結構ちゃんとした広さのある公園です?!
シルフの案内で精霊草が生えている公園にやってきたロウジ達。
魔力溜まりに注意しながら手分けして探索をする、と決めたのですが。
さてさて、どうなりますやら。
(ココ、オクノタンサクハシンチョウニ、ネ〜。アチコチニマリョクダマリアルヨ〜。ドライアードモイルケドネ〜)
「ここも公園、みたいだね。ここは少し濁ってるだけの普通の水が流れてるみたいだけど各階層にこういう場所があるのかな?」
採取。
素材を探すのをがんばるぞ!と気合いを入れたものの。
まず、林になっている奥には慎重に入る事を注意され。
(アソコト〜アソコ〜、アノヘンニセイレイソウガカタマッテルヨ〜。フンスイノマワリノコケモタシカ〜、クスリニナルヨ〜。)
(ア。アッチノキノネモトニハキノコルイガアルヨ〜)
シルフがとりあえず採取出来そうなものと場所を上げてくれるものだから一気に気力が萎えていった。
(ン〜?ドシタノ〜?ア。アトネ〜・・・)
「あ〜、うん。とりあえず森の部屋程じゃないけどここは生きてるんだな」
「・・・少なくとも下にはあるんじゃにゃいかにゃ?ここは排水溝が、多分だけど壁面に向かってついてるみたいだから。」
「ん?あ。あぁ。本当だ。上じゃ気が付かなかったね?」
シルフに気が行ってる間にもリンが俺の質問に答えてくれた。
一瞬何を言われたのか分からなくて聞き返そうとして、あぁ、と思い直す。
危なかった。
そして、リンの言葉に下、地面を見遣ると確かに溝が掘られていて、それが何本か前後に伸びているのが分かった。
と、言うか?
「なんか変な話、見慣れてて気が付かなかったけどどうもこの階層には下水溝がある?」
そうなんだよね。
公園の外からも?外へ?下水溝が伸びてる事に今更ながらに気が付いた俺。
リンにそれを言うと
「うん。あたしもさっき気が付いたところ。上の階じゃ気が付かにゃかったんだけど。しかも、これ、魔法で造られたんじゃにゃいかにゃぁ?」
そんな予想の上を行く答えが返って来た。
「魔法で?・・・これを?・・・う〜ん。これを?」
近くまで行きしっかりと見てみるが、確かに石材をその分だけ隙間を空けて組んだようには見えないし、そうかと言って土や石材を掘ったり削ったりして側溝を造ったようにも見えない。
「すごく、しっかりと形を作ってあるみたいだけど。これを魔法で?」
だけど。
むしろ元からそういう形にした石材を並べて嵌めたんだよ、と言われれば信じてしまうような結構な精密さ・・・と、までは日本人の感覚からしたら行かないかもしれないが、きちんと一本のラインが出来上がっている。
魔法でこんな事が出来るんだろうか?
どうしたらこんな風に出来るんだろうか?
・・・あ、違うか?
「うん?うん。だって、魔法でしかこんな風にきっちりとした物は造れにゃいよぉ?精霊魔法か土魔法かはわからにゃいけど、ね。」
「あ、うん。そうだよね。昔の遺跡だしね。」
そうだった。
こっちへ来てから生活してる場を見る限りあんまり感じる事はまだ少ないけど技術的に日本よりも、あっちよりも技術的に劣っているであろう場所であり。
そもそもが精霊魔法があるから直接材料に働きかけてこんな加工だって出来るんじゃないだろうか。
・・・うん。
やっぱり魔法=攻撃魔法、という概念がどうにも離れない。
これが魔法に出来る事で。
魔道具なんかも魔法を便利にしようとした結果生まれたわけだし、多分、俺も色々やろうと考えさえすれば日常に役立つ、日常生活を豊かにする魔法の開発なんかどんどん出来るんじゃないかな?
