宴会と料理と?!
さぁ、宴会です。
リザードマン達が用意してくれた宴会。
でも先に見たリザードマン達の様子だと歓迎されてるのかどうか。
どうなりますやら。
「えっと。イノシシ(?)はともかくこの魚はどこで?湖って見えないと思うんですが近いんですか?」
「そこニモありますが沼地がいくつか点在しているのと水路ヲ引いてありますデ、のお。」
「あ、あぁ、なるほど・・・そこ、沼?」
「そこにも」と言われた場所は集会場の横長の建物。
そう言えばクスシの家(?)からも大きな池みたいなのは見えてたけどそこはリザードマンだからそんな事もあるか、と深く考えない事にする。
知りたければ後で中を見せて貰えば良いだろうし。
そんなわけで。
集会場前の広場に作られた・・・と、言ってもゴザみたいに編まれた草の敷物が敷かれて木の杭のように打ち込んだ(!)脚に木の板・・・これもほんとに丸太から抜き出したような樹皮がついたままの板・・・を載せて作ったテーブルを並べただけの宴席の上座の方(さすがに最も上位は村長さん達だ)に座らせられた俺達は「村を救ってくれるピアリス様の使者に!」「「乾杯!」」という音頭とともに始まった宴会に参加していた。
そこに並べられた料理は・・・まぁ、なんというか豪快なバーベキュー料理が殆どというか。
それでも俺達用に合わせてくれたのかな?という料理もあり
「このキノコのシチュー美味しいの〜!」
「こっちの沼蟹も美味しいですよぉ」
「こっちの木の実で作ったナンみたいなのもいけます!」
「意外に魚介類があるにょにぇ」
フェア達も見慣れない料理があるのかあっちへ手を出しこっちへ手を伸ばし、とこの雰囲気と食べる事を楽しんでいるようだ。
真ん中ではイノシシ・・・ボアという獣が丸ごと焼かれている。
その近くではこれまたデカイ沼魚が網の上で丸焼きに。
貝やら海老やらも網焼きになっている。
大抵は少し切って焼いただけ、煮ただけ、という料理ではあるけど確かに悪くない。
・・・悪くない、というのはやっぱり味付けが、ね。
味覚の違いが一番ありそうだけどなんとなく一品一品、材料の一種毎の味が濃いというか主張しているというか。
かと思うと極端に薄味の淡白なものがあったり、とか。
「う〜ん。ウチはそんなに言う程化学調味料に毒されているとは思ってなかったけど、やっぱり現代日本人、という事なのかなぁ・・・」
多分、だけど。
要は調味料自体が少ない上に雑多な味を全体として調える調味料が使われていないからこんな風に感じるのかな?といった感想を抱く。
実際バートさんとこも貴族であるはずだけど料理に使われている調味料の種類は俺が理解出来る・・・つまりは俺でも日常的に使うくらいの調味料しか使われてないように思うし。
砂糖は茶色で甘みが薄い気がする。
塩は結構高い物のようで量は控えめだし。
胡椒はまんまコショウでこれがメインの味付けみたいだ。
唐辛子・・・名前はカラシらしいけど種類が豊富で辛味は結構使われるみたい。
味噌や醤油は今の所分からないけど村で醤油みたいな匂いはして来たから多分ありそう。・・・あ、いや、慣れた味過ぎてすでに食べていてもその物を見てないから単に気が付いていない可能性はあるかな。
・・・そう考えながら知らない素材や調味料として機能している(いや、知らないだけでちゃんと調味料として使われているのだろうけど)味を味わって食べていると作り手の本能というか知りたがりの本能がムクムクとしだす。
