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迷惑創造神とのんびり異世界生活を?!  作者: ミカ=エル
6.魔物からの依頼?!
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薬師として?!

リザードマンの薬師の元に辿り着いたロウジ。

そこで急な手伝いに入ります。

さてさて、何が待ち受けているのやら?!

う〜む。

俺はフェアがいそいそと並べてくれたいくつかの『未使用の』回復薬の瓶を横目で見ながら納得がいかない気持ちを押さえ込みながら薬草類をスリコギとスリバチですりおろしていた。


そう。

リザードマンの村長さん達への挨拶もそこそこに皆には集落・・・面倒だから村で良いか、村の様子の確認と村の村人の治療に当たってもらったわけだけど。

回復薬類は一応毒消しも一緒に俺が持ってるのも出して全部持ってって貰ったんだよね。

でも。

俺が渡した回復薬は強力過ぎたのとリザードマン達が使用を拒否した為に・・・1本だけ使われただけで全部戻って来たのだった。

その1本もアリーが無理矢理振り撒いたらしいし。

フェア達も薬よりも魔法での回復を望まれたらしく、結果としてマナポーション(これも例によって例の如く耳からはマナポーションと入ってくるのだが頭では魔力回復薬と変換されているという)だけが消費されるということになっていた。


「う〜ん、まぁ事情が事情だけに仕方ないのかもしれないけど・・・なぁ」

考え事をしながら、呟きながらすり潰した草の塊を更にクスシさんが用意してくれている別の器に入った何か粘土みたいな物と混ぜてアオバショウという広葉の上に適当に塗りたくっていく。


【森の軟膏】アイテムレベル2

傷に効く薬草・毒を消す薬草・痛みを薄れさせる薬草・腫れを退かせる薬草などを独自の配合で混ぜ合わせて作った森に住む民に伝わる軟膏。

配合で効能が変わるが全て森の軟膏と呼ばれる為に他者から譲り受ける場合は注意が必要。


「ウ、ム。ソレデイイ。」

そう言って碧の中に虹色の光沢のある鱗を持った手がスッと伸びて来て俺が作った自然物型湿布薬?を奪っていった。

そしてそれを腕輪みたいになった木の皮で押さえ込み、怪我をしたリザードマンの腕に嵌める。


【バンドツリーの干皮】アイテムレベル1

元の形状になろうとする性質を持ったバンドツリーの皮を日干しにした物。包帯代わりに使われる。

ただし輪の大きさ・締まりはそれぞれ決まっている為作成と選別が大変。


どうやら木の皮を桂剥き(!)すると元の型になろうとする、元の型で落ち着く性質を持った木があるらしい。

それをベルトや包帯代わりに、というわけだ。

正に天然の腕輪である。

・・・あれ?いや、そもそも原初の腕輪って木をくりぬいた物でこれに近い物だったりするのか?


「フム。スマン、ナ、神ノニオイガスルコゾウ。ワレラハ、ウ、ウム、ゴボッゴホゴホッ・・・ア〜あ、アア〜、ア、・・・ふぅ、む。うむ。ワレラはヒューマンに迫害、大量に同胞ヲ殺された経験ヲしている故ニ、ナ。その記憶ヤ想いを繋ぐ者達は居ない故ニ長い目デ見て貰えるとありがたい。」

