フェアの危機?!
フェアが勢いよく飛び出して行った後を追うロウジ達。
ですが単独行動、1人で突出してしまうとろくな事がないのはどこでも同じです。
さてさて、何が起こりますか。
「エリーです!よろしく、ね?」
「アリーですよ〜?よろしくお願いしますね〜?」
エリー
称号: 王女様振り回され隊
属性: 風 土
状態: ふぅん?
体力&腕力上昇 (腕輪) 敏捷性上昇 (靴)
HP: 120/133
MP: 245/281
体力: 75 (+30)
気力41
腕力:54 (+20)
耐久力: 26
知力: 58
精神力: 46
敏捷性: 89 (+30)
幸運度: 42
職業
護衛士LV.8 格闘家LV.10
アリー
称号: 王女様振り回され隊
属性: 風 水
状態: 疲れる〜
体力&精神力上昇 (腕輪) 敏捷性上昇 (靴)
HP: 105/122
MP: 238/312
体力: 64 (+30)
気力: 36
腕力: 20
耐久力: 34
知力: 73
精神力: 98 (+20)
敏捷性: 86 (+30)
幸運度: 37
職業
護衛士LV.10 魔法使いLV.13
「か、格闘家?」
あまりの衝撃に思わず口に出してしまう。
「あにゃ?ロウジ?今度はちゃんと自分だけの判断で鑑定したにょにゃん?」
「はい。エリーは格闘家ですよ〜?妖精の格闘術。ちゃんとあるんですよぉ〜?」
「えっへん。これでもつよいんですっ!」
「うん。」
うん、ごめん。強そうに見えない。
危うく瞬間的に口をついて出そうになった言葉を飲み込む。
確かに腕輪・・・仔犬くらいの大きさなのに腕輪って作れるんだぁ、とか思いながらも、腕輪の力があるとはいえ人間と殴り合いが出来そうな妖精の女の子と言うのは・・・うぅむ・・・やっぱり凄いんだろうね。
もう1人のアリーの方は魔法使い。
後ろでサポートするタイプっぽいね。
だけどやっぱり能力値はかなり高いと思う。
・・・
のだけと。
その凄さを打ち消しているのが称号。
うん。多分その底上げしてる能力値も元々はフェア、お転婆王女についていく為のもののような気がしてならない。
「フェア、の、あいや、フェアについて行くのって大変そうだね?」
だから肩の2人にそう聞いてみる。
うん、肩。
俺の右肩に茶色に近い金髪ショートカットのエリー。
リンの左肩に明るい金髪ショートカットのアリーが乗っている。
しかし軽い。身長は30〜40センチは軽くあるだろうけど産まれて間もない仔猫くらいの体重しかないのではないだろうか?
そんな感じで肩に乗せたまま歩いているから俺が右に話しかければ同行者全員に話しかけられる。
もちろん、フェアの姿は見失っていない。
と、言うかさすがに案内する、と言った事を覚えているのだと思う。
時々止まってこちらを振り返っている。
それにこちらは人間のスピードで進んでいるからそんなに差は開かない。
だから俺は道具図鑑を開きながら歩く余裕があった。
方位磁石や方位磁針という道具は無いようだから似た様な機能の物を探しながら歩いていた。
「はいっ!すっごく大変なんです!わかりますかっ?今みたいにいきなり飛び出すなんてのはもうっ毎日なんですっ!教師であるリーフが何年か前に女王に進言して護衛の者達には敏捷性や精神力を上げる装飾品や装具を提供したりもしましたし!あのっ!ですね?・・・それで一応わたしたち2人も冒険者で。フェアと3人、後リーフもたまに入れて4人で森の外へ行ったりするんですけど。やっぱりフェア良く1人でフラフラと行こうとするんですよ。それだけなら置いて行かれないようにすれば良いだけなんですけどぉ。わたしたちから逃げて1人でどこかへ行こうとするんですよ。・・・で、ですね」
・・・・しまった。どうやら俺は地雷を踏んだようだ。
正にマシンガントーク・・・いや、マシンガンはないだろうからこっちではなんというのか分からないけど、あまりの勢いに俺もリンさんも呆気にとられてエリーをただただ見てしまう。
「わたしたちのようにフェアの近くに居る者たちは逆にフェアよりも前に出ていられるように敏捷性を上げて。どんな時でも臨機応変に対応出来るように精神力も知力も鍛えて。そうやって仕えてるんですけどっ!あんのコたっら、それでも裏をかいたりワザと頼み事をしてわたしたちを引き離したり、とかっ。もうっ本っ当に困らせられてばかりなんですよぉ!」
「あ、あぁ、うん。そうなんだ。ってか2人も冒険者なんだね」
「うわぁ〜苦労してるにゃ〜」
「あの〜、もうその辺で。あまりまた乗せてしまうとぉ〜」
あ。
アリーの指摘で気が付いたけどあんまり同情するような相槌打っちゃうとマズイ?
