ソロモン大海戦
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昭和一七年八月七日、日本海軍が最前線基地として、飛行場を作り上げていたガダルカナル島及びその対岸に当たるツルギ島に、米軍が上陸した。当時、軍令部は米軍の反攻を昭和一八年からと考えていた為、これは完全に不意を疲れる形となった。
同方面の警備に当たっていた第八艦隊は、ツルギ島よりの通信を受け取り、ラバウルの航空隊、第六戦隊と協力し、旗艦『鳥海』で殴り込みをかけることとした。
八日及び九日の夜間に海戦は生起し、結果としては、上々の物であった。第八艦隊は、第一目標であった輸送船を逃したものの、敵重巡四隻撃沈、一隻大破という戦果を上げた。
これが後に日米双方が死力を尽くし、小さな島々を奪い合う壮絶な戦に成ろうとはこの時点では誰も気付いていなかった。
そして同月二三日、南雲中将率いる第三艦隊の姿がソロモン海にあった。
ここで、南雲中将は艦隊を南雲自身が将棋を掲げる『翔鶴』と『瑞鶴』を主軸とした第一航空戦隊と、山口中将が将棋を掲げる『飛龍』及び『龍驤』を主軸とした第二航空戦隊に分けていた。
これは、ミッドウェイ海戦の戦訓から空母を集中させることの危うさが認識されたからであった。又、同海戦のもう一つの戦訓として、敵攻撃機を早い段階で察知出来る様に『翔鶴』と『飛龍』には対空電探が付けられていた。
併し合衆国も、ヨークタウン級空母『エンタープライズ』、レキシントン級空母『サラトガ』ワスプ級空母『ワスプ』を主軸とした、フレッチャー中将率いる第六一任務部隊を、同海域に進出させていた。
二四日、九時
「電探に感有り!敵機一七五度!」
一七五度と言えばガダルカナル島の方向である。ならばこの機体は同島のヘンダーソン飛行場より飛び立った偵察機の可能性が高い。電探員の報告を聞いた山口中将は、即座に直掩隊の零戦を三機偵察機と思われる航空機へと向けて放った。
零戦は、即座にこのカタリナ飛行艇を電文を打つ間を与えず、撃墜した。
その後、新たな偵察機が探知されることも無く、一一時三○分『飛龍』『龍驤』から第一派攻撃隊がヘンダーソン飛行場に向けて放たれた。これは完全な奇襲と成り、ヘンダーソン飛行場の機能は瞬く間に失われた。
併し、攻撃を受けたという報告はフレッチャー中将へと届き、第二航空戦隊の存在は彼の知る所と成ったのである。
フレッチャー中将は一二時三○分より、索敵機として艦攻一○機を放った。
そして、一三時四五分。その内の一機が第二航空戦隊を捉え、その場所をフレッチャー中将の元へと打電した。フレッチャー中将は即座に『サラトガ』より三八機もの攻撃隊を発艦させた。
併し、日本側も既に米軍空母の姿を捉えていた。重巡『筑摩』の水上偵察機が、一二時二○分に『エンタープライズ』を主軸とした第六一.二任務部隊を発見、艦隊へと打電していた。
そして、一三時一○分。第一航空戦隊より計六五機の第一派攻撃隊が『エンタープライズ』へと向け発艦した。この第一派攻撃隊は艦戦と艦爆のみで構成されており、艦攻は第二派攻撃隊へと回される流れであった。
「探知されたか……」
山口中将の言葉には焦りが満ちていた。『飛龍』『龍驤』はこれからガダルカナル島へと飛ばした第二派攻撃隊の収納も行わなければならず、収納した第一派攻撃隊の再爆装も未だ完了していない。
つまり第二航空戦隊は手が出したくとも出せない状態である。
「まるでミッドウェイだな……。だが、今回は第一航空戦隊が別行動と成っている。此処は南雲さんに任せるより無いか……」
山口中将は歯がゆそうにぼやいた。
攻撃隊が仕掛けたのは日本艦隊の方が早かった。一四時四○分、第一航空戦隊より放たれた第一派攻撃隊は『エンタープライズ』へと攻撃を仕掛けた。
計三七機もの艦爆はその内一○機を落とされ乍らも、『エンタープライズ』に爆弾七発を命中させ、これを大破に追いやった。
一方の第二航空戦隊は、一五時一○分、『サラトガ』より発艦した攻撃隊の攻撃を受けていた。
直掩隊の零戦がドーントレス爆撃機に攻撃を仕掛ける。ドーントレスは反撃を試みるも、空母を遥か前にして、何機も落とされていった。
だが、完全に防ぎ切ることは出来ず、『龍驤』に爆弾が一発命中した。これは破壊力に優れた一○○○听爆弾であった為、『龍驤』はこの一発で離発着不能と成ってしまった。
併し、幸いにもこれ以降の攻撃は来ず、日本海軍はこの海戦で一隻も空母を失うことは無かった。
併し、第一航空戦隊が放った第二派攻撃隊は敵を発見すること叶わず、日没を迎えた。このことによって、米国海軍も空母を失うことは無かったのである。
後に第二次ソロモン海海戦と名付けられたこの海戦は、両軍とも空母喪失艦は無く、引き分けに終わった。
だが、ガタルカナル島のヘンダーソン飛行場は、第二航空戦隊の二派にわたる攻撃により、一時使用不能に陥った。
この機を逃す日本軍では無く、日本海軍はそれ幸いと輸送艦によるガタルカナル島への補給を行った。
同月三一日、珊瑚海の哨戒を行っていた『サラトガ』が伊二六潜の雷撃を受け、損傷。中破の損害を負い、戦線離脱を余儀無くされた。
更には九月一五日には、『ワスプ』が伊一九潜の雷撃により大破。半日後に沈没した。
これで米国側の太平洋で稼働可能空母は『ホーネット』一隻已となり、とてもガタルカナル島を守備する航空兵力を捻出出来なかった。
ガタルカナル島の兵力は陸軍が一○月に一個師団をガタルカナル島へと向かわせたことも有り、俄かに日本軍側に有利に成っていた。
そして遂に一○月一五日、日本軍は漸くヘンダーソン飛行場を奪取することに成功した。