ウッドレイクピアリス神殿の成り立ちとピアリス、ちゃん?!
夕食を終えてまったりモードに入るロウジ達ですが、翌日に向かう神殿の地下部分についての説明を先に受けます。
さて、ロウジはそれについて何を思うのか。
「さて、皆食べ終わったようだから少し良いかしらね?明日の説明をさらっとしてしまうわよぉ?今日はもう早く寝たいだろうし、ね?」
ふふふ、と笑って言うその姿は少女とは言えやっぱりピアリス様だった。
「あ、はい。お願いします。基本的にはこの神殿の・・・中、になるんですよね?」
だからこちらもやっぱり敬語になってしまうんだよね。
なんか本体様程じゃないけど『力』も感じるし。
「・・・えぇ。そうねぇ。この神殿の・・・中、よぉ。魔力水はともかく精霊草については正確には建物の中ではないのだけどぉ。あら、大丈夫よぉ?今から説明してあげるからぁ。」
ピアリス様が珍しく途中で言葉を切ったのと魔力水と精霊草のある場所が違うような言い方をされた事で疑問というか疑惑?が顔に出てしまっていたようだね。
「・・・ありがちだけど。地下、かにゃ?」
リンが先んじて質問する。
あぁ、なるほど?
「ん?でも・・・あぁ、そうか。後から神殿が建てられたなら神殿の中とは言えないのか?」
地下にあったとしても地下部分から建設してたなら神殿の中、って言うよなぁ?と考えて反論しようとしたんだけど。
先に地下に魔力水が湧き出てるような場所があってそこの上の部分にだけ神殿を建てたのなら確かに神殿の中とは言えないのかもしれない、と思い付いた。
・・・でも、それだと1つ心配な事があるんだけど・・・。
「ふふ。ロウジだけかと思ったらリンも案外鋭く頭が回るのねぇ?えぇ、そうよぉ?神殿の建物の下に遺跡・・・・遺跡と呼ばれるけれどそんなに旧い物ではなくてわたしも機能している時の状態を知っている建物なのだけれど。まぁ、遺跡と呼ばれるものが埋まっているのよねぇ。そこに潜ってもらうに事なるわぁ。・・・あ、でも心配はしないで?魔力水があるから魔力溜まりはあるけれど特に危険な魔物は居ないから。魔獣と化したリザードなんかは居るけれど精霊達も活発に活動しているしねぇ。2人で・・・あ、違うわね。最初はロウジとリンだけを入れるつもりだったのだけどぉ・・・良いわぁ。フェア、エリー、アリー?3人も一緒に下りてロウジ達をサポートしてあげて?地下部分は3階まであるけれど魔力水は下りる前の精霊像の間でも汲めるから・・・帰りに汲むか行きに汲むか明日判断すれば良いと思うわよぉ?」
「へ?・・・あぁ、本当に魔力水は神殿の中にあるんですね?でも?・・・精霊像の間でも汲める、って事は地下に下りてからも汲めるっていう事ですか?」
うん。実際に決断するのはその時で良いかもしれないけど聞くべきは聞いておかないと判断するのに困るからね。
「あら、ふふ。ほんと、賢いコは好きよぉ?・・・そうねぇ。池になってる場所と壁や地面から所々染み出している所があるはず、よぉ?ただ、そちらは魔力溜まりには違いないのだから警戒は必要よぉ?スライムやリザードやバットなんかは普通に生息しているのだから。汲む手間などを考えると神殿で汲んだ方が良いとは思うけどぉ・・・そう、ねぇ?何事も経験、ではあるものねぇ?自然の中での採取経験はいくら積んでも良いと思うしぃ・・・判断は任せるわぁ」
「あ、はい。・・・確かに。」
まぁ、行きでも帰りにでも汲めるなら地下で様子見をしてからでも構わないかな?
