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【7】

【7】


 いつもはスマートフォンでデータをやり取りしていたのを、今回は直接の反応が見たくなって、私は知り合いの子とコンビニに呼び出した。

 大学の近場にあるコンビニは、手頃な値段でイートインできるから、その場所に決めた。時間帯はそこまで人が来ないお昼前の午前中にした。喫茶店の方が美味しいけど、そこは、相手の事を私なりに考えた結果だった。変な気遣いだっただろうか。

 そんな事を考えながら、待ち合わせしたコンビニの店内に入ると、すでにその子は来ていた。

 「珍しいね、直接聴いて欲しいって」

 「ごめん、いつもの提供する目的のだけじゃなくて。ただ、作曲したのがあるからその感想が聴きたくて」

 「そうなんだ」

 「飲み物買ってくるけど、何がいい?」

 「え? いいよ」

 「買わせて。今回、私の都合で付き合わせているから」

 「じゃあ、緑茶」

 「了解」

 「先に席とっておくね」

 「分かった」

 自分のミルクティーと緑茶をレジに持っていき、会計を済ませてからイートインスペースに向かう。最近のコンビニはある程度の事ができるから、便利だなと思いながら隣の席に座る。スマートフォンにさしたイヤフォンを相手に渡した。

 「じゃ、再生するね」

 どこか嬉しそうな表情をその子は浮かべていたが、2曲目の「ローズマリー」になった時に顔が赤くなった。

 「?」

 顔が赤くなるような情熱的な歌詞でもない、と思う。

 そこまで思ったところで、いつもの提出したのと違うところを一カ所思い出した。いつもは、ピアノの音でメロディーにしているので、歌詞をメール本文に添付して送付している。

 けれど、「ローズマリー」だけは、何処かに出すつもりがなかったから、深夜の時間帯のテンションで、メロディー部分を小声で歌ったものを録音してのと、曲の方と両方を録音していて二つ電子ファイルが存在している。

 「あ、ごめん…間違えた。こっちが…」

 スマートフォンを操作しようとした腕を捕まれた。

 「?」

 「歌、良いね」

 「あ、ありがとう」

 「今度から、こっちで送って」

 「…前向きに検討します」

 どこで録音しよう。

 毎回カラオケ、というわけにもいかない現実があるわけで、社会人の真似をしてごまかそうとしたら、あっさり見抜かれた。

 「逃げないで」

 「ハイ」

 「自分で歌おうとは思わないの?」

 「うん、私が歌うよりも、上手い人が歌った方がいいから。それに、その方がより多くの人に聴いてもらえるという野望があって」

 「……」

 そこまで言ったところで、その子は黙ってしまった。

 あたたかい缶の紅茶の蓋を開けて、一口飲む。気まぐれにミルクティーを買ってみたが、いつもは甘いと感じるのに、今は丁度よくて美味しいと感じる。

 「分かった。でも、こっちの方がイメージがつかみやすいから、今度からこれも送って」

 「できたら、ね」

 「なるべく送って」

 「…うん」

 結局、私は歌声も添付する事に同意してしまった。

 「そういえば、最初に作曲頼まれた時も、こんな感じだったね」

 「覚えていてくれたんだ」

 「うん、世の中には珍しい人が居るな、と」

 「ひどい」

 作曲して欲しいと頼まれたのは、大学のキャンパス内での隙間時間の庭で、人がほぼいない事を確認して曲を小さい音で流していた時の事だった。

 万が一聴かれたところで、私が作曲したオリジナルの曲だと思う人はいない。他の人がサイトで発表している作品だと思われる。

 気づかれたところで、聴かなかった事にしてそっとしておかれるだろうと思っていた。

 それなのに、この子は『作ったの?』と質問してきて、その次には、歌う事が好きなので、作曲してほしいと依頼してきた。私が自分で作曲した事を見抜き、さらに曲作りをして欲しいと依頼してくるなんて後にも先にも、この子だけだった。

 「ごめん、でも、すごく嬉しかったから、忘れる事なんてできない」

 そう返したら、その子は、嬉しそうな表情を浮かべていた。


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

次回の更新あたりで、今回のローズマリーは完結予定でいます。


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