「このパン、じゃなくてピザ、でもない。ナン?これってどうやって焼いてるんですか?材料もあっ・・いえ、材料も小麦粉、小麦っぽくないですよね?」
【森の特製ナン】(アイテムレベル2)
クルミ・カラ等のいくつかの木の実と森麦を始めとした雑穀を混ぜ合わせてひいた粉を使ったナン。
砕く木の実によってこれだけで色々な味わいが楽しめる。
・・・いや、うっかりしてた。
料理もアイテム扱いで鑑定も解析も出来るんだ、俺は解析が出来るんじゃん、と質問の途中で思い出したんだよね。
まぁ、でも出された料理なんかは出来るなら作った人に直接話を聞きながら教わった方が良いというのが元々俺の信条ではあるし。
それに
(解析)
【森の特製ナン】(食材)(アイテムレベル3)
クルミ・カラ等のいくつかの木の実と森麦を始めとした雑穀を混ぜ合わせてひいた粉を使ったナン。
砕く木の実によってこれだけで色々な味わいが楽しめる。
味にも毒にも気をつけなければいけない為なんでも入れれば良いわけではないが雑穀を寄せ集めた森人料理。
(材料:クルミ・カラ・クスコ・ゴボウ・モリムギ・カワムギ・コムギ・ヌマネギ・モロコシ)
材料の情報についてはアイテム図鑑がある。
あるけど人前で出せないというデメリット付きで。
だから結局は材料について聞かなければ、教えてもらわなければいけないのだから作る気があるなら同じ事になっちゃうんだよねぇ。
まぁ、今は相手がリザードマンだし場所もピアリス様の管理地だから全然問題無さそうではあるんだけど。
・・・うん。
でも、宴席で図鑑とにらめっこ、なんてのは流石にないわ。しかも主賓が自分だし。
とりあえず試しに村長のパーロンさんに色々聞いてみる。
どうもゴボウはゴボウみたいだ。
カラ、というのは低木で細かい実がたくさんなって実がカラ、中の種子がカラシと言うらしい。
・・・どうも俺の知ってるカラシとは似てるけど別物だったんだね。
クスコ、というのは薬にも使われる赤っぽい実で味はあまりないらしいが栄養がある、と。
「ワレラノ料理ニ興味ヲ持って頂けたノデあれバ後程時間ヲ作りましょうカノ」
材料なんかも教えてくれるという。
「あ、ほんとですか?教えて貰えるならありがたいです。」
分量についてはやっぱりスキルのおかげでなんとなく頭に浮かぶけど実際に調理過程を見てみたい。
そんなこんなで情報交換(?)なんかもしながら平和的に楽しく時は過ぎて行った。
フェアとエリーが果物を奪い合って騒いだり、強い酒をうっかり飲んだフェアがいくつか机を吹き飛ばしたり、焼き芋の焼きが足りないとかフェアが言ってサラマンダーを数匹呼び出して走り回らせたり、わたしも大物とるのー!とか叫んで森の方へ飛び出して行こうとするのを皆で止めたり。。。等々あったりもしたけど概ね平和でしたとも。
・・・フェアとエリーはアリーから禁酒を言い渡されていたよ。
リザードマンの集落での宴会、という事だから力比べとかあるのかな?挑まれたりするのかな?とか内心ビクビクしてたんだけど、そんなイベントは無く。
皆さん陽気に飲んで食べて騒いで俺達に挨拶を結構丁寧にしてバラバラに帰って行った。
