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しっかりとした調合をしてみます?!

なんかお疲れ様な女性3人組。

ロウジ以外は夕食後、引っ込んでしまいます。

1人になってしまったロウジは明日の準備に取り掛かります。


さてさて、何をしますやら。

本当なら食後に少し魔法の特訓をして、それから明日の準備、シヴァ神と会話して寝る、という流れで行こうと思っていたのがことごとく回避されてしまったので、俺は部屋の床にアイテムボックスから出した薬類を種類別に並べて考え込んでいた。

右手にはアイテム図鑑。その下には素材図鑑も一応置いてある。


「回復薬は買うか作るかしないとまずいよな。手持ちは初級回復薬の瓶が1本に中級回復薬が18本。魔力回復薬の方も中級魔力回復薬が20本か。中級回復薬だけ多く寄越したんだよなぁ。それに毒消し薬、麻痺取り薬、気付け薬、石化解除薬、鎮静薬がそれぞれ10本ね。・・・あぁ、なるほど。初級と中級の間に低級があるのか。ふんふん」


【初級回復薬】アイテムレベル2

HPや体力を回復する薬。何事もまずは初級から。

普通に使う分にはこれで事足りる回復薬。

だが作るのは意外に難しい。

HP回復30〜80 体力回復 20

( 材料 : 癒せ草 . 水 )

必要調合士レベル1


【低級回復薬】 アイテムレベル3

HPや体力を普通に回復する薬。これがあれば普段の生活は安心。

作り方は初級とほぼ同じ。

HP回復 80〜160 体力回復 30

( 材料 : 癒せ草 . 水 . 魔石の粉 (属性不問))

必要調合士レベル2


【中級回復薬】アイテムレベル4

HPや体力を大きく回復する薬。これを扱えれば店も調合士も一流。

回復薬を作り慣れていても失敗する可能性あり。

HP回復200〜300 体力回復50

(材料 : 癒せ草 . 蒸留水 . アブラナの雫 . 魔石の粉(属性無し))

必要調合士レベル3


【上級回復薬】 アイテムレベル5

HPや体力をかなり回復する薬。これを持っていれば上位の魔物との戦いも安心して向かえる。

初級回復薬と癒せ草を入れるタイミングが重要。

HP回復320〜480 体力回復70

( 材料: 癒せ草 . 蒸留水 . アブラナの雫 . ハチミツ . 初級回復薬 . 魔石の粉( 属性無し ))


【特級回復薬】 アイテムレベル6

HPや体力をメチャクチャ回復する薬。これを持っていればどんな戦いでも安心していられる。

草を間違えたら全てアウト。苦労して作る甲斐はある。

HP回復480〜640 体力回復90

( 材料: 癒せる草 . 蒸留水 . アブラナの雫 . ハチミツ . 初級回復薬))



作り方は初級と低級は沸騰させた水の中にすり潰した癒せ草とかを入れて煮込むだけみたいだが、中級は蒸留水とアブラナの雫を先に混ぜてそれを沸騰させるようだ。

上級以上は初級回復薬も追加するという反則技を使うのか。

しかも特級だけは使う草の名前が癒せる草、いやせるくさ、じゃなくて、イヤセルソウというものになっている。


「うん。これくらいなら分量さえ間違えなければ作れそうだ。リンさんのHP、200は越えてたよな?初級作るなら素材はあるから低級の方を作れば良いよな?・・・とりあえず道具を出して、と。・・・これ、初歩の調合道具、って注文つけたんだっけ?見られても大丈夫なんだよな?一応解析しとこう。」


【アルコールランプ】 アイテムレベル4

調合士や野営には必携の道具。主に液体を加熱する為に使用する。

火をつければ燃料が無くなるまで燃え続けるが火をつける為には道具が必要。

( 材料: グラスブランチ . コットン . ドワーフの特製火酒 )


【調合用三脚 (小)】 アイテムレベル3

この上に液体を入れた容器を、下に火を置く為の調合道具。調理に使用するには小さい。

石や燃えにくい木で作られた物もある。

( 材料: 鉄 )


【調合用三脚 (中)】 アイテムレベル3

この上に液体を入れた容器を、下に火を置く為の調合道具。小鍋で調理をするならこれで事足りる。

石や燃えにくい木で作られた物もある。

( 材料: 鉄 )


