リザードマンの村の様子は?!
モルドスライム達を蹴散らしてリザードマンの集落をとりあえず守った形のロウジ達。
集落に入って、さぁ、やることは?
「申し訳っありまっせんでしたっ!」
そして、あの後俺達はボシン&カフィーさんのルドルフ兄弟に連れられてそのリザードマンの集落(森の集落とだけ呼んでいて特に名前は無いらしい)へと入っていた。
そこで。
俺は土下座こそしてしてないものの気持ち的にはそんな感じで目の前に居る長であるパーロンさん達に向かって深く腰を折り謝罪をしていた。
「ウ、ウム。まぁ事情ハ〜分かっておるシ助かったのだからなぁ、そこまデ気にしないデも大丈夫、ヂャ。今もこうして治療ヲして貰っておるし、のぉ」
その長リザードマンのパーロンさんは顎の下に結構な量のヒゲ?が生えた・・・顔だけ見ると「え?リザードマンって竜種だっけ?」と思ってしまうような姿をした・・・その少し人間に近くなった話し方からしても多分年寄りのリザードマンだった。
ちなみに「竜人」とも一部では呼ばれるらしいリザードマンだけど学者が分類してる種名に於いては『爬虫類人種・リザードマン種』であってトカゲやワニが変化したものと捉えられていて『竜』とは区別されているようだ。
ちなみに『竜種・竜人種』である『ドラゴニュート』は存在してはいるが比較的新しい種族で数も少ないらしい。
「はぁ。いえ。スライムと戦っていたみたいだったので元々治療は必要だと考えてましたから。それが俺、自分のせいもあって更に怪我をさせたとあれば尚更で、ですね・・・」
恐縮するしかない俺。
そう
パーロンさんが言ったように今も集落に居る怪我をしたリザードマン達を薬や魔法で治療中だったりする。
・・・俺以外の皆で。
俺達はカフィーさんとボシンさんに長達の前に連れられて行き自己紹介と事情の説明をした。
そして怪我人や死者とかが出てないか?も聞いたのだけど。
実は俺の・・・実質はノリノリのシルフ達の、だけど・・・アノ魔法の余波で見張り櫓や階段から落ちたり(シルフが自主的に?支えたから死にはしなかった)、飛んできた小石やら木片なんかが(大きいのはシルフ達が自主的に?砕いていた)当たって怪我をした人数が意外に多いらしく。
「我らのウロコ、外皮ハァ地上を歩きやすくする為か意外と退化しておりましてナ。普通に跳ねタダけの礫などでハ殆ど傷はつかんのですガ、ウロコにも向き不向きもありましてナァ怪我をしない、というわけにもいかなかったようですヂャ。ですがのぉ先程も言ったガ手早く治療をしていただいテ感謝しておるくらいですヂャ」
ボリボリ、と下顎、と言うか歯茎?を掻きながら・・・ほんとに音がしてるから怖いんだけど・・・少し困った感じで言うパーロンさん。
パーロン
状態:感謝しながらも応対に困ってる
うん。
ボシンさん達のおかげで少しずつ表情の動きにも慣れ始めて来たかな、とも思うけど。
リザードマンとかアングリーマッシュとか表情やら外見で感情を読み取れない相手とのコミュニケーションをとる方法で何か良いの無いかな?と考えた時にふと思い付いたんだよね。
「相手の状態だけを鑑定とかで読み取る事出来る?」って。
そしたら「むしろ毒や精神異常を齎す魔物を相手にする場合には仲間の様子はそうやって窺った方が良いですよぉ?」と、知らないんですかぁ?と逆にアリーに言われてしまった。
まぁ、でもそんなわけで一見すると怖さが先に立つリザードマンとかが相手でもなんとかスムーズにコミュニケーションを取る方法を身に付けられたかな?と嬉しくてお試し中だったりする。
どうも『鑑定』って思っている以上に便利に使えるみたいで部分部分の指定鑑定が出来るっぽい。
