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地球編7-「『小さなダビデ』の向こう側 そして、絶望から現れる希望」

 「ニュー・コンスティテューション」撃沈に失敗し、世界は割れていた。

 異世界との「門」開通による戦争の勃発を恐れる者。

 異世界への利権を見出し、準備を進める者。

 まだ負けと決まったわけではないと執念を見せる者。

 異世界と再びつながるのなら、と、せめてできることをしようとする者。

 …だから、世界は、驚愕することになる。

                    ―*―

西暦2063年6月9日

 「朝本さん、もはや『ニュー・コンスティテューション』を止めることは出来なくなったと思われるわけですが、これについてどうお考えでしょうか?」

 「そうですね。

 私も、『ニュー・コンスティテューション』がイスラエル沖に到達した場合の動向に関しては読めないと思ってきました。

 そもそも『ニュー・コンスティテューション』の目的が、エルサレム付近に人工隕石を投下することで異世界への通行路を開くことであろうというのは、すでに確実視されています。その上で、その後、何を行うつもりかは公式な発表はなされていません。私がつてをたどった限りでも、『新世界の神になるつもりではないか』『何も考えていないのではないか』『使命を果たしたので自ら削除、自沈するのではないか』などと根拠のない憶測ばかりです。

 ただ、個人的に松良あかね氏と相談したところでは、おそらく、一度異世界への『門』を開いてしまったら、もう後には戻れないという意見だけは一致しました。」

 「後には戻れない、とは?」

 「今回の『門』は、北朝鮮の地下に開いたもの、また歴史上伝承上神話上何度か開いたと推測されるときとは、維持時間も許容通行量も通行面積も段違いと思われます。最低でも数十キロ規模の『門』は、中東情勢を決定的に崩壊させるのみならず、異世界側からの侵攻を招くでしょう。」

 「23年前と同じ惨事が、今度は中東で発生する、と?」

 「イスラエル人もパレスチナ人も、今でこそ落ち着いて避難してくれたようですが、長期化すればどうなるかは火を見るよりも明らかです。

 それだけではありません。23年前の地図が通用するかは不明ですが、異世界における勢力図を参照するに、中東地域は係争地域でもあります。

 世界の統一を目指す2つの軍事帝国が、新たな世界を見つけた時、どれほどの野望を抱くのか。おそらく、アメリカもロシアも中国もインドも、止めることはできないでしょう。

 最悪、二世界大戦になります。」

 「すでに、アメリカ軍がバーレーンなど中東各国の基地へ大型輸送機を回しているという目撃情報も多数ありますが、そのことに関しては?」

 「真実でしょう。まごうかたなき戦争準備です。明らかにされていないだけで、ロシア軍も、人民解放軍も、我が国の自衛隊も水面下で動いています。

 しかしおそらく、核兵器や衛星兵器の投入はためらわれるでしょうね。それによって受ける報復を予想することができないでいるうちに、世界は破滅的な情勢の変化を受けるかもしれません。

 今となっては、この世界がどこまで混乱するかは、異世界の情勢に委ねられたと言っても過言ではありません。」

 「朝本さんは、異世界との『門』ができるのは確実なうえで、その後どうなってしまうのかは、悲観的ながらも向こうの国家の侵略性による、とのことですね?

 …それではここで、ヨルダン、アンマンから中継が来ています。」


                    ―*―

 誰もが、座視して見ていたわけではない。

 打つ手はないかに思われても、阻止するに越したことはない。

 とりわけ、異世界との通行の確実化が、現在の世界秩序に致命的な変革を要求することは言うまでもない。「どこへ行くかもわからない宝くじのような変革よりは、何も変革しない方がいい」と思う者は非常に多い。

 かくて、EB社にすら知らせない、秘密裏の水際作戦が検討された。

 衛星攻撃や核攻撃は、察知されて無効化、報復される。

 現代的な攻撃はすべて、「オーバー・トリニティ」AIに対して決定的となりえない。

 では前時代的な火力攻撃はと言えば、艦隊は壊滅、航空攻撃は電磁嵐で無効化されるー

 ー残るは、極めてアナログな、地上からの大口径砲による攻撃、例えばジブラルタル要塞がカール60センチ自走臼砲を用いて行ったような攻撃。これならばハッキングされようがないし、対41センチ装甲をぶち抜くことができる。

