索敵しながら森を歩いていきます?!
リザードマン達を困らせているモルドスライム退治に出発したロウジ達。
森の奥へ奥へと歩いて行きます。
警戒しながら、索敵しながら、ですが、さてさて、どうなりますか。
「広い広いとは聞いてたけどこんなに広いとは思ってなかった」
「ほんとに広いにぇ〜」
「広いね〜」
「広いの〜」
「楽しいですねぇ〜」
「・・・そうか。君らは楽しいんだね」
アングリーマッシュの村、集落を出てから1時間(80分)くらいは経ったはずだがまだ着かない。
まぁ、原因は・・・
「ほらほらロウジ〜!また珍しいの見つけたの〜!これ、要るのかも〜?なの〜?」
「あ、あそこの木の実は見た事ないですねぇ〜、ちょっと行ってきます〜」
「ん?あれは、何だろ?」
と、まぁ、妖精3人娘があっちへフラフラ、こっちへフラフラと寄り道?をしているからなんだけどね。
楽しんでるよ、ほんと。
それに警戒しながら歩いてはいるがモルドスライムどころか魔物の1匹にも出会っていない。
シュタッ
・・・ボト
「おぅわっ?!・・・またヘビか」
・・・・毒ヘビや害がありそうな虫等はこうしてリンの投げナイフやフェア達の魔法で発見され次第駆逐されている。
うん。俺の出番は今の所ない。
【ドリーミー】
別名:幻惑草。葉や茎から出る汁を舐めるだけで10分あまり幻を見続ける事になる毒草。乾燥させた葉を炊く事で効果時間の延長が可能。幻を見ている間身体は全く動かない為に麻酔薬の代わりとしても使う地域がある。
【ジャクス】
別名「5年殺し」。毒草。葉1枚分から取れる毒液を口にしたものは摂取してから5日後には手先が麻痺し始め5年後には死に至る。対して茎から取れる毒液には2週間程度寝込ませるくらいの強さしかないのが特徴。
【ベアーキラー】
オレンジ色の丸く柔らかい実が出来る背の高い草。毒草。その実には1つで大人の熊二頭を軽く殺せるだけの毒素があるので注意が必要。熊は自分からは絶対に食べない。
【シリアルベアーキラー】
赤い丸く柔らかい実が出来る背の高い草。その実には1つで大人の熊四、五頭を殺せるだけの毒素があるので注意が必要。熊は落ちている実をたまに他の実と間違えて食べてしまう事がある。
【オピウムポピー】
ケシ。麻酔薬、魔薬の原料となる植物。王国歴元年より許可無く栽培をする事は違法となっている。
魔法が苦手な種族や医術の発達していない地域に於いては麻酔薬として栽培利用されている場合もある。
はっはっは〜、戦争が起きるぞ〜。
うん。そしてフェア達のおかけで着実に毒物が貯まっていく俺のアイテムボックス。
少しヤバ目の物もあったりする。
しかも何かに使えるかもしれないから、と毒虫やら毒蛇の死骸も皮袋に入れてからアイテムボックス行きになっている。
しかし・・・一般的に(?)「毒草」として扱われる草のなんと多い事か。
いや、そうじゃなくてフェア達にとって珍しく感じるのが毒草に分類される物が多いだけなのか?