「そうなんですよ〜っ!!ほんとにそうっ!なんですっ!普段はわたしたちはほらっ、フェアの護衛が仕事なので冒険者にしてると周りが五月蝿いんですよ!フェアと一緒になって遊んでるんじゃないか?とか一緒に遊んでるだけじゃダメだぞ、なんて怒ってくる人も居るからフェアと一緒に外に行く時以外は・・・アイテムボックスが欲しいから、って理由もあるんですが、今日だって外に出るような予定ないしつけてないんですよっ!それなのにフェアったら森の外に行こうとしてっ!」
「ん?」
アリーの方を見る。
言いたい事が分かったみたいでちゃんと答えてくれる。
「はい。そうなんですよ〜?本当はもう少し奥で木の実を集めたりリスなんかと遊んだりする予定だったんですけど〜。急に「なんか面白そうな予感がする」とか言ってこっちに飛んできちゃいまして。いきなり森の外へ出られては困るので〜、お供してた皆して追いかけて来たんですよ〜。それで人族の冒険者らしい2人組が〜、森の中にあの入り口から入って来てた〜、という事で惑わしの森の魔法を使ったわけですよ〜」
「惑わしの森の魔法?」
「はい〜。人族の精霊魔法になりますかね〜。森に働きかけて獣道も木や草のちょっとした生え方、枝葉の向きを変えてもらったり足跡を消してしまったりして森の中で迷わせる魔法です〜。あ。」
そこまで言うと両手で口を押さえてしまう。
「ん?どうしたの?」「ん?」
「ダメでしょ?アリー。惑わしの森の魔法は妖精の秘密。ちゃんと他言無用の誓いをして貰った上で友人や仲間と認めた相手にしか教えちゃいけなんだぞ?」
「あ、うん。ごめんなさぁい〜」
頭を抱えてうずくまるアリー。・・・リンさんの肩の上に乗ったままだけど。
「ん?魔法の名前とかそういった魔法がある事も教えちゃいけないの?」
んん?普通は妖精が住んでる、惑わしの森の魔法が〜、とかって騒がれる方が良いような気がするんだけどな。
「「・・・あ」」
「やっぱり。妖精が森で人を迷わせるってのは噂になってるんじゃないの?惑わしの森の魔法、って名前まではどこまで知られてるか分からないけど実際には妖精の魔法の事は知られてるような気がするんだけど?」
「あ、うん、です。魔法の名前までは確か大丈夫なんです、けど。その。」
ん?
「今のアリーは魔法の中身まで話しちゃったにゃ〜」
「あ。そうだね。」
うん。木がどうとか土がどうとか森がどうとか。バッチリ聞いちゃった気はするね。
「はぁうう〜。ごめんなさい〜」
あ〜ぁ。
トドメを刺したのは俺のような気もするけどどうしようかな。
「ま、まぁ。冒険者同士という事だし。あそこの入り口は本来なら入るべき場所じゃないって事だし。ちゃんと他言無用にするよ、大丈夫。信用して?」
そう言うしかないよなぁ。
見るとリンさんも頷いている。
「はぁっ。仕方ないですね。アリーのミスですしっ。アリーには後でお仕置きをして貰うとしてロウジとリンにはその言葉を信用させて貰いますよっ。」
ニコッと、言うかニカッと笑ってエリーが言ってくれた。
・・・・うん。
まぁ、内容や展開はどうあれ信用してもらえるのは嬉しいね。
「あぁあぁぁお仕置き〜」
アリーはまた違う衝撃を受けて頭を抱えてしまったようだけどね。
「あぁぁぁぁ」
「きゃぁあああああ〜」
ん?
「ん?」「え?」「なに?」「ぁぁぁ」
3人が、アリーを除いた3人が急いで声のした方を見る。
「フェア!」「にゃっ」
急いで飛び出したのはエリー。
続いてリンさん。
肩に乗ったアリー。
「どこ?」
それを追い掛けて俺。
「あそこにゃ!」
リンさんの右手の先には
「ペリカン?・・・いや?オオハシとかエトピリカ?」
バカでかいクチバシの黒っぽい大きな鳥と。
「いやぁぁああああっちいけぇ〜!!」
バシュッバシュッ
「うわおっ」「うわっ」「んにゃ」「ん?」
それらの群れに対して・・・いや、四方八方に水の弾を両手から撃っている、撃ちまくっているフェア。
一応木に寄りかかるようにして背後は守っているみたいだから見た目よりは冷静、なのかもしれない。
「キィヤァァキィヤァァ」「キィヤッキィヤァ」
その水の弾幕を受けて図体からは想像出来なかった凄く甲高い声が響く。
「ロウジ!助けるニャ!」
腰の後ろに差してあった太い短剣、ダガーを逆手に構えてリンさんが言ってくる。
「もちろん!」
もちろん、だ。だけどどうしよう?
