四捨五入された男 (+27min)
この作品は制限時間15分の即興小説で、「セクシーな殺し屋」というお題の際に書いたものです。
時間内に書き終わらなかったので、このサイトで完成したものを載せることにしました。
タイトルの(+27min)は完成させる際に余分にかかった時間を表しています。
たった15分で小説を一本書き上げられちゃう人ってどうかしてると思う。
悪夢のような目覚めだった。
目を覚ますと、全裸でベッドに貼り付けられていた。
「なっ......何だこれは!」
四肢は拘束具で固定され、大の字の形のまま動けなかった。
部屋は薄暗く、ベージュの壁は色がところどころ剥がれ落ちていた。
「あら、ようやくお目覚め?」
部屋の隅からせせら笑うような女の声が聞こえた。
「お.....お前!」
女はフロアスタンドを背にして立っていた。
梔子色の光に照らされた女の顔は、先程バーで酒を交わした女と同じ顔だった。
だがその服装はバーで飲んでいた時の真紅のドレスとは打って変わって、黒いレザージャケットに黒いショガーパンツという悪趣味な格好だった。
男の記憶が徐々に輪郭を取り戻していく。
そうだ、行きつけのバーで飲んでいたら、この女に話しかけられて、好きな映画や好きな体位の話で盛り上がってその後........その後どうしたんだ?
「一体これはどういう事なんだ! これがお前の趣味か?」
「いいえ仕事よ」
「今すぐこの拘束具を外せ。俺にはこんな情けないチンポ野郎みたいな趣味は無え」
「仕事だって言ってるでしょう?」
「仕事だと? 異常性癖専門の娼婦か? ならチェンジだ帰れクソビッ...」
突如、男の動きが静止画で切り取られたかのようにピタリと止まった。
「なぜお前がその写真を持っている......」
男の視線は女が持っている一枚の写真に釘付けだった。
写真では、一人の女が虚な目でこちらを見ていた。その女は、顔の左半分の皮膚が崩れ落ち、目の周りは青黒い痣で染まり膨らんでいた。
「これが私の依頼人」
女は静かに言った。
写真の女がこの女に何を依頼したのか。男にとって答えは明白だった。
「ま、ま、待て! お、おおお俺を殺すのか」
女は答えず、ゆっくりと男の方へ近づいてきた。
「許してくれ! 俺の罪は今日から一生かけて償う!」
男は大粒の涙をこぼしながら懇願した。
「知らないわよ。私の依頼人に言ったら?」
女は男の股間の前をにしてしゃがむと、腰から鋏を取り出した。
「おい何をする気だ」
女は男の陰茎をつまみ上げ、根元に鋏の刃を近づけた。
男は女の意図に気付いて青ざめた。
「きっ...切り捨てるのか!」
男は恐怖に震えた声で叫んだ。
「違うわ」
女は悪戯っぽく微笑んだ。
「四捨五入よ」
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