働き過ぎ、だろう。

その『エルダー』だという・・・長老という意味でなく『旧き者』という意味らしい・・・不思議な鱗を持った老リザードマンであるクスシさんがそう言ってくるが。


「あ、いえ。はい。理解出来ますので大丈夫です。それは。・・・ただ、回復薬があるのに使われないという事についてモヤモヤしてるだけですので・・・気にしないで下さい」

笑いながら、少し苦い笑いになってるのは勘弁願いたいけど、笑いながらそう、クスシさんに返す。


うん、名前がクスシさん。

クスシ=医師・薬師。

カジシ=鍛治・大工


どうやらこの2つは認められた1人ずつしかなれないらしいのだが。

認められて職についたリザードマンは呼び名もそのまま職の名前に変更されるという事だった。

弟子は取れるし、実際に居るみたいだから全くの1人ずつしか居ないわけでもなさそうだけど。

大工はともかく鍛治師には誰もなりたがらないそうで、大工と鍛治は一緒にされているそうな。

ま、終始火のそばに居る鍛治は誰もやりたがらないよな、リザードマンだけに。

ちなみに弟子はミナライ、とかには名前の変更はされないっぽい。

でも、「おい、〇〇のミナライの」とか呼ばれるみたいだけど・・・なんか昔の日本とかみたい?

まぁ、俺に関して言うならもちろんお互いに喋る時は共通語かリザードマン語であるので(俺は普通に話してるだけだけど周りにはそう話し分けて聞こえるらしい)普通の人には理解出来ないのだろうし、翻訳も仕組みが分からないから原文のままちゃんと変換されるかは分からないのだけど。

ここのリザードマン達は多分共通語を喋ってくれてるからなんとなく聞き取り辛いんだと思うんだけど、ね。

リザードマン語で話されても通じてるっぽいから・・・正直よく分からん。


「子供達には殆ど伝わってないからナァ、今まデハ変わり者しか出て行かなかったここからモ出て行きたがる者モ増えるかもしれんし、ノォ。せいぜい人ガ危険デハない種族デあると・・・ゥゥム・・・アレ、ハ・・・ドチラ、なのデアロウ、ナァ」


うん。

今、外から中を、というか俺の様子を恐々と窺っているのはリザードマンの数人の子供達だ。

鱗、というよりも全体的に身体の色が白っぽい。

ここのリザードマン達の鱗は緑、翠・・・碧っぽい?から・・・あれだ、何の色が一番近いかと言ったら抹茶。抹茶ミルク。あれに近い。

大人の方がツヤが出たりするのは人間とは違った感じでまた面白いと思う。

と、言っても老人になるとそのツヤがある鱗もやっぱりくすんでくるらしいが。

クスシさんが「ドチラなのか」と言ったのは、あれだ

、子供独特の人見知り系なのか怖がらせてしまった故のあの反応なのか、という事だ。

そう。

リザードマン達が頑なに薬を、と言うか『人種の世界で出回っている薬を』拒んだ理由なのだが。

過去の大戦でリザードマン達は種族や部族関係無しに魔族・魔王軍側について人種達と戦ったらしいのだけど。

その際に単純な力ではリザードマンなどの他種族に勝てない人間達はリザードマン達が暮らす集落やその周りの池や湖といった水源、補給線や保管庫を襲撃した時に毒を放り込まくるといった暴挙に出たそうで。

「人種に出されたものには触るな」

というのが常識となった時代がすぐ近年まで、確かにあったらしい。

だけど、本来そういった戦争を嫌って避難所・・・避難所?避難村?町?と化していたここには無関係な話であったはずなのに・・・「出されたものを食べるな、飲むな」ではなく「出されたものには触るな」という事から分かるように・・・皮膚から摂取されるような毒物は当たり前、更にどうやら害虫駆除か何かの為に開発した薬物を毒の保持者(キャリアー)が死ぬとその周りに毒物を撒き散らされるような改良を施していたらしく・・・弱い種族がやられ、それを助けに行った強い種族が毒を持ち帰り、といった形で・・・結構な地獄を生み出したらしい。

・・・・イメージとしてはホウ酸団子とかみたいな感じなんだろうけど、その対象が人間と近しい種族以外全て、となると・・・想像しただけで胸糞悪くなる話だ。

あぁ、妖精族や獣人族なんかはそれで最初は人種(ひとしゅ)側と魔族側に分かれて争っていたのが段々と魔族側に与する数が増えていったとか。

多分個人的な恨みやら何やらが増えていった感じなんだろうな、と簡単に想像がついてしまう。

それでも解毒薬やら予防薬の話があれば人種(ひとしゅ)側に絶対、という数も居たんだろうけど。

結局大戦は魔王が倒され、側近達も討ち取られて人種(ひとしゅ)側の勝利のような形にはなったけど主だった立場の者達は呪いにやられたり戦場で散ったり期間が長く戦場が広がったので国々の散財・消耗が激しく、反戦派の活動もあってなんだなんだで魔族以外の種族があちこちに国や集落を作り上げて世界が落ち着きを取り戻す頃にはむしろ勢力図として見ればヒューマンの純活動域というのは狭くなったのだとか。