とりあえずフェア達にはココでしか見られないかもしれない物、珍しいと思った物があったら取ってきてくれるように頼んであるからね。
【毒草 (シビレ草?)】
弱い毒物を含んだ草。恐らくは口にすると麻痺を引き起こすシビレ草と何かの交配種であろうと思われるがよく分からない。
効果不明 効果時間不明
【ナニカの実】(食材)
ナニカという樹木の実。完熟すればかなり甘くなるがそこまで行かないと酸っぱっかったりしょっぱっかったり、苦かったりと味にバラツキが出る。これも未だ熟してはいない。そんな物を食べた後にこう言うのだ。「これはナニか!?」とな。
効果不明 効果時間不明 疲労回復効果あり
【ナニカの葉】
ナニカという樹木の葉。大きく丈夫で色々と何かに使えそうだ。葉には虫がつきにくいため食材を梱包するのにも使われる。
【雑草 (?)】
雑草同士の交配種。雑草。名前は無いと思われる。何かに使えるかどうかも全く不明。
効果不明
【アマイノン】(食材)
ブドウのように房で実をつける樹木。そのオレンジ色の実。主な用途は調味料でありそのままだと普通は辛くて食べられない。干してよし、潰してよし、ジャムにしてよし、の辛味食材。これは甘くないのん。
等など・・・鑑定しても名前もよく分からない物、雑種の植物なんかもいくつか集まってるし。
これは俺の知識が足りないのかシヴァ神の知識が足りないのかまた改めて整理をした時にでも要再確認だろう。
異種族間交合が可能な世界、とは聞いていたが、リンではいまいち分からなかった事実をある意味やっと実感が出来た感じだ。
こうして分からない・知らない物をある意味強制的に持って来られると鑑定はしなきゃならないからなんだかんだで鑑定する事には慣れていきそうな気はするな。
問題は見知らぬ相手のステータス確認だ。
なんか、何度も考えてしまうんだけどステータス確認出来るのは鑑定や分析スキルや道具を持っている人間だけなわけだけど、要は個人情報。
成績表や履歴書を細かく正確にまとめたもの、という認識をすればステータス自体には文句無いんだけど・・・それを視覚として他の人間が確認出来るんだよね。
「相手が何者か?何を得意としている者か?」とかを知るのは生死にも関わるわけだから、まぁ、ぶっちゃけ見られるのは抵抗が無い。
ひょっとしたら向こうでも見られる人間やシステムが無かっただけで要は能力の表示化なわけでステータス自体は存在してるのかもしれないし。
ただ、やっぱり変に個人主義になっていた日本人からしてみれば「あの人はどんな人なんだろう?」で普通に見る事が出来てしまう状況に・・・どうしても無意識下でも抵抗があると感じる。
ボシン=ルドルフ
分類: 魔物
種族: リザードマン
称号: 次代のホープ
属性: 水 土
状態: ウーム
HP: 885/885
MP: 404/446
体力: 78
気力: 72
腕力: 89
耐久力: 88
知力: 84
精神力: 75
敏捷性: 78
幸運度: 35
職業
拳士LV.19 衛士LV.28
だけどゲームがそうだが、仲間の状態を常に視覚的に捉えられるというのは良いと思う。
体力や気力が減っていればそれも分かるし。
それに隠蔽や詐称のスキルがあると分かった今では相手に馬鹿正直に「見て良いですか?」と聞くのも何か違うという気がしている。
うん。多分ピアリス様とかには「やっと分かってくれたぁ?」とか言われそうだけど・・・難しいな。
慣れて行く、行けるのだろうか。
「ムゥ。ワレラガただ前ヲ歩クだけニなっているのだガ」
「ウム。これハいかんナ。兄者ヨ」
おっと。俺よりも危機感の様なものを感じて悩んでいる風なのが先導しているリザードマンの2人だ。
まぁ、気持ちはわかる。
良くある森での道案内と言えば歩くのに邪魔になる草や木の枝なんかを払って後ろの人間が歩きやすいようにするものなのだろうが・・・生憎と今の所はその必要もないし。
まぁ、それはある意味自業自得というか何というか。こちらは助かっているから良いんだけどね。
