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エピローグ15 side須藤旬

須藤クンと林田さんの語り


 林田さんは何事もないように、


「言ってなかったか、ワシは、佐々木修造の庶子だ」


「国会議員の?次期総裁候補と呼び声の高い?」


「ああ。自分のワシの母親はお前の彼女みたいに自分の分を知る者ではなく、愚かな女だった。アレはワシを跡継ぎを産んだから本妻になれると思い、お家乗っ取りを計り消されたんだ。まあ、表向きは交通事故死となってるがな。その後本宅に引き取られ、向こうのジジイに気に入られ、シジイの跡をついだ。出生のせいじゃないが、表で政治家やるより裏で暗躍する方がソリがあったし、カネを儲ける方が性にあったからなあ。だが、そう時代が変わっちまい、フィクサーとかお呼びじゃないと、じゃあとなり、まあ、金儲けが好きだったから金で変わる人を見るのが面白かったから、機関投資家となった。政治家の方は嫡子が継ぐはずだ。まだ官僚だが」


 ちょっとなんて返事すればいいのか分からない話しないで欲しい。

 まあ、林田さんは昭和の大物フィクサーに可愛がられていたとかは有名な話。それが祖父なのか?

 でもそれだと血の繋がりがないはずた。そのフィクサーは佐々木修造の本妻の父のはずだから。

 林田さんの話すその事実は重い。

 僕は何も言えずにコーヒーを啜る。


 「お前にはあの二人はできすぎたよなあ。ババアの方は分からないが、嬢ちゃんはお前に惚れ込んでいるよなあ。アレほどの仕打ちされたのに、入籍迫るんだからなぁ。そして、あのババアの事は気にしないように、自分ができる範囲でフォローして回ってる。あのババアは外ではビジネスパートナーの立場を崩さない。お前との関係を聞かれても、うまくはぐらかす。その点でも出来すぎだ。

 ああ、若いっていいなあ。未来があるし多少自暴自棄に突っ走ってもどうにかなる無謀さがある」


「どうしたんです、突然。林田さん?」


「ちょっとなあ? ワシは自分人生について後悔はねえよ。でも、あのババアのやってる事を見ると、自分のやりたかったこととか言いながら、やりたい奴、出来る奴を見つけフォローするとか、ほら今回のガラス工場の前に支援した染色工房なんかなあ。たまに会社に向こうを任せてる者がくるが、フォローはしても、ちゃんと本人最後までやらせてる。それを見ても人間の器が違うんだと思ってしまうんだ。ワシはそれが難しい。人に頼むことはできても、任せられない。

 それになあ、これが自分の道だと今でも思うが、自分は金を利益を産む為の金のガチョウなんだと、たまに思えてなぁ、皆が、ワシをちやほやするのは金の為。むなしくならないか? 金、産まなくなったらどうなる?って不安になるだ。まあたまにだけとなぁ」


 見透かす様に僕も同じだろうとこちらを睨む。なので、反論する。


「そんな事ありませんよと、同じこと僕もキョウコさんに出会うまで、感じてましたから。それで引きこもっていたんです。キョウコさんが僕にちゃんとお外へ行こうと、手を引いてくれて外に出ました。出てみると外はそんな怖い事はなく、眩しくとてもキラキラしていたんです。その時、あーそうかと思いました。

 僕は、キョウコさんと出会って、なんか人って色んな絆が繋がりがあるだと。例えば、僕は、林田さんが言うように、ジャッジを他者に委ねる為、里依があそこまで強行な手段使わなければ、入籍する事、結婚する事は、なかったと思います。なら子供もできなかったでしょう。でも実際は子供ができましたし、自分でも驚きましたが、とても可愛いんですよね、子供が。里依との関係もなんのかんの言いながら続いてます。

 そして、あの時里依をそこまで追い詰めたのが、僕とキョウコさんとの出会いと、その後の関係ですね。でそのキョウコさんも僕と出会ってなければあのままちょっと名の知られたハンドメイド作家だったと。

