プロローグ:飛ばされた先は、天界のコールセンターでした
新作品です。
かなりネタに走ると思います。
はっきり言って、深夜2時くらいのテンションで書き始めたのですが、良かったらご覧下さい。
某混沌さんにインスパイアされたと思います。
……くっ、これが洗脳か(ぇ
「ふわあぁ………おはよ……あれ?」
目に痛いほど真っ白の空間。
あれ、電気付けっぱなしかな? もったいない。
電気のひもを探すために、手を虚空にさまよわせるが、感触がない。
おかしいな。
というか俺、寝てたか?
仕事から帰って、確か……………何してたっけ? 思い出せない。
うーん、まあ、良いか。久々の休みだし、二度寝しよう。アラームも鳴ってないし。
「おや? ようやく起きましたか。あまりにも遅いんで、どうしようかと思いましたよ」
誰だ俺に呼びかけるのは。折角の二度寝なのに。
見渡してみる。
うーん、なんかぼやけて見える。
「ほら、いい加減起きてくださいよ。あまりにも起きないなら、濃厚なベーゼををしてあげますから。貴方のテーゼなんて無視してね」
「おはようございます」
体を無理にでも起こして回避する。
危ない危ない。
勝手にキスされるところだった。
「はい、おはようございます。……ちぇっ……そこはもっとこう……『実は起きていたけど寝たふり』的なシチュを狙いましょうよ……」
なんか目の前にいるのが、ブツブツつぶやいている。
「まあ、良いでしょう。これも私への試練ですね、分かります。さ、いい加減しっかり目を覚ましてくださいね、颯弥さん」
「どなた……?」
女性の声だ。
しかし、なんとも口の回る奴だ。こんなの知り合いにいたかな?
「私、なんか世界の神なんぞしております、セフィリアと申します。以後お見知りおきを」
「はあ……高橋颯弥です……」
「ええ、知っていますとも。それより早く起きてください。間に合わないじゃないですか」
何だろうこの……なんとも言えない雰囲気。
好きなラノベの主人公……あれ、ヒロイン?……まあいいや、それに似てる。
眠い目を擦りながらよく見ると、アホ毛を立てた黒髪の少女……少女? が見える。
服は、いわゆるリクルートスーツで、かっちりした姿だ。ちなみにタイトスカートですか。
「ニャルな——」
「おっとダメですよ、颯弥さん。それ以上口を開くと先生方に頭下げないといけなくなりますから……というか今、明らかに『なんとかさん』って言おうとしましたね!?」
なら、そんなキャラにすんなよ。
というか、なんで分かるんだよ。既にその口調がヤバいだろ。そして「なんとかさん」ネタも何で知っているんだよ。
「そりゃ当然神ですからね。そしてこの口調は元からですよ。とにかく細けぇ事は良いんです。それよりさっさと行きますよ、このままじゃ遅刻です」
「遅刻って……どこへ?」
今日は休みだろうが。
それにはっきり言って俺は、自分がどこにいるかも分からないのだ。
目の前にいる奴が神なんて宣っているが、ドッキリとかのオチじゃないかと思っている。
「余計なこと考えている暇があるなら足動かしてくださいよ。ドッキリじゃないですし、颯弥さんは死んじゃったんですから」
……は?
死んだ、だって?
「ほら、良いからこっちです。さあ、来ましたよ」
そう言われてみると、どうも馬みたいなものが近づいてくる。
……首に「急行—天界行き」なんて札をぶら下げているが。というか急行ということは普通とか特急もあるのだろうか?
とにかく俺は、言われるまま目の前の少女——セフィリアと一緒にその馬……というかペガサスに跨がる。
「では行きますよ! ほら、しっかり私を掴んでくださいね、落ちたら終わりですから。ほら」
「いや……お前のどこに掴まれと……」
「何恥ずかしがってんですか、ほら手を出す! 私の腰を両手でホールドする! というか抱きついてください!」
「ふんっ!」
ぎゅっ!!