フェアは目を閉じたまま撃ちまくっているようでこっちにも弾が飛んで来ているし。
「って!邪魔にゃ!」
リンさんにも容赦なく飛んでいる。
水の弾、水、か。
「フェア〜!落ち着いて!」
「フェア!落ち着いて下さい!周りをよく見て!」
エリーと復活したアリーが木の下、フェアの真下から声をかけている。
あぁ、真下には撃ってないのか。
あ!
「エリー!アリー!」
斜め下から狙いに行っていた数羽の鳥がエリーとアリーに狙いを変えたみたいだ。
魔法は想像力と創造力だと言った。
魔力自体には個人の区別がないのだと聞いた。
エレメンタルサイトを開く。
「水よ!唸れ!」
俺達の方へ飛んで来ていた水の弾に命じる。
ズォォォォ
と音を立て球体から槍状に変わった水がエリーとアリーを噛もうとしていた鳥の1羽にぶち当たる。
「ギュィ」
まず1羽!
でも水の槍も衝撃で弾けてしまった。
辺りを見渡すと撃たれた水の弾幕はほとんどがあらぬ方向へ飛んだり避けられたりして無駄になっていたが、水そのものは辺り一面に撒き散らされている。
「水よ!集まり形をなせ!」
右手を前に。
水を集める。
集めて・・・・想像し創造する。
「行け、水龍!」
ズォォォォォォン、と。
音なのか声なのか分からないモノを轟かせ、人の胴体程の太さと普通に周りの木々よりも長く育った水の龍が俺の意思に従って辺りを
駆け巡る。
「ギュイィ」「ギィイェェ」「ギャッギャッ」
動きが止まるから正面から当てるようなことはしない。
翼をかすめるように、頭をかすめるように、可能ならしばらくは飛べないように。
風の精霊が位置情報、空間情報を。
水の精霊が龍の位置情報、龍が見ているものを。
不思議な感覚だった。
水の龍を操ってはいるが同時に水の龍になっているような。
それでいてその景色を周りから見ているような。
気が付けば鳥達はほとんどが翼を折られ、あるいは脳震盪でも起こしたのか地面に落ちていた。
数羽は逃げ去ったようだ。
今の水の龍はただ水を集めて龍の形にしたのではなく流水、つまり流れる水を巡回させて龍を形成していたから、かするだけでも鳥にダメージを与えられるようになっていた。
「ろ、ロウジ、すごいにゃ」
「せ、精霊使い・・・レベルが低くてもあれだけの威力って・・・」
「こ、こわかったよぉぉぉ」
「す、すごい、ですね。」
リンさんとエリーがまず寄ってくる。
フェアを降ろして一緒にアリーがやってきた。
フェアは怖さで未だに震えているようだ。
「わ、わたしの水弾が水の龍にどんどん呑み込まれて・・・こ、こわかったよぉぉ」
泣き出してしまった。
「・・・って?え?・・・怖かったの、そこ?」
なんてこった。
フェアが怖がっていたのはどうやらあの大きな鳥達じゃなくて俺が創った水龍の方だったみたいだ。
「う〜ん。あれは仕方ないニャ。あたしも近寄れなくて正直怖かったのにゃ」
ぽんぽん、と俺の肩を叩きながらリンもそう言ってきた。
「あぅ。リンもか。」
「ま、まぁ、仕方ありませんよ。威力もですが形がまた形でしたから。」
フェアをあやしながらアリーが言ってくる。
「うえぇぇぇん。ごわがっだよおぉぉ」
ありゃりゃ。
そして本格的に泣き出しちゃったコが約1名。
「うんうん。ほんとだよね。正に水の龍。水で出来た龍だったもん。音と言うか唸り声みたいなのもすごかったしね〜」
エリーが言う。
「あぁ〜、うん。あれはうねる流水で形作ったからね。かすらせてダメージを与えるのが目的だったから結構な勢いで。」
と、そこまで言った時に
ガザガサガサッザンッ
ザザンッ
木の枝がいくつか降ってきていた。
「あ〜。だいぶ木の枝も巻き込んじゃってたからね〜」
マズイことしたなぁ〜、と頭に手をやりながら言う。
ちなみに水の龍は今のタイミングで精霊達に頼んで分解して貰った。
俺達の周りでは少し広い範囲で少量の雨が降った感じではないだろうか。
「森を傷つけちゃったけど・・・・大丈夫、だよね?」
それが心配。
「あ、うん。それは大丈夫だと思うにゃ」
「あ、はい。それは多分大丈夫ですよ」
リンとエリーが言ってくれたのでとりあえず一安心。
「この鳥はどうする?ロウジ?」
それだけじゃなくて更にリンは聞いてくる。
「ん?どうするって?」
聞き返す俺、だけど。
「・・・・あ。そう言えばまだ鑑定もしてないんじゃ?あたしはこの鳥知ってるけどロウジは知ってるにゃ?」
「え?・・・あ。」
うん。鑑定なんかする余裕なかったんじゃないかなぁ?