 僕は今の僕でなければ、キョウコさんをここまで支援する事もできなかったはずです。どこかひとつ歯車がずれたりしたらもうみんな違う人生を歩んだと思うと、人生色々あるけど、面白いし、この人生は最良だと思えるんです」


「けっ! ボンはやっぱりボンボンだな? こんな話、素面できん。なんかあるか?」 


 と片手でグラスを傾ける仕草をする。


 僕は、ヨッシー対策で置いてある酒をバーボンのボトルとグラスに氷を入れテーブルに並べる。スモークチーズとポテトチップもあった。それを袋ごと出し、炭酸水を持って席に戻ると、


「バーボンでいいですか? それともジン?  ハイボールでいいですか?」


「ああ、なんでもいい。酔えれば。しかし、社長室に何隠し持っているんだ」


「ヨッシー対策ですよ。あいつフラッと来て、酒、酒うるさいんですよ。ないと外に連れて行かれるので、ヤツの好きなビールにバーボン、ジンはしかたなく置いています。こっちで飲むことは少ないんですが、ないと困るので、これくらいですけど、向こうの事務所の方はバー並みに酒が揃ってますよ。あっちの方が置いてあるつまみも多いので飲むなら向こうの方がいいんですが、資料とかはコッチにあるんで、もう少し仕事したいから、すみません」


「いや、構わない。これだけあれば。すまんなぁ、我が儘言って」


「こんなことなければ、林田さんと酒飲むことなどありませんから」


「そうだな、ボンとは長い付き合いだが、酒を酌み交わしたのは、初めて顔合わせしたときだけか。お前は無駄とか言っていたが、仲間とは飲むんだ」


 仲間と言われて思い浮かべるのは、あのマンションで師匠の宮城さん、ヨッシーとミヤちゃん、それとキョウコさんと飲んだ事だ。キョウコさんの手料理にビール片手に、みんなであーでもないこうでもないと、色んなプランをアイデアを出しあった。すごく楽しかった思い出だ。


 その事を言うと、


「はん、またババア絡みか。ハァー、ボンはあの女離したらお仕舞いだな。ここ5年位人生にとって最良をもたらしてくれたんだから、まあ運は半分持っていかれたとしてもなぁ。いい女捕まえたな」


 そんな事も言われた。そして、ぼそりと


「いい女ってのは難しいんだな。惚れた女といい関係を結ぶのはなぁ。ワシはそのいい女の事『お母様』と呼ばなくてはならなかったからさぁ。羨ましいよ」


 そんな、他で聞いてる人がいたらヤバそうな話を始めた。ちょっと何を話すのと思っているのに、


「最初に会った時にその女は、『佐々木修造の息子に産まれた事を幸運と思いなさい。貴方の存在が、あの女の狂言だったら、今、ここに貴方はいないわ』なんて物騒な事、言うんだなあ。こっちは母親を亡くして、知らない家に連れてこられたのになぁ。ひびりまくっていたよ。そしたらその後、にっこり笑い、これから私が貴方の母になるのよ、だからよろしくねと。さっきの言動と今のギャップに悩まされた。なんだこの人となぁ。暫くすると家の者の口端にのる言葉で、家同士の政略結婚だったと知った。幼い頃から佐々木家に行儀見習いとして、跡取りの嫁候補として住んでいたくらいだ。両家の為に跡取りの期待を一身に受けていたのに、色々あり、夫とはすれ違いの上、外に子がと。その上、その子が男子となった。政治家の家に嫁いで来たのだ、そんな事も折り込み済みだろうが、心の中はわからん。色々な思いを呑み込んで、自分を引き取ったんだなあと言うことは分かる。本宅では嫌な思いも片身の狭い思いもしなかったしなかったしなぁ。