 数日前までは、このような攻撃、許可は出なかっただろう。レーザー砲の迎撃を避けることができない以上、発射するだけ無駄であるーが、アレキサンドリア港北方での海戦(公称「イスカンダル沖防衛戦」)の結果、すでに「ニュー・コンスティテューション」から砲弾迎撃能力は失われていた。

 旧式のミサイル/ロケットの投入こそ、三式弾に弱いが、それ自体はただの落下物でしかない砲弾ならば、照準さえしっかりしていれば、間違いなくダメージを加えられる。

 かくて、各国がこっそり保管していた歴史的遺物が、書類と印鑑だけで引きずり出されてきた。

 試製41センチ榴弾砲。

 420ミリ自走迫撃砲「2b1 オカ」。

 406ミリカノン砲「2A3 コンデンサトール」。

 オードナンスBL18インチ列車榴弾砲「ボッシュバスター」。

 350ミリ多薬室砲「スーパーガン」。

 ロシアやイギリスなどの博物館から秘密裏に引きずり出されたそれらを砂漠の上に運んできた巨大線路の上には、さらに信じがたい巨体がドンと構えている。

 並列に並んだ2本のレール。

 レールに載った細長い車両。

 並列な2両にまたがる、巨大な三角の車体。

 車体の上に乗る、巨大な装填台、そしてその上の、長大な砲身。

 ドーラ級80センチ列車カノン砲4番砲「ヴィクトリー」。

 そしてさらに、線路から少し離れたところには、大きなくぼみの上に斜めの煙突のような物体が見えている。

 煙突を両側から支える支柱。

 煙突の尻には、弾を支える扇形の錘があり、くぼみに隠れている。

 36インチ(914ミリ)超重迫撃砲「リトル・デーヴィッド」。

 試射することはおろか、輸送(「ヴィクトリー」は新造砲なので製造も)過程、現地での組み立て過程に一切の情報流出を許さないためデジタルデータの使用を禁ずる情報統制、さらにはイスラエル上空へのハッキング衛星の侵入を許さないために衛星迎撃レーザー砲の使用までなされた。その結果、本当に発射できるのかもよくわからない上に仮に異世界との「門」が開くのならば人工隕石によって吹き飛ばされてしまうために事実上の特攻作戦でもあるこの砲戦が、準備されたのである。

 実に多くの犠牲の上で。

 数千人の人間が、砂塵舞うコンクリートの上から、掩体壕へ引っ込んでいく。

 「予想針路上への装填、全砲、完了しました。

 このままですと、後15分37秒後に最大命中率となります。」

 「このまま、待機を続けろ。15分後に砲撃だ。」

 「了解。」

 ズラリ並ぶ、巨大な筒先が7つ。

 斜めにもたげられたそれは、じっと、たった1発のロマンのために、静止を続けていた。

 後方では、小さな天文台のような形状のレーザー砲が、旋回しながら人工衛星を蹴飛ばしている。

 宇宙空間ではゾウの頭のようなカタチのソドム衛星が十数基、上空へ侵入しようとしているのを見るに、「オーバー・トリニティ」はやはり、ハッキングによって人工隕石をパレスチナに投下するつもりらしい。

 静寂。

 静寂。

 静寂…

 「15分経過!」

 「発射!」

 ズドゴッォーーーーーーーーーンッッ!!!!!!!

 ゴオオォォォーーーーーォーーーーーンッ!!!!

 ズグゴオオォォーーーーーーーーンッッ!!!!!!!

 ゴオッォォォォォーーーーーオーーーーーンッッッ!!!!

 オオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!

 ドゴゴゴゴッォォォォォーーーーーォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 ズグアアアダダッッッァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッッァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 不並びながらも、不揃いながらも。

 7発の徹甲弾が、一斉に発射され、砲煙がすべてを覆い隠し、砂ぼこりが噴き上がる。

 轟音が、世界から音を消し去った。

 高空へと、成層圏へと、砲弾は徐々に速度の差をあらわにしつつも、撃ち上げられ。

 徐々に重力に引かれてその軌道を曲げつつ、コリオリの力によって針路も逸れていき。

 そして、下降に転じ、雲に穴を空け。

 7発の砲弾は、順繰りに、「ニュー・コンスティテューション」が白い航跡をかすかながらも大きく残してゆく地中海の青い海に、吸い込まれるようにして落下していった。

 砲弾が、海面に落下し。

 海面が、へこみ。

 海水がへこみの回りから高みへと噴き上がり。

 水蒸気による白煙が、百メートル近くまでもせり上がり。

 ナイアガラの真下であるかのように、熱水が「ニュー・コンスティテューション」を叩く中。

 ガッッッ!