「いや、でも。こんなに歩きやすいとは思ってなかったですよ。周りの警戒をしやすいのは助かりますね」
前に居るボシンさんにそう話し掛ける。
「ウ、ム。森、トハいえココはピアリス様の管理地の中、建物ノ中だから、ナ。ただデさえワレラとアングリーマッシュ達だけデモ歩き回れバ道ガ出来るデあろうから、ナ」
ハッハッハ、と笑うボシンさん。
そうなのだ。
普通の森であれば獣道でもあれば儲け物なのだろうが、この森には細かい草しか、あるいは草が生えていないで土の地面が見えていて歩きやすい場所、というのがある。
・・・落とし穴とか無いよな?と疑ってしまうくらいに。
確かに考えてみればここは建物の中で。
身体のデカイ人達(?)が普段から道として使っている、使っていたならこれも頷けるには頷ける。
それに多分、だが。
先頭に武装したリザードマン2人が歩いているおかけで狼やら熊やらも近付いて来ないんじゃないかな?と思うんだよね。
どんな魔物や動物が居るのかは聞いてないけど。
「でも、カビを生み出して、と言うか育ててそれを食べて、ってだけのスライムなんですよね?しかも酸もそんなに強くなくて攻撃的でもない」
どうにも納得いかなくてどうしても聞いてしまう。
「ウム。普通デ言うスライム達トハ違っテ銅や鉄ノ武具デ無けれバそれほど劣化する事モ無い、トハ思う。ダガ、ワレラノ武具と言えバ、ナ」
「・・・あぁ。なるほど?」
2人とも拳士ではあるけどアングリーマッシュの集落には槍と斧を持って来ていた。
その槍と斧もちゃんとした鍛治職人などは居ない為なるべく受け継ぐ形を取っているそうだが、細かく観察すると刃元に少しサビがあったり柄である木の部分も黒く変色していたり傷だらけだったりと決して良いものでは無い事が窺える。
更にその爪をも使うスタイルから拳、と言って良いものか悩む所ではあるけど拳にはメリケンサックのような、硬い指出しグローブのような形の銅色の金属が嵌められている。
「他のスライムよりモ武具ガ劣化しないトハ言え、こう言っタ銅や鉄デハ溶かされなくトモ劣化ハするし錆び付くノモ早クなる。それニ、ナ・・・・」
「ん?」
何か言い淀んだボシンさんに先を促そうとする。
「リン、だったカ?そこノネコマタガ言ってタようニワレラやアングリーマッシュ達ノ身体モ彼奴ラハ餌場ニしようとするのデ、ナァ」
困ったような恥ずかしいような?感じで答えてくれた。
「・・・餌場に?・・・あぁ〜・・・それは・・・」
カビや菌類が育ちそうな環境に住んである意味自給自足して暮らすスライムだったか。
確かにリザードマンの身体はヌメヌメした感じがして環境的に見るなら合っているのかも知れないが?
「でも弱いんですよね?」
そもそも生きている生物・・・?何か日本語的にはおかしなような気もするけど生物に寄生するような事は書いてなかったけど。
「ウム。普通デあれバ敵デハ無い、ナ」
「やっぱり。あ、いや、そうか。そういえば今までは自分達でなんとかしてたんだっけか。」
なんか初めての事だから(当たり前だけど)モルドスライムが現れたから助けてくれ〜的な話だと何処かで勝手に思い込んでた。
「ンム?縄張りガしっかりしてる相手デハあるから、ナ。ワレラ側に来たモノ達ヲ駆逐するだけデあれバ問題ない。」
「なるほど。・・・今までにこういった異常繁殖?大量発生?みたいな事はあったんですか?」
季節とか何年周期で起きるとかであればその都度対処を求められていたはずだ。
「ウム。ワレラノ世代ハ知らないガやはり過去ニ何度モ起きているようダ。決まっタ周期ガあるかハ分からんガその度ピアリス様ニ助けヲ求めている、求める事ニなっている、ようダナ。」
「良かった。そうなんですね」
そうか。
じゃぁ、別に今回が異常ってわけじゃないんだな。
物語でよくある(?)ようにお詫びで異世界に来たはずなのに何故か世界規模の騒動に巻き込まれる、とか止めて欲しいからなぁ。
まぁでも、神様自身が力を使ってるとは言えやっぱり何処かで世界に無理をきかせてる可能性はあるわけで。