(ウ〜ン・・・ロウジニハアンマリセイレイヲコキツカッテホシクハナイケド、ネ〜)
「ん?精霊をこき使う?・・・・あぁ、精霊魔法を使いまくるのはそういう事になるのか?」
シルフの言葉に首を傾げる。
(ン〜、マァネ〜。タイトウノタチバデオコナウセイレイジュツナラマダシモネ〜。
ソレニココハモトモト・・・アァ〜、マァ、ソーイウタテモノダカラ、ネェ〜)
「そうか。少し足りないから力を貸せ〜、みたいな感じもするね、精霊魔法の方は。確かに。ん?元々そういう建物?」
(ウ〜ン、ソウ。ニンゲンノタメニセイレイヲツカッテタテラレタタテモノ、ナンダヨネ〜、ココッテ。)
「・・・そうなんだ?人間の為に?・・・精霊術や精霊魔法で、じゃなくて精霊を使って、ね。・・・・ふうぅん。」
なかなか難しい事情がありそうだなぁ。
まぁ、昔の事だしあまり首を突っ込まなくて良いなら突っ込まずにいたいな。
シルフもなんとなく教えたくないような雰囲気を出してるし。
「なかなか難しい話をしてる?フェア達はさっさと採取行っちゃってるからあたしも散策してくるよぉ」
少し考え込んでいたからかリンがそう言って林の方へと歩き始める。
「あ。林の奥の方には魔力溜まりがいくつかあるみたいだから気を付けて、って。結構な広さがあるみたいなんだけどあんまり遠くへは行かない方が良いかもしれない。行くなら皆で進もう。」
「あ。そう、なの?ん〜・・・じゃぁフェア達、フェアが心配だよにぇ〜」
「・・・・あ〜。うん、そうだね。どっちに行ったか分かる?」
途中で言い直したリンだけど、その気持ちはよく分かるからそのまま答える。
もう着いた途端に飛んで行ったフェア達は色々採取して来てくれるのは嬉しいし有難いんだけどちょっと様子を見に行った方が良いかもしれない。
「あ。ちょっと遅かったみたい」
(キャハハ!ロウジ〜チョットオソカッタミタイヨ〜?アノサンニンハホント、コリナイネ〜!)
「は?」
ズズズズズン
惚けた瞬間に少し足に振動が伝わってきた。
「うを?」
「今のはエリーにょ魔法かにゃ?あれ!ロウジ!上!」
リンが首を傾げて正面奥を見て今度は上の方を指差す。
「あれはアリー?蝙蝠、バットか。あの数なら、あぁ、倒せるよね。・・・木が揺れてる?・・・やめてくれよぉ?」
ウインドカッター、という声が聞こえバット達は切り刻まれて地に落ちて行ったけど、その辺りで木がゆっさゆっさ、と揺れていた。
アリーはまだ数匹を連れて右の方へ飛んで行った。
あの木の揺れはエリーの魔法ではない、んだろうなぁ。
何かデカブツが歩いてるか木にぶつかったものだと思えた。
「ロウジ!」
「うん、分かってる!」
多分空中にバット、地面にはまた何か違う奴が居て。
アリーがバット達だけ引き離して行ったんだと思う。
トカゲならまだ良いけど変なモノ出て来ないでくれよ〜?とか思いつつもリンの少し後ろから現場に急ぐ。
リン達と歩き回って分かったことだけど、俺は動き回る身体能力自体はかなり上がってる、上がりまくっているようだけど聴力や視力等の五感、所謂身体機能の方は多分全然変わっていないようなんだよね。
おかげで視力は森で暮らす妖精であるフェア達が、聴力や嗅覚、暗視能力はリンが優れているからすっかり頼っていた。
・・・料理の時に「味覚は任せろ」と言っても殴られたり文句を言われたりせずにただ笑われただけなのが、なんとなく嬉しかった。
まぁ、実際にはこういう風に異変があった場合には風の精霊シルフ・・・空気の流れを司っている精霊に遠くの音を届けてもらう事が出来るからリンよりも聴力に関してはかなり上に出来るんだけどね。
(デモ、アンマリヤッテナイヨネ〜?ロウジハカゼノツカイカタニカンシテハナゼカユウシュウダヨネ〜)
「あ〜。まぁ建物内じゃあんまり、ねぇ。風の精霊については、まぁ。エルフは風使いでしょ、くらいな作品が溢れてたからねぇ・・・モロ影響だね」
『風使い』の作品には本当に多く触れたような気がする。
まぁ、日本という国が農業国で台風なんかにも悩まされてきた、って歴史もあるのかもしれないけど、風に関しては本当に文献も多かった気がするんだよなぁ。
それに他の属性よりもやっぱり触れやすいという面があるんじゃないのかな?
(ふう〜ん。シタシミヤスイ〜?ソレトモコワイ〜?)