リンは村に入って治療に入る前に少しそういったすったもんだがあったらしいけど、俺についてはカフィーさんやボシンさんから力比べした感想を話していたみたいなのと、どうやらモルドスライムを殲滅した際の出来事で戦士ではなく魔法使い、しかも上級の魔法使いだ、という認識をされたようで・・・力比べの対象外になったらしい。
「ハッハッハァァ!ワレヲ負かすようナ奴ガ魔法使いだか、ト、力比べヲ避けられるトハ、ナ!」
背中を叩きながら言ってくるボシンさん。
臆病風に吹かれたヤツラモ多い、なんて言ってくる。
ボシンさんやパーロンさんは対応が全然普通だったんだけど確かに他のリザードマンは少し大人しい印象を受けた。
宴会が終わる頃には俺達とも(それでも俺は避けられてた気がするけど)交流しつつあちこちで騒がしくなったから慣れて来てはくれたんだと思う。
「我らニとってハ・・・ピアリス様ハ救世主デあり。未だニ庇護者デあり。存在自体モ神、ノようナもの、デスから、ノォ。その選ばれた方々ヲ疎んダり避けたりナド。本来ハするわけありませんデスヂャ。・・・デスガ、あれ、デハノォ。しばし猶予ヲ頂けれバ、ト思いまス、ガ、ノ。」
なんとなく、だけど申し訳なさそうに言ってくるパーロンさんが少し可哀想、というかこっちの方が申し訳ないような気持ちになってくる。
「あ、いえ。・・・なんと言うか。こちらは余所者、本当の意味で他所者ですし。俺自身が怖がらせてしまったのも事実でしょうし。むしろそれでもこれだけの歓迎会を開いて貰ってありがたいと思います。なので気にしないで下さい。・・・まだモルドスライムの問題も片付いてないですし」
なんか祝勝会ダぁ!と盛り上がっていたグループを思い出しながら・・・多分片隅で大の字に寝転んでいたり木製のジョッキを片手に寝転がっているのがそうだと思うけど・・・パーロンさんに答える。
「ウ、ム。・・・正直ニ言っテしまうト、デスナ。キャツラは歩みガ鈍ク脅威デハ無い、はずデスノヂャガ。日ニ日ニ目撃数ガ増えテいくそノ緊張感やら武器トなる物ノ不足、なニより我らニハ遠クニ居る相手ヲ倒せる手段ガ殆ど無ク。クワやスキ等ノ農具類モ柄ガ腐食すれバ取り替えテ・・・それモ周囲ノ森ヲ守れなけレバ無理ニなりますデノ。戦えるモノ達ノ精神状態ハあまり良ク無かっタデスヂャ。我らモここまデノ大発生トハ思いませんデノ。」
ピアリス様に救援を頼むのもモルドスライムを狩る為の武具作りも後手後手に回ってしまった、と。
「・・・なるほど。・・・ピアリス様はそんなに慌てる様子は無かったですがピアリス様ならすぐに駆けつけられるでしょうしね。今回俺達が来る事になったのは良かったのか悪かったのか・・・・?」
ん?なんだろ?
話してる内に何かひっかかった。
・・・なんだ?
・・・うぅん?分からない。
まぁ、ピアリス様も都合が良かったから俺達についでの仕事を頼んだような形なんだろう。
「ピアリス様ニとってハ我らモモルドスライム達モ保護対象デあるはず、デスから、ノォ。大発生ガ鎮まっテさえクれれバ我らだけデモなんとカなりまスし。」
ん?
あぁ。
「そうか。モルドスライムもここに逃げ込んで来た魔物、魔物の子孫、とかになるんですか。ここで生まれた魔物かと。・・・うぅん、なるほど。」
考えてみれば攻撃的ではないのは明白、戦闘力も微妙、やる事はカビの発生と腐食。うん、いわゆる雑魚モンスターか。
・・・いや、戦争では食糧への攻撃手段として利用出来る、のか?
