居候決定しました?!
本当はこういう話になったよ、と流して次の日の朝から始まる予定だったんですが1話分書きました。すみません。
食事を終えたロウジ達は部屋を移りロウジの事情と少し世界の違う部分に触れてこれからの事を決めます。
「あぁ、ありがとう。マクイーンお前達はまた呼ぶまで一旦下がっていてくれ」
「はい。かしこまりました。ではお前達、私達は一旦出て待機していようか」
「「はい」」
客間へ移動してお茶を用意して貰い。
一息ついた頃を見計らいバートさんが執事さん、マクイーンさんに退室の指示を出してマクイーンさんがメイドさん達に指示を出す形で部屋を出て行く。
ちなみに食事後の挨拶は皆さん何も無くて俺だけがご馳走さまでした、と軽く頭下げながら言ったらやっぱり驚かれたよ。本来なら手を合わせて言うのだと言ったら更に驚かれた。
(そういえば。解析)
【セリ茶】 アイテムレベル3
セリの葉を蒸して作ったお茶。独特の甘みと苦みがある。飲むと少し落ち着く。
MP回復5 体力回復5 気力回復5 精神安定・ 微
( 材料: セリの葉 . 水 )
・・・セリ?セリってあのセリじゃないよね?・・・・むぅアイテム図鑑とか植物図鑑とか欲しいな。
良く考えてみれば材料がどんな物かが分からなければ結局はなんにもならないんだよね。
まぁ、それはまた課題の一つとして。
「ええと。それで、まずはですね」
3人が俺の方を向いたのを確認して切り出す。
一度死んだらしい事。
それがこの世界における創造神でありあちらの世界でも最高位に近い神であるシヴァ神のせいであった事を話し。
・・・この時点でハイネスタさんが「やっぱりそういう性質の神であるのですね」となんか変に納得していたのがなんとも言えない。
それで寿命とか関係なく誰にも想像つかない神の力を受けて悲惨な死に方をした事やあちらへ居られなくなった詫びという形でこちらの世界へ来た事。
いきなり見知らぬこちらで生活するに当たってシヴァ神と直接話せたり結構な優遇を約束されている事までを正直に話した。
「ふうむ。なるほどな。それで「なんだかすごいですね。それで成人年齢もテーブルマナーも頭になかったんですのね」なんだな」
・・・・
・・・
ええと。
「はい。あちらでも昔は戦、国同士の戦争が多かったり流行り病が多かったりで死にやすかったからか成人年齢が12歳だったり15歳だったりしたみたいですが、今はかなり平和な時代で寿命もかなり伸びてるので。」
向こうはすでに日本に限らず世界規模で同じような感じだからね。
「それとテーブルマナーを知らないのは食事のジャンルや国毎にちゃんとしたマナーがあるのですが、自分達の普段の食事とここの形式が違うのでマナーが違っているのと僕が、僕の家族があまり違う形式での食事をした事がなかったからです。すみません。」
うん。何というかね。世界の名誉に関わるというか。世界が悪いんじゃないよ、俺が悪いんだよ、という、ね。
「なるほど「そういう事なのですね」なんだな。」
「そういう事かぁ」
「それとすみませんバートさん。さっきのなるほど、の後からが良く聞こえませんでした。」
「あ。あぁ。さっきの?・・・「あらまぁ。ごめんなさい。」だよな。」
「ハイネ」
「あら」
・・・・うん、わざとじゃないんだろうとは思う。思うんだけど。笑っちゃダメだ。笑っちゃダメだ。
ついでに言うと右手で思わず、といった感じで口を押さえる仕草は結構魅力的です。
「あぁ、ロウジ。あまり気にしないで。お母様はいつもこんな感じだから。」
アンジェリカさんも頭に手を当てながら呆れたように、っていうか呆れて言ってくる。
「ああ、いや。俺が言いたかったのはそれで神の眷属というスキルまで入手する事になったのだな、と。普通であれば称号にもなっていそうだが一度死んだらしい事や世界を渡ったなどの事から称号にはなっていないのか、などと考えてしまってな。」
「あぁ。そうですね。普通なら称号にもなりそうですよね、確かに。」