そして多種族が活動域を拡げた事で以前よりも異種族間交流も進み・・・戦場で(まみ)えたり肩を並べたりした相手とは早く馴染んだり逆に嫌悪したり。

多種族を嫌うモノはそういった仲間で集まり更に排他的・敵対的に。

他・多種族を好むモノは他種族の活動域に暮らしてみたり。

嫌っても好んでもいないがなるべく関わりを持ちたくないモノはここのように隠れ里的な場所を作ったり見つけたりして完全に『外』とは交流を絶ったり。

・・・ここは本当にピアリス様の力で完全に外界からは隔絶されてるけど生命の保証もされてるだろうからなぁ、避難地としてもそういった隠れ里としても最高レベルだよね。


「う〜ん?この国は結構多種族が安心して暮らしている印象だけど他には違う国もあるんですかね?」

考えていたのはなんか意外と人と他種属の間では未だに火種を抱え込んでいるのではないか?という事。

確かに他の種族は言わば戦友みたいな感じで交流が進んでいるのかもしれないけど、人はどうなんだろうな?と少し心配になってきてしまったのだ。

・・・俺はどうしたって人なのだから。

あ、いや・・・まさか、とは思うがシヴァ神に頼めばまだ種族の変更とか可能だったりするんだろうか?

・・・・・うん、変わる気は無いけど・・・うん、ないよ、な。

いかんいかん、なんか気弱に。


「ウム?若い故ニ知らん、のカ?ヒト側ハ、ナ?魔王トいう個体ヲ滅ぼすノガ目的デあって亜人種達はそのツイデ、いや、魔王ノ部下ノ形デあったから戦うトいうよりモ退ける、戦えなくさせるような方針デあったノヨ。・・・戦デあったからナ・・・それデモ様々ナ思惑ハ生まれたデあろうガ・・・実際ニハ魔王ヲ滅ぼした後ノヒト達ハ撤収モ早かったノサ。そして魔王ガ滅んダ以上争う必要ハ無くなったとカなんとカ触れヲ世界ニ出して、ノ・・・しばらくして落ち着いたらまた仲良くしましょう、ト来たもんサ。後ハワレラ側ノ対応次第ダ、トナ。」

面白いものを見つけたような目で・・・これは調べたりしないでも分かる・・・俺を見ながらそんな説明をしてくれるクスシさん。


「い、いや、それは・・・なんと言うか・・・」

甘い、と言うのだろうか?

それともいい加減?

戦争をしてたはずなのに平和ボケしてないか?みたいな・・・いや、さっきの話から想像すると実際には混乱しまくってて外側に目を向けていられなくなっただけ、とも考えられる、のか?

反戦派も居たようだし目的も遂げたのだから、みたいな。

物資も人材も乏しくなった上に国や組織の上の連中や最前線の主だった連中が皆居なくなったり再起不能になってしまって指揮系統どころか国、ヒトという種族自体が揺れたり、とか。

・・・十分あり得るな。

言葉を止めて考えに耽っているとクスシさんが未だに見続けている事に気が付いた。


「あ〜。かなり都合の良い事言ってますよね、それ。「こちらにはもう敵対する意志はない。そちらは勝手にすれば良い」みたいな。それでいて最低限の守りはするのだろうし。・・・ん?他の種族の国や組織?みたいなとことの停戦協定みたいなのは結ばれなかったんですか?」

話をし始めてから気が付いたんだけどヒト達が終戦、停戦するっていうお触れを出しただけ?