「あ、痛い痛い! それは抱きつくじゃなくて絞めッ……すんませんっ、調子こきましたから緩めて緩めて! 内臓出ちゃう!」
「ほらよ」
というか神なのに内臓があるのか……
なんだかんだでセフィリアの腰を掴まされ、というかほぼ後ろから抱きつき状態に強制的にさせられて連れて行かれる。
なんかセフィリアがぼそぼそ呟いていたが、聞き取れなかった。
「むふふふ……中々後ろから密着されるのも良いですねぇ……折角なので肩に顎乗せされると尚良いんですがね……」
* * *
どのくらいだろうか。恐らく十分くらい乗せられていたと思うが、ペガサスが止まったため周りを見渡してみる。
結構広い敷地に、色々な建物が建っている場所だ。
中央には高層ビルがあり、恐らく偉い人がいるんだろうな……なんて思っていた。
「さ、降りてくださいな颯弥さん。急ぎましょう」
そうやってセフィリアに連れて行かれた先は……
その中央の高層ビルでした。
「でか……」
「さて、入りますよ。これから颯弥さんはここで仕事するんですから」
マジかよ。
というか、仕事と言われても全く訳が分からないし、自分が死んだことしか分かっていないんですけど。
「詳しくは庶務がお話ししますから。ほら、ここです。席に座ってください。すぐ来ますから」
そう言って、ある部屋に通され、椅子に座るようにと指示される。座るとすぐにセフィリアは部屋を出て行き、庶務の人? を呼びに行ったようだ。
そうしてしばらくすると、今度は青銀の髪をたなびかせた妙齢の女性がやってきた。
「初めまして。ようこそいらっしゃいました、高橋颯弥様……私は庶務のサリエリーネと申します。以後お見知りおきを」
「あ、よろしくお願いいたします……」
何というか、すごく優しそうな雰囲気と、抵抗できない雰囲気の両方を持つ人だな……というか、人って考えてたけど……
「サリエリーネさんも、神……ですか?」
「ええ、そうです。というか、ここで働いているのは全員神です……勿論階級とか、地位とか違いますが。ちなみに私は中級神ですよ」
「そ、それはそれは……失礼を」
立場がよく分からないが、少なくとも中級ということはそれなりの地位に立っているということだ。
そういえば、セフィリアはどうなんだろう。うーん、アレは下級かな。
「とんでもないです、颯弥様……貴方様はこれから私たちの上に立つのですから」
は? あまりにも情報が多すぎるとパンクするんですが。
「いや、意味が分かりませんが……」
「ふふふっ。それは後ほどお教えします……が、先にこちらの手続きを済ませなければなりませんから、宜しくお願いしますね」
「は、はい」
口に手を当てて笑う仕草が妙に色っぽいな……
うん、お姉さんキャラって好きだよ。
「まず、簡単にご説明しますね。今回颯弥さんは——」
サリエリーネから状況など説明を受ける。
どうも俺は、家に帰るどころか、会社を出た段階で倒れたらしい。
死因は脱水症状。
確かに、ここ最近碌に栄養取れてなかったし、休めてなかったからな……
生前、俺はコールセンターで働いていた。
最初バイトで入ってから、管理者に上がっていった訳だが、ここ最近はやたら忙しく、残業続きだった。
勿論会社はいい会社だったんだが、自分が無茶しすぎた感がある。
夏場の仕事は要注意だな。いくらオフィスワークでも、脱水症状で死ぬんだから。
俺は本来別の世界で、新しく人間としての生を受けるはずだった。
だが、世界の境界に引っかかったらしく、天界に持って行くしかなかったようだ。
「ちなみに、引っかかった原因の一部はセフィリア様が関係しております」
おい、あの駄女神。なんてことしやがった。
「どうも他の世界での出来事を処理していたら、転生用のパスが一部影響を受けたらしく、丁度颯弥さんがそこに引っかかったみたいです」
うーん、不運としか思えない。
まあ、駄女神が何かサボってたなら、ぶち転がす科と思っていたが、これなら拳骨一個だな。
さて、天界に連れてこられた人間は、天界での仕事をしばらく行い、その上で転生をするらしい。
天界での仕事の出来次第で、転生後のスペックやら生まれる先が影響を受けるとのこと。
ちなみに俺に割り当てられたのは……
「これが契約書です。よくお読みになって、最後の欄に署名をしてくださいね」
契約書か。
こんなの書くのは久しぶりだ。えーっと、なになに……
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配属先:世界統括コンタクトセンター 異世界サポート課
役職:SV
配属先責任者:上級神 セフィリア課長
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「チェンジで」
「駄目です」
「いや、何これ? またコールセンター? そして課長がアレかよ!? しかも上級神なの!?」
「ええ。いわば颯弥様は上級神の眷属と言っても過言ではありません。だから今後、我々より上になるのですよ」