言われてロウジも考えてみる。
が、これはシヴァ神がロウジにも他の神にも裏事情がバレるとマズイからつけていないだけであるので考えてもわかるわけはなかった。
そして同じようにスキルについても本来なら神の眷属という称号にHP自動回復が付随しているのだがこれまた同じ理由からそこは隠されている為に・・・スキルはシヴァがどうこうではなくロウジの身についてしまっている為に消す事が出来なかった・・・スキル効果が微妙なものになっているのだがやはりロウジ達が気がつく事は無いだろう。
「まぁ、神の、とか称号があっても困るだけなので無くて構いませんね」
だからこう結論付けた。
「それで。こちらの世界はヴェーダと言って今居るのはインディア大陸の大国リアルデ王国という国になるのだが。ロウジの居た所はなんというのかな」
「・・・国の名前は日本と言って島国です。世界には名前はなかったですね。ただ。分かるか分かりませんが大陸や島は星、丸い惑星の上と言うか、大地ですね。丸い球体の地表面に存在していまして。その惑星というのは更に宇宙という大きな海みたいな中にたくさん浮かんでいて・・・住んでる場所=世界なら世界の名前はその地球という星の名前になるんでしょうか。大きく言うと宇宙と名付けられたその海みたいな物ということになるんでしょうけど。ユグドラシル世界、なんて言い方をする人も一部では居るようですがそれは世界の一般的な認識ではないですし。」
なかなかに難しい話だと思う。学者なんかには自分の認識している空間が世界だ、なんて言う人が居るけどそれにしたって現代人は地球の外にも世界が広がっているのを知っているからな。
世界を地球としてしまうと月や火星は異世界なのか、って話になっちゃうもんね。
だから現代日本人の俺としては地球という世界から来ました、なんて事は違和感ありまくりで言いたくない気がする。
かと言ってユグドラシル云々については学者や作家なんかが平行世界論やら神話論やらで語っている話だし。
世界の名前はまだない、だよな。
「ふうむ。難しいな。」
「難しいお話です。」
「・・・理解するのが難しいわ」
うん。そうだよね。自分の国の外に出た事がなければその人にとっては国が世界の全てだし。
シヴァ神がこの世界は星の形をしていると言ってたけど宇宙を理解しろ、と言っても難しいと思うよ。
「ですよね。そもそも大陸を出て他の大陸行ったり世界が平らなのか丸く星の形になっているのかでさえ確認するのも大変な事ですし。」
「あぁ。だが世界が丸い、と言うのは神話で語られている事だな。」
「ありゃ、そうなんですね」
「うむ。シヴァ神が妻であるパールヴァティ女神を含めた家族神を始めとした神々と共に暗黒の海に丸い大地を創って浮かべた、とされている。世界を一周という事を目指す冒険者や探検家は居るのだがいかんせん危険すぎて誰も成し遂げていない。なので神話の中の話、未確認な話という事になる。」
「・・・なるほど。世界一周は平和な世界でも大変な事ですからね。それと。あちらの世界でもシヴァ神の奥さんはパールヴァティという女神だと言われています。」
・・・いや、疑ってたわけじゃないけど・・・どうやらあれが本物のシヴァ神様で確定かいな。
「あら。こちらの神話とロウジ様の居た世界の神話を比べてみるのも面白いかもしれませんね。」
「それは面白いかも」
「あぁ。それは確かに面白いかもしれませんね」
とはいえインド神話はそんなに詳しいわけでもないけど。でもシヴァ神の家族に関してはシヴァ神が大黒天でパールヴァティ女神が波羅和底、子供のガネーシャが歓喜天等と仏教にも入ってるからな。
・・・・いや、と言うか?シヴァ神は一部の神と世界を創ったと言っていたがまさか家族作業だったりするのかな?・・・・うーむ・・・パールヴァティ以外の奥さん達の名前が出ない事を祈ろう。悪い予感しかしないから。
「わたしが一番最初に思いつくのはお金。お金とかは大丈夫なの?」
アンジェリカさんが聞いてくる。
よくぞ聞いてくれました!!
