【8】
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目の前の子の表情を似ている気がする。
「そうなんだ。あ、曲の感想だけど…いいなと思った。曲全体はあたたかいのに、どこか切なさがあって。詞が深い愛情を感じられて包まれているような感じ」
「ありがとう」
いいと感じられる事によかった。
何と似ているのか思い出してみれば、私が幸来に対して向けている表情だ。
「あれ?」
「?」
「……。ううん、なんでもない」
思い返してみれば、もしかしたら、恋愛としての好意をもたれている事に、今まで気づけなかった事が不思議だと感じる。
そんなはずはないという思いこみは、目の前で起こっている出来事を曇らせて見えると、以前、ルカが言っていたのを思い出した。直感や心では感じる事ができても、理性や頭では違うと思えば、気づく事すら難しい。
気づけたとしても相手が行動するか確信が持てていなかれば、私としては何も行動する事ができなくて、もどかしい。だが、行動されたとしても、ごめんなさいをするしかないのだけれど…。
「歌詞に書かれている人物が、羨ましい。そんな風に想ってもらえて。でも、そう想われるくらい素敵なのだろうなと思う。そんな風に想ってもらえるような人になりたい。何か、漠然としていて、どうしたらそうなれるのか分からないけど」
「なれるよ、きっと」
「本当?」
「だって、私が書けているから。こんな詞を書けるようになっているなんて、高校の頃には思いもしなかったのに…書けるようになっているから。私でも成長できている気がするから、なれるよ」
「美空らしい」
そう言って、その子は笑っていた。
たぶん、私に好きな人が居る事も、告白しても断られる事も、この子は分かっている気がする。
「……。自分以外でこの曲が歌わられるのなら、君以外には歌ってほしくないし、曲も提供したくない。それだけはずっと変わらないから」
「いきなり、何を言い出すの? でも、ありがとう。認めてくれて」
「あ! うー…万が一、プロになれたら、言えなくなると思うけど」
「そうなったら、仕方ないよ。仕事だから」
「今後もよろしく」
「うん、こちらこそ」
頷く君を見ながら、心の中でごめんねと謝った。
愛しているのが優香で、恋しているのが幸来で、二人を好きな気持ちは変わる事がないと思うずるい私だけど、傍にいてくれて、好きでいてくれて、ありがとう。
幸来に対しての好意が恋愛感情ではなくなったら、気づかないふりはやめるから。
その頃、育てているローズマリーも大きくなっているだろうし、また曲を書くね。
ローズマリーの花言葉に、「変わらぬ愛」以外に、「静かな力強さ」もある。
曲を作り続ける事を、ずっと続けていきたい。
今までもこれからも、和音でたとえると低音のような「静かな力強さ」で、支えてくれていたのは、君だった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回の更新でローズマリーはおしまいになります。
この後、美空が幸せになるのかは、また、別のお話になります。