「そう、デスナ。魔族ドモガ後陣ニ宵闇ニ紛れテ運んデ、トいっタ形デノ作戦ハ行われテいましタ、ナ。・・・キャツラハ毎回全滅デシタガ有用デハあっタノデしょう」
「う〜ん。なるほど。・・・複雑な気持ちになりますね」
モルドスライム達に個体の意思みたいなのがあるか分からないけど体良く利用されていただけ、とも言える。
そんなモルドスライム達だから大量発生しない限り普段は不干渉なんだろう。
「まぁ、上手ク、ハ。やっテいるトハ思いますガ、ノォ。迷惑ヲ被らナい限りハ自分達ノ生活ヲ優先、トいうノガここニ住むモノ達ノ基本方針デシタから、ノォ。それデモ、今デハ残っタモノ達モ少なクなり近クニ住むアングリーマッシュ等トノ交流ハ増えてます、ナ。」
「あぁ、なるほど。前はもっと色んな人達が居たんですね」
「・・・ハハ。そう、ですノォ。この森ダケデモ多クノモノ達ガ暮らシテおりましタ、ナァ。出テいっタモノ達ハ・・・ヒューマンガ溢れる世界デモちゃんと平和にニ暮らしテいるノダろう、ガ・・・」
う〜ん。
「そうですね。ピアリス様の居る町、村でもリザードマンの、多分冒険者が歩いているのを見ましたよ。世界を自由に歩けてるんじゃないですかね?」
冒険者の世界では表面上は、かもしれないけど差別もないだろうし。
基本的に冒険者ギルドが後ろ盾になるからギルドがある地域では変な事も無いのでは、と思う。
俺が冒険者登録を真っ先にしようと思ったのもそれだし。
「そう、デスカ。ピアリス様ガ貴方ガタヲ選んダ理由モなんとなク分かるモノデスナ。ム?おぉ。皆様お疲れデしょう。泊まっテ頂ク場所モ用意ガ出来タようデスノデ、よろしけれバ」
「あ、はい。そうです、ねぇ。・・・もう寝ちゃってる者も居るようなので移動させてもらいますね」
俺と話してるパーロンさんとこに1人のリザードマンが来て話をしたんだけど、客用に空き家にしてある建物を掃除して俺達が泊まれるように寝床なんかを準備してくれていたようだ。
で、パーロンさんの視線を辿って俺が見たのは・・・フェア、エリー、アリーの3人がテーブルの上に突っ伏して、ではなく上にエリー、アリー、フェアの順に山を作るようにして寝ている姿だった。
完全に身体全部が重なってるわけじゃないけど手やら足やら頭やらをそれぞれの身体に乗せる感じで息絶えて・・・いや、グッスリと寝ているようだ。
いつの間に。
「あ、あははは。ありがたいです。彼女達は連れて行きますので案内だけお願い出来ますか?」
「あたしがエリーとアリーを連れて行くよ?ロウジはフェアをお、願い」
「あ、どう?食べた?楽しんではいたみたいだけど」
「え?あ、うん。最初はやっぱ少し怖い気もあったけど。一緒に宴会にょ準備してたり子ども達と話してたりする内に慣れて楽しんでたよ」
「あ、そうなんだ。クスシさんとこから出てった後どうしてたか気にしてたんだよね。さっきもすぐにフェア達と動き回ってたし」
俺の隣はパーロンさんとリンだったんだけど。
リンが即魚の丸焼きショー(!)と網焼きの方に陣取っちゃったから話し相手がパーロンさんと村の人達よりも俺達に接していたボシンさん、カフィーさんだけだったんだよ。
カフィーさんは黙って呑んでいたし少し寂しい思いをしていたのは内緒だ。
「う、ん。ごめんにぇ?あそこ、臭いがきつくて。どうしても無理だったにょよ。村を歩いてたら子供達に珍しがられて。そうする内に広場で手伝いしてた、の。」
耳が伏せてるからほんとに申し訳ない気持ちでいるのがわかる。
「うん?謝る必要はないよ?あの臭いじゃ、ね。リンが走り去った時すぐに理解出来たし。ただ、どこ行っちゃったのか心配はしてたけど。それもこっちはこっちで忙しかったら連絡も出来なかったからね〜。・・・こっちこそごめん、だよ、その点は」
頭を掻きながら俺もリンに謝る。
「え?あ、うん。こっちこそ、それも。ごめん、なさい」
「うん。ごめん」
言って2人で顔を見合わせて笑い合う。
