エピローグ16 side須藤旬
ガラス工場の再生に経済特区という大きなプロジェクトプランが出てきて、新しいステージへ向かいます。
スマホが光る。
教授からだ。珍しいと林田さんに了解を取って出る。スピーカーをON にして、
「旬クン、面白いこと始めたと聞きました。私も一枚加わらせてください」
突然何の脈絡もなく話出され、こちらは面食らっていると
「すまんすまん、興奮してしまって。そう今度、街を、ものつくりの街を興すと聞きまして、そこを、街全体を独立法人というか、いや、それでは面白くありませんね。そう一層のこと、日本から独立させましょう」
はい?何言っているんですか?センセー。日本から独立って?
「いやいや、完全な独立でなくてもいいです。そうですね、どうすればいいですかね。法人税とか住民税を安くするとかは当たり前過ぎて、あと、法律も独自にしたいですね。製造業に特化したり、実験的なものの利用を可能とか、あーワクワクします」
はあ? 突拍子もないことを言い出したセンセーは思考の渦にとらわれたのか、こちらには聞こえない声でぶつぶつ言ってる。
後ろで
「センセー、どこに電話しているんですか?えっ?誰?」
そんな声も聞こえてきた。すると
「須藤先輩お疲れ様です。アヤセです」
「お疲れ、アヤセ、久しぶり」
電話を代わったのは菅井綾千だ。僕の次の次位にセンセーの餌食になった学生だ。
里依の後輩と言うことで、よく里依のところへも来ていた。里依も可愛がっていたので、何となくセンセーの事でアドバイスをする間柄になってしまった。卒業後も就職せずセンセーの面倒を見ている貴重な人材だ。センセーもアヤセの事、満更でないとのこと。
「先輩、突然連絡取ってすみません。ちょっと目を離したらこれです。この間自治体から先輩の話を聞いて、センセーが『何か私もしたい』とかでもう大変なんです。ここ一週間この状態なので学校の方は休講してます」
「はは、アヤセも大変だ」
「まあ、面白い事、考えているセンセーは嫌いじゃないので、惚れた弱みですかね」
「でセンセーはどこまで知ってるんだい?」
「先輩がガラスに特化した工場地帯を観光地にすると聞いて、なら企業誘致よりも、今ある会社工場を支援した方がいい。なら減税かな?と、するとその産業についている人も住民税免除とか面白くないか?となったんです。それでどう自治体を運営するかで躓いて、先輩に連絡して詳しい資料をとか、言ってました」
そんな話をしていると、隣で聞いていた林田さんが、
「ボン、方法はある。経産省の経済推進政策に関する補助金だな。ただ、減税は良くても免税は財務省が首を縦に振らないだろうな。今税収落ちてるからなあ。アイツらは取れる時に絞り切るまで取るからな」
「アヤセ、こっちにある資料を送るから、センセーとよく吟味して欲しい。今の話から多分住民税は可能だが、法人税は難しい。あと支援として、ふるさと納税を集めるとかだな」
「うん、わかった。じゃあ先輩。後、里依さんにもよろしくと言っておいて下さい、今度赤ちゃん見に行きますと」
「あー、わかった、伝えておく、じゃあ」
と言うと電話が切れた。
すかさず僕はSlack に指示を出す。秘書が
「失礼します」
と言い、部屋に入ってきた。一瞬、酒盛りの様子を見て躊躇ったが、
「アヤセに送る資料は印刷して郵送して欲しい。ここに全て入っている」
とオフラインのパソコンからUSB メモリーを外し渡す。
「これはオフラインで印刷して欲しい」
と言うと、秘書はUSB メモリーをもって出て行く。
教授まで加わってきた。この案件は面白くなる。そう僕は確信した。
なので、僕は林田さんに向き合い、
「教授が言うように、非課税、免税は面白いですね。なので財務省に伝ありませんか?」
「ある。ただ条件を付けたい。ワシも一枚加わる。でないと振れないカードだ。財務省主計局だ」
思い切り最強のカードを切ってきた。
ふっと笑い、
「そんなカード見せられたら『うん』とうなずくしかありませんよ。いいです。ならもっと面白くしましょう」
ガラス工場の支援は、突然の教授の乱入により、経済特区というプランがでた。
ああ、キョウコさん、あなたとの仕事いつもこんな感じに大事になるんですね。
そして暫くすると林田さんから、ガラス工場の件から僕は手を引くように言われた。
「こんな面白く物騒な案件はワシがやる。ボンは、あのババアと香港のコラボでもやってれ」
後、僕が予てから欲しがっていた、林田さんの投資グループも譲り受けた。
「暫くおとなしく、それで遊んでいろ」
だって。
国に対する交渉とか、各省庁への根回しを、林田さんが一手に引き受けてくれた。まるで水を得た魚のようだった。いや、それは、林田さんの本来の仕事だと、この間教えてくれたんだ。
自分の身が大事な官僚に、お前らの年金が半分にしてやらあ、とか脅したとか。そんな、恐ろしい事を平然とやるだろうな。林田さんは。
まあ林田さんが僕に語った事が事実なら、勝てる人はいない。その上、全力投球だ。
「やはり、惚れた女には格好の良いところを見せないと」
なんて言ってキョウコさんを狙っているみたいだけど、やめてよね、僕のだよ。
プロローグとして書き始めたんだけど、本文より長い。
まあ、後で題名だけは替えます。多分。