【グラススティック】 アイテムレベル3

グラスブランチを削って棒状にしたもの。

かき混ぜたり液体を垂らしたり意外に用途は多い。

( 材料: グラスブランチ )


・・・あぁ、大丈夫そうだ。

材料は全てこちらのものみたいだし。

ガラスはこっちではグラスと呼ぶんだろう。

アルコールが特製火酒というのは気になるけどアルコールランプが3つあるのは助かるな。


「グラスブランチ?・・・道具として図鑑にあるかな?・・・・あぁ、【グラスブランチ】グラスツリーの枝、と書いてあるけど・・・いまいち分からない。手に入れないと多分素材図鑑には載らないよな・・・・でもまぁ、今はとりあえず癒せ草を・・・10枚全部すり潰しちゃうか。・・・あ、いや、管理が大変か。」

どうせすり潰すならすり潰しておいてアイテムボックスで保存、とかしておきたい気もするんだけどなぁ。


「良いや。10本まとめて作っちゃおうか。あ、それでもやっぱダメか。」

思い切り、勢いが大切。

とは思ったんだけど考えてみれば普通のフラスコしか持ってないし、三脚には1個ずつしか置けないよ。

ゲームなら最初少ない数を作れば次からの成功率が上がったりしたけど、どうなのかな?

何回かやれば慣れて来て成功率は上がるだろうけど。


「このアルコールランプと三脚じゃフラスコ1個だよな。・・・うわぁ、手間がかかるなぁ。」

低級より上の薬を作るとなるとアイテムレベルが3以上あるから簡易合成は使えないし。


「まぁ、今日は時間があるから逆に良かったか。絨毯を濡らすとマズイしやっぱ洗面所で水を汲むべきだな。」

ウォーターの魔法を水滴1つ1つまではコントロールする自信はないから洗面所へ行きフラスコ1本1本に水を入れてアイテムボックスに入れていく。蓋なんか無くても多分普通に取り出せるからね。

そして忘れずに蓋付きの薬瓶20本にも水を入れてこちらは10本ずつアイテムバッグとアイテムボックスに分けて入れておく。


「うーん。1本分は火にかけてからやれば良かったかも。」

絨毯の上でやるわけにはいかないから机の上に道具を載せて作業をするが (机も木製だけど)、フラスコを火にかけながら思った。

まぁ、この間にもう1枚癒せ草をすり潰してるんだけど、これはすぐ終わるからなぁ。

明日すり鉢も複数買っておこう。

採取出来るか分からないから冒険者ギルドの道具屋で癒せ草も買っておいた方が良いだろう。


沸騰したらすり潰した癒せ草を入れる。


「かき混ぜないとダメだよな?」

フラスコだからぐーるぐーる、とはいかないけどカシャカシャとかき混ぜながら様子を見る。


「お。色が良い色になった。」

すり潰した物も全部溶けたかな?

そこで魔石の粉をひとつまみ、小匙1杯くらいの量を投入してかき混ぜる。

癒せ草の紺色っぽい色から少し薄い色になってるけど多分冷めると明るい色に変わるんだろう。と思う。


「これを後は冷ませば完成、と。・・・と?置き場を作ってない。」

このままこの机、テーブルの上に置いていっても良いには良いんだけど。

とりあえず火を止めて部屋を見回して考える。

「・・・アンさんが来るより先に起きるか。」

ベッド脇の学習机のような机に並べて置く事にした。

カーテン付きの窓があるのだが、アンさんが毎朝部屋に来て窓を開けるからそれまでに回収した方が良い気がする。



そうやってその夜は低級回復薬を10本調合して冷ますために窓の下に並べて置いて寝る事にする。


風呂に入った後に確認してみたがまだダメそうだ。


「裏庭で何が起こってたのかな?警備の2人は何も言ってなかったからそこまで派手な事は起きてなかったんだろうけど。・・・・あれ?そういえば目覚ましってあるのかな?良く皆、時間通りに起きて生活出来るよね」

それともこれは高度な文明社会に慣れきってしまった弊害なのだろうか?