「はい。実は普通の家を買えるぐらいは持っているはずなんですが。」
(ボックスオープン)
うーんと。
まずはアイテムバッグ (500kg制限)を出す。
そこから皮袋を出して机、木のテーブルの上に置く。
「これが全財産なんですけど。お金の単位とかそもそもいくら持たせてもらってるのかも細かい事は分かってなかったです。」
そう。だいたいの目安は希望したけど実際にいくら、というのは聞いてなかった。
「大金貨2枚、金貨6枚。これだけでも一財産ね。銀貨5枚に銅貨が50枚。これで全部ね。」
「ほう。本当に一財産だな。」
アンジェリカさんが中身を確認してバートさんが太鼓判を押してくれる。
「そうなんですね。お金の単位すら分かってないので正直良く分かりませんが。」
と、俺が言うと3人ともに苦笑する。
大金貨以外は全部が500円玉より少し小さいくらいの大きさで違うのは描かれている図柄と材質だね。銀貨だけは少し薄い感じだ。
「石貨が無いのね?何故かしら?」
「せっか、ですか?」
ハイネスタさんが不思議そうに首を傾げたから俺も釣られたように聞いてしまった。
「ふむ。まずは貨幣の種類だが。これは価値の低い方から石貨、これは砂に動物や魔物の骨を混ぜて作る。次に銅から鋳造する銅貨。銀から鋳造する銀貨。金から鋳造する金貨。少し多めの金と黄銅を混ぜて鋳造する大金貨。水晶を加工して作る晶貨がある。他の国や大陸によっては鉄から鋳造する鉄貨や高級な象牙から作る象牙硬貨や白金貨、紙の紙幣が使われている所なんかもある。」
「なるほど。国や大陸が変わるとお金も色々変わるんですね」
大金貨って500円玉よりも大きくてコップの口くらいの大きさがある。これ全部が金かと思って凝視しちゃってたけど、黄銅・・・これは良く金と間違う人が多い奴だよね・・・が混ざってると聞いて変に安心した。
「あぁ。例えばこの国では鉄は民の暮らしには欠かせない物であるし武具にも必要としているからな。鉄貨は使われていない。銀も希少だな。」
「なるほど」
「次に金の単位だが。この国だけではなく大陸では一応ヴァティというのが統一単位ではあるのだが。残念ながら通常それは金品の取り引きの現場ではあまり使われていない。それらでは今数えたように石貨何枚、銅貨何枚、と言うのが普通だ。露天でさえ価格表はそうなっている。」
「?そうなんですね。1ヴァティ、100ヴァティとかは言わないんですか?何故でしょう?」
「言わないわね〜」
「うむ。実際には明確な理由は分からんのだが、まずヴァティというのが不敬ではないか、という事を考える人間が居るというのがひとつ。次に計算がなかなか出来ない、難しいという意見がある、というのが言われている理由だ。」
・・・・不敬だと思うなら変えれば良いだけでは。何か使うのに思惑があったりするんだろうか。
と、言うか
「計算がなかなか出来ない、ですか。」
大国と言われる国でも識字率が低いとか。教育レベルが低いとか?
「うむ。教育機関である学校は大都市にしか無いしな。まぁ、実際には慣れ、でしかないと思うのだがな」
うん。価格とかそうしたらこうなるとか計算方法なんかも変わらないわけだしなぁ。
「それに関係するのが金銭の価値なのだが。石貨80枚で銅貨1枚。銅貨80枚で銀貨1枚。銀貨8枚で金貨1枚。金貨80枚で大金貨1枚。大金貨8枚で紫晶貨1枚。紫晶貨8枚で緑晶貨1枚となっている。だが普通の人間はまず晶貨なんかは一度も見ずに生涯を終える人間がほとんどのはずだ。」
・・・・んん?
「すみません。なんか80枚とか8枚とか聞こえたんですけど。」
「ん?何故謝る?・・・先程も思ったがロウジは少しへりくだりすぎではないかな?」
「・・・あぁあ。すみませ・・・すみません、というのはウチの国だと色々断りを入れるのに使ったり謝罪のみの使用というわけではないので。。。」
すでに習慣というか癖のレベルになってしまってるよね、これは。
「ふむ、まぁ良い。80枚で1枚だったり8枚で1枚だったりするのはやはり価値の問題だな。先に少し言ったが銀貨については我が国では銀があまり掘れない上に対魔武具に必須で貴重であるからな。むしろ銀貨を取りやめないか、という動きにまでなっていたりするのだ。鉄貨が無いのは硬貨に使うよりも実用を重視して、だな。」
「・・・なるほど・・・」
いや、俺が聞きたいのはそういう事じゃなくて。まぁ、そこの理由も知れて良かったけども。・・・・どうやって聞けば良いんだ?
「・・・あと。何故8でひとつ位が上がるんでしょうか?10では無いんですね?」
これで分かるか?