「うん、それは心底どうでも良い」
どうも俺は、コールセンターの仕事から逃れられないようだ。
「ちなみに給料とかあるの?」
「ええ、給料……とは少し異なりますが、GPという物が月ごとに出ますし、対応件数でも変わりますよ?」
「成る程な。ちなみにGPって何だ?」
「ゴッドポイント、略してGPです。これが溜まるとランクが上がって、場合によっては天界永住権が得られます」
「何そのポイント制度」
「ちなみに、GPを溜める方法は色々ありますから。それこそセフィリア様は詳しいと思いますよ」
「さいざんすか」
「それと、颯弥さんは現在【神見習い】です。次のランクまでは10,000GPくらいですかね」
「聞いてねぇよ」
「そうすると【初心神】になれます」
「ランク種類いくつあるんだよ」
セフィリアと違う方向で相手するのに疲れるな、サリエリーネは……
* * *
文句を言いつつも、チェンジできないらしいので署名するしかない。
まあ、忙しくなければ良いな……
「ちなみに、異世界サポート課自体立ち上がったばかりですから、色々あの駄女神……いえ、セフィリア様を助けてあげてください」
「げ、オープニングスタッフかよ……」
しかも中級神であるサリエリーネから駄女神と言われる可哀想なセフィリアである。
仕方ない、出来るだけ俺が知っているノウハウを使ってやっていくか……
「では最後に、天界でのIDカードを作りますが、お名前はどうされます? 異世界らしく変更されますか?」
「うーん、どうすっかな………」
確かに異世界であるからには名前変えても良いだろうけれど……
うーん……面倒ではある。
「それじゃ、ゼクスで」
「かしこまりました。ちなみに何故?」
「ゲームで使ってたからかな」
「安直ですね。まあ、良いでしょう」
そんなわけで、俺の名前は「ゼクス」という事になった。
「はい、これがIDです。これを無くすと再発行に時間がかかりますからご注意ください」
「天界なのに時間がかかるのか……」
「ちなみに無くしたら天引きです」
「GPの使い方、正しいのかそれ?」
そういうことらしい。
そのまま、サリエリーネに連れられて、早速「異世界サポート課」の部屋に向かうことになった。
* * *
颯弥、改めゼクスが「異世界サポート課」に向かった頃。
「アレが新しく入った新人じゃな?」
「はい、そのようです。『ゼクス』と今は名乗っておりますな」
「そうかそうか。しかし、新人ってあんな感じだったかのう……」
「うーん、ちょっと覇気に欠けますかな?」
「新卒のフレッシュさがないのう」
「いや、そりゃあそうでしょう。ある意味中途採用みたいな物ですし」
散々な言われようである。
確かにこれまで天界に来た面々は、「天界すっげ、マジパネェ!」みたいなノリだった事を考えると、この二人がそう思っても仕方ないかも知れない。
ちなみにこの二人、天界で最も立場が高い【最上級神】だったりする。
「しかし……『異世界サポート課』なんて、何で作ったんです?」
「だって神託とか面倒じゃろ? 最終的に妾達がするが、基本彼らがしてくれると楽じゃし。世界の管理もややこしいからのう」
「ああ、確かに」
「それにの……あの子は人付き合いが下手じゃ。少しでも改善されれば嬉しいんじゃよ」
「そうですね……まあ、私たちは人ではありませんし、あの子は単なる左遷ですが」
「揚げ足を取るな、アホたれ。それにあの子も本意じゃないわい……」
そう言いながら、ビルの最上階から遠くを見る二人。
彼らの目には、これからのゼクスやセフィリアの未来が見えているのだろうか……
「ちなみに、彼らはこのビルで働きますから、その方角にはいないんですがね」
「先に言わんかっ!」
別に未来をみているわけではなかったらしい。
* * *
「やっと来てくれましたね、待ってましたよ颯弥さん……あ、ゼクスさんになったんですね。よろしくお願いします、ゼクスさん」
「ああ、よろしく。ここまで案内ありがとう、サリエリーネ」
「いえ、とんでもないです。また何かあればご連絡ください。いつでも待ってますから」
「了解、何かあったら連絡するよ」
新しい仕事場に到着すると、すぐに課長であるセフィリアが迎えてくれた。
ここまで案内してくれたサリエリーネにお礼をいって、「異世界サポート課」に入室する。
おっとID、IDっと……
「あれ、サリエリーネさんはしっかりお礼を言われたのに、私はスルーですか、放置プレイですか……」
「あ、よろしくセフィリア。で、俺の席は?」
「……ちょっとちょっとぉ! 扱い酷くないですか!? 私ここの課長なんですよ!? ゼクスさんの上司なんですから!」
「うるさい駄女神。俺がここに来る事になった一端を担っているのは聞いているんだぞ」
「あ、サリエリーネさんチクりましたね!? 別に私だけの責任じゃないんですけど!」
「ほら、行くぞ」
「ああ、もう! ——後で聞かせてもらいますからね!」
後ろからキャンキャン聞こえていたが、すぐに俺の席を案内してくれた。