そんな事を考えながら寝付く。


「おはようございます、ロウジ様。良いお天気ですよ。」

声がする。


「ん。んん?なんだよ阿沙。様付けなんかで、呼んで・・・」

ロウジ様、か。なかなか良いな・・・?


「ロ、ウ、ジ、さ、ま?朝でございます。私は妹様ではありません。」

ん?

ん。んん?

「あ、ん?・・・うん?」


「はい。アンです。おはようございます、ロウジ様」

ん?


「あ、あぁ、アンか。おはよう。朝なんだね。」


「はい?阿沙さん・・・あ、はい。朝です。良いお天気の朝です。ロウジ様。」


・・・・うぅむ。我が妹ながら紛らわしい名前だな。

あさからあさ、あさ、と繰り返してもなぁ。


・・・・「あ!」

慌てて昨夜回復薬をずらっと並べてある側の窓を見やる。

あぁ、良かった。

薄いカーテンは全然揺れず机にすら当たっていない。

瓶の位置もそのままみたいだ。


「さすがアンだ。ありがとう。」


「あ。はい。その瓶には触れておりません。」


「あ、うん。冷ましてただけだから別に熱くなければ触っても大丈夫。・・・なんだけど、良かった。無事完成したみたいだ。」

青い色の液体が入った瓶が10本、日に当たり輝いているように見えた。

一応鑑定してみる。


【低級回復薬】 アイテムレベル3

HPや体力を普通に回復する薬。これがあれば普段の生活は安心。

HP回復 80〜160 体力回復 30


「うん。ちゃんと出来てる。よしっ!今日はがんばろう!」


「はい!がんばってください!」

低級回復薬をアイテムバッグの方にしまい込み顔を洗いに洗面所へ。



「今日は初の依頼を受けて森に行くと聞いたわよ?準備は大丈夫かしら?」


「あ、はい。足りない物はありますが、分かっているのでギルドに行く前に買っていきます。」

食事の時にハイネスタさんが興味深そうに聞いてきたから、そう答える。


「そう。なら良いわね。お金も・・・バートから少し受け取ってくれたわよね?」


「え、あ、はい。ありがとうございます。買い物用にポリーちゃんが預かっていたので有り難く使わせて貰ってしまいました。それでも結構余りましたけど。」

感謝を告げる。

さすがに全額使う程面の皮厚くないしね?


「あ、あら?余った分は全部ロウジの取り分で良かったのだけど?・・・アンジュ?いくら余ったのかしら?」


「はい、お母様。金貨4枚と少しですわね。今は私が預かっていますわ。ロウジに何かあった場合やロウジが忘れている物、必要だけれど足りていない物などがあった場合にこちらから支払おうかと思っているのですけれど。」

アンジェリカさんが真っ直ぐハイネスタさんを見つめて言う。

うん。なにしろ買い物用にバートさんがポリーちゃんに渡したのは金貨8枚だったからね。

あれだけ買い物したのに半分の金貨4枚と銅貨や石貨がかなり余ったんだよね。


「あら。そうね?それは良い考えね。私達もそれ程しょっちゅうは金庫からの出し入れしないで済むのだし。分かったわ。そうしましょう?・・・それで良いわね、ロウジ?足りない物やお金が足りなくなりそうだったら必ずアンジュに言う事。いいわね?・・・でも4枚は予備にしては多いかしら?」


「・・・そう、ですわね。ではロウジ?半分の金貨2枚を渡しておくわね?貴方も恐らく金貨は使ってないとは思うけれど、これから依頼で出掛けるようになるかもしれないからあって困る事はないのではないかしら?」

ハイネスタさんに言われてアンジェリカさんが俺に提案してくる。


「あ、うん。・・・まぁ、まだ近接戦や戦闘に使えるような道具って無いからね〜。しばらくはそんなに遠くへ出掛けないとは思うけど。・・・お金は助かるよ。ありがとう。」


「ハイネスタさん、ありがとうございます。」

先にアンジェリカさん、ハイネスタさんにも礼を言う。


「ふふっ。 ロウジの初の依頼ね。土産話を楽しみに待っているわね?」


「え?あ、はい。」

そして、話は終わりとばかりにメイドさんに手を借り席を立つハイネスタさん。


「じゃぁ、ロウジ。これね。」


「あ、ありがとう。」

アンジェリカさんも席を立ち、俺に金貨2枚を手渡してくる。

ってか?スカートのポケットから金貨出したけど元々俺に渡すつもりで持って来てたのかな?


