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黄金色の涙 1945 himawari  作者: 日南田 ウヲ
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後編③

 綾子の瞳に映る二人はまるで過去から戻って来た亡霊のように見えた。それは失った過去の愛への償いの為に死んだ身体に鞭打って再び現代に現れたのだと思った。

 愛の償い、それは亡くなって個人になっている土岐護という人物への償いでしかなかった。兄を助ける為に犠牲にした真実の愛。

(私ならそのようなことができるだろうか・・この老婦人の様に)

 綾子は濡れた瞳の老婦人を見た。

(しかし・・ )

 綾子は思った。

(それだけではない・・芦屋の向日葵をめぐる謎は・・)

 綾子は隣に立つ男性を見た。男性は震える老婦人の肩に優しく手を置いている。そしてその震えに呼応するように目を瞑り、何か言葉を探しているようだった。

 綾子はその男を見て言った。

「あなたが護氏ではなく、森哉氏だということは分かりました。しかしまだお話しを全て伺っている訳ではありません。まだ同志の事、そして彼女の事をまだお話ししていませんから・・勿論向日葵の絵の秘密も・・」

 男は頷くと、綾子を見た。

「その通りです。ではこれからは私が話をしましょう」

 そう言って哉は部屋から消えると、新聞を持って来て戻って来た。

「これを見て下さい。これは今日の新聞です」

 綾子は新聞を手に取ると日付を見た。確かに日付は今日だった。そしてそれをゆっくり開いた。

「折り曲げられたところにある記事があります。そこを見てください」

 綾子はその言葉に従い新聞の折られたページを探した。角が折られたところが見え、そこを開いた。

 経済欄の一面に記事があった。そこを見て思わず、綾子は声を出した。

「これは・・」

 綾子はそのページを見て哉を見た。男の表情が険しくなっていた。

「これは父の企業の記事・・」

 綾子はそう言って内容に目を遣った。それは乾グループの傘下企業である乾建設のダム工事の記事だった。

 綾子もこのことは噂で聞いてはいた。地元の議員の後押しを受けて叔父が社長を務めている乾建設でダム工事を進めようとしているのだが、社内ではまだ意見がまとまらずまだ仕事を受注するのかどうかは未定だった。この件については父が欧州視察より戻り次第、役員会にかけると聞いている。

 しかし、目を通した内容は、工事が決まったと書かれていた。

「工事が決定・・?」

 綾子は言葉に出すと哉を見た。

「そうらしい。なんでもある議員が強引に決めたようです」

「ある議員・・」

「そこに議員の名前が書いてあるでしょう。写真もあります」

 綾子は目を動かした。確かにそこに銀らしき人物の顔が見えた。そしてその子に書かれている名前を見て驚いた。

「・・新島・・幸雄・・」

 そう言ってから綾子は老婦人を見た。婦人は綾子を見て頷いた。

「綾子さん。その幸雄は私の息子なの」

 綾子は息を呑んだ。

「じゃ・おばあちゃんが言った新島新平と言う人はもしかしてあの国会議員の新島新平・・」

 老婦人は深く頷いた。そしてもう一つ綾子を驚かすことを言った。

「そして・・あなたが見た記事の安治川で亡くなった女性、田川洋子はその幸雄の腹違いの姉なのです」


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