「とりあえず俺達だけで寝泊まり出来る建物があるみたいだからそこへ行こうか」
フェアを抱き抱える。
おんぶしようかと思ったんだけどフェアの身長からしてちょっと俺の腰に負担がかかりそうだから抱っこに変える。
「うん。」
エリーとアリーを抱き抱えて・・・巧い事前に2人を抱えてリンが応える。
「あない、ヲ。」
「「あ、はい」」
やって来たのは黄緑、まではいかないけど明るい色の光沢を持った鱗のリザードマン。
「スッチリ、いいまス」
「あ、はい。ロウジです。よろしくお願いします」
「リンです。よろしく」
てっきりまたカフィーさんかボシンさんが案内してくれるものと思ってたら違うみたいだ。
「は、ハイ。ロウジ、様ニハ料理、ニついテモ、いわれテまス」
スッチリさん、メス、雌?女性?のリザードマンみたいだけどそんなに共通語は喋れないようだ。
・・・いや、このくらい喋られれば上等なのかもしれないけど。
「あ。なるほど。それで、なんですね。そうですね、今日食べさせて貰った料理について材料とか作り方を教えて貰えると嬉しいです。お願いします」
うん。ボシンさんが来なかった理由がわかった。
そこは普通に一軒の平屋だった。
やっぱり階段を上がる建物ではあったけれどクスシさんの建物と同じく正確には高床式ではない。
階段を上がると敷居があって少し平らになり。
その後緩やかな坂を経てまた地面の高さに下りるのだ。
「俺達が寝泊まりするだけには少し広いけど・・・」
「ハイ。本来ナラ集団デ使っテ頂ク建物、デスノデ。デスガ。今ハ皆様デお使いクダサイ。ア。トイレットハあちら、デス」
「あ〜。分かりました。ありがとうございます。広いぶんには問題ないはずですし。ありがたく使わせて貰いますね」
見ると土間と台所・・・台所と言って良いか分からないけど、そんなスペースもあるみたいだ。
トイレット・・・トイレは、まぁ、水洗などではないだろうな。
ノブなどついてないただの板がドアの役目を果たしているようだ。
蝶番みたいなのは使われているみたいだな。
「あれ?寝床も作ってくれたにょ?なんか思ったよりしっかりしてる」
「みたいだね」
「ハイ。あちらガ。5人様ならベテしまいましタガ。場所ハゴジユーニ。」
やはり板のドアを開けて見せて貰った奥の部屋には5人分の布団?・・・草で編まれた薄緑色の寝床が用意されていた。
・・・良かった。ワラを敷いただけ、とかではないようだ。
実はそれだけは心配してたんだよね。
俺達は全員冒険者だからアイテムボックスを持っていて。
寝袋なんか自分用の寝具は持ち歩いてるんだよね。
でも、もし相手側から寝床を用意された場合・・・流石に気に食わないから替える、なんて事が言えるわけはなく。
・・・言う人は言うのかもしれないけど。
もしよく言われるような(?)馬小屋のような寝床だったらどうしよう?と内心ではびくついていたんだ。
「うん。良い感じ?エリーもアリーもこれ、酔い潰れ見たいにゃぁ。全然起きない」
エリーとアリーを寝床に入れてリンが感心と共に呆れたような声を出す。
「あ〜。うん。フェアにつられて2人も呑んでたみたいだからね〜。どのくらいかは分からないけど疲れも出たんじゃないかな?」
本来ならまだ脅威はあるわけだからそんなになるまで呑んだら冒険者失格とか言われたりするんだろうけど。
「フェア達はあたし達について来てるだけ、とも言えるし、ね。フェアは楽しい楽しいで動き回ってたしエリーやアリーは大変かも?」
俺が寝かしているフェアを見ながら少し笑ってリンが言う。
「え?・・・あ、そうか。そういえばそうだね。いやぁ、でもこうやってエリーもアリーも酔い潰れてるんだからフェアと一緒に楽しんでるんじゃないのかな?」
そうか。
考えてみればフェア達は俺達のお供みたいなものか。
そうだな。元々ピアリス様も俺達2人だけのつもりだったかもしれない。
あんまり振り回すのも良く・・・いやいや、お供、オマケみたいについて来た相手に振り回される状況って実は理不尽なんじゃ?!