 ドゴボンッッッ!!!!

 爆発音が、響き渡った。


                    ―*―

 「ん?この、OR9S19AS1Iってどこの衛星だ?」

 「人工衛星カタログとの一致を示してないから、スペースデブリだろう。いつものだ。攻撃リソースなんかありゃしない。」

 「いや、それが主任、動きが演算とずれてるって警告ウィンドウ出てますよ。」

 「この前の電磁嵐でレームダックかゾンビになった衛星じゃないのか?」

 「ならいいんですが…ああっ!」

 「どうした?」

 「加速してやがります!」

 「加速してて何が悪いんだ?燃え尽きる系統だろう?」

 「計算上、13秒後にソドム衛星13番と衝突、コントロールを失ったソドム13は、パネルが脱落しああっ!」

 玉突き事故と言うべきか?

 状況は、加速度的に悪化するーとはいえ、年に一回ほどある衛星の連続衝突とスペースデブリの爆発的増加に過ぎないかに思われた。

 が。

 衛星ソドム13号は、どこからかエネルギーを受けて加速されたスペースデブリOR9S19AS1Iに衝突されてゾウの鼻に当たる落下体が折れ曲がりパネルに突き刺さり、パネルが脱落。

 吹き飛んだ落下体は、そばにあった通信衛星マンダラ112に衝突。これは太陽光パネルにいくつもの通信ハブを取り付けたようなモノだったために容易く砕け散り、高速デブリとして1分のうちに周囲の衛星4つに致命的な異常を引き起こす。

 さまよい始めるデブリのいくつかが、入れ代わり立ち代わりに射線を邪魔する中、ソドム21衛星が上空を通過。これに、レーザー砲は対応できない。

 そして、ソドム21の落下体が投下された。

 距離も離れているし、トルコのどこかが犠牲になるが戦況には影響しまいーそう、誰もが考えたが、落下体は回転を始め、その軌道は容易に予測できなくなり。

 ーまたも、複数の射点から加速度を与えられている。

 レーザー砲部隊の主任は、迎撃を命じ、レンズをそちらに向けさせたー

 ーそして、レーザー砲の内部で火花が散った。

 人民解放宇宙軍、赤外線レーザー反射衛星「天鏡29」。地上からのレーザービームを反射させることで衛星や地上の精密施設を損傷させるための衛星を介したビームは、ハッキング操作により、正確に、待ち伏せるように、レンズを向けてきた瞬間を狙い、レーザー砲を撃ち抜いた。

