精霊魔法の講義です?!
精霊の姿を見て声を聞けるようになったロウジ。
だけどアンとポリーは未だそこには至っていません。
その状態で3人は次の段階に移ろうとしますが。
さてさて。
さてと、と俺の隣に腰掛けていたアンジェリカさんが休憩していたのを止めて立ち上がる。
と、また座りこちらに顔を向けて
「そう言えばロウジ?貴方は前衛型じゃなくて後衛型になるのかしら?でも剣を携えていたわよね?」
と、聞いてきた。
ん?
「あ。・・・あぁ、うん。・・・そうだねぇ。イメージしてるのはアイテムや魔法で支援したり時に直接攻撃したり、なんだけど・・・中後衛型、になるのかな?やっぱり希望としてはアイテム類をメインにしたいと思ってるし。」
前衛で敵と戦いながらアイテムを使おうとして某猫型ロボットのようにアタフタしたくないからね。
・・・その現場の事をこうして考えるとゲームの主人公達がいかに優秀か分かるね。
レベル1の頃から迷わず・・・あ、いや、間違ったアイテムや魔法を使わせた事の1回や2回くらいは誰でもありそうだけど、それでも命のやり取りの場でしっかりと使えるんだから。
なんて横道に逸れたような思考をしていたけど改めて思うのは、普段の生活と戦闘時では全く違うのだという事。
いや、ここが治安良いだけなのかもしれないから普段から気を緩めていてはいけないのかもしれないけど、一瞬一瞬の行動が誰かの生死に直結する世界がある。それをやっぱり考えずにはいられない。
・・・・うん。そうは言ってもまだ戦闘どころか冒険者ギルドの依頼の1つも受けた事がないのだから考えているだけ、なのだけど。
「ロウジ?どうかしたのかしら?」
「ん?あ、いや?ちょっと戦闘中のアイテムや魔法の使い方について考えてた。」
(つかいかたつかいかた)(つかえかたつかえかた)
「使い方?」「使い方ですか?」「?」
話が聞こえたのだろう。2人も聞いてくる。
「うん?うん。と、言っても当たり前の事だろうとは思うんだけどね。俺の居たとこだといつも肝心な所でアタフタしちゃって対応するアイテムを出すのに手間取って、しかも間違ったりアイテムを出したら一歩遅くてアイテムを叩き落とされたり、とかっていう・・・物語があってね。こっちでそんな事やってたら即全滅だよな、ってさ。大事な時ほど冷静に、的確なものを選べるスキル・・・と、言うか能力が必要だな、そうじゃないとマズイなって。」
こっちじゃ当たり前な事なんだろうけど、あの作品でも時々命懸けではあったけど、何か平和な部分ってあったからなぁ。
そもそもそういう場面を笑いに、呆れた笑いではなくお笑いに出来る下地がある。
ピアリスさんとの会話でも気付かされたけどつくづく平和な国に居たんだなぁ、と実感する。
そんな事を思いながら少し肩を竦めながら言う。
「あら。でも、それは大事な事ですわね。未だ実戦経験は無いとは言え心構えとしては必要で・・・良い事だと思いますわよ?」
「そう、ですね。ですがそれは何にでも言える事ではないでしょうか?特に調理や混んでいる際のお買い物、などでは必須だと思います。まぁ、どちらも失敗しても被害は自分にだけ返ってくるのですけど。」
アンジェリカさんが的確にアドバイスをくれたかと思うとアンさんがフォローじみた事を言ってくれる。
「あぁ。確かに素材の状態を見ながら次々に調味料や素材を入れていく調理や調合にも必須の能力かもしれないね、そういえば。・・・・そうか、別に命のやり取りの場面だけって事はないのか。」
まぁ、アンさんが言ったように普通に過ごす中では被害は大抵は自分だけが被るものだけど。
「違いはやはり仲間が居るか、周囲に被害を与えてはいけない場面か、ですわね」
「そうだね。今俺も思った。要はそこだけか。」
いや、良いか悪いかは分からないけど少しは気が楽になったかもしれない。
・・・・そういうタイミングゲームもやって来てるし、料理だって少しは・・・多分同世代の男子よりはやってるんじゃないかなぁ?という自負も多少あるし。
「そっ、それで、なのですがっ。ロウジ様は後衛型、なのですか?ご自分で剣を振るって魔物をた、倒す、という風ではなくて仲間の補佐をする形になるのでしょうか?」
そのポリーちゃんの質問に俺は
「うーん。・・・いや、正直性格的には補佐型なのかなぁ?とは思うんだけどね。出来れば後ろから魔法や攻撃用のアイテムなんかで敵を攻撃する、攻撃して倒すような形に出来ればな、って思ってるんだよね。それに武器も剣が1番使いやすそうだし。だから純粋な後衛型と言うよりも中後衛型、になるかもしれないね。」
前衛が危ない時には入れ替わって前衛になる感じでも良いしね。
(まえ〜まえ〜)(うしろ〜うしろ〜)(うしろまえ〜うしろまえ〜)
「・・・そう、なのですね〜」
ん?なんか考え込んじゃったぞ?