「あ〜。どっちなんだろうね?正直分からない。・・・多分どっちも。こわさとかおそれとか色々含めて身近、なんじゃないかな?」
(アァ〜、ナルホド〜。ソウイウカンジナンダァ〜)
「うん。多分、って何あれ?」「ロウジ!あれ!」
「あ、うん。見えた。見えてるよ」
・・・リンは多分足の速さに自信があるんだろうけど。
残念ながらそういった方面は強化されてるみたいで足場が悪くてもほとんど並んだ状態でずっと走れるんだよね。
しかもそんな距離じゃないから息もすぐに整えられるくらいに乱れない。
今なら100m走を本気でやったら世界新記録も夢じゃない気がする。
「あ。こっちの世界じゃ亜人種も居るし身体強化とかあるからそもそもがとんでもない記録ばかりか。」
・・・・実はシヴァ神から貰った俺の能力はこっちの世界規模で見ると大したことはないかもしれない。
そこの所は気を付けないといけないな。
「ん?どうしたにょ?」
「ん?あ、いや。ひったくりとか簡単に出来ないんだな、って思っただけ。気にしないで?」
「にゃ?ひったくり?」
リンは混乱した。
【イビルロック】
分類: 魔物
種族: ゴーレム
HP: 1100/1400
MP: 160/162
体力: 90
気力: 特定不可
なんて遊んでる場合じゃない。
2メートル弱の丸い大岩。
これがフェアとエリーの2人が相手してる魔物だった。
こんなモノに突っ込まれたら車もペシャンコになるよ。
辺りの木は余程丈夫なのか、それともこいつが加減をしてるのか幹が酷い有り様になってはいるけど倒れてるのは一本もないようだった。
「フェア!エリー!大丈夫?こいつは?」
「フェア!エリー!こっちへ!」
俺がリンよりも前に出て質問すると同時にリンがフェア達を呼ぶ。
岩は・・・動かないようだ。
「いきなりあっちから飛んで来たの〜!それで、それでこのコが破片でケガしちゃって!エリーが魔法で、攻撃してるんだけど!なの〜!」
「い、いや、なの、って言われても。このコ?鹿?」
【フォーン】
分類: 野獣
種族: 鹿
生命力: 21
魔力: 12
体力: 16
気力: 4
む。
目を開けていれば可愛いだろう、白い斑点がある子鹿、うん。所謂バンビだね。
今は目を閉じてだいぶ弱々しい感じがする。
「リン、これを。俺はあいつに攻撃してみる。」
低級回復薬を3本、アイテムバッグから出してリンに渡す。
「わ、わかったにゃ。多分、だけど土魔法は使わにゃい方が良いと思う。」
「うん。分かってる。ありがとう。とりあえずこっちに引きつけるよ。・・・とはいえ岩かぁ。」
なかなか格好良い事を言っておきながらさぁ、困ったぞ、と。
「まぁ、気を引くだけならなんでも良いか。フレイム、ランス!」
フレイムの声で右手前に長く火が形成され、ランス、で槍状に固まる。
それを魔力を纏った右手で無造作に掴んで引き絞る。
そしてイビルロックという魔物に思い切り!突き刺す!
ガッツンッと良い音となかなか良い手応えがして炎の槍が突き刺さった。
「って?ただ刺さっただけか。・・・あぁ、こいつも前後ろの区別が無い相手なのかよ。」
頭の中にイビルロックの情報がさっきから浮かんでいる。
リンに土魔法が効かないのを知っていると言ったのはそれが理由だ。
なんだけど。
ゴッ!ゴッゴゴッヅンッ!
「・・・ひょっとして俺ならカウンターで砕けるかもしれないんだけど・・・やっぱり勇気が要るよなぁ、これは。」
変な話、岩らしく何のモーションも無くいきなり地面でバウンドしたかと思ったらこっちへ体当たり・・・突撃をしてくる。
ゴッ!ゴゴッンッ!
勢いでフレイムランスの火は消えるけど。
とりあえずこいつを倒すには種族がゴーレムになっている事からも想像出来るように粉々に砕いてから魔石を浄化するなりどうにかするか、身体を形成している魔石を直接壊すのが一番なんだけど、当然核は岩の中にあるわけで。
「要は砕かないと仕方ないよね!ファイアボール!」
ドッガァン!
ゴッ!ゴゴゴガガガンッ!
「うをっとった!、っと!・・・と?手加減要らないのか?」
そう。
アンジュが精霊魔法で造ったゴーレムの上半身を陥没させるだけの威力のファイアボールだったはずだけど、さすがに岩で出来た魔物らしくあのゴーレムと同じくらいの削れ方もしていないようだ。
「考えてみればそうだよな、岩なんだもんな。じゃぁ普通の威力で。ファイアボール!」
ゴオッ
ドッガガガァンン!