多少の揺り戻しみたいなのが来るのは覚悟してはいるんだけど・・・・良くも悪くも物語の読みすぎだな、平穏無事が一番に決まってる。
それに神様自身も含まれた運命の流れで騒動が巻き起こる世界をなんとかする為に世界間移動、なんて主人公体質は持ってはいない、はず。
・・・やっぱりこういう事を考える上での問題は俺が関わってる神様があのシヴァ神だ、という事だな。
「ンム?よかっタ、トハ?」
「あ、いえ。まぁ、分かりました。今回が特別異常というわけじゃないなら安心しました。とにかくスライム退治っうわおぉっと!!・・・ナニコレ?・・・果物?・・・フェアぁ〜?」
なんか黄緑色の物体が斜め前からゆっくりとだけど飛んで来たからびっくりしちゃったよ。
取れたから両手でキャッチして見たけど・・・多分果物だよな、これ。
瓜、ではなくてパイナップルみたいな物だと思う。
イボイボ、ゴツゴツしてるし。
大きさも俺の顔よりもデカイ。
・・・よく手が痛く感じなかったな、俺。
少し甘い匂いがしているみたいだ。
「なんか甘い匂いがしてる」
「あははっ、ロウジ〜、帰ったら食べるの〜!持ってて〜!美味しいのなの〜!」
フェアがもう1個更に大きなのを・・・自分の身体と同じくらいなのを持って飛んで来た。
俺が持っている物よりも黄色っぽい。
【ジャックフルーツ】(食材)
別名:波羅蜜。ゴツゴツとした外見からするとなかなか果物とは思えないが中はすごく甘い果物。大きい物では70〜80センチ程になる。熟すに連れて黄色っぽくなっていく。
おぉ。波羅蜜。
なんとなく聞いた事はあるけどこんな感じの果物なんだ。
食べた事は・・・記憶にないから多分ないな。
確か果物の王様ドリアンよりもデカくなる・・・とは言ってもドリアンも見た事ないから実際どのくらいが最大級なのかは分からないんだけど、フェアが持っているのがかなりの大物だというのは間違いないだろう。
「ロウジ〜、これもロウジのアイテムボックス入れといて〜、なの〜」
良い可愛い笑顔でそれを差し出して来る。
「ほいよ」
1つずつアイテムボックスにしまう。
「フム。ジャックフルーツ、カ。少し離れた右手側に数本生えていた、ナ確カ。」
ボシンさんが辺りを見回しながら言って来る。
「あ。これ、大丈夫ですか?リザードマン達で育ててたり、とかは?」
農園みたいなとこから持って来てたらどうしよう?
「アァ、大丈夫ダ。この辺ノハ野生ノ物ダからナ。持って行くト良い」
「えへへ〜。甘くて美味しかったの〜。帰ってからのオヤツも楽しみなの〜」
ニコニコとしながら俺の右側に来るフェア。
「あれ?アリーとエリーは?」
いつの間にか見えないぞ?
リンはカフィーさんと一緒に辺りを警戒しながら先導してくれているけど。
「エッヘヘ。あの2人は置いて来た〜なの〜」
・・・は?
「いや?置いて来た、って?どういう事?ダメでしょ、置いて来ちゃ」
おいおい、だよ。
「え?・・・エッヘヘ。あの2人はまだ食べてたからぁ〜、なの〜!フェアはロウジ達にも早くコレ、見せたくて、なの〜」
右手にぶら下がりながら・・・少しは飛んでるみたいで重さはほとんど感じないけど・・・そう、言って来るフェア。
「あぁ〜・・・なるほど。3人で食べて来たんだね、もう。だから幸せそうな顔をしてるのか、ずっと。」
謎は解けた!って感じだ。
しかし、フェアのお付きのはずの2人がフェアを放って置いて食べてるとか・・・そんなに美味しいのか?
「ウ、ム。美味いフルーツダナ。喜ぶノハ分かるノダガそろそろスライム達ノ縄張り二入るはずダ。気ヲ付けテいろよ」
「お、っと。了解。」
ボシンさんの注意に気を引き締め直す。
・・・いかんな、ゆるゆるに弛緩してたよ。
「わか〜った、なの〜!」
そう言ってフェアも杖、ロッドを取り出す。
・・・・ん?んん?
あれ?
「・・・そうじゃん・・・フェアだって冒険者なんだからアイテムボックス持ってるんじゃん。」
なんかしばらくフェア達にとって見慣れない、珍しく感じるアイテムを集めて貰ってたから忘れかけてたけど、別にオヤツをわざわざ俺が保管する事は無いんじゃないかな?
