時には売り方を決めていたなあ。
そういえば、ミヤちゃんに作らせた非公認ファンクラも初期からある。今ではキョウコさんファンが凄い勢いで集まってるっていると。あの店舗統括を任せてる店長がウチに採用されたという事から、キョウコさんに近づきたいファンと、僕と繋がりが持ちたいベンチャービジネス系の意識高い奴らの巣窟となって、どんな人材も選り取りみどりの取り放題と、そんな報告をミヤちゃんから受けてる。
そうだ、そうなんだ、僕だって普通の主婦なら、あそこまでカリスマ性を打ち出してブランディングしようとしない。キョウコさんをつけ回したあの一年で「この主婦なんだ!」って思ったんだ。そして作品作らせて、商品化するのに手作りに拘らず、仕様書も交渉もできる。
そういえば、結婚祝いとかに、妻に里依に突然、一点物のネックレスを作ってきた。高級品でオンリー手作り、クオリティーも高く、それを里依はすてき!なんて言って身につけた。
あの里依が、ブランド品しか身につけないヤツがだよ。そして、里依のお気に入りののセレクトショップの店長が気に入り、扱うようになった。それからだ、キョウコさんか それからキョウコさんが個人のブランド立ち上げたいとか言い出して、あーこの話は後、後。
色々な事を思い出す僕は、置いてかれてる。
そこに気がついたキョウコさんが
「お茶を淹れるね」
と言って、食事の終わった皿を片付け始め席を立つ。
中国茶を華麗な手つきで入れてくれた。彼女が一口飲む。僕も釣られて飲む。
彼女は笑いながら、そうね、ここに居る理由を話してなかったわ。と、
「この歳になって、ひとり暮らしするのに、マンションひとつ借りれなかったのよ。恥ずかしいでしょ。保証人にサインしてくれる人いなくって、宮城さんにお願いしたの。そしたら、倉庫として、ここ空いてるから使えば良いなんて言ってくれて、ヨッシーに確認して、そうよね。私、カリスマ主婦って冠のってるのに、4畳半一間借りようとしたの。そんな所に住んだ事もないし、今の私からした住んじゃダメなのに、その辺も認識不足なよね」
やっぱり、想像通りの展開。師匠、ヨッシー、グッジョブ! 僕は心の中でそう言う。
再び、キョウコさんの口は動き出した。
「宮城さんと言えば、彼に言われたネームヴァリューがあるとかね、凄く嬉しかったの。出会う前の数年、あっちこっちで名前と本性晒してたから。そうか私の事みんな覚えてくれたんだと」
と笑う。そして徐に、
「深センのグループに来た時ね、須藤クンが私の周りをウロウロしているって、あの辺のベンチャー立ち上げ系と何処に出資すれば儲かる系とかの人達が私の周りで、紹介して欲しいって煩くてね。自分でアピール出来なくてどうなのよって言ってやったら、みんなしょぼんとして、分かったから、アピールの機会は作ってやると言ったんだけど、全員ダメだった見たね」
とケラケラ笑った。
アレ? あの時、僕がもらったキョウコさん情報ってお膳立てだつたんですか?
