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【2】


【2】


『甘える』、『甘えられる』というのは、マイナスのイメージで語られる事があるし、度を過ぎたら、お互いにダメになって関係が壊れてしまうのも事実だ。

これは、辞典で書かれているような意味ではなくて、私自身の中での意味だ。

相手を『頼る』というのと同じ意味だ。『頼る』事は、自分の弱さを相手にみせ、受け入れてくれる事に確信があり、相手を信頼していないとできない行為だと思う。

誰かに必要とされる事は自分一人では出せない力を出す事もできるから、もう、お互いに足りない部分を支えあえるなら、『甘え』もいいと思う。

結果、『甘える』事が許されるのは、『幼い雰囲気』ではなくて、度を過ぎないけれど、自分の足りない部分を支えてくれるような信頼関係があって、『人として好感をもたれている』からだ。

それを全部言わないで短縮すると、さっきの「甘えればいいのに」の一言に省略されてしまう。

 

珈琲を飲みながら、その話題でもりあがっている2人の会話を聞きながら、違うと感じた部分を頭の中で整理してみる。何かで使えるかもしれないと思い、スマートフォンのキーワードだけ、メモをする。

そのまま、作詞をするために、「甘える」を詞の中に書くためには、どうしたらいいのかの連想ゲームを開始する。スマートフォンに視線を落としたまま、動かなくなってしまった私に視線を向けている気配を感じた。

視線を2人に向けると、不満そうに眉をひそめているのとジト目になっているのに、視線を合わし続けているのが辛くなってそむけてしまう。

「うん、話は聞こえていたよ?」

「本当?」 

「聞こえていたじゃなくて、聞いていたの?」

このキャンパスライフでの付き合いだというのに、幸来はもう私の思考回路を読めるようになってきていたらしい。

『本当に?』と返してきた夏美さんは言葉のニュアンスの違いに気づいてなかったけど、幸来は話の内容を理解するように、ちゃんと「聞いて」いたのか?と質問してくるのは、話を聞いていないと見抜いて確信をもち、言葉のニュアンスで言い逃れできないように質問してきたから。

「えーと…話を聞こえていたのは、本当」

苦笑を浮かべて、そう返すしかなくなっていた。

それでも、話の半分は、私にとって同じ内容だったのは覚えている。一度、答えが出ていて、それを伝えているから、つい聞き流してしまっていた。

「ひどい、私の事はどうでもいいと?」

本気で言っていないのは分かっているけど、少しは困ってしまう。

どこの女優かと思うほどに感情たっぷりにそう言われ、自分でもますます苦笑が深くなっていくのを感じた。

「そういうわけじゃないけど…」

どうでもいいと感じている関係のない他人なら、わざわざ自分の中で言いたい事を整理してどう伝えるなんて面倒な事はしない。

「分かっているけど、言ってみただけ」

「そうですよね」

たぶん、幸来は話を聞いていなかったのに怒って、わざとそう言って、困らせたいだけだと思う。

そういえば、あるラジオ番組で、日常の何気ない出来事に、自分に好意をもってくれているのではないか?と感じた出来事を投稿する番組あったな。

今の状況なら、何個も書けそうだ。あるはずのないこうだったらいいのにと妄想する事が、恋の一部なのだと知ったのは、つい最近の事だった。だから、同時に、こんな切なさをともなう感情を、私は優香にさせてしまっていたのかと、今更、知った。

そして、以前、ルカが『「恋」をする時に限って、創作意欲がましてくる』と苦笑を浮かべていたのを思い出す。きっと、ルカも似たような事を感じた事があるのかもしれない。

夏美がスマートフォンで時間を確認する。

「あ、もうこんな時間…ごめん、用事があるから、そろそろ帰るね」

「じゃ、私達も帰る」

「また、今度お茶しよう」

3人とも席を立って、お店の外に出た。


外に出てから、別方向の夏美と別れると、偶然前から仕事帰りの優香と会った。


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