「にゃんか・・・そんにゃ環境だと地下で魔物は生まれる気がするんだけど・・・にゃぁ?にゃ?なぁ。」
・・・・うん。確かに魔力溜まりが常に放置されてるなら魔物について聞いてる情報だと魔物は生まれそうだよね。
「そうね。魔力水自体の魔力が弱いという理由が1つ。それと精霊達の力で適当に放出してるのがもう1つの理由よ。それでもさっき言ったように水からブルースライムなんかは生まれてしまうのだけれど、そちらも精霊達が管理してるから数は居たとしても多くはないし強くもないわぁ。だから・・・ロウジは意外におっちょこちょいな所がありそうだしぃ、スネークやバットの方に注意した方が良いと思うのよねぇ。ふふふ。」
そう言って片肘をついたままウィンクをしてくるピアリス様。
「う。・・・まぁ、確かに変なドジを踏む事は多々あったりしますね。そこは否定出来ないので十分気を付けて行きます。」
うん。
なによりあのシヴァ神ならドジに関しても称号とか用意してそうだしな。
気を付けよう。
「そう、ね。精霊ので間と地下への入り口には明日案内するからぁ・・・・このくらい、かしらねぇ?カンテラとかの灯りは持っているかしらぁ?・・・まぁ、そうねぇ。魔力がある程度溢れているから無くてもマナを使って魔法でどうにでもなるけれどぉ。」
「あ、そうなんだ。」「あ!・・・あら、そうにゃんだ」
カンテラ持ってきてます!ちゃんと!とか言おうとしたら続きを聞いて気持ちが萎えた。
多分リンも似たようなものだったんだろう。
2人で顔を見合わせて笑ってしまう。
「あらあらぁ?ほんと、仲良くなってくれたのねぇ。・・・ピアリスちゃん、妬けるし困っちゃうぅ〜」
頬を両手で挟んでクネクネしだすピアリスちゃん・・・もとい、様。
確かに見た目的には特に悪くはない仕草なのだけど・・・・違和感がハンパない。
「うぅぅ。ひどいわぁ。ロウジとリンだけでなくピクシー3人娘までわたしを冷たい目で見てるわぁ〜シクシク」
・・・いや、なんと言うか。
「いやいや。姿が小さくても俺らはピアリス様、という認識でいるので・・・なんと言うか、違和感がハンパないんですって。可愛いには可愛いですけどね」
「にゃ」「え〜?」「えぇぇ〜?」「そうですかぁ?い、いえなんでも!ありま!せん〜っ!」
・・・いやいや、なんで皆さんそんな反応してるのかな?
リンは少しこっち見て固まりかけたし、エリーとフェアは明らかに不満顔だし、アリーは・・・その恐怖に怯えた表情についてはノーコメントで。
ま、まぁ、これからはピアリスちゃんと呼びなさい、とか言われるよりは良いのかなぁ、とか思うけど。
「あらぁ、ロウジィ?それ良いわねぇ〜?えぇ、良いわぁ。良いわよぉ〜?」
「は、はい?」
やばっ、まさか?まさかのまさか?
「ロウジ?ピアリス様?」「なに?なの?」
「「なんですかぁ?」」
「ふふふふふ。さぁ、みんな?今からわたしの事はピアリスちゃん、と呼びなさい?本体とか他の分体はどうでも良いわぁ?わたし、の事はピアリスちゃん、と、呼ぶように。良いわねぇ?」
い、ま、か、ら、よ?
と言ってくるピアリス様の少女形態様。
「う〜ん?ま、さすがに心の中までは文句言わないわぁ?だからぁ、ねぇ?みんな、わたしの事はピアリスちゃん、と呼んでねぇ?このわたしにはピッタリでしょうぅ?」
う〜む・・・・強制されてますがな。
「にゃ、にゃぁ。」「う〜ん?ピアリス、ちゃん、なの〜?」
「ふふふ。えぇ、えぇ、そうよぉ?良いわぁ。すごく新鮮!」
リンはやっぱり戸惑いしかない感じだね。
さすがはフェアだ。物怖じしないと言うかなんと言うか。
でも・・・少女の姿をしたピアリス様は意外に・・・思った以上に嬉しそうだ。
それなら・・・そうだな、ピアリス様も普通に1人として扱われたい時もあるのかもしれない。
「様」「様」とばかり呼ばれる事に飽きて来る事もあるのかもしれない。
まぁ、それだったら女の子である、このピアリス様の事は本人の希望通りに呼んでも良いかな、という気にはなるね。
「・・・・でも、多分こちらの分体様でも俺と同じかそれ以上の力を持っていると感じるからなかなかに難しいんだけどね。。。あ。」
また思わず口に出していた。