 さらに、いくつかの衛星が、機能不全状態で強制移動させられ。

 予備のレーザー砲が対応できないうちに、ソドム衛星1基が、無人となったテルアビブ市に設置されたレーザー砲基地の真上に到達、金属錐体を分離した。

 金属錐体は、摩擦熱を伴い、マッハ10ほどで地上に到達。クレーターを作り上げ、天文台のような形状のレーザー砲をゴーストタウンごと消し飛ばした。

 地球をぐるり包む衛星群の中に、ぽっかり空いていた衛星のない空間。そこへ、数十の衛星が周囲からなだれ込んでいった。


                    ―*―

 「おおっ!」

 「ぼやぼやするな!撤退!」

 間に合うとは思えないが、無数の軍用トラックの車列が、砂漠の中を爆走していく。

 背後には、取り残された7つの巨大な大筒。

 誰かが、窓から手を振る。

 「おい、お前ら、英雄だ!最っ高だぜ!」

 沖では、煙を空高く吹き上げながら、後部主砲があったあたりを大きく陥没させて斜めに20度以上傾く巨大な実験艦「ニュー・コンスティテューション」。

 ここに初めて、人類は、AI「オーバー・トリニティ」に決着をつけた。

 甲板から時折、爆発の炎と煙が噴き上がる。

 2基の主砲も、砲身が重力に負け海面を向いている。

 ただでさえ高さを大いに減じていた後部艦橋は、朽ちた山小屋ほどの存在感しか保っていない。

 数十分以内に着底するのは、誰の目にも明らか。

 ーが、もう、すべては手遅れだった。

 「急げ!ここが旧約聖書通りになるのに、あと数分なんだぞ!」

 恨めしいほどに青く澄んだ雲一つない空。

 よく見れば、赤く光る、いくつもの筋。

 ソドム衛星からの、落下体だった。


                     ―*―

 「金属錐体の数は計12、すべて、エルサレム市、岩のドームを中心とした半径500メートルほどの範囲内に落下するものと見られます、あかねお姉さま。」

 「…これ、かつての『エルサレム神殿』だよね…」

 「12も、完璧性のアピールか…無茶苦茶な奴だな…」

 「すでに撃沈されたって言うのに、まったくなんという…」

 「あかね会長、それなんですが、まだ『オーバー・トリニティ』から魔力を感じます。」

 「魔力なんて欺瞞的なくせになんともな話だね…いや、でも…」

 「あかねさん!あそこ!投下地点!向こうでは!陸地ですよ!」

 「だからてっきりクレーターを作って入っていくのかと思ったんだけど…」

 「…あかね、アレ、かすかにだが、翠に光ってないか?」

 「言われてみればそんな気も…」

 「あかねお姉さま、着弾まで10秒です。」

 「いけないいけない。みんな、ゴーグルと耳栓。」


                    ―*―

 まったく同時に。

 12個の鋭い巨大な金属針は、エルサレムの旧市街、白壁と赤屋根並ぶ宗教の町へ突き刺さった。

 居残っていたユダヤ教、キリスト教、イスラム教、アルメニア正教の司祭や敬虔な信徒たちが祈りを一心にささげて救いを願う中。

 地殻の奥まで到達しつつ、地層をまくれ上がらせ、高熱で蒸発させる。

 衝撃波が、空気を切り裂き。

 「ああ、神よ!」

 大地が震え上がり、すべてを上へと蹴飛ばし。

 「我らをお見捨てになられるのですか!」

 そして、12個の火球が膨れ上がり、急速に一体化し、エルサレム旧市街・新市街を呑みこんで煙で自らを包みつつもさらに膨張、海へと煙は膨らんでいく。

 その時、沖では、ゆっくり海の中へ姿を消しつつあった「ニュー・コンスティテューション」が翠の光に包まれていた。

 翠光は、上空へと延びて、天を刺し貫く。

 横へも伸びて、それはまさしく、十字架。

 翠十字架の交点に目のような模様が顕れ。

 十字架が、大きな、キノコ雲として膨れ上がりつつある灰色の煙の塊へと倒れこみ。

 そして、十字架の交点がキノコ雲の中へすっぽりぴったり収まってから数分後。

 キノコ雲が、急速に薄れ始め。

 -ズ!

 空間に、ノイズが走る。

 爆風にあおられたとはいえ、エルサレムから海岸線までの数十キロにある街並みのビル群は健在。しかし、それらが一瞬、ノイズが走ったかのように、消えて見えた。

 ーズ!

 ビルにも、家々にも、道路にも、並ぶ7門の巨砲にも、ノイズが走り。

 ーズ!

 何度も何度も、固体液体気体を問わずあらゆる物体に、ノイズが走り。

 ノイズは、「ニュー・コンスティテューション」の転覆しかけた船体にもー

 ーそして、ノイズが走った直後、翠の光を帯びた「ニュー・コンスティテューション」は、跡形もなく消滅した。


                    ―*―

 キノコ雲が、徐々に、何度もその姿をノイズに歪めながらも、色を薄め、高層大気へと溶けていく。

 その下では、数キロにわたるクレーターと、その周りで砂をかぶった街並みに、何度もノイズが走る。

 ときおり、ノイズの向こうに、青い海らしきものを幻視することができた。

 

                    ―*―

 「あのキノコ雲の下で、異変が起こっているのは確かなようです。

 この世界は、いったい、どうなってしまうのでしょうか!?」

 どうにもならんだろうに。

 「朝本さんは、どう思われますか?」

 「すぐに数カ国の戦略偵察機が入るでしょう。衛星コンステレーション計画も立ち上げられ、橋頭堡から各国が相争うことになります。異世界の地球世界化が急速に行われ、紛争を異世界に押し出す努力が行われ…」

 …待て?あれ?