「はい、ゼクスさんの席はここです。どうです? 中々のもんでしょう?」
広いデスクに三面モニター。
完全にセパレートされてはいないが、周りと少し分けられているため少しプライベート空間のようにも感じれる。
そして、お決まりのコールマスター。いわゆる電話機だ。ヘッドセットも完備。
「……中々良いな」
「でしょう? このあたりは初期設備として与えられていますからね。世界神にお願いして良い物をそろえてもらえただけありますよ」
「お前の席は?」
「課長に向かって『お前』呼びですか……私はこっちです」
セフィリアの席を見せてもらう。
なんとも……なんとも個性的だった。
革張りの椅子。
株でもするのかというような四面モニター。
お菓子しか入っていないボックス。
そして、机の上のフィギュアと、携帯ゲーム機。それに痛々しいデカールのスマホ。
「お前、サポート業務なめてんだろ」
「な、なにおう!?」
「普通コールセンターというか、仕事場に私物を置かない! お菓子を食べない! 仕事場で遊ばない! というかこれ私物のスマホか!? 某ボカロモデルかよ! というかスマホはセキュリティ問題だ馬鹿!」
普通、コールセンターは個人情報とか扱う関係で、業務と関係する物以外持ち込むことはない。
いや、持ち込むところもないわけではないが、セキュリティ問題があるので、基本持ち込めないのが常識だ。
「ちょ、ゼクスさん! どうどう……いや、そりゃ地球の話でしょ? ここは天界なんですからそう心配しなくて大丈夫ですよぉ〜」
「はあ……お前な」
「それにセキュリティについてはご心配なく。そのあたり結界とかいろいろありますんで」
「そうかい……まあ、課長のお前が言うならそれでいいや、もう……」
もういいや。
問題が起きても責任はこいつにある。俺の知ったことではない。
「んで?」
「はい?」
「『異世界サポート課』って何するんだ? 研修は?」
「…………えへ」
「なにが『えへ』だお前……大体このチーム何人いるんだよ」
「現状二人です」
は?
二人だって?
それってつまり、俺とお前しかいないのか?
「勿論、神としてのランクが上がればいろんな能力が手に入って、『天使』とか作れるようになりますから」
「いや、お前【上級神】だろ。作ってないのか? というか、そのくらい先行資金くらいあるだろ」
「え?……えーっとぉ、そのあたりはなんと言いますか……色々都合があってですね……」
もの凄く歯切れの悪い言い方をされた。
これは追及せねばなるまい。
「おい、どういうことだ。な・ん・で、作れないんだ?」
「うっ……それはその〜……先行で貰ってたGPは設備に溶けて、天使作るのに必要なGP残すの忘れてました、てへ」
「ふんっ!」
ゴンッ!!
「ぱぶあっ!?」
「お前、ホント無計画だな」
「なっ!? 何をおっしゃいますか! というか女神殴るって、しかも上級神殴るってどういうつもりですか!」
ゴゴンッ!!
「ちょっと! 二回も殴った! 世界神にも殴られたことないのに! 大体、折角こんな良い設備にしたんですよ? それくらい感謝してくれても良いじゃないですか!」
うっ……
確かに非常に良い環境を整えてくれたことには感謝している。
「ま、まあ……それには感謝しているよセフィリア」
「いえいえ、どういたしましてです。これから長い付き合いになるんですから!」
「だが、それとこれとは別だ」
「うぐっ……それは申し訳ないと言いますか……」
しかし、既に整えられた物は整えられた物。
どうにか仕事を成り立たせて行かなければ。
「しょうがないな………俺もできる限りサポートするから、頑張ってGP溜めるぞ。よろしくな、セフィリア課長」
「はい! よろしくお願いいたしますね、ゼクスさん!」
どうにかしてこのチームを組み上げていかなければ。
下手こいてクビなんてお断りだ。というかクビになったら終わりな気がする。
さあ、どういう仕事をするか、勉強しなければ。
「ちなみにいつからオープンだ?」
「あ、既にオープンです」
は?
人員も、研修もしていないじゃないか。
それで何でいきなりオープンするんだ!
「おま……お前、研修も無しに現場に出す気か!? 馬鹿か? ああ、馬鹿だったか!」
「ちょ、さっきの殊勝な態度はどこ行ったんですか! 研修はしますよ! いわゆるOJTからですけど!」
「どこに知識も無しに電話取らせる奴がいるんだ!?」
「だ、だって言いますでしょ、『習うより慣れろ』って!」
「知識無しにしたら慣れるわけないだろうが! お前、初っぱなからクレームだらけにする気か!」
はあ……まだ地球で仕事してた方が楽だったんじゃなかろうか……
そんなわけで、俺の天界での仕事——「異世界サポート課」での仕事が始まるのであった。
(`・ω・) お読みいただきありがとうございます。といっても、多分ネタなので、メイン作品より更新頻度下がると思いますが……
もし気に入っていただけたら、ブクマ等お願いいたします。