しなきゃいけなかったのかなぁ?
とか思いつつも鑑定する。
ラビットイーター
分類: 野鳥
種: 肉食鳥
生命力: 180
魔力: 55
体力: 40
気力: 40
肉食。群れで行動しウサギやネズミなど比較的大きめな小動物を襲いクチバシの袋中に入れて長い時間をかけて食べる。
たまに小妖精や赤子が襲われることもある。
その肉はなかなかに美味。
羽根も装飾品に使える。
「ふうん?ラビットイーター。結構危険な奴だったのか。あれ?鳥は腕力とか出ない?そうなのか。」
しかもどうやら食用になるらしい。
リンが言っているのはそういう事だろう。
「どうしようか?食用にアイテムボックスに入れておいたほうが良い気もするけど?」
リンに聞く。
「うん。念の為、というのもあるし冒険者の基本的な心得よ?倒したモノ、狩った獲物は必ず持ち帰る事。後から依頼として出ていればそれを出して達成に出来る事も少なくないし。だからこそ相手の鑑定は忘れずに行う。これはちゃんと覚えておいて?」
「あ、うん。そうか、そういう事か。ありがとう、分かったよ。」
何を狩ったのか、何を狩って持っているのか、とかは情報として頭に入れておけば自分の為にもなるんだ。
「うん。このラビットイーターだけじゃなくて鳥はだいたいクチバシから肉まで加工して何かに使えるから丸ごと持って帰るのが、正解。ただし、なるべくなら血抜きはしておいたほうがいいけど。今回はこれからどれだけ時間かかるかわからにゃいからすぐにアイテムボックスに入れておくにゃ」
そう言ってどんどん俺に鳥の死骸を渡してくる。
「え?なんで俺に?」
なぜ。
「だって。倒したのロウジだから」
「う。・・・わかった。」
仕方ないから地面に落ちたもの、リンが手渡して来るもの、どんどんアイテムボックスに放り込む。
「ごめん、お待たせ。」「待たせたにゃ」
「やっとわたしも落ち着きましたの」
「ちょうど休憩時間とれてよかった感じ」
「落ち着く時間がとれたので。」
どうやらフェアも落ち着いたようだ。
「良かった。」
フェアの様子を見て言う。
「う。・・・あ、ありがとう、なの。助けてくれて、なの。怖かったの」
・・・・まぁ、あれだけ騒いだ姿を見られたら恥ずかしいよな。
少し顔を赤くしてお礼を言ってくるフェアを見てそう思う。
醜態、と感じても仕方ないんじゃないだろうか?王女なわけだし。
「じゃ、じゃぁ。皆落ち着いたの。ピアリス様の管理地に向かって行くなの!」
「うん。案内よろしく」
「頼まれましたの〜」
「・・・・うん。何故にそこ?」
「良いですの。わたしたちは軽いですの〜。さぁ、エリー、行きますの〜」
「なんか、重さはないけどすごく変な感じだ」
フェアはここまで近付くと何か香水みたいな匂いがしているのが分かる。
大きさとか軽さはともかくとして女の子2人が肩に乗っているという状態。
そう。
俺は左肩にエリー、右肩にフェアを乗せて歩き出した。
なんだ、これ?
お読みいただきありがとうございます☆
森の奥に向かって歩いていくロウジ達ですが、行く先はピアリス様の管理地なのでどこかのほほんとした空気がありました。
これで少しは・・・変わらないかもしれませんね(−_−;)
すみません、まだ管理地に着きませんでしたが次話では到着します。
更新予定は4日です☆
0時過ぎてしまう事が出始めてますが、がんばっていきますm(__)m
よろしくお願いします☆