「ん。じゃぁ、俺は荷物準備して買い物して行かなきゃいけないから早めに出るよ」


「そうね?その方が良いと思うわ。剣や鎧もつけていきなさいね?」


「あ、うん。」

鎧は迷ったけど皮の鎧をつけていくつもりだ。

( 新しい称号〜、貴族令嬢のヒモ、を手に入れまっしたぁ〜 )


「え''」

マジか。ここでか。このタイミングでか。

称号もあったのか?!


「あら?ロウジ?どうしたの?顔色悪くなっているわよ?」

アンジェリカさんが心配そうに聞いてくる。

が。


「い、いや。いえ。なんでもないです。気になさらないで下さい。俺は一旦部屋に戻って剣と鎧を身に付けて来ますね」


「え?・・・あ、え、えぇ。待っているわ・・・だ、大丈夫、なのですか?」


「うん。大丈夫。大丈夫です、よ?」

ふら、ふら、としながらも自分の部屋に戻る。

見せられない。これは言えないし見せられない。

剣は昨日もベッド脇に置いたままなんだよね、実は。

食堂を出るとアンさんが後ろをついてくる。


「よ、鎧か。・・・これも初めての体験だ」

皮の鎧をアイテムボックスから出して着る。


【革の鎧 (グレイベアー)】 アイテムレベル3

灰色熊の皮をなめした革で作った鎧。革には色を付けることも出来る。軽くて着やすく着心地も悪くない為に標準鎧とも言える。慣れてくると更に着やすくなる。


あ。皮、じゃなくて革か。

口にする分には違いは分からないけど。

着やすさが売りみたいだけど洋服、Tシャツなんかみたいにただ頭から身体を通せば良いだけだった。

少し革が硬めで腕の動きが制限されるかな?

肩パッドも少し広いから後ろを見る時は気をつけた方が良いかもしれない。


「どうでしょう?着方にも特に問題なくお似合いかと思いますが。」

ガコンッと音がして壁が横にスライドする。


「うぇ?・・・鏡、あったんだ。」

驚いた。

ショックで称号の事は吹っ飛んだ。

・・・まぁ、付けて見せなければ良いだけの話だし、ね。

それよりも。


「あ、はい。・・・あ。申し訳ありません!言っておりませんでしたか!ま、誠に申し訳ありません!」

アンさんが頭を下げてくる。


「あ、あぁ、いや。ひょっとしたら聞いたかもしれないし、ただ驚いただけだから大丈夫。別にそんなに、そこまで謝らなくて大丈夫だよ。」

そうなのだ。

部屋の壁面、洗面所 (バスルーム)側ではなく廊下側の壁面の一部が前にせり出してからスライドして鏡、大きな姿見が現れるようになっていたんだよ。


「いやぁ、そこの切れ目は気にはなったんだけどね。そこの黄色いのは魔石なんだね?」


「あ、はい。飾り石ではなくここの板を動かす為の魔石になっております。・・・申し訳ありません。ロウジ様は男の方ですし、通常私達が着付けをして終わるものですから。男の方でも鏡を見たい方はそう仰られますし・・・」

