4:同棲することになった件
せめて学校では辞めてほしいのにこんな休日も会うなんて...しかも、もしこれを誰かに見られたり写真取られてたりしたら大変だ。そう思っていたところ、
鉛前春香がこう提案してきた。
「とりあえず、わんちゃんも居ることだし公園に行こうよ」
「...」
「ワンッ!ワンッ!」
「分かったよ」
僕たちはひとまず、公園に行くことにした。公園には誰も居ない。日曜日だと言うのに...それもそのはず。この公園の近くに大きな公園ができたため、ブランコしか無い公園はもう需要が無くなってきたのだ。ポチ助はしつけが良くできているので物分りも良いためここで野放しに遊ばせていることが多い。
「ポチ助、自由に走っていいぞ」
「ワンッ!ワンッ!」
「ふふっ。ポチ助くん可愛いね」
「まあね!だって犬の中でも人気のあるタイニープードルだよ?プードルより小さいからこの小さな公園でもポチ助にとっては充分大きいんだ!」
「動物、本当に好きなんですね」
「まあね...」
って、僕はちゃんと話をするためにわざわざここまで来たんだ。話を戻そう。戻すと言うよりかは話を逸らす?話題を変えよう。
「春香。勿論皆にもだけど。本当に学校ではああゆうの辞めてほしいんだ」
「ごめんなさい......」
「僕はクラスで孤立してるし噂たてられまくってるし嫌なんだよ」
「孤立してても私がついてます!」
春香はそう言って手を差し伸べてきた。ソウイウ問題ジャナイ。
「孤立させた張本人が手を差し伸べてくるんじゃねーよ!」
「そんなに学校で私達が来るのは嫌ですか?」
「嫌だね。とっても嫌だ!春香だって同じようなことを僕にされたら嫌だろ」
「いいえ、全然。むしろ私のものだって皆に伝えることができますし嬉しいです」
えー、ヤンデレも入ってるの?清楚ヤンデレとかってあるの?...っていうか質問の仕方を間違えた。
「雫さんは執拗に学校でされるのを嫌がりますね」
「当たり前だろ、恥ずかしさで不登校になりそうだわ!」
でも、これもすべて獣医になるために少しでも内申点を上げとかなくてはいけない。出席日数は重要だ。それに、僕が休んでると知ったら一人暮らしも駄目になるかもしれない。
「学校以外の場所でだったら何でもしてもいいんですか?」
「駄目に決まってるだろ...」
「学校では4人とも今後最低限度しか関わらないって言ったら?学校以外の場所でだったら何をしてもいいですか?」
僕はこの時、何故もっとちゃんと対応をしなかったのだろうと後悔をした。
ただ、学校でされていることが学校外でされるだけ。学校でされるよりはマシ。家も違うし時期に過激なのも少なくなっていく。そう思っていた。
非日常が日常化するあまり、僕はちゃんと考えていなかった。彼女たちの感情に慣れてしまっていたのだ。鈍い男に成れてしまっていた。成り果てていた。
鉛前春香、右方寧夏、喜佐谷秋、道後町冬姫。彼女ら4人は、僕のことが好きだとちゃんと自覚をしなくては行けなかったのだ。現実から目をそらさずに...美少女と釣り合わない僕のことが好きだということ。4人は当然のように好きという形が違うのだ。十人十色とあるように、同じではないのだ。
そして、人の好きという感情を軽く扱っちゃいけないということを。
僕は忘れていた。
「...そしたらみんな、学校で何もしなくなるんだろ?」
「ええ、挨拶を交わす程度です」
「みんなならいいよ。それ」
「言質とりましたよ?」
「現地?ああ、言質ね。みんなが学校でなにかしてこないなら僕には悪いことをは無いし良いよ」
どうせ無理って分かってる。もう期待するのは辞めた。
「分かりました」
清楚系美少女のの鉛前春香がにっこりと微笑んだ。生暖かい風が空を切る夏。そんな中で彼女はとても絵になった。
――綺麗だ、凄く。
芸術を見ているようだった。
「じゃあ、今から皆に電話するね」
「...おう」
(電話の呼び出し音)
「え!なんで!?」
急に電話をし始めた。誰に?ねえ誰に?
「学校で最低限しか関わらないなら学校以外で何をしても良いって言ったよね。だから約束は守ってくださいy...あっもしもし!冬姫さん。あのね...かくかくしかじかでね」
「ちょっと待て、どういうことだ!」
「大丈夫だよ、今からスピーカーにするから」
「そういう問題じゃねー!」
何をする気だ?学校以外では何をしても良いってガチで真に受けたのか!?何をする気なのか分からないのが一番怖い!!!
『もしもーし、雫?私達これから学校でもう何もしないね』
冬姫の声だ。周りが騒がしい。他にも誰か居るのか?
「え、本当にそうしてくれるのか?!」
『そう!だから、』
「...ん?だから?」
『雫の家に4人で住むわ』
「は?」
『みんなで住むんだよー』
ん?この声はもしかして寧夏?
『しずくーん!今日からずっと秋お姉さん達と一緒だよー』
「もしかして皆で一緒に居る?」
『当たり前じゃない。あっ、そうそう雫は一人暮らししてるんでしょ?』
「してたとしても一緒に住まないからな?」
『あなたの住んでるアパート丸ごと、道後町財閥が買い取ったわ』
「へ?」
『だから家賃の心配はいらないわ。私が雫の分も払うから......あんたたちは自分で払いなさいよ!』
多分寧夏が「やったー」とか言って、冬姫に自分で払えって言われてるんだろうなー。
とかいつもなら呑気に考えているのだけれど今回はそういうことを考えてられるほど状況は優しくないし情報量は易しくない。
「いや、一緒に住むって言ったって親とか他にも色々問題が...」
『大丈夫!その点は安心して。雫が言いそうなことは全部対処しといたから』
「4人で一緒に住むなんて言ったら僕...その...」
『...何よ』
「お、襲っちゃうかもしれないよ?」
『そんな度胸も無い意気地なしなくせに何言ってるの?それに.........あなただったら...大歓迎よ』
さ、最後にツンデレ!?可愛いけどそれ以上に情報量が多すぎて色々とついてけない。展開が早すぎる。ちょっとポチ助と夕方に散歩に来ただけなのに。言質取られて同棲することになったのか?しかも女の子4人と!?しかも美少女4人とポチ助と?
ポチ助が主人の何かを察したのか足元に駆け寄ってきた。
ポチ助可愛すぎる。癒やされる可愛さだ。
『ま、まぁ。とりあえず合鍵で先に家に入っとくから春香と来て』
「おい、冬姫!先に帰って絶対部屋に入れないからな」
『?......何を言ってるの?電話が来たときからもう既に部屋に入ってるわよ?』
『そうだよー。寧夏待ってるよー!』
『しずくーん、気を付けて帰ってきてねー』
「ブチッ、ツーツー(通話が切れる音)」
「あっ、おい!」
待て待て待て待て、お前らどうやって学校通うの?とか色々考えたけど冬姫が考えられることはすべて対処したって言ってたから大丈夫なんだろう。あいつはそういう奴だ。でも本当に理解が追いつかない。どうしよう。
そうやって、頭がこんがらがっているところで春香が声をかけてきて我に返った。
「じゃあ、雫さん。帰りましょ」
「...」
「我が家へ」
春香がそう言い僕に笑いかけた。
これほどまでに重たい我が家へを僕は初めて聞いた。その言葉、今日起こった出来事を僕は人生で絶対忘れないだろう。
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誤字を修正しました。2019.8.28