戦争であるからにはお互いに協定とか契約みたいのを何かやらなかったのかな?と不思議に思ったからそう聞いてみる。


「フム。ほんニ何も知らんト見えるノ。当時『国』トいうものヲ築いておったのハナ?エルフやらドワーフやらフェアリーやらマーマンやらの人種ニ近しい種族ト魔族ノ中デモ魔王ニ従ったモノ達のみ、ヨ。まぁ、つまりハ人種側デ矛ヲ納めれば攻撃ハ止むし後ハ内々デ、ということ、ダノ。ダガ水性の毒ナド使えバ警戒し疎遠ニなるモノ達モ居っタわナ。それデモワレラノような集落ハただ近しいモノ達ガ集まったダケノモノデあったし、ノォ」

少し遠い目をしてそう教えてくれるクスシさん。


そうか。

そういえばそもそも亜人種と言えば大きな分け方だけど中には魔物に分類されている種族も居るんだもんな。国、やら組織、なんてのを築き上げるのはなかなか難しいものがあるかもしれない。

・・・この辺も子爵邸に帰ったら世界に溢れる種族の事と一緒に教えて貰おう。


「これですり潰したのは無くなりましたけど、新しく調合しますか?」

全部で9枚。

話をしながらでもすり潰しは終わって後は少し捏ね合わせて葉っぱの上に塗る作業だったのでスムーズにいったのではないだろうか?

そんな風に自画自賛してみる。

まぁ、そうしてる間にもクスシさんは患者の具合を見て軟膏つけたり、軟膏はつけずに他の薬草だけを貼ったり汁を塗ったりしているんだけどね。


「フム。これノ調合比ハ・・・なるほど、お前さん解析持ちかえ。便利ダノォ?・・・ダガノ、次ノハ比率ガ変わるノヨ。しかも今ハ足りておるデ作らんデモ良い。ほれ、じゃからそこノ奴ニそれヲ貼らずに塗っておやりナ。首ニハこれ、ナ」

、とお椀に入った別の軟膏と結構太いバンドツリーの輪っかを1つ投げて寄越された。


「そこの?あぁ。分かりました」

クスシさんが目で指した先には3つある椅子の背もたれを抱きかかえるようにして座っているリザードマンが。


「あぁ、首ハ鞭打ち症、頭ハ打撲症、ダノ」


「あ、はい。頭にはこっちの軟膏だけを塗る形で良いんですかあ、いや、防護出来る物が何も無いのか?すみません。」

言って気が付いたけどリザードマンの後頭部の怪我の場合って包帯とかもあっても巻けないし身体全体的に少し水分含んでるからバンドエイドみたいな物が・・・例えあったとしても多分巻けないんだなぁ、と。


「ウム。頭ニ何カ巻くのも怖いし、ノ」


「納得です。了解しました。」


聞くと外で農作業をしてた時にモルドスライム達に出くわしその辺の物で(!)応戦しながらここまでやって来たが頭の上からのしかかられてしまい、こうなってしまったそうな。

名誉の負傷、といったところだろうか。


「ハッハッハ、スライムヲ剥がそうトドタバタヤってタラゲラノノヤツガ鍬デ思いっきり殴っテくれテナ!ハッハッハッハ」

はい?


「はい?クワで、ですか?」

・・・おいおい、って柄の方だよな?


「オウ!コウ、頭ヲ上げタタイミング、デ、ナ?根元ノ方デ、ガッツン、トナ!イテテ」

首を下にしたまま再現しようとして痛がるリザードマンさん。

いや、なんというか。

よくそれで鞭打ちと打撲で済んだね〜。

モルドスライムの核が衝撃を吸収してくれたんだね、きっと。って、そもそもそっちが目標か。

どうやらこの人はヒトである俺に対して特に何もないらしいな。

ボシンさんと似たような雰囲気で安心して対応出来る感じだ。

打撲のある箇所を見つつ軟膏を塗っていく。

そして首には軟膏のバショウの葉っぱの上からバンドツリーを、と。


《職業:薬師、スキル:診療、を手に入れたよ〜ん!おめでとう〜》

んあ?