「んん〜?・・・どうかした、なの?」
唇に人差し指を当ててチョコン、と首を傾げて聞いて来るフェア。
ん〜、まぁ、良いか。
「ん〜、まぁ、良いよ。俺のアイテムボックスの方が入るだろうし、珍しい珍しくない関係無しに俺は知らない物が多いのは確か、だからね」
後から全く見も知らぬ物を一気に出されたりするよりは俺も鑑定出来る余地もあるわけだしな。
「んん〜?良い、なの?」
「うん。俺の勉強にもなってるし」
「ム。居たゾ」「ロウジ!あれ!」
「ん?」
「なの?!」
いや、なの?って。
まぁ良いか。
リンとカフィーさんが指し示している方角を見るとなにやら灰白色の塊が・・・・
「デカイよ?!なにあれ!」
「ぅわあぁぁぁ〜、おっきいの〜!」
「ン?なんダ?知らなかっタノカ?あれハかなりノデカブツダガ・・・ソノ下ニ見える奴ノようニ大きさハまばら、ダゾ?」
「・・・マジか」
リン達が先に示していたスライムは俺達や木と比べた感じだと、多分二階建てバスくらいの大きさがあり。
ボシンさんが顎で差した先の奴はセントバーナード犬くらいの大きさがある。
「にゃぁぁ。あれは無理!ロウジ、お願
い!」
リンがさっそくリタイア宣言をする。
「マジか」
「あれにょ下にも2匹居るけどそっちには当たってみる!」
「マジか」
「酸ハ弱いガ服くらいハ溶かされる。突っ込み過ぎるナ?」
「まダ近クニ小者ハ居るかもしれん。気ヲつけろ」
カフィーさんとボシンさんが武器を構えながら続けざまに注意を促してくる。
「マジか・・・うーむ。さっき言いそびれたけど。スライム退治がんばっていこう!」
さて、どうしようか。
大量駆除だからセオリー通りに(?)魔法を使う気ではいたんだけど。
同時に酸が弱い、動きも鈍い、攻撃的じゃない、と言うから剣の練習も出来るかな?とか実は密かに思ってたんだよな・・・これじゃ無理そうだよな。
「オウ。お前達モ念ノ為体液ニハ気ヲつけろ?ワレラトハ違いやはり何モないカもしれないガ。」
一応剣を鞘から抜いてから悩んでるとカフィーさんが注意を促してくる。
「ん?あぁ、カビを生まれやすくするんでしたっけ?多分大丈夫だとは思いますが気を付けます」
多分それだけなら大丈夫とは思うけど、弱酸でもあるわけだしな、なるべく体液は浴びたりしないように気を付けて行くか。
モルドスライム
分類:魔物
種:スライム
HP: 108/128
MP: 30/32
体力: 98
気力: 41
よく見るとデカイ奴は丸太、と言うよりか倒木を二本まとめて体内に収めているようだ。
その倒木の表面がスライムの色よりも濃い灰白色になっている。
「ふ、ん?あれはもうカビが生えてるって事かな?」
「ロウジ〜?どうする、の〜?」
「うーん。とりあえず、あの、赤黒く見えるのが核、だと思うんだよね。やっぱりデカイけど。とりあえずはあれを狙って魔法攻撃、かな。良いよ?ちょっと俺がやってみるから。」
リンが果敢に切りに行ってるのを見ながらフェアに答える。
「あ。倒した?うーん・・・・リンとボシンさんの攻撃見る限りだとかなり水っぽいんだなぁ」
うーん。
リンが投げナイフを投げ込んだり、ボシンさんが槍を突き込んだりする度にチャポン、ビシャッビシャッと灰白色の液体、体液が飛び散っている。
むぅ。
スライム。見てるとやっぱり火で燃やし尽くしたくなるよな。
魔法を・・・あれ?槍、投槍か・・・良いんだっけかな?
まぁ、良いか。
「デカイ1匹相手だしとりあえず氷系で行ってみるか・・・フリーズ!スピア〜!」
左手を上げ、氷の槍、投擲の槍を長めにイメージして魔法名を叫ぶ!