いや、でもまあ、鑑定で見られる部分を知らなければ一部を抜き取って見る事も出来ないから結局今の所は勉強あるのみ!に変わりはないんだけどね。
それでもHPやらMPやらは自分で気が付いたけど状態だけを見るならそんなに気兼ねせずに・・・飽くまでも前面に出てる状態を見られるだけだそうだから気持ちを読み取るのとは違うようなので気を付けなければいけないのは変わりないが、これなら普通に扱っていけそうな気がしている。
「はぁ。それは少しでも早くちゃんと治せれば良いんですが。あ、それと。モルドスライムの様子の方はどうなんでしょうか?」
なんか話題を変えた方がお互いの為かな、と見える範囲では殲滅出来たはずのモルドスライムについて聞いてみる。
エリーとアリーが積極的に飛び回ってくれているおかげで集落も落ち着きを見せ始めてはいるかな。
「おぉ。元々あまり動かないヤツラですからナ。何人カガ逃げて来タ際ニこちらニ連れて来てしまっタダケですからの・・・・・フム。おかげさまで辺りハ落ち着いタようですのぉ。カフィーのヤツニ村ヲあないさせるのでどうかユルリとしてくだされ」
途中で少し離れた俺の右後ろ側にある櫓・・・物見櫓ではなく見張り櫓と呼んでるらしいけど・・・を見上げてパーロンさんがそう言ってきた。
「あ・・・はい。ありがとうございます。出来れば少し、いえ、出来るならここを拠点として一晩休ませて欲しいのですが」
一瞬「あない」ってなんだろ?と思ったが案内、かと気が付いてそのまま話を進める。
森の中だからかもしれないし、どうなってるのか分からないけど明るさが殆ど変わっていかないから周りからは時間が分からないんだけどもう夕方なのではないだろうか?
左腰のポーチから腕輪型の時計を出して確認すると17:76分。見事に夕方であった。
・・・籠手、銅の籠手を嵌めてもなんとか腕輪も着けられるんだけど時計を壊したら嫌だからポーチに入れてあるんだよね、今。
「そうですナァ・・・皆モ動けるようになったら夕飯の用意をしますカラ・・・ウタゲでも開きましょうかの」
と、右隣にいた他の人よりも緑っぽいウロコをしたリザードマン、息子さんのオーロンさんだったか、に何か耳打ちをした。
オーロンさんは頷くと何処かに早足で向かっていった。
「あ、いや、宴って。歓迎会、とか、ですかね?それだったら別に開いて貰うのは悪いので遠慮したいのですが・・・?」
ただ村に来ただけでまだモルドスライムの問題を片付けたわけじゃないし。
元々この村には寄らずに目的を果たすつもりだったし。
何人も怪我させたのも事実だし。
なんともやるせないというかモヤモヤした気持ちを抱いてしまいそんな風に言ってみる。
「ム?ムゥ・・・そう、ダナ。歓迎ではなく祝勝会、のようナもの、ではどうかのぉ?ワレラは無事で乗り越えられたのだからの。おまえたちニとっては・・・前夜祭?というのであったかの?勝利を願って、というのでは・・・どう、かの?」
目を細めながら言ってくるパーロンさん。
何か俺の発言で機嫌を良くしたらしい。
ううん。
「そう、ですね。それなら、まぁ。頂いてしまっても構わないでしょうか?」
「ウム、構わん、よ。・・・ヒトの口にも合うものヲ作らせなければならんが、ネ」
ハッハッハ、というかホッホッホ、の混ざったような微妙な音の空気を吐き出すような笑いをあげながら家へと入っていく。
「ウタゲノ準備ハ進めているノデ呼ばれるまデハ仲間と一緒ニ過ごすといい」
そう言って最後に家に入っていく若いリザードマンが言った。
「え?あ、はい、ありがとうございます?」
・・・え?
まさかの余所者を放置!?
俺は次にどこへ行くか案内して貰えると思ってたんだけど?
確かパーロンさんも
「待たせた、ナ。サァ、少し村ヲ案内してやろう」
っ?!?