すごく申し訳なさそうにまた謝るアンさん。

だけど。


「いやいや。本当に謝らなくて良いって。この部屋に案内された時も広さと綺麗さにびっくりして舞い上がってたから聞き逃した可能性もあるしさ。」

うん。思えば洗面所、バスルームやトイレの説明もされた気がするけど実際には頭に入ってなくて失敗したしね。


「は、はい。ありがとうございます。」


「これは良いね。少し硬いジャケットとかを着てるみたいだ。防御力としては心許ないのかもしれないけど想像していたよりも着心地悪くなくて気に入ったよ。」

革だから説明にあったように慣れてくれば少し柔らかくなる部分があって着心地もまた良くなるんだろう。


「はい。大きさもちょうど良くお似合いです。ロウジ様ならジャケットみたいなものでも良いかと思ったのですが、その鎧姿も素敵です。」

両手を合わせて褒めてくれるアンさん。

少し照れ臭い。


「あ、ありがとう、アン。さて、じゃぁ剣も持ったし行くよ。」

・・・ジャケットなんかでも良いならこんな戦士然とした格好しなくても良いかなぁ?なんて事も考えつつ部屋を出ようとする。


「あ、は、はい。お待ち下さい」


「ん?あ、そういうことか。ありがとう」

アンさんの言葉に止まると俺の先に行きドアを開けてくれる。

そうだったね。アンさんはメイドだ。


「はい。では参りましょう。アンジェリカ様もお待ちかと思います」


「うん。そうだね。」


「「あら」」「「まぁ」」


「あら。なかなか様になっているわね。格好良いですわよ、ロウジ?新人ぽさは出ていますけれど。」

そう言って褒めながらも軽く笑うのはハイネスタさん。

なんと階段下のエントランスにはアンジェリカさんだけではなくメイドさん達とハイネスタさんまでも居た。

そこで未だ会ってなかったルーピアさんとピアレさんという2人の20代後半の双子のメイドさんを紹介された。

2人ともサイドテール、と言うんだったか、横で金髪に近い明るい茶色の髪の毛を束ねている。

多分俺よりも背丈は少しだけ低い感じだ。

ルーピアさんが右、ピアレさんが左だ。

正直分かりにくい。


「そうね。良く似合っていると思うわ。なかなか、その。格好良いと思いますわ。・・・そう、ね。私達は帰りを待っているからがんばって来なさいな、ロウジ。何かあれば風の精霊に頼めば良いから。」


「あ、ありがとうございます。・・・ありがとう、アンジュ。風の精霊?」


「えぇ、そうよ?風の精霊に頼めば離れた場所にいる相手にも声が届けられるわ。私達はそうやってフォレスタさんやピアリス様、時には王都とも連絡を取り合っているのですわよ。」


「あ、なるほど?その手があったか。」

そう言えば精霊物の作品だと定番かもしれない。


「う。ううう〜ん。意外に使い勝手難しいな。」


「ど、どうかしたの?ロウジ?大丈夫?」

突然唸りだしたから心配になったんだろう、アンジェリカさんが聞いてくる。

・・・いや、そりゃ目の前でいきなり唸り出したら心配になるよね。


「あ、いや。今の自分に出来る事と出来そうな事を考えたんだけど。遠くに居る相手に声を届ける、相手と話をする、ってのは俺がってよりは精霊が出来る事で、それを俺がどう扱うか、であって・・・なかなか難しいなぁ、って。」

シヴァ神に貰った?今の自分の能力で何が出来るか分かるという力だけど、やっぱりある程度は自分で考えるのも必要なのかもしれない。


「あら?精霊の力をどう使うかもロウジ次第よ?そこはやはり想像力と創造力、ね。とは言え貴方に必要なのはまず知ることだとは思うけれど。」


「そうだ、ね。知ること、識ること、だよね。相手や仲間の事も識ることで出来ることに幅も広がるし。」


「ふふ。やっぱりロウジはあまり新人ぽくはないかしらね?それが理解出来ているなら良いわ。大丈夫だと思うわよ?さぁ、行ってらっしゃいな。」


「ふふふ。確かにロウジは時々知識があるのかないのか、度胸もあるのかないのかよく分からなくなる時がありますわね。能力を考えても新人ぽくは無いのでしょうけれど。たまに抜けている所があるのも事実ですわ。ロウジ?女の子と2人だからと浮かれずに気を引き締めて行ってきなさいね。無事依頼達成出来る事を祈っているわ。警備の2人にも紹介しなければいけないから館を出るまでは一緒に行くけれど。」


「あ、うん。ありがとう。ハイネスタさんもありがとうございます。では行ってきます。」


今の時間警備についている2人はまだ若い騎士で天然パーマっぽい赤い髪混じりの茶髪の男性がアトルさん、同じく赤い髪混じりの黒っぽい髪で少し癖っ毛で下が跳ねている背の高い女性がクラルさん。


