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黄金色の涙 1945 himawari  作者: 日南田 ウヲ
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後編㊺

 

 曽根崎警察署のデスク電話が鳴る。それを手にしたパンチパーマの目つきの悪い男が電話を取ると、僅かに眉を潜めて口の向こうの誰かに言った。

 いや、言い放ったと言った方が正解かもしれない。

 その一言は簡潔明瞭。

「お前ら、阿保か!!」

 言い放ったのは刑事課の壇吉郎だった。

 その言い放った電話口の向こうで若い声がする。

 それは小さな謝罪の声。

 ――すいません、壇吉さん。


 だが恰幅の良い男はそんな若い捜査官の答えを予想していたのか、頭を軽く掻いて言う。

「まぁええわ。巻かれたのはしゃーない。これで巻かれるのは二度目やな。中々、あの水野とかいう兄ちゃん、人を巻くのが上手いらしい。…それでなぁ、聞くけど、お前らどこで巻かれたんや?」

 問いかけの後、小さな沈黙が電話口であったが、はっきりとした声が聞こえた。その声に壇吉が反応する。

「京橋?京橋のラブホ街やと?それでお前らはどうしたんや?消えた付近のホテル街のビデオとか勿論洗いさらったんやろうな?」

 その答えを聞くと声が流石に今度は感情を押さえられなかったのか壇吉は声を張り上げて「阿呆!!」と言い放った。その声に他の署員が振り返るのも気にせず

「お前ら、大阿保かっ!!!男一人やからラブホテルを利用なんかせんて誰が決めたんや!!いいか、良く聞け。そこで相手が消えたという事は完全にお前らの事が分かってるちゅうことや!!…阿保ッ!!」

 壇吉は大きく咳込むと大きく息を吐く。吐くとやや冷静になって電話口の向こうで恐らく恐縮して震えているだろう若い捜査官に言った。

 それはどこか諭すようで、そして現場で物事を教える教官の様に。

「…いいか、二度とこんなへまをするなよ。良いか、その水野と言うか言う奴はラブホテルに入って、それからお前達の様子を見ていたんだろう」

 それから壇吉は壁時計に目を遣る。時刻を見れば七時を過ぎている。夏が近いとはいえ、既に夕闇は去り都会の街に夜の帳が降りている。

「…恐らく夜の闇に紛れてそこから去ったに違いない。やっこさん、何か荷物を持ってなかったか?」

 若い捜査官の声が壇吉の耳元で響く。

「メットか?…それで奴さんのマンションのバイクはお前ら押さえたのか?」

 しかし問いかける口調はどこか心落ちしえいるのか、そんな壇吉の声が響く。

 それは答えを分かっている教官の声で、答えを聞けばそれで僅かの慰めでもかけてやろうかと言う心情が籠った溜息と共に言葉を吐き出した。

「…無いか。そりゃ、そうやろうな。全くお前らまんまと嵌ったな。まぁ良い、失敗は大きな学ぶや。今日はご苦労さん。現場では沢山学ぶことが在るっちゅうことやな」

 壇吉は頭を掻くともう用事は無いといった素振りで電話を切ろうとした。

 しかし電話を切ろうとした瞬間、電話口で気になる一言が聞こえて、慌てて電話を耳元に引き戻した。

 引きもどして捜査官の声を聞いた壇吉が呟いた。それは思わぬ人物が側に居からだった。

 壇吉が漏らした言葉。

 それは、


「なに?松ちゃんが奴さんと一緒に居たやと?」


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