「あの後、塚田くんって言うんだけど、須藤クンと話してた人、全然相手にされなくて、私の事ばかり聞いていたとか言ってた。それからワインイベントに行く度いるし、深セングループは、須藤クンを呼んでとか言ってくるし、大変だったのよ」
もうダメだ、僕。もう最初から、キョウコさんに振り回されてたんだ。
ヨッシーお前は正しい。お金に興味ないですって寄ってきた奴、ヤバイ、変な人でした。全く。
「もうね。須藤クンに慰めてもらって、女としても認められたと思えるから、大丈夫だよ。ありがとう」
そんな風に僕を切り捨て、笑わないで下さい。
「はあ、僕、なんで、キョウコさんと同じくらいの歳で生まれなかったんだろ。歳離れてるなら息子として生まれたかった」
そんな言葉が溢れてしまう。
「ウチの息子だとえっちできないよ」
とかちゃちゃ入れられ、
「違うよ、誰に憚れることなく側にいたんだよ」
と大きな声で言い放ってしまった。
「もう僕、昨日、キョウコさんがおウチに居られなくたって大変!って、思ってたのに。
僕、間違った! 普通の主婦なんだから普通が一番って思ってるって、思っていたよ。認識不足だよな。「キョウコさんはキョウコさんのままでいいんだよ」とか言って慰めたのに、元からキョウコさんはキョウコさんだったって」
あー、あれって感じで笑ってる。
「ねえ、昨日なんか言っていたけど、貴方が私をビジネスの世界に連れてきた責任とか持つ必要ないからね。後、ウチの夫婦の事も。それと、昨日の事はもう2人とも大人なんだからなかった事にして、奥様の…」
僕はそれ以上彼女の口から妻のことを聞きたくないので塞いでしまった。そして、
「もうキョウコさんの隣で憂いを払ってあげるから黙っていて下さい」
と言うが、
「私の憂いは自分で払うし、この口、人格持ってるから、私が止める事できないなあ」
とか微笑みながら言った。
「じゃあ、僕はひとりではダメです。僕の隣にいて下さい。後、僕、退屈になると死んでしまうので、心臓が止まらない程度のドキドキを下さい」
と言い、彼女の口がおの音をだす前に再び口を塞いだ。
それからは、彼女が余計なこと言わなくなるまで、そして何も考えられなくなるまで、抱き続けた。
翌日、キョウコさんには妻の事を包み隠さず話した。
妻にはキョウコさんとの関係を咎めないなら、離婚はしない上、会社の共同経営者とすると申し出た。そして、腹の子は認めるがそれ以上何かあれば、承知しない事も。
まあ妻は二つ返事で頷いたんだけど、さすが、ステイタスと名声の為に僕の隣にいる事だけを目標にしているので分かりやすい。あー妻もお金が欲しくないヤツだった。
僕はキョウコさんの会社があればそれで良い。
世間では引退とか言われてるが、そんなの無視だ。たまに勘違いした輩が出てくるが、僕、引退なんでしてないから、ばっさばっさ切り捨ていく。
あー、キョウコさんの旦那はすげー小粒だった。妻が本当に騙されていると本当に思っていたらしい。
で僕がキョウコさんに出資した金額を提示して、会社に入るならこちらを清算して欲しいと、申し出たら、あうあう言っていた。
だろう。キョウコさんに僕がかけた想い甘く見てもらっては困る。
でキョウコさんが言うには、何もできない人だからそのままにしておけば、とっとと死んじゃうとか辛辣な事言っていた。
それにキョウコさんはカリスマ主婦なんで、離婚はデメリット。
また、離婚して苗字変えればあの名義の件、解決しちゃうんで、あんな事した会社をそのままというのは、ちょっと僕が許せないので、まあ離婚はしないということで決着。
それにキョウコさんが作った個人ブランドが苗字なので、離婚すると問題がまた浮上してしまう。
僕は、朝から晩までキョウコさんの隣にいられて、もう毎日楽しくって楽しくって、1日が早い。
なお、妻の事、キョウコさんが暗躍して、なんかいい方へ動いてるみたい。そう、ミヤちゃんが言ってた。
まあ、妻に繋ぎつけたのはミヤちゃんらしい。そこから、また凄いファン爆誕したらしい。もうそれ以前に、あのアクセサリーの件でキョウコさんのファンだったみたいだが。
その事キョウコさんに確認すると、
「夫に顧みられなかった妻の辛さを知ってる私が何もしないと思うのは、私を舐めてません?」
そして畳み込むように、
「女はねえ、セックスすると妊娠、病気にかかるリスクもあるのよ。ほいほいと誰かれ構わずセックスできないの。特に社会的地位のある人は特にね。安心できるセックスは必要なのよ」
と、いわれ妻の所に住みなさい。自分の子供を育てなさい。と言われてしまった。ちぇっ!
その上、良い子にしていたら、ご褒美に私の息子にしてあげるるからと そして内緒でたまにえっちしてね。と言われた。
もう僕はダメだ。
ヨッシー、お前は本当に見る目がある。
「お前の回りに金目当て手間ないヤツは、ヤバイ」
全くだ。
Side 須藤旬 これで終わりですが、キョウコさんとの情事編を後で投稿します。
やっぱりキョウコさんと思う展開になってしまいました。