 「すみません藤森アナウンサー、キノコ雲の上の方、リプレイをお願いできますか?」

 「キノコ雲の上、ですか?」

 「はい、何か光ったような…」

 「こちらで…

 …只今、速報が入りました。EB社は、エルサレム上空の静止軌道に投入された人工衛星を確認したと発表した模様です!

 繰り返します、異世界からの、人工衛星の軌道投入を確認!」

 …話に聞いたうのめシリーズ?しかしマンダラシリーズコンステレーションとは相性がいいと聞いている。気が付かないとは思えないし、気が付いたなら発表の仕方を考えるだろう…

 「朝本さん、いきなり、『2つの世界の間の紛争を異世界に押し出す』という計画が破綻したと思われるわけですが、これはいったい?」

 「人工衛星を軌道投入できるほどの科学力は、純粋にはないものと判明しています。異世界側の、この世界の勢力による行動でしょう。」

 「異世界側の、この世界の勢力?すでに、キノコ雲の下に侵入した軍隊がある…と?」

 「いえ、そういう意味ではございません。

 ですが、これは…

 …もちろん、異世界においてローンチビークルを打ち上げる勢力にはいくつか考えられることがあります。もっとも有力なのは、どこかの軍隊が秘密裏に送り込んでいた部隊です。

 戦いの時代です。すでに、異世界を巡る利権争いは始まっていました。

 私としたことが、異世界との争いは警戒しても、異世界を巡る争いまでは…」

 戦争は続く、か…

 「朝本さん、それはそうとして、キノコ雲の下、何か、見えるような気がしませんか?」

 んー…?

 「言われてみれば、そんな気も…あ!」

 ノイズが消えて、海が!?

 すると、海の上の、灰色の塊は…!

 「まさか、ほ」

 巡洋戦艦「穂高」が、やってきたとでも言うのか!

 

                     ―*―

 「こちらミロクシステムホスト、松良あかね!

 巡洋戦艦『穂高』、ヒナセラ自治政庁政府、『松良あかねcopied』、応答願う!」

 あかね会長は、ノイズが消えたのを見て、仮想音声システムがあるのに、わざわざマイクへと問いかけ始めた。

 …でも、ヤバいのはわかる。

 「連人君、魔力の様子は?」

 「すさまじい、としか言いようがないです。空間そのものが魔力と言っても過言じゃないくらい…」

 「事象改竄力がそこまで…いや、もうこれは、あるべき姿へ世界が落ち着きつつあるってことかな…」

 「松良さん、これは、僕らの理想が到来したと言うことかな?」

 父さんの理想…「地球世界と異世界の統合」か…

 「準備はまだまだOKじゃなかったと思うけど、先生は機会主義者だから、この機会を無駄にしようなんて思いもつかないんだろうね…」

 「もちろん。」

 「私も!ふるさとがどうなったのか!気になります!」

 「…今さら無理に閉じろとも言えないよね…」

 「あかねお姉さま、通信はとれますか?」

 「ううん、うのめシリーズコンステレーションの気配はあるんだけど…とりあえず、そろそろ優生君に会見を任せてもいられないかな…

 と思ってたら、来たよ。」


                    ―*―

 「こちら、ヒナセラ自治政庁赤海派遣艦隊旗艦、穂高型不沈巡洋戦艦1番艦『穂高』乗艦、ヒナセラ自治政庁政府顧問兼特命全権、峰山武!

 あかねちゃん、聞こえる!?

 戻ってきたわ!」 

 「我、異世界における正統民主的政府『Hinasera Autonomy Region State』海軍旗艦、不沈(Unsinkable)巡洋(Battle)戦艦(Cruiser)、『穂高』!

 攻撃することなかれ、平和的交渉を求む!」

 次回、新たなる世界の相互融合 8 「巡洋戦艦『穂高』未ダ健在ナリ」

 融合を開始した世界で、それでも、戦いは続く!

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