「う〜ん。多分、だけどロウジと一緒に居るにょが楽しいんじゃ、ないかにゃぁ、あたしも、だし」
「ん?・・・う〜ん。そうなら、まぁ、嬉しい、かな?俺も皆が居るおかげで変に緊張したり混乱しないで済んでるし。」
「ん?混乱、たまにしてにゃい?」
「え?・・・う。否定出来ない」
リンが珍しく意地悪そうな目をして言ったセリフに反論出来ない俺。
「フッフ。面白い方達、なの、デスネ。リン様、水浴びハ集会場デス。ロウジ様、さっそくデスガそこニ材料ガありマスノデ料理ヲ始めマス」
聞いていたスッチリさんが笑って俺達2人にそんな風に言ってくる。
「あ。じゃぁあたしは水浴びして寝る。行ってくる、ね」
言うとリンは小さいアイテムバッグを持って出て行ってしまう。
「あ、うん。行ってらっしゃい」
集会場は水浴び場所で憩いの場になっているそうだ。
「材料、あそこに色々積んであるのがそうか。」
そうして俺は俺で料理をいくつか教えて貰いながらリザードマン達の暮らしにもついて聞いたりしながら寝る前の時間潰しをしていく。
・・・リザードマンの料理は分量も基本が3人前で豪快だった。
「ありがとうございました。分かりやすかったです。流石、ですね。面白かったです」
「こちら、コソ。お話。面白カッタ、デス。デハ。おやすみ、なさい」
「ありがとう、おやすみなさい」
「はい。ありがとうございます。おやすみなさい」
おやすみなさいの挨拶があるのには少しビックリしたけど。
途中で帰って来たリンも面白そうだ、と少し参加していくつか料理が予定より増えたのでフェア達が起きるかもしれないから後で食べるか、という話になる。
そして俺も集会場へ行き水浴びをする。
・・・時間的には夜中で俺1人だけの水浴びでした。
まぁ、水は綺麗だったし作法とかあっても気にせずに・・・頭から被る分はお湯にして浴びたりとか・・・色々出来たから結果的に良かったと思う。
「あれ?・・・流石フェア。食べ物の匂いで起きたのか・・・」
「うん。フェアだけだけど。」
「エリーもアリーも朝まで寝るって〜、なの〜モグモグ」
「・・・この食いしん坊万歳め」
寝る前だし試しにだから、とスッチリさんと作った料理は種類はなかなか多いものの量は少ない。
それがすでに半分以上なくなっていた。
「ロウジ!美味しいなの!」
「あ、うん。それは良かった」
スッチリさんも覚えと手際の良さに驚いてくれていたっけ。
・・・料理レベルが高い男ってこの世界ではどうなんだろうな、そういえば。
そんなこんなでエリー、アリー、フェア、俺、リンの順に並んで寝る事になり。
・・・俺がリンの横、一番外側で寝ようとしたらフェアがぐずってフェアがアリーと俺に挟まれる形で移動させられた。
わがまま王女の本領発揮というやつ、だろう。
女の子に挟まれながら寝る、なんて経験はないが状況を考えて寝る事にする。
あれだけのモルドスライムを片付けたのだから夜にも騒ぎが起きないと良いな、と思いつつストン、と眠りに落ちた。
「モルドスライムが見えてるみたい。」
先に起きていたリンがボシンさんを連れてそう言って起こしに来るまで熟睡してしまった。
「・・・え?・・・そうなんだ。あ、ボシンさん、おはようございます、あ、そうだ。これを。」
アイテムボックスから銅の槍を出してボシンさんに渡す。
「これ、ハ?」
渡された槍と俺の顔を不思議そうにみやるボシンさん。
「全部が銅だから少しは長く保つかと。今日はその見えてるモルドスライム達が来る方角へ本隊目指して行くんですよね?だから。」
うん、正直銅の槍だし、俺はとりあえず使う予定ないし。
村を見て回ったりパーロンさん達の話を聞いた限りだとモルドスライムと戦って困るのはまず武器の柄がダメになる事みたいだから全体が金属で出来た武器ならどうなのかな?と思ったんだよね。
「フ、ム。ありガタク試させテ貰おう」
槍を掲げて言うボシンさん。
なかなか気合いが入ったようだ。
「さて、じゃぁ、行きますか。朝飯前、だけど。」
いきなり本隊目指さないで見えてる奴だけまずは倒して食事にしたいな。
お読みいただきありがとうございます(*^ω^*)
少しでも楽しんでいただければ幸いです☆
話の展開、少し巻きを入れて行きたいですσ(^_^;)