それなのに奴は、女ひとり、イヤ、自分を産んだ女も入れてふたりか、不幸にしたのに、政治家として、他人である国民の幸せを望むと思うか? ワシはそんな事無理だと思ったのさ」


 それからひとり語りのように、思いを噛み締める様に昔の事を林田さんは話始めた。


「ああ、若い時は、そんな気持ちもあって、父親よりもジジイについて歩いていた。まだあの時は、総会屋とかいたしな。株も今みたいなおキレイな感じでなかったし、ジジイなんてチンピラに刺されそうになる事は日常だし、家に車が飛び込んで来たことも数回ある。だから用心棒が付いてた。運転手もその筋の者だった。ワシは高校生の頃からジジイの鞄持ちだった。まあ使い走りに毛が生えたみたいなもんだなぁ。そういえば、一回チンピラをジジイが目で止めたことあったなあ。いや、あれはチンピラでないなあ? ジジイのせいで、家も仕事も家族もとか、言ってたからなあ。包丁持って突っ込んできたそいつをジジイが、『ワシを刺して気が済むなら刺せばいい』って一言言い、ソイツの前に仁王立ちしたんだ。そしたらソイツ動けなくてなあ。喚きだし、用心棒に連れていかれた。人間って弱いなーと思った。そんな事件も新聞に載ることもなくこともなくてなあ、ああ、これがジジイの住む世界だと思ったさぁ。これじゃ命幾つあっても足りないやぁと漠然と思ったんだ。それをオレが引き継ぐのかと…」


 そんな事を淡々と話す林田さんは年齢相応に見えた。いつもはそんな事なく、いつも元気だよなあって感じなのに。

 そして


「あのババアの言うことを、聞くのも癪なんだよなあ。面白いし、目の付け所もいい。これはって思うがなあ。ああ、それを見つけたのがワシじゃないってことか。一番悔しいからなあ」


って言うからさあ、


「そうですね。僕も投資家としても起業家としても、悔しいと思ってますよ。

 ただ、キョウコさんのもたらすアイデアは、色んな事を巻き込んで大事になるんです。だからこそ、それを形にできるのは僕しかいないって思うしかないですね」


 僕は笑う。


「わかるがなぁ」


そんなちょっと後ろ向きな発言をする林田さんに、


「それに今回は手芸の知的財産権の会社ですからね。そんなもの誰が作りたいなんて思いますか? キョウコさん以外なら出版物作っておしまいですね。里依まで巻き込んで、更に里依の兄から出資を得たんですからね。

 そして、今僕がやっている、今回のガラス工場の件は、最初、なんだこのお荷物って思っていたのに、次々と色んなアイデアが出てきて、ここまでになりました」


と林田さんに、言えば、


「ああ、分かってるよ、それでもなぁ」


なんて溢すから、強気に、


「このまま行き進めば日本が終わってしまいます。林田さんが、矢面に立ちたくないなら、僕がやりますよ、その仕事。そもそも旧体制のまま進むことはもう無理なんですよ」


って言っちゃった。そして、続けて、


「もう新しいことやっていかないとこのままでは、堕ちていくだけです。日本の人口減りはじめているんですよ。それなのに働かない老人のために、こんなにも若者を搾取するし、国力が弱っているのに、税金をこれからの人間でなく、死に行く者のために使う国なんて他にありませんよ。僕は年寄り連中と心中なんてまっぴらごめんです。林田さんができないなら、僕が奴らに引導を渡しますよ」


と言うと、


「ボンが羨ましいなぁ。好きな女に貢いで、その女が生き生きとして花開くのを見られるとかなあ、どんだけ前世で徳を積んだんだよ」


と。


 そうか、林田さんは好きになった女はもう人のものだったんだ。イヤ、それならキョウコさんだってそうだった。その違いって。


 そんな事を思っていると、スマホが光る。


林田さんの秘密を須藤クンに語って貰いました。

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