「ぉぅわっ。・・・あ、あぁ、カフィー、さん?・・・あぁ、はい。よろしくお願いしますね・・・」
びっくりしたぁ。
「そうだよねぇ、カフィーさんに案内させるとかなんとか確か言ってたはずだもんね〜、びっくりしたぁ。」
ちょっと驚き過ぎて・・・声を掛けられる前の向こうの対応でまずびっくりしてたから更にびっくりしちゃったから本当に驚き過ぎた感じでドキドキしちゃってるよ。
「ウ、ム?何カあった、カ?いきなり声かけて悪かった、カ?・・・フム?すまん、ナ?」
俺の様子を見ながら首を傾げ・・・顎、口が長いせいで傾げるというよりは普通に「倒して」と言いたくなる感じにしながら質問しながら謝ってもくるカフィーさん。
「あ、いえ。大丈夫ですよ。ちょっと考え事し始めたタイミングと重なった、というかなんというか。何か宴会?みたいなのを開くみたいですが手伝わなくて大丈夫ですかね?」
なんか格好悪い所を見られたような気もして。
むしろ怪我人や村の様子やらが今更ながらに気になってそんな事を聞いてしまう。
「ウム問題ない。リンガあちこち走り回り妖精達も飛び回って皆を治療してくれたから、ナ。しかし・・・こちらモ聞くガ。あれダケノ薬を良かっタ、のカ?」
今度は正面から真面目な様子で聞いてくる。
「はい。それは・・・当たり前だから、というかなんというか。一応今の所大丈夫だと聞きましたけど未だいつ何があるか分からないので早目の治療は大事でしょうし。・・・材料さえ貯めておけばいつでも薬は作れば良いだけですし、ね。」
まぁでも薬屋になるつもりはないんだけど、と心の中で付け加える。
ぶっちゃけ作れる薬ならどんどんばら撒いて使って貰っても良いくらいに考えてるしな。無料で。
薬の場合はそれで収入を得るよりも・・・材料は拾い物で燃料は自分の魔力だから元値無しで稼ぎにはもってこいなのは理解してるけど・・・『その時』に必要としてる人間に即使って貰う方が重要だと思うんだよね。
だから、もし自分の店を持ててもこれは売り物だ、と考えた物以外は頓着しないようにしようと今の所は考えている。
もちろん仲間や知り合い優先なのは当たり前だけど。
「フム。ソウカ。・・・フッ」
「ん?」
何か笑われた、今?
「アァ、すまん、ナ。ロウジヲ笑っタわけじゃない、ゾ?・・・フッフッ・・・さすがニピアリス様ガ選んダ人間ダけノ事ハある、とナ、思っタダけ、ダ。感心しタ、と言うのか、ナ?」
フッフッフッ、と短く笑うカフィーさん。
あ〜。
「いや、いやいやいや。そんな大層なものじゃないですよ!?薬は自分が殆ど使わないし今の所売りにも出さないなら持ってても仕方ないから放出してるだけですし。ピアリス様とだって・・・選ばれた?・・・なんて気は全然しないですし・・・」
いや、ピアリス様に関しては確かに選ばれた人間、ってなるのかもしれないけどさ。
・・・所謂遊び相手、と言うか揶揄い甲斐のある人間として、と言うか・・・ピアリス様『達』が頭に過ぎり話しながら少しテンションが下がっていく俺。
「フム・・・マァ、ロウジ達ニついてなドその辺りノ話モウタゲノ席デ・・・マァ、なるカどうカ、だろう」
ん?
何かぼかされた?
