3:僕に休みは無いのかもしれない件
日曜日。それは、最も僕が開放される時間だ。学校で悪い意味で目立つこともなく、自分だけの時間。それがどれほど素晴らしいことか。僕はもはや休日のために頑張っている。
犬の散歩にでも出かけるとするか。犬の名前はポチ助。ポチに助を付けるあまり捻りのない名前だが僕としては気に入っている。この犬は例の犬。そう、十字路で助けた時の犬だ。4人曰く、4人とも十字路で好きになって十字路で即告ってきた。僕は断りながら犬を持って逃げた。もう思い出したくない。いつか話そう。今は散歩の時間だ。夕方になった。夕方はいつもポチ助と散歩に出かける。
散歩コースについては無論言わずもがな学校に行く方向と逆方向である。
「行ってきまーす」
って、一人暮らしだから居ないのは分かってるけどついつい言ってしまう。
「ワンッ!ワンッ!」
「よーし!じゃあ一緒に走ろうか!」
「ワンッ!」
「行くぞ!ポチ助!」
動物が大好きで獣医を志望している僕としてはポチ助は可愛くてしょうがない。
「あっ、雫さん!奇遇ですね」
「.........!???」
誰だかわからないけど今すべき事は逃げることだってことくらい分かる。僕は今までにないほどのスピードで走り出した。
「待ってください雫さん!」
秒で捕まった。
僕は獣医志望だからある程度勉強はできるけれど運動はできないのだ。
「なんで逃げるんですか?」
「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ」
鉛前春香。学校の生徒会の役員を務めている。なんでもできると噂のスーパーガール。当然美少女。
僕が今まで嫌なことを散々されてきたけれど怒れない理由は可愛すぎることだろう。可愛すぎるあまりに怒ることができない。綺麗な黒髪で長髪。背丈もスラッとしていてモデルみたい。顔は綺麗:可愛いだと4:6だ。
生徒会も務めていて皆から尊敬されていたが、僕のことを好きだと言うことを公言してから悲しむ者が多かったという。イメージが崩れたとかで。
当然怒りの矛先は僕に来たわけだったが。
「逃げるに決まってんだろ...休日までお前らに会いたくないんだよ」
「えー、ひどいです」
「...また、変な噂たてられたらたまったもんじゃないんだよ。それにもう僕の理想の高校生活は一生来ないことが決まったんだ。休日くらい自由に過ごさせてくれよ!」
ちょっとキレ気味になって同情を買ってこの場を逃げ切る。
「あっ、そうだ。じゃあ、お詫びとして!今からなんでもおごってあげます」
「......」
全く効いてない。鋼のメンタルすぎるだろ。
「って何さらっと帰ろうとしてるんですか!」
「痛い痛い痛い!お前ら力強すぎるんだよ!この手を離せ!」
「あなたが弱すぎるんです!ゴリラみたいに言わないでください」
「言ってないし、離せ!」
本当に災難すぎる。学校では僕は大金持ちの隠し子って設定になってるんだぞ。この設定をどうにかしてくれ!
「ポチ助も帰りたいよな」
「ワンッワンッ!」
「はい、じゃあ帰る」
「なんでですか、待ってください!てか雫さん一対一の時無駄に強気ですね。ふふふ。知らない一面知れました♪嬉しいです」
「そうだな。多数決でいつも決まってしまうから面倒くさくてある程度しか反論してなかった。だが、今は一対一だからバンバン言うぞ!」
「っ!一対一だから本音で語り合いたいだなんて///好きだよ...雫さんのこと」
「可愛く言っても駄目だ。てか良いように解釈すんな」
「えー」
「駄目なものは駄目」
「違うよ、好きな人なんだから好きなように解釈してもいいでしょ♪」
かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
じゃなくて、もう辞めてくれ。学校では辞めてほしいんだ。ミラクルスーパーウルトラまじで。インフレが増しまくったゲームのガシャのレア度みたいになってしまったけど、嫌なのは事実だ。
僕の大切な休日の時間はドンドン減っていき、ストレスが増えていくが可愛さでストレスがちょっとだけ減っていく。マイナスプラスマイナスで結果マイナスだ。
とりあえずこの状況から、どう逃げよう。