「え、えっと。じゃぁ、首は変な感じがあるかもしれませんが、しばらくは動かさないように生活して下さいね。頭の方に関しても傷はそんな酷くないので大丈夫だとは思いますが、もしも痛みや吐き気なんかがするようならクスシさんに診て貰って下さいね?頭の怪我を甘く見ないようにして下さい。」

と、とりあえずその人が立ち上がるのに手を貸してクスシさんの家・・・?診療所?・・・そういえばこの建物ってどうなんだ?クスシさんは住んでるのか?ここに?・・・建物から送り出す。


「オウ!アリガト、ナ、ボウズ!またナニ、カ持っテ来るわ!」

ぼ、ぼうず!?

あ、いや、確かに髪の毛短いけどさ・・・いやいや、それ言ったらリザードマンには頭の毛無いじゃないか。

ま、まぁ、良いや。

金銭は取らない、というか無いみたいだ。

後から礼と称して農作物や魚介やらの生活物資を持って来るのが診療報酬になるらしい。

まぁ、分かりやすいといえば分かりやすいかな。


あ、いや、それよりも、だ。

(ステータス、職業、オープン)


ロウジ=タソガワ


職業

商人LV.2   鑑定士LV.1   調合士LV.1   錬金術士LV.1   武器職人LV.1   防具職人LV.2   建築士LV.1   料理人LV.2  家政婦LV.2   旅人LV.1   戦士LV.1  格闘家LV.1  神官LV.4  魔法使いLV.1   精霊使いLV.1   神の眷属LV.−

薬師LV.1


【薬師】

薬学・医術を生業とする者。自他の診療が出来る者。

レベルにより腕が問われることは無い、が、信用には関係するだろう。


おお。

そうか、薬師は実際に薬を扱ったり診療に関係しないとダメなのかな?

物作りとはまた少し違うから俺は持ってなかったっぽいな。

・・・うん、シヴァ神にあれこれ貰うのも良いんだけどこうして自分でゲットしたりするのもやっぱり嬉しいし楽しいよな・・・スキルのレベルは上げて貰うに越したことは無いんだろうけど職業は普通は2つしかアクティブに出来ないというし、自分で職業を手に入れる為に色々やってみるのも良いかもしれないな。


「ここハもう良いゾ!宴ガあるのダロ?それマデゆっくりしてるトええ!ありがと、ナ、感謝しておるゾ。これはこの辺で採れる薬材ジャ。持っていき」

出て来るリザードマン達とすれ違いながら奥へ戻るとクスシさんがそう言って労ってくれた。

皮袋・・・俺達が持っているものとはまた少し素材が違うのだろうけど皮袋一杯に、少しはみ出してるが、薬草なんかを詰めて分けてくれるらしい。


「あ、ありがとうございます。大して手伝い出来てない気もするのですが。良いんですか?」

薬師やそれに付随する診療のスキルをゲット出来たこともありちょっと恐縮してそんな風に聞いてしまう。


「ロウジィ〜ィ〜疲れたぁ〜のぉ〜。行くの〜、なの〜」

と、フェアが背後から肩に両手でぶら下がってきた。

・・・座られるよりも重いのは何故だろう。。。


「ホッホ。お前さんガ来る前ニモ妖精達ガダイブガンバッテくれたからノ。今モマダ薬ヲ配っテくれテおる。このくらいハ、ナ。それニ・・・お前さんハ筋ガええ。性格モ良い。お前さんガ薬師として他ノモノ達ヲ癒しテくれるならそれニ勝る喜びハ・・・無いのかもしれん・・・からノォ」