カフィーさんを見やると、まぁ気にするなとばかりに肩を組まれて歩き出された。
そのまま少し引きずられるような形で・・・実際にはカフィーはそんなに力を入れてないしロウジの方が力は強い為に飽くまでも見た目だけの話だが・・・村を見て回る。
「うん?う〜ん・・・そこの2件の高床式、あ、えっと土台が高くなってるトコは倉庫?え?そこの土で造られた建物も?へえぇ、木で造られた建物と土で造られた建物で保管品が違うのか。・・・階段式の建物が多いのは何故ですか?」
「ワレラリザードマンは尾ガあるから、ナ。フム。人間ノようニ言うなら一応建物ノ中ヲ汚サない為ノ工夫、ト言えるノ、ダろうカナ?」
「あ。あぁ〜!なるほど。そういう。」
言われてから土蔵・・・土蔵と呼んで良いんだろうけどカマクラのようにのっぺりと丸い建物も見ると地上部分ののっぺりとしたのは殆どが屋根で結構な下り階段が存在しているみたいだ。
それに高床式・・・こちらも俺が分かりやすい言葉で呼ぼうと思う・・・の、どの建物の階段も高さの割に細かく段数が多いように感じる。
土と汚れ落とし、という事を考えると理に適っているのではないだろうか。
「見張り櫓かぁ。ウッドレイクでもそうだけど戦う為の、備える為の物なんだよなぁ」
見張り櫓と武器庫兼納屋だという木造の小屋を見ながら思わず呟く。
と。
「フム?見張り、備える。それハ人間ノ地デあってモそれハ当たり前ノ話デハない、ノカ?」
思わず、といった感じで呟いたのだけど、それが聞こえたのだろう。
不思議そうにそんな風にカフィーさんが聞いてくる。
「あ。あ〜。うん、はい、そうですね。そうなんですよね、普通の風景、です」
言いながら、(うん、これが普通だし本来の姿でもあるんだよな)と自分の中で消化もする。
「フム?・・・アァ。櫓ノ作りが旧い、とか脆そう、とかカ?人間ノ住む地デハ石造りや頑丈そうナ物ガ出来テそうデハあるナ」
俺から手を離してフム、と腕組しながら言ってくる。
「あ。いあ〜、そういうわけでもなくて、ですね、なんというか・・・今居る所じゃなくて前に住んでいた所はかなり平和で。魔獣やら魔物の襲撃なんかも殆ど考えられなかったので櫓は・・・火事、火災や自然災害の時に様子を見る、辺りを見渡す為の物だったりして、ですね・・・名前も火の見櫓とか物見櫓?とか言ってまして戦闘用ではなかったんですよね。だからああやって常に警戒してるような姿もなんか珍しく感じて・・・」
と、なんとか自分の中でこの想いを整理しつつ説明した。
火の見櫓は近所にあったけど人が登ってたり鐘を鳴らしたりした事は多分一度もない。
ウッドレイクでも常に人が居るのを感慨深く見てはいるんだけどやっぱりなんか感じ入るものがあるんだよな。
「フ、ム・・・平和、ダッタ、のダナ。」
俺の様子にやはり何か感じたのだろうか、カフィーさんも目を閉じそんな事を言ってきた。
「です、ね。『その為』にある物が機能しなくて良いというのは・・・多分平和な証拠、なんだと思いますね・・・ん?あそこは?・・・鍛冶屋?修理屋?みたいな感じですか?」
ウッドレイクみたいな一応の道も無い村の中を歩いているわけだけど。
右手側に二本の煙突から煙を吐き出している建物があり、中で黒っぽいウロコのリザードマンが・・・ひょっとして種族が違うとかじゃなくて長年火の近くの作業で変色したのかな・・・1人はタライの縁のように丸い何かの金具をグイグイ曲げていて、もう1人は砥石で大き目の鎌を研いでいるのが見える。
・・・うん。火を使ってないのなら消すか弱くすれば良いのに・・・実に暑そうだ。
「フム?興味あるノカ?残念ダガ鍛冶ノ技術ハ無いノデ、ナ見様見真似ノ技デあるノダガ。武具や農具ナドノ修繕ヲする工房、ダナ」
その作業を見ながらカフィーさんが説明してくれる。
「ほうほう。色んな道具がありますね〜少しくらいなら手伝えるかも?」
「ホウ?ロウジハ鍛冶ノ技モ身ニ付けている、ノカ?」
思いの外食い付いてくるカフィーさん。
だが。
「あ。あ〜、えっと。そう、ですね。鍛冶については本っ当に初歩ではあるんですが・・・」
見ててなんとなあれくらいなら簡単に出来るな、やってみたいな、などと思わず口にしてしまったのだ。
だけど当然、簡単な道具作りならともかく『鍛冶』なんか経験あるはずもなく。
そんな期待されても困るというものだ。