「ふふふふ。貴方は難しく考えすぎなのよぉ、ロウジ?・・・あ、いえ、そうだったわねぇ?貴方は神に仕える家の出、のようなものだったかしらねぇ?」
「え?あ、はい、神に仕える、と言うのは微妙に違うような気もしますが間違ってもないですね。」
実際のところ寺にも稲荷・・・ウカノミタマを祀った小さなお社があるからなぁ。
神仏分離令でも残った小さなお社、神仏習合の名残りだ。
だからウチの親も神職としての資格は持っていないが神様も祀っているから神に仕える、と言うのも間違いではない、のかもしれない。
・・・実は正確にはその小さなお社が本殿でウチの寺はその土地に間借りしている状態だったりするようだけど。
その辺は昔の事なのでよく分からない。
実は古い寺にはそういう寺が意外に多いらしい。
「そう、そうなの、ねぇ。まぁ、そういう事なら貴方に関しては仕方ないかしらぁ?・・・あぁ、なんか本体ともこんな会話をしたのかしら、ねぇ?なんかデジャビュだわぁ」
「あ、あぁ〜。したかも、しれませんね。・・・いえ、でも、なるべく意識してピアリス、ちゃん。・・・と呼ぶようにしますよ。」
うん。さすがにピアリス様とは言え、そんな顔をされたんじゃ、なぁ。
「あらぁ、ふふふ。そぉう?嬉しいわぁ?よろしく、ねぇ?」
そう言って微笑むピアリス様は見た目通りの可愛らしい女の子にも見えた。
「「むぅ」」
・・・なんかリンとフェアはむくれているが。
「ふふふふ。それじゃぁ、後は各自自分に与えられた部屋で寝ても良いし好きなように過ごしなさいな。・・・結界の中だから別に外に出るのも構いわしないわぁ?でも結界の外には出ないように気を付けて、ねぇ?朝に経験しているのだから大丈夫だとは思うけれど出るのは何の抵抗も無く普通に出られてしまうからぁ。」
あ。
うん、そうだったね。
朝に出発する時はむしろ結界がどこにあるかは景色を注視しないと分からないくらいだったし、通路を作って貰わずに普通に歩いて通り抜けられたんだよね。
「夜だと気を付けないと見過ごしたり?」
「あたしは大丈夫だと思うけど」
「ふふ。そうねぇ?実際にはロウジ以外は心配要らないのかしらねぇ?」
「・・・くそぅ。」
なんか悔しいけどリンは夜目が利くのだろうし、フェア達は普通に目で見えてるっぽいしなぁ。
「ん、じゃぁ、俺は部屋に行きますね」
「うん。あたしも。」
「私達も疲れたので寝させて貰いますぅ」
「寝させて貰いますねぇ」
「う〜。まだお話してたいの〜。でも、寝るの〜?う〜。仕方ないの〜。私も寝るの〜。・・・寝るの〜?」
「え?・・・あ、いや。まぁ。」
何故このコは最後に俺に聞いてきたんだ?
・・・いや、でもこんな感じか?
「あらまぁ。ふふふ・・・さすがにわたしの神殿としての場所で男女同衾は認めるわけには・・・いかない、かしらねぇ?ロウジは残念でしょうけどぉ?」
「いやいや、そこは認められない、とはっきり言いましょうよ?」
しかも何故に疑問系?!
・・・いや、確かに少し邪な想像はしたけどさ。しちゃったけどさ。
「ふふ。若いわねぇ、からかいがあるわぁ。・・・まぁ、フェアも今日は皆疲れているのだから早めに寝なさい、な。」
「はぁい、なの〜」
おお。
フェアが素直に従ったよ。
いや、よく見るとフェアもどこか眠そうにしてるからさっきのは言ってみただけかもしれないけどね。
・・・からかいがあるとか聞こえたのは気にしない事にしよう。
そこからまた話が膨らみそうな・・・それこそからかわれる方向に向かいそうな気もするし。
「じゃぁ、おやすみなさい、ピアリス、ちゃん。」
うーむ。
「ふふ。おやすみなさい、ロウジ。あ。そうそう。夕食に振る舞ったのはさすがにシーフードではないわよぉ?スクイッド、いえ、貴方にとってのイカは入ってなかったでしょう?似たような歯応えのキノコは入れたけどぉ言うなればレイクパスタ、ねぇ。ふふふふ。」
「は、はいぃぃ?」
その内容にあまりにも驚いてぐるりと身体ごと回転して見るが、もうすでにピアリス様は奥に歩いてしまっていた。
「くそっ、やられた」
まさか食事からして仕込みだったとは。
・・・しかし、イカみたいなのは本当にキノコだったのか?