「あぁあ!ウォーターァ〜!」
「あ、やば!えええっと。ウォーター!」
上からいつの間に来たのかアリーが慌ててウォーターの魔法で水を撒いてくれたけど、砕かれたイビルロックの破片とファイアボールの火があちこちに飛び散ってしまった。
「あ〜、危なかったぁ〜!アリー!ありがとう!助かった!」
上から降りてきたアリーに礼を言う。
「びっくりしましたよぉ〜!戻って来たらまさかファイアボールであんな大岩の魔物が砕け散る所で。辺りに火と砕けた破片が飛び散ってぇ。ここは水気が多いのですぐに惨事にはならなかったとは思いますけどぉ、ロウジはもう少し周囲に気を付けないといけませんよぉ?」
すぐに消火出来るのも良い事ではあるのかもしれませんけど、考えものかもしれませんねぇ、などと言ってくる。
「う、ん。本当、そう、だよね。森の部屋じゃちゃんと気を付けてたのに。あ〜、まだまだ、だなぁ〜」
とりあえず改めてアリーにはお礼を言っておく。
「ロウジィ〜!助かったなの〜!このコも助かったの〜!すごかったの〜!」
キュ、ヒィー
「ん?この子鹿の鳴き声か?今の」
「ロウジ〜、さすが、だけど。も少し、なんとかにゃらにゃっかたぁ〜?フェアが風の魔法で守ってくれにゃかったらこっちも危にゃかったよ〜?」
あらら。
どうやら飛び散った破片やら火やらが2人の方にも飛んでたみたいだ。
「ご、ごめん!ほんと申し訳ない!今アリーからも言われて反省してたとこなんだけど。ほんとごめん。」
いかんなぁ、倒すのに集中してて本当、リン達の事、距離とか全然頭になかったよ。
もう謝り倒す。
「もうぉ〜、本当ですよぉ〜!あの魔物よりもロウジの魔法での被害の方が怖かったです〜!」
「エリーもごめん。お疲れ様。怪我した?大丈夫なの?」
林の奥からエリーが飛び出してきた。
どうやら体力の消耗だけでなく怪我をしたらしく回復薬の空瓶を右手に持ちながらもう一本を咥えていた。
「魔力回復薬もあるよ?欲しかったら言ってね?」
「あぁ〜。さすがに飲んじゃいましたぁ〜。残念」
「私は欲しいですけどぉ〜。まだ体力回復中ですしぃ持ってるの大丈夫ですぅ」
「あ!私貰うなの〜!回復忘れてたの〜!」
「あ、はい。一応言っとくけどゆっくり飲みなよ?」
「う〜。分かってるの〜!」
言いながらコルク栓(厳密には軽木栓)を抜き飲み始めるフェア。
本当に分かってるんだよな?
「とりあえず採取の再開、といきたいとこだけど。奥の様子はどうだった?まだ何か他にも居そう?もし危なそうなら精霊草だけ集められれば良いから奥には行かないようにしたいけど。」
「う〜ん。野生のバットもジャイアントバットもあらかた退治してしまったとは思うんですけどぉ〜。正直分かりませんねぇ〜」
「う〜ん?分からない、んぐ、の〜。だからぁ〜また行ってみるの〜!」
「にゃ!はい!フェアはしばらくここで待機、ねぇ」
(キャハハハハ!ホント〜コリナイコダネ〜!デモ、マリョクダマリガアルナラ〜、メズラシイモノモハエテタリスルカモ〜?)
「お〜。ナイスだリン!でも、そうか。一応魔力水とか魔力を帯びた何かがあるかもしれないし様子を見ながら行ってみようか?」
「そう、ですねぇ〜。安全になったらなったで一旦ロウジに薬を調合する所を見せて貰っても良いかもしれませんしぃ。」
「ん?」
「あぁ〜!ロウジの調合みてみたいなの〜!」
「・・・・う〜ん。ま、まぁ、安全確認は必要だよね。じゃぁ、警戒しながら行ってみよう!」
まぁ、ぶっちゃけ一階の森の部屋よりは広くないだろう、と考えていたりするわけだけど。
魔力溜まりの周りに実際にどんなものがあるのかちょっと楽しみだったりもするわけで。
「キュウゥイ〜ィ」
うん。
この子鹿も回復したようだけどもし親が居るようなら探してやらないとな。
さぁ、探検だ。
お読みいただきありがとうございます☆
ロウジとしては手分けして効率よく採取だけ、という計画だったのですが、色々と狂ってしまったようです。
次回は大きな魔力溜まりを警戒して全員で固まって・・・つまりはちゃんとした探索パーティの形での探索になります。
子鹿の親も居るのかどうか気になります。
更新予定は24日になりますヾ(@⌒ー⌒@)ノ
どうぞよろしくお願いします☆