「・・・ふむ。なるほど。この大陸では無いが10でひとまとめ、という考え方があるのは知っている。10という数も使用されている。だが、この大陸を始めこの世界では8が至上の数であり満なのだ。88や888が至高でありひとつ余分な9という数は忌数と言って忌避されている。」
レベルの上限も普通は88なのだそうだ。人族ではなかなかレベル上限に達する事は出来ないが過去に英雄と呼ばれた人間の何人かと自ら確かめた学者が居たらしい。
「・・・なるほど・・・八進法が生きているんですね。十進法に慣れてしまっていると大変そうです。」
正直時代が逆行した感が否めない。
「・・・なるほどな。ロウジの国、世界では10を満とする考え方が主流なのだな。」
「はい。昔は八進法も使われていて今でも名残があったりしますが今ではどこの国でも使われてない、はずです。」
使われてない、よな。
日本でも八進法を長く使っていた大陸の影響から九尾や九という数字が忌数とされる考え方は未だに残っている。
「慣れてしまって尚且つ良く使う常識が違う場所に行くとすごく苦労するわね」
「それは数の数え方などの常識が変わる、という事ですよね。口にするより大変そうです。」
アンジェリカさんが驚いたように口を押さえている。
うん。アンジェリカさんも色々勉強してきてその知識がひっくり返った場合でも想像したのかな。
ハイネスタさんは何かそういう経験があるのかな。
「ふむ。これは本当に色々と細かい事まで教えてロウジの世界の知識とも擦り合わせを行って行かないと大変な事になりそうだな。ロウジに元いた世界の知識を捨てろ、忘れろ、というのは酷であり違う気もするしな。」
「それはそうね。例えどんなものでも知識は無いよりはあったほうが良いのだし」
・・・バートさんとハイネスタさんはやっぱり冒険者・・・あぁ。冒険者についても知りたいな。なれるようならなりたい職業だし。2人は冒険者だった事から色々な経験をしていそうだ。教えを受けるのに適した環境、と言えるかもしれない。
・・・やはり今ここに居られるというのはすごく幸運なのかもしれないな。
「・・・ふむ。ロウジも疲れがあるだろうし今日はとりあえずロウジの現状確認だけで明日からこの世界の教育をしていきたいな。だが俺もハイネもアンジュもそれぞれにやる事がある故にずっと付きっ切りというわけにもいかん。どうするべきか」
「そうですわね」
「それはそうね。わたしが教えられることは教えていきたいけど」
・・・・うーん。
ありがたすぎるんだけどこればかりはなぁ。
「バートさんの知り合いやここに居る人で誰か信用出来る、と判断した人にはある程度の事情は話して貰ってしまって構いません。神云々、創造神云々の部分は隠して貰いたいですが違う世界から来た、という事は言ってしまって良いと判断したら話してしまって下さい。こちらもそうすればその人には甘えられる部分が出て来ますので」
・・・うん。神の眷属やら創造神と知り合いとかは広められるとマズイ気がする。
「うむ。まぁ普段話すには他の大陸から、でなんとでもなるがな。分かった。それならロウジが色々知る為にも長くいてくれている執事のマクイーンとアントワンヌにも事情を話して「それは良い考えです。そうしましょう」協力して貰うとしよう。」
「それが良いわ。アンは少し心配だけれどあの2人なら信用出来るし。」
・・・うん。今度は聞こえましたよバートさん。
「アンさん、ですか?メイドの?」
執事さんは分かるんだけどまだ若いメイドのアンさんに話して大丈夫というのはなんでだろ。・・・・あぁ、メイドさんとかここで働いている人の名前も覚えないといけないし自己紹介しないといけないよね。
「あぁ。アン、アントワンヌ=ナースル。あれは亡くなった俺の弟ビートの娘でな。姪にあたるのだ。アンジュにとっては従姉妹となる。」
「そ、そうなんですね」
・・うん。ビックリ。
アンジェリカさん、従姉妹がメイドをしてるってどうなんだろう。しかもアンさんも貴族って事じゃないのかな。亡くなった弟の娘、っていう事は何か複雑な事情でもあるのかも?
「あの2人ならば信用という点はもちろん、知識も人当たりに於いても問題はないと思う。それにアンならばロウジ付きのメイドにすればロウジもいつでも気兼ねなく色々教えて貰う事が出来るだろう。」
「はい。ありがとうございます?」
・・・・うんん?お付きのメイド?
問題ないのかいな?
良いのかいな?
お読みいただきありがとうございます☆
予定と違いズレて次話から本格的にロウジの異世界生活が居候という形ですが始まります。
異世界特有のものであったり何処かで見聞きした事があるようなものだったりまずは世界で暮らしていくのに知識を付けていく事になります。
次回更新は1日の予定です☆