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平日の昼間、散歩をしていた私は商店街の花屋前を通りかかった。

以前、検索した時に出てきたローズマリーが気になり、店内に入る。探しながら一周すると店の奥にある鉢に植わっているコーナーに、小さな苗の状態のローズマリーが置いてあるのを見つけた。

思っていたよりも、小ささが頼りなくて、無意識のうちに手を伸ばす。

「購入されますか?」

レジで花束の接客をしていた店員が、いつのまにか近くに来ていた。持ち上げた時の重さが軽くて、側面に貼られている値札で値段を確認する。買えなくもない金額なのを見て、「はい」と頷く。

他にもハーブ関係が置かれている。

「では、袋にいれますね」

「鉢物だと、何が人気ですか?」

店員は少し考えながら、隣に置かれた鉢を指さす。

「面倒をみるのが簡単な植物が人気ですね。生命力があって丈夫なアイビーや水分をそこまで必要としないサボテン、多肉植物はぷっくりとしている姿が可愛いと買われていかれる方が多いです」

「……やっぱり、初心者だと育てやすい植物の方がいいのかな」

会計をすませて、ビニール袋に入っているローズマリーを受け取る。店員はレジ近くに置かれた折り畳まれた育て方の用紙をわたしてくれる。

「みなさん、自信がないだけです。確かに植物によって病気になりやすいものもありますが、まずは愛情をもって育ててみてください」

「はい」


連れて帰ってきたローズマリーを、自分の部屋の窓辺に置いた。植物を一つ置いただけなのに、部屋の空気が変わった気がする。生きているという空気は、そこに居るだけなんに、一瞬で空気を変えてしまうものらしい。

指先でつんつんとつついてみた。

「これから、よろしく」

植物だから声に出しての返事はなかったけど、頷いてくれた気配がする。

 上手く育ててあげられる自信がなくて不安なのに、自分という存在を必要としてくれている存在がいる事は、ほんの少しだけ心を強くしてくれる気がした。

 霧吹きがなかったので、ティッシュを湿らせて葉ふきをしてあげる。鉢の中にある水分は十分で、もう冬に近い秋なのでそのままにしておく事にした。

「よし、やりますか」

スマートフォンをたちあげて、作りかけのファイルをソフトに読みこませる。

先日書きかけの歌詞はまだ、書き上げていない。

他に書けているものから作り始めていたので、その曲からやっていく事にした。スマートフォンを起動し、作曲ソフトが入っているフォルダーを開くと、今まで作ってきた曲のタイトルが並んでいる。


趣味として曲作りをして、2年が経過していた。

何曲作ったのだろうかとパソコンの中にある作曲数を確認してみると、30になっていた。それこそ、詞を書いて…という一番最初から作り始めたのは、そのうちの半数ぐらいのもので、残りの半数は、今まで作曲に興味があっても、してみるところまで一歩を踏み出せるまでの数年間、いいなと感じた歌詞を見ながら、こういう構造になっているのかもしれないと、書きためていたものだ。単純に一番と二番、それと似ている時数で展開を作り出し、言葉の自然な高低差でメロディーを作り出す。

そんな状態で描いた作品だ。

高校生から大学までの3年間、書きためたものを消化していくのは、1年間だった。

あっという間に消化されてしまう。作る時間よりも、消費していくスピードが速い事に対して、プロは恐怖を感じる事はないだろうかと疑問を抱いた事もある。

こんな情報はただの目安、そう思いながらも、自分の作品だけで食べていくのには、どれくらいの速度で作ればいいのか、ネットで検索してみたこともある。

……結果は、月に1曲ぐらいの出せるものを作り出すというもので、自分には、無理かもしれないと苦笑を浮かべた。

それでも、私は、できることなら、作品で収入を得たいという欲望を消す事なんて、できそうにない。


「……何か、暗い?」

窓からは夕日がさしこみはじめていて、作業を開始してからは、数時間が経過しているのに気が付いた。丁度、区切りのいいところまでいったので、今日の作業はこれまでにする事にした。

たぶん、自分の事だ。

少しの休憩の後にやり続ける事はできる。できはするけど、それと、集中して作品の質を高める事ができるかどうかと、楽しめる時間を過ぎてしまっては、意味がない気がする。なにより、最低限の家事はやらないと両親に怒られてしまう。


「あ!」

ふとした瞬間に、言葉が浮かぶ。

書きかけの歌詞をどうしようかと花言葉を思い浮かべていた時、歌詞が浮かぶ。

それは、何もしないから浮かぶものではないと、ルカは言っていた気がする。

浮かぶのはいいけど、どうして、こんな時にという場所に限って浮かぶ事もあるのだと。浮かばないより、浮かぶ方がいいに決まっている。だけど、何も水場回りの掃除をしている時になくてもいいと思う。

生活防水はされているらしいけど、機械だから防水を過信する事もできず、なるべく水滴をつけないように気を付けていた。

急いで手を洗って拭いて、スマートフォンに続きを打ち込む。


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

次回の更新は、9月19日以降を予定しています。


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