キキキキキッキッン、と大気の水分が凍りつき160センチ弱の、ほぼ俺の身長と同じくらいの長さと太さの氷槍が左手の平の上側に出来上がる。
・・・槍、と言うよりは杭みたいになってしまったが、気にしないで行こう!
このまま投げて貫くイメージ!
「いっ、け〜っ!」
そのまま左手を振りかぶって(俺は投げるのは左利き)氷槍を投げ飛ばす!!
「おおぉ〜っ!すっごいの〜!飛んで行ったの〜!速いの〜!遠くまで行ったの〜!」
パチパチ、と小さな手で拍手しながら飛び跳ね・・・空中で、だけど・・・飛び跳ねながら喜ぶフェア。
「オオオ」
「スゲェ、ナ」
カフィーさんとボシンさんが見送る。
・・・・それは。
見事に巨大スライムの更に上を飛んで行った。
・・・どこか遠くへ。
・・・木にすら当たらずに。
・・・
・・・
「ロウ、ジィ?」
「あっれ〜ぇ?」
やばい、リンの目が冷たい。
モルドスライムは気が付いていないかのようにその場で動かない。
おかしいな?
俺はボールコントロールは良い方なんだけど、なぁ。
うーむ。
「う〜ん?」
左手を何かを投げるように何度か動かしてみる。
やっぱり槍だからか?
「?ロウジ〜?魔法のコントロールはしないの〜?ないの〜?」
「・・・ん?」
フェアが何か不思議な感じで聞いてくる。
ん?
だから今コントロールを良くしようと考えて・・・?
「あ。そうか。魔法、なんだった。」
やっちまった?
「ごめん、ありがとう、フェア。ちょっとドジった」
「あははは〜なの〜」
「ん、と。フリーズ!スピア!」
再度左手を上に、その手の平の先に氷の槍を作り出す。
えっと。
「左手は添えるだけ?・・・で、コントロール。行っけ〜!」
スライムの核を見据え、そこに命中させるイメージを持って投げる。
と、言うか発射する。
「「オオォ!」」
スライムに刺さりあっさりと核を貫く!
「やった?」「やったぁ!なの!」
しばらくプルプル、ブルブルしていたが見てるとドバシャァッと崩れ去った。
うん。多分核が完全に壊れたんだろう。
「よし、やった!・・・でも、そうかぁ、魔法はコントロール出来るんだよな。俺は良く知ってるはずなのにすっかり忘れてたな」
考えてみれば精霊魔法を使った時には出来ていたはずの感覚だ。
まぁ、精霊魔法と普通の魔法とは違うっていう思い込みと、俺が知ってるのは飽くまでも物語の中の話であって現実とは違う、という認識もどこかで働いてるのかもしれないけどさ。
「やったぁ〜!なの〜ロウジ〜!」
フェアが飛び付いてくる。
「あはは。ありがとう、フェア。魔力操作、打ち出した魔法のコントロールは魔法に慣れてきた魔法使いの次の課題だったり一流の条件だったりするもんな。色々試していくよ」
どうも塊を作り出して相手にぶつける魔法の場合は気を付けないといけないな。
ただ塊を作り出すだけじゃないし、ただ相手を狙って飛ばすっていう魔法じゃないんだ。
よく考えてみればバレットやボール系の魔法は特にコントロールしやすい魔法のはずだよね。
「よし。魔法が面白くなってきたかもしれない」
次の標的、モルドスライム達を探してまた歩き出す。
お読みいただきありがとうございます(*^ω^*)
ロウジはフェア達に見た事ないものや珍しい物、使えそうな物を見付けたら持って来て貰うように頼んであります。
でも、実際に持って来るのは使えそうな物、ではなくフェア達にとって興味を惹かれた物が殆どだったりしてロウジのアイテムボックスの中身が少し偏りだしています(笑)
実はそこはロウジも目につく動植物を鑑定していけば結構解決するはずの問題なのですが、周りを警戒しつつ持って来られた物を鑑定するのが精一杯で未だ本人はそこには気が付いてませんね。
次話はモルドスライムのコロニーに辿り着きます。
さて、すんなり退治となりますやら。
更新予定は30日です(*^ω^*)/