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黄金色の涙 1945 himawari  作者: 日南田 ウヲ
42/54

後編㊲

 

 扇風機の首が回ってモーターがうねる音が店内に響く。響く音に合わせて水野の喉奥が動く。それは絞り出すかのように動き始める。

「…近松さん」

 問いかけられた近松のサングラス越しの細い瞼が動いて、水野を見つめる。

「この件…つまり、芦屋の向日葵の件だが…あんたのわかる範囲で良いのだが…、一体どれだけの人が知ってる?」

 近松は瞬時に水野の問いかけに思考を巡らす。


 ――権田、

 乾玲子

 目の前にいる水野本人


 それと…ここからは推量だが

 浦部、亡くなった田川洋子

 乾洋一郎、

 乾綾子を誘拐した犯人グループ。もしもそれ以外にあるとすればここはエックスという不特定の者という事になるだろう。


「…で?」

 近松は水野に言う。

「何が言いたい、先生?」 

 水野は目を向ける。

「…あんた、俺に何か隠していないか?」

 水野の言葉に近松の目が煌めく。

「…なんやて?」

「つまりだ。あんた俺を野放しににして誰かが俺に近づこうとしているのを捉えようとしていないか?つまり…警察の囮捜査として」

 その言葉に近松はやや驚いたように目を見開いた。近松の思考に警察としての直感がざわつく。それがはっきりと水野の何かを捉えた。そしてそれに答えることで何かを探る出そうと思考が動く。

「先生、あんた…俺を疑うのは良いが、それはお角違い」

「お角ちがいだって?」

「そうさ、いいか俺はもう警察じゃない。あんたも知っての通り、俺はあのお嬢ちゃん…いや、乾玲子の私立探偵や。ええか、是はゆるぎない事実や。そして俺とあんたは…」

 そう切り出した時、丁度、卵焼きが運ばれて来た。それに箸を入れた近松はそこで綺麗に綺麗に縦に卵焼きを割ると口に入れて、咀嚼しながら言った。

 それは安心を相手に与える為の仕草だった。

「仲間や」

 その言葉を近松は言葉と共に飲み込む。それは暗に水野にも伝える心の動き。


 ――あんたも、飲み込むんや。


「それは変わりない事実や」

 水野は喉を動かし飲み込む。

「だから…言うんや。先生、あんた誰かに何かされたんやろ?それは警察やないで、警察は裁判所の許可が無けりゃ何も出来ん。だからこそや。あんたに差し迫った何事かは…暗闇から迫って来たんや」

 近松が残った卵焼きを口に頬張った。それで水野を見る。

「もしそれが事実ならそれは俺の中で考えられるとしたら、おそらくX…」

「X…?」

「まぁ分かり易く言えばその他やな」

 水野は近松を見つめる。その真意を糺そうとして。近松は首を横に振る。

「…残念やが。まだそれは言えんし、特定できん。なんせ広い範囲になっている。何か特徴際立つ情報でもない限り、絞り込めん」

「特徴?」

 水野が答える。

「そうや」

 近松は箸を置いた。それから扇子を開きシャツの襟首に風を入れる。まるで何かを呼び込めるのならば呼び込もうとする余裕が有った。

 それが態度に出ている。そう感じたのは水野の方だったかもしれない。

 だからこそ、水野は近松に言った。

「あんた、薬物に詳しくないか?そうどこか甘くて痺れるような匂いの薬物。一瞬にして相手を眠らす様な…そんな薬物だ」



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