「見た目と違いかなりお強い方と聞き及んでおります。館と皆様の安全は保証しますのでどうか御依頼の方に集中して下さい!」

と、微妙な言葉と敬礼をして来たのはクラルさん。

アトルさんはなんか緊張してるみたいだ。


「ロウジ=タソガワです。これからしばらくよろしくお願いします。はい。お願いしますね。ありがとうございます、行ってきます。」


「ふふ、行ってらっしゃい、ロウジ。これは昼食用のパンサンドよ。作らせたから持って行ってちょうだい?」

そう言って手に持っていたバスケットを出してくる。

そうか。昼食用意してくれたのか。


「あ、ありがとう。助かるよ。いやぁ、本当。嬉しいな」


「あ、あら。・・・ま、まぁ、ただのパンサンドよ。あまり期待しないでね?それじゃ、行ってらっしゃい。」


「「行ってらっしゃいませ!」」


むう。なんだか恥ずかしいのだけど。


そうして館を出発する。


「あ。最初に切り株のオペラへ行って、次にリワンさんの店か。」

左側に行こうとして慌てて右に行く。


「あ、いらっしゃいませ!おや、冒険者の方、ですか?」


「あ、はい。一応。今子爵邸でお世話になっていますロウジと言います。よろしくお願いします。」


「おお。バート子爵様のお客様でしたか。これはご丁寧に。こちらの店主でオペラ、と申します。こちらこそよろしくお願いします。それで本日は朝早くから何かお探しですかな?」


挨拶を交わすとさっそくオペラさんが営業トークに入る。

リワンさんが道具屋のおじちゃん、といった風なのに対してオペラさんは名前の印象通りにタキシードや燕尾服でも似合いそうなスラっとした良いおじさんだ。


「冒険中に野営とかした時に使うような食器類を探してるんですが」

どうせなら時間も限られてるし聞いてしまおうと思って聞く。


「おぉ。なるほど。それならどうぞ、こちらにある木製の皿やスプーン、フォークなどがオススメですな。突然の魔物の襲来には少しばかり心許ないですが、これらならその辺に投げ捨てておいても問題ないですからな。」


「あ、あぁ、なるほど〜。確かに良いですね」

まさかスプーンやフォークで相手を撃退する強者も居るんだろうか、と考えてしまうが。


皿はケーキ皿みたいな物の4枚セットがあったからそれを買う。

スプーンとフォークも念の為6本ずつ買う。

ウォーターの魔法があるから洗うには困らないけど何日かかる依頼なのか分からないしリンさんがこういうのを用意しているか分からないからね。


「後は調味料を」

と言うとすぐに(ソルト)砂糖(シュガー)黒胡椒(ブラックペッパー)唐辛子(レッドペッパー)の小瓶を持ってきてくれたので合わせて買う。

計量用スプーンなんかもあるようだが今回は良いにする。


「はい。ありがとうございます。とりあえずこれだけで良いと思います。」

「ありがとうございました〜!またのお越しを〜」


そして次は道を渡ってリワンさんの店へ。


「おや?おはようございます。いらっしゃいませ!さて、何がご入用でしたかな?」

あぁ、まぁ、昨日の今日だもんね。

そりゃぁ何か買い忘れがあったと思うのが当然か。


「は、はい。実は。。。」

そしてランタンとランタン用のロウソクを8本 (1セット)、麻のロープ2本と紐、すり鉢 (小)を2個と(大)を1個。大小の釘がそれぞれの箱に入った物とカナヅチを購入した。


「ありがとうございます〜またのお越しをお待ちしておりますね〜!」



さて、食糧は依頼の行き先を詳しく聞いてから出発する時で良いだろう。


「さて、行きますか」

時間が9:50分になったのを確認して冒険者ギルドに入る。

・・・そしてまたヘマをした事に気付くのだった。

お読み下さり感謝致します。

さて、いよいよ冒険者として一歩を着実に踏み出したように思えますロウジですが、不安要素がたっぷりとありますわね。

一番の問題はどのような場所に行くかを把握しきれていない事だとは思うのだけれど。

はぁっ。仕方ないわね。ピアリス様も行うのでしょうけれどシルフ達に頼んでおくかしらね。

次話ではいよいよロウジが冒険者として森に入りますわよ。


更新予定は27日になっておりますわ。

どうかお付き合い下さいませな。

当主バートに代わりハイネスタがお伝え致しました。

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