・・・まぁ、実際にはここの簡単な設備でやれるような事なら出来る気がしているんだけど。
多分、だけど俺の鍛冶スキルがなんとなく教えてくれてる気がする。
金物のバケツやら簡単な道具の修理や研ぎなんかは家でやっていたから今リザードマンのやっている作業なら問題ないし。
誰に何を言われるか分からない外ではやりたくないが最悪シヴァ神に頼んでスキルレベルを上げてもらう反則技もアリだしな。
まぁ、どちらにしろ経験値ゼロだけど。
ただ、今のは本当、興味本位から出てしまった言葉で別にここでリザードマンの鍛冶屋になる気は全くない。
そんなわけで言葉を濁してしまう俺。
「フゥム・・・人間ノ冒険者ニハ自分達デ武具ヲ手直しする者モ多いノダッタカ。ワレラガ技術ヲ身ニ付けられる気ハしないガロウジ達皆ガある程度自由ニ使えるよう長ニハ頼んデおこう」
許可が出るまでは一応立ち入りもしないように、と言ってくるがそれは願ったり叶ったり、かもしれない。
「あ、ありがとうございます」
「ウム。・・・そうダナ、あまり悩み過ぎるナ、よ、ロウジ?」
「え?」
「フッフ」
軽く笑うと鍛冶屋、修理屋の2人と何事か話をしに行くカフィーさん。
2人は頷き、というか会釈、だろうか首を二回縦に振って挨拶をしてくる。
こちらもそれに対して軽く会釈をして返す。
「あの2人ニハ話ヲしておいタ。やはりあいつらハ許可ガ出なくてモ人間ノ技ヲ見てみたいようダナ。フッ今ハ我慢して貰っタから安心しろ」
そんな風に笑いながら言ってくる。
「はぁ。いや、そんな人間の技術って言える程の技術は身に付けてないんですが」
カフィーさんがなんか柔らかくなってる気がする。
修理屋から離れて他の家々を見て回る。
集落の真ん中近く、らしいけどそこでは宴会の準備が進められていた。
「マダ早い。行くゾ」
「あ、はい。・・・?」
なんかじーっと見られているのがなんとも。
結構警戒心丸出しのリザードマンも居たりするみたいだし、子供だと思うんだけど小さいリザードマンの中には俺が顔を向けると近くの大きなリザードマンの陰に隠れたりしてるのも居る。
うわ、気になる。
「ム。ウム。リザードマンニハあってハならない事デハあるノダガ多少怯えている者モ居るようダ。すまんナ」
「あ、あぁ、いえ。・・・そう、ですよね。流石に理由は分かりますしその気持ち、理解も出来るので大丈夫です」
そうか。
やっぱりあれは怖がってるのか。
怖がられちゃってるのか。
「う〜ん」
「ム、どうしタ」
「え?あ〜、いやぁ」
流石に少しだけでも凹んだ、とは言えない。
「マァ、アレダケノモノヲ見せられれバ、ナ。イヤ、実際ニハ外ノ様子ガ分からズニ居タ者達ガ急ナ出来事ニ戸惑っている、トいうのガ正しいカ」
・・・・あぁ。
「あ〜。いえ、分かります。気にしないでください。大丈夫です。」
階段から落ちた人とかもいたし、外でモルドスライムと戦っていたはずがするはずのない音と地響きとがして気が付いて外を見遣ればアノ有り様、なわけだ。
うん。そりゃぁ、ねぇ。
それをしでかしたのが俺だと聞けば警戒もするし怖がられもするか。
(ウンウン)(ロウジダカラネ〜)(ロウジダカラロウジダカラ)(シカタナイシカタナイ)
(いやいや。半分は・・・半分以上、殆ど君らのせいだからね。)
心の中、というか頭の中で話をするイメージでシルフ達と会話をする。
(シカタナイシカタナイ)(オオカッタオオカッタ)
(むう)
「ドウカした、カ?」
「あ、いえ。ちょっとシルフ達にやりすぎだ、という話を・・・んっんん?この臭いは?」
なんか親しんだような匂いが宴会場となった広場からし始めてたんだけど、それとは別に行く先の方からなんとも言えない・・・青臭い臭い、とでも言えば良いのか、そんな臭いがしてきた。
はっきり言ってクサイ。
「ウ、ム。ムゥ。ロウジヲまず連れて行こうトしてるノガあそこダ。あそこノ奥、ナノダガ」
「あれ?リン?」
白い布をマスクのようにした上で手で押さえたリンが駆け足で俺たちの少し前を横切っていった。
「フゥム。薬が何か足りなクなっタ、ダろうカ?」
顎に手をやり考えるカフィーさん。
「あ、あぁ、ひょっとしてこの先の奥、って」
「ウム。クスシ、ノ家ガあるノダ」
「なるほど。薬師、ですか。なるほど〜」
どうやら俺が調合とかをやるというのを覚えていたようだ。
いや、違うか?