真っ直ぐ俺を見てそう言ってくれる。


「あ、ありがとう、ございます。薬師としてもがんばっていければ、と思います。出来れば、ですが」


「ホッホ。ま、無理ハ言わんヨ。お疲れさん」


「はい。ありがとうございました」

そう言って建物を出る。

・・・フェアを後ろにぶら下げたまま。


「フェア?ほら。肩に乗っても良いから。もう少し、なんというか、ちゃんとしようよ」

なんとなく周りのリザードマン達から見られてる気もして落ち着かない。


「ん〜ロウジの肩ぁ、楽だけどぉ〜、ちょっと狭い、の〜」

駄々っ子のような・・・いや、まんまか?口調で言って来るフェア。

確かに一般的なフェアリーのイメージよりは大きい感じがする(飽くまでもイメージだから気のせいかもしれないけど)フェア達だから俺の肩だと少し狭い感じなのは分かる。

その・・・うん、耳とか頭にフェア達の身体が当たるから、分かる。

それに多分、肩に乗ってる時はあまり体重をかけないように気を使ってくれているんだろう、というのが今の状況で理解も出来た。


「う〜ん。ま、しばらくは仕方ないか。・・・最悪肩車でも良いかなぁ。」

と、

「かたぐるま?なの?なにそれ?どんなの?どうやるなの?やりたい、やってみたい!なの!」

ガバッという感じで背中から頭に手をかけ(おい)正面に飛んで来るフェア。

・・・今のは跳び箱にされたような気がしないでも無い。

食い付いた。食い付かれた。


「肩車、無い?言わない?・・・ん?肩車で伝わってるからあるにはあるんじゃないのかな?」

フェアの食いつき方に引きつつもまたもや『翻訳の罠』にかかってる気分になった。


するとフェアは

「んんん〜?か、た、ぐ、る、ま、でしょ〜?無いよ〜?どうやる、なの〜?楽しそうなの!やりたいなの〜!」

言いながら正面から顔に抱きついてきた!?!??

い、いや、これは


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ふぇ、フェア、フェアさん?フェアさん、タイム、タイム、タンマタンマ。フェア、こ、これ、これは色々、うん色々、と、その、まずい。」

息苦しい、喋りにくい、前が見えない、というのが一番ではあるんだけど・・・うん、いや、その、ね。

正面からだと、その、


「あぁああああ〜!なにやってるですかぁあ!」


「ん?」「なの?」

フェアと2人で・・・フェアを頭、顔に貼り付けたままで声のした方に顔を向けると、そこにはムキーッという感じで両手を突き下ろしたエリーと空の袋・・・これは普通に持ち手がついたトートバッグのような布の袋・・・を2つかな?折り畳んで両手で抱えて飛んでるアリーが居た。

フェアを引き剥がしながらそんなエリー達を見ながら尋ねる。


「あ、いや、これは。ちょっと、ね。フェアが疲れたってぶら下がったままでいるから肩に乗るか肩車でもしてあげようかな、って、してて・・・」

言って、エリーに向かって言ってしまってから、しまった!と気が付いた。


「「かたぐるまでも?かたぐるま?なんです?なんですかぁ〜?」」

うわぁ、こっちも食いついてきたぁ〜、やっぱりかぁ


「かたぐるまかたぐるま〜なの〜」

またフェアが飛び付いてこようとするので避ける。

・・・避けなくても、という考えが過ったがあれはさすがに最初考えた肩車のマズイかな?という点よりももっとマズイから避けるに越したことはない。


「あ〜、ええっと。今さっきフェアは顔にくっ付いてたけど、あの逆、と言うか。頭にくっつくような感じで肩に乗っかるんだよ。多分その方が片側の肩に乗っかるよりも安定するし良いと思うんだ。」

と、肩車についても一応ちゃんと説明しておく。


「んん〜?それってぇ〜、あれじゃぁないでしかねぇ〜?ヒューマンの中良さそうな親子がやってる」


「あ〜。村や町でヒューマンの親子が時々やってるあれですかぁ。あれ、肩車って言うんですねぇ」


「ん?やってるの見た事あるの?」

俺の説明を聞いたアリーとエリーの反応にこっちが逆に驚く。

肩車あるのか?