魚は川魚、いや、この場合は湖魚だったという事ならまだ分かるけど。
「あたしもシーフードだと思ってた!」
「あれぇ?2人、分かってなかった?なの〜?」
フェアが不思議そうな顔をすると
「ありゃま。お魚は川では取れない種類だったけど。」
エリーが首を傾げ
「あら。スクイッドとキノコ、ですかぁ。・・・私はスクイッドを食べた事がないんですが、あれはレイクエリンギと言って水中に生える珍しいキノコだったと思いますぅ。少し歯応えを良くするように調理されてましたねぇ」
アリーが、更に補足してくれた。
うぅぅ。知らないんだからしょうがないじゃないか。
・・いや、やっぱりネタとして狙って料理したんだろうから分からなかった可能性の方が高いけど。
なにしろピアリス様だし。
「さて、まぁ、更に疲れるオチはついたけど皆、今日はお疲れ様!また明日もよろしくね?おやすみなさい」
「こちらこそ、よ。おやすみなさい、ロウジ」
「う〜。寝るの〜。おやすみなさい、ロウジ、なの〜」
「はい。おやすみなさ〜い、です」
「はい。おやすみなさいですぅ」
さて、アイテム類も使わなかったしな、整理は要らないだろう。
カンテラだけもう出して置くかな。
やっぱり疲れてたみたいでベッドの上で横になっていたらいつの間にか眠ってしまっていた。
・・・・なんかクラーケンではなくて巨大なイカを背後に従えたピアリス様に追いかけられる夢を見た。
・
・
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「おふぁよぉ〜」
朝、共用の洗面所、水場へ行くとリンが顔を洗っていたから挨拶をする。
「にゃっ?おはよ〜、ロウジ?・・・にゃんか・・・良く眠れたぁ?」
「ん?う〜ん、まぁね。昨日思ったよりも疲れてたみたいで。寝不足ではない、かな。うん。」
どうせなら、と2人で部屋の前で待ち合わせて身支度を整えてから食堂へ行く。
「あ。おはよ〜なの〜」
「おはよう〜」「おはようございます」
フェア達はもう食堂でおしゃべりをしていたようだ。
手にはマグカップ。
「おはよう〜」
「おはよう。それは?」
「うん?ピアリス様特製ハーブティーなの!」
「目が覚める感じがしますぅ」「目覚めに良いらしいですよぉ?」
エリーが目を手で大きくして、アリーはマグカップを手にして言ってくる。
マグカップは普通のサイズだから両手で抱えるように持っているけど、可愛らしいのは妖精の特権かな?
「へぇ?・・・ミントと何か、みたいだね?」
アリーの抱えたマグカップから少しミント特有の香りがしてくる。
ミントティーは飲んだこと無いなぁ。
「エリー、ピアリス様は?」
リンがキョロキョロしながら尋ねる。
「うん。まだ見てない。起きたらこれがソコに置いてあったのぉ」
「ん?」「にゃ?」
エリーが指差した先を見ると
「いや、あれはどう見ても朝ご飯、いや朝食だよね?しかもちゃんと俺ら皆の分。」
そうなんだよね。
厨房のカウンターの上にズラッとお皿が並んでいるのはどう見ても朝食。
「ひょっとして俺達を待ってくれてた?」
「もちろん、なの!」「あ、はい。」
「はい。まぁ、もちろん、ですねぇ」
「あ、そうか、そうなんだ。ありがとう。」
「ありがとうにゃ」
俺とリンは少しゆっくりしていたらしい。
「じゃぁ、配膳はやるよ」「あ、あたしも」
「そうだね。」
リンと2人で別々の皿を運んでいく。
と、言ってもピザのようなものが2切れ入った皿と多分キノコのスープ、それにサラダの入った皿とお代わり用のパンが入ったバスケットだけではあるけど。
「これもピアリス様、ピアリス、ちゃんが作ったのかな?」
「う〜ん。多分?料理上手いにゃ」
そんな事をして時間が経ってもピアリス様は来ないから皆して食事を進める事にした。
やっぱり美味い。
「食べ終わってもピアリス様待ちだにぇ。」
「うん、そうだね。」
さぁ、神殿の地下部分に案内して貰おうじゃないか。
・・・・近くに居ないからと変な事は考えるべきじゃないよな、と冒険者ギルドでの出来事を思い出して自重する。
さあ、どんな場所なんだろう?
お読みいただきありがとうございます☆
予定は未定、いつものことながらまだ地下部分の冒険には出ていません(−_−;)
ロウジは相手が話した言葉で英語などはロウジが理解出来た上で実情と齟齬が生じないものに関しては日本語で聞こえていますが、固有名詞としてそういった言語が使われている場合にはほとんどそのままの形で聞こえるようになっています。
たまにカタカナ表記の英単語と漢字なんかが入り乱れますがご了承下さい( ;´Д`)
次話では地下に潜ります。
ピアリス様が言ったように危険はないはずなのですが、そこは好奇心旺盛なピクシーを3人も連れてますから・・・どうなるやら、というところですね☆
更新予定はすみません、一応25日にしておきたいと思いますm(__)m