単純に薬を大量に提供したからかもしれないな。
「ウ、ム。ロウジ達ガ持っていタノハ良い薬ばかりダッタから、ナ。そろそろ皆ノ治療モ終わるカト思っテタノダガ・・・ウウゥムムム」
どうやらカフィーさんもクサイものはクサイらしい。
「薬師さんでしたらそれこそ材料あるでしょうし、何か手伝えるなら手伝いますよ、俺も。・・・リンは流石に戦線離脱みたいですし」
ここでこれだけクサイのだから発生源(失礼)近くはもっとすごい臭いになってるだろうからな、鼻が良いリンには耐えられなくなってしまったのだろう。
「フム?ロウジハあまりこたえてない、みたいダナ?」
「え?・・・あぁ、はい。調合のスキルありますし薬師ではないけど調合士ではありますから。多少の恩恵はあるみたいです、ね」
(ウソウソ〜)(ゴマカシゴマカシ〜)(ウソツキウソツキ〜)(スケコマシスケコマシ〜)
うん。スケコマシは違うよね。
実は調合スキルと調合士の職業の恩恵で多少の悪臭耐性・・・耐性なんていうものでもなさそうだけどあるみたいなんだよね。
ただ、それとは別に臭いがキツくなり始めたから俺の周りだけ少しだけ・・・風を操ってるのがバレない程度で・・・シルフに空気の流れを変えて貰ってたりする。
いや、それで少しだけカフィーさんとこに行く臭いがキツくなってたりしたらごめんなさい、だけど。
「あ!ロウジィ〜!お話終わった〜、の〜?」
「あ!ロウジ!待ってたですよ〜」
「あれ?フェアにエリー・・・ってフェアはどこに行ったかいつの間にか消えてて不安になってたんだけど。良かった、ちゃんと合流してたんだね」
なにやら緑の実がいくつもついた草(茎というか蔓みたいなので繋がったまま)を抱えたままのフェアと木製の手桶とコップを持ったエリーが俺を見付けて飛んできた。
「うん!面白そうな場所探してたらここに皆来たから、なの!」
持った植物を首に巻きながら言うフェア。
・・・それは多分そんな事しちゃいけないモノのような気がする。
「はい〜。治療して周ってたんですけど〜、怪我人はココに集まる、集めるように、って〜言われたんですよね〜」
そしたら先にフェアが来てまして〜、と追加説明をしてくれる。
つまりフェアは遊び場を探すのを優先してたんだけど結果として治療か薬作りを手伝う事になったわけか。
なんと言うか、こういうのも王女スキルか何かなんだろうか?
「あぁあ〜!ロウジィ〜〜!来てくれたのならぁ〜、こっちぃ〜手伝って下さいよぉぉ〜」
「ん?アリー?」
声はするけども姿は見えない。
「中で手当てしてるなの!薬も作ってる、の!ただ、わたしはロウジに結構渡しちゃってたからあまりお手伝い出来ないの!」
は?
「・・・すぐ行くよ」
なんでアリーだけ苦労するような形になってるのさ。
しかもフェア・・・君は何をやってるのかな。
「んオォット?薬を作れるというのはお前さんカえ?人間カ。頼んだヨ」
「え?あ、はい。はい?」
声と喋り方からして老婆、なのかな?
襤褸・・・でもないか、ケープのようなものを纏ったリザードマンが入り口でぶつかりそうになりながらそんな事を言って来た。
え?
まさか未だ治療中ですか?
未だ治療と薬も作れ、と?
・・・こうして俺の初調合士の仕事が突然向こうの方からやって来た。
いや、違う。
俺が自分で仕事を作った形になったのだった。
お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
今回何か眠気と闘いながらの作業で誤字脱字が酷くσ(^_^;)
直した、直しまくりましたが読みづらい箇所もあるかもしれません。御容赦下さい。
次話は未だ残っていた怪我人?の治療と薬の調合や薬師としてロウジが少し学んだり。
そして今度こそ宴会を経て、となります。
更新予定は30日です☆