「うぅ〜ん、はいですぅ〜、そう、ですねぇ〜 ・・・わたし達は時々森から出てあちこち行く事もあるのでぇ。そこで、ですねぇ〜。でもぉ、確かぁ?肩車、じゃなくてライド?とか言ってた気がします、けどぉ。」

違うもの、ですかねぇ〜?とこれまたフェアとはまた違った形でマイペースで独特な喋りをするアリー。

ライド、ライド、ねぇ。

肩車って海外にもあるけどちゃんとした英単語は無いんだったかな?

確か英語の加納先生がそんな事を言ってた気がする。

ショルダーライド、とかが単語にするとよく使われる、んだったか・・・単語じゃなくてride on shoulderとか。

「ちゃんとした単語が無いから逆に覚えとけ」って言ってたっけ。


「あぁ、うん。多分同じ。ライド、とかショルダーライドで良いんじゃ無いかな?」

相手がちゃんとした事を知らないとちゃんと翻訳もちゃんとされない、のかな?・・・あ、いや、それはある意味当たり前なのかもしれない、か?

知識になければ分からないのは同じだもんな。


「うぉ?ぉ。い、痛い痛い痛い!ち、ちが、違う違う」

「こう、かな〜?なの、かな?」

話を聞いていたフェアがまた俺の背後に回って頭を掴み、肩に乗って来た。

両足を閉じたままで。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

「あ、あわわわわ!?フェア、フェア、それ違う、違う、違います!違いますって〜!」

「んんん〜??」

「あらぁ〜あららぁ〜。両方の肩に足を乗せる感じ、にぃ〜」

「なの〜?」

「う、ぐえ、ぐう」

痛い痛い

なんだ、これ?

なんて技?


「こう、ですぅ、こう!」

俺が痛がっていてもなんだかんだと離れないフェアに業を煮やしたエリーが手取り足取り肩車を指導し始めた。

と、言っても足の位置だけ、なんだけど。

だけ、のはずなんだけど。

何故こんなに()まってしまうのか。


「はぁ。はぁ。」

「おおお〜!なの〜!」


「お、お疲れ様ですぅ」

「ロウジ〜、ヒール、要りますぅかぁ〜?」


「い、いや、良い。ありがとうエリー。助かった。意識なくすかと思ったよ」

・・・気絶耐性とかこういうとこにも関係してるんだろうか?

ふとそんな考えが過った。

実は耐性持ちもそれはそれで苦労するのかもしれないな、などと変なとこで感じ入ってしまった。


「あ、と。そう、でしたぁ〜。宴の用意がぁそろそろ出来るので呼ばれてたんですよぉ」


「あ、そうでした!リンはもう向こうに居るのでわたし達も行きましょう!」


「あ、そうなんだ?分かった。そう言えば忘れてたよ・・・」

アリーとエリーが順にそう言ってきたので俺もそもそも何故村でブラブラと過ごしてたかを思い出す。


「行くの〜!ロウジ!ゴーッ!なの〜!」

・・・フェアは早くも肩車の正しい乗り方、使い方を覚えたらしい。


「見せるのも歓迎、とか言ってたので楽しみです〜!」


「エリーとリンは食べ物、食材自体に興味津々みたいですよぉ〜?」


「あぁ、それはもちろん俺も興味あるね」


「わたしも、なの!行くの〜!」


「はいはい、お姫様」

・・・そこで、今更ながらに本当にお姫様だったな、と気が付いたけど。

うん、何も言うまい。


さて、宴、歓迎の宴という事だけど・・・最初から頼んでたし村の様子を見てからは尚更あまり派手にして欲しくは無いけど、楽しみは楽しみだ。


さぁ、ほぼ村の中央の広場部に向かおう!


お読みいただきありがとうございます☆

すみません、思いの外話が進まずにこんな形に落ち着いてしまいましたσ(^_^;)

少しでも楽しんで貰えれば幸いですm(_ _)m


次話の予定は9月19日0時です(*^ω^*)/

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