1:美少女達がぼっち飯させてくれない件
昼。昼食の時間だ。
僕は僕にある重大な任務を命じた。
「4人に見つからずにトイレでぼっち飯」。できれば屋上近くのトイレで。
なんで屋上近くのトイレで食べることを望むのか。大きな理由が1つと小さな理由が2つある。
まず、大きな理由。4人と一緒に教室で食べると目立って嫌だからだ。4人は僕のクラスのところに必ず飯を食べに来る。いつものことなのだが異様すぎる光景のあまり目立つ目立つ。ましてや積極的にアピールしてくるのだ。噂は尾ひれが付きまくり、僕は今週間少年誌の主人公ばりの肩書を貼られている。多分これはもう剥がすことができないからもう良いが。自ら噂の種を提供する気は更々無い。
そして小さい理由1つ目。単純に恨みを買ってしまっている。当然だ。学年の美少女4人が僕を好きだという異様な光景はかなり異質であるからだ。学年の美少女を好きな人やファンの人は一定数いるわけだが、それの4倍の人から恨まれているのだ。「みんな!あくまで僕は拒絶しているよ。」という意思表示を見せなくてはいけない。
小さな理由2つ目。これは単純に屋上のトイレで食べるのかという根本的理由だ。昔...といってもつい最近のことだが、2年生の通路トイレの個室でボッチ飯を食っていたらバケツで水を思い切り上からかけられたのだ。その時は着替えを金持ちお嬢様の道後町冬姫がわざわざ持っていたから甘えさせて貰った。しかし、二回目も大量の水を上からかけられたので僕はもう二年教室の通路のトイレで食べるのをやめた。
そんなこともあり、僕はなんとしてでも屋上のトイレでボッチ飯を堪能しなくてはならないのだ。
クラスによって授業の終わる時間が違う。なので僕のクラスの授業が終わるのが遅ければ必然的に出くわし、アウトを食らってしまう。そこで僕はなんとしてでも第一関門の『授業が他のクラスより早く終わる』をクリアしなければならない。最早これは運だ。運任せである。
しかし、この第一関門を抜ければあとは楽勝で誰にもバレずに屋上近くのトイレに行ける。そうすれば大勝利ということだ。
一応、それぞれが別のクラスだ。
清楚系美少女、鉛前春香。2年2組。
天然はつらつ系美少女、右方寧夏。2年1組。
お姉さん系美少女、喜佐谷秋。2年4組。
ツンデレお嬢様、道後町冬姫。2年3組。
そして、僕。霧原井雫。2年6組。
この全員がクラス別。良いように思うが最悪だ。お昼休み前の授業が終わる際、自分のクラスが一番早くなくてはいけない。一クラスでも遅いと4人のどれかにぶつかり連行されて強制的に飯を食べる羽目になる。この場合2年5組にはターゲットが居ないので2年5組より遅くても構わない。
もう、運要素でしか無い最初にして最後にして最強の砦の第一関門を突破しなくてはならない。
『キーンコーンカーンコーン』
戦いの始まりの鐘がなる。
ミッションスタートだ!!!
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「しずくん、あーん」
「いらないってば。自分の弁当があるし」
「あー。もうみんなで食べてる。抜け駆けはずるいです。寧夏もみんなと食べます」
「邪魔よ。一人でもライバルは居ないほうが良いの。しっしっ」
「冬姫さん酷いです!雫は寧夏と食べていいもんねー?」
「...もう好きにしてくれ」
「春香、遅くなりました!わーすごい。いつもながら冬姫さんの料理はすごいですね」
「当たり前よ。一流シェフに作らせてるもの」
「いいなー。寧夏もお金持ちが良かった」
「あんたも充分金持ちよ」
「春香。おそかったねー」
「あー、生徒会のお仕事でちょっと」
結果はこの会話を見て分かるとおり惨敗だった。勝負は一瞬で決着がついた。喜佐谷秋に秒で捕まったのだ。チャイムがなった後すぐに喜佐谷秋に遭遇。
「あー!しずくんだー」
「!......僕は今から大事な用事があるから...じゃあな!」
「お弁当を持って?...秋お姉さんのことは騙せないぞ」
「この手を離してくれ...って力強い!いてててててて」
「秋お姉さんは力が強いんだぞっ!」
こんな具合で秒だった。
長々と作戦、問題点を語り倒した挙げ句。その成果を1mmも発揮すること無く、僕は失敗した。
結局4人で食べる羽目になった。そして今に至ってしまう。
「兎に角!僕は常に腹八分目になるように弁当を持ってきてるからみんなの弁当はいらない!」
「「「「あーん」」」」
「って聞けよ!話を!」
4人同時に「あーん」とか辞めてくれよ。
「お前ら、先生とかに見られたらどうするんだよ。退学だってありえるかも...」
「買収済みよ」
買収しただと!?一応由緒正しき名門校の先生をだと?馬鹿を言うな...いや、でもありえる。道後町財閥といわれたら一度は聞いたことがあるくらいの大金持ち。超エリートにして超名門。その本家の愛娘。道後町冬姫!冬姫だったら絶対にありえる。
「あ!じゃあ、しずくんに『あーん』を受けてくれた人のことを好きってことでどう?」
「いいね!」
「悪くないわ」
「いいですよ」
「!??」
急二何ヲ言イ出スンデスカ秋オネエサン...。
そしてそれを許可するのは僕な!なんでお前ら4人で勝手に決めてんだ!