「・・・・そうなのよね。ここ何日か接してきてロウジがお父様とは違って1人前へ出て前衛を支えるというようなタイプではない事は分かるわ。けれど・・・ロウジ?貴方のその規格外の体力ははっきり言って大きな剣や槍を持って前衛で立ち回る事の出来る・・・いえ、むしろその為にあるようなものよ?正直勿体無い気もするわ」
ポリーちゃんの様子を気にしているとアンジェリカさんがそんな事を言う。
「あ、うん。確かに。・・・でもね、このメンバーだから言える事だけどさ。はっきり言って俺は死なないわけだよ。それどころかトロル並みってピアリス様に言われちゃったけど本当に多分トロル並みに再生力もあるんじゃないかと思うんだよ。・・・だからよっぽど信頼出来る相手とじゃないと下手に怪我しそうな前衛はやらない方が良いと思うんだ。」
アンデッドとはさすがに思われないかもしれないけど魔族とかは思われる気がする。
1番良いのはずっとソロで居るか、仲間になりたいと思った相手には最初から明かしちゃうという事なんだろうけど・・・色々な身分や種族が居るこの世界を知らない内からは明かさない、バレない、を基本方針にするべきだと思っている。
「それは・・・確かにそうですね。・・・それにしてもロウジ様のお持ちになっている自動回復はそこまでのものなのですね。凄い、としか言いようがありません。」
「そうね、いくら神の眷属とは言え確かに「人間ではないのか?」等とは思われたくないわよね。それなら怪我をし難い、怪我をしても隠れて回復出来る後衛の方が都合は良いのね。・・・・はぁ。ですが、なんだか理不尽な気もしますわ。」
「ロウジ様はっ、前衛でも後衛でも万能にこなせると、いうことっですねっ!」
(ばんのうばんのう)(ぼんのうぼんのう)(まえいったりうしろいったり)(うろうろうろうろ)(どっちどっち?)
ポリーちゃんの考え方が1番単純で前に出ない理由を性格的に、とか血を見たら卒倒しちゃうから、とか色々付けられる考え方で好ましいよね。
・・・うん。でもアンジェリカさんの言いたい事も何となくわかる。
エルフの血を持つ人達は筋力がなかなか上がらないから前衛をやりたくても上手い事いかないのかもしれないし。
俺は能力値的には完全に前衛壁型なのに後衛もこなせる能力もある。
うん、しかも言葉通り降って湧いたような能力値だからそれは理不尽だろうね。
(りふじんりふじん)(り、ふじんり、ふじん)
「まぁ、自分や仲間がヤバイなんて時には前衛型とか後衛型とかそんな事は言ってられないだろうけどね・・・り、ふじんは何か違う」
多分前に出て壁になる時も来るかもしれないな、と思いつつ言う。
けれど、彼女達の反応は思いもよらないものだった。
「ロウジ?それは違うわ」「ロウジ様。それは違います。」「ロ、ロウジ様。そ、それ、は、違うと思いますぅっ」
「ほぇ?」
まさか3人からそこの部分で否定されるとは思わなかった俺は思わず変な (意表を突かれた時の癖なのだが)声で聞き返してしまう。
「・・・そうね。心構えの話として覚えておいた方が良いわね。ロウジ。緊急の時、苦戦を強いられている時こそ平時の動きというものが必要になるの。1人なら構わないけれど集団の場合は1人がいつもと違う事をやり始めればどこかで連携が取れなくなる部分が出て来て余計に苦境に立たされる事になりかねないのよ。だから普段から後衛型で行動している人間はそういう時こそ後衛型としての行動をきっちりとするべきなの。・・・例えばロウジが後衛から外れた場合その穴埋めをする後衛の人はいつも以上の動きをしている中で更に上の働きを求められるはずよ?苦境に立たされている時に急にそれは無理だわ。1人で出来る事には必ず・・・例えお父様お母様でも、いくらロウジであろうと、限りがあるわ。手の届く範囲、目の届く範囲、というものが。だから集団に於いては一人一人がいつも通りの体制にあっていつも以上の働きをする。これが1番の打開策になるの。覚えておいて?」
(おぼえて)(おぼえておぼえて?)
「あ。あ、うん。」
驚いた。
驚いてそう返事をするしかなかった。
「お願いします。」「お願い致します」
見るとポリーちゃんもアンさんも頭を下げていた。
「あ、い、いや。うん。覚えておく。しっかり心身に刻んでおくよ。」
3人の深妙な様子に俺はそれ以上の事は言えなかった。
・・・だって。ねえ。
何故こんな顔をしてるんだろう?と考えた時に気が付いたんだ。
気が付いちゃったんだ。
3人共、多分アンジェリカさんも。
話に聞いている旧ナースル男爵領一帯を襲ったという魔物の襲来、あれで色々・・・その中で行動していた人達を見ていたんじゃないだろうか?
下手すると火中に居たんじゃないか?って。
手の届く範囲、目の届く範囲。
アンジェリカさんは言った。「例えお父様お母様でも、」って。
そう考えたら・・・・うん。何も言えるわけがない。
ただただ俺も言われた事を真摯に受け止めるだけだよね。
・・・考えてみれば当たり前の事ではあるんだ。
魔物の群れを倒すだけなら強力な魔法やアイテムで出来ると思う。
でもその群れの中で襲われている人達を同時に助ける、なんて事は・・・神様以外には出来ないのかもしれない。
対象を区別出来る範囲魔法やアイテムなんてものがあれば、作る事が出来れば少しは違うかもしれないけど、それだって直接の害の範囲から外せてもその影響から助けられるとは限らないし。
・・・なんか漫画とか小説でよくある「よくぞ人の身で〜」なんてセリフを思い出した。
「ロウジ?」「ロウジ様?」「ロウジ、様?」
(ん〜?)(んん〜?)
でも1人でも出来る範囲を広げるアイテムとかは開発出来るかもしれないな。
いや、考えるだけはしておいた方が良いかもしれない。
「ロウジ?どうかしたの?」「ロウジ様?」「ロ、ロウジ様?どうかなさいましたか?」
「んぁ?・・・あ、あぁ、ごめん。なんか色々考えてたら自分の世界に入っちゃってたか」
「びっくりしたわよ」
「心配になりました」「お、驚きました」
「あ、いや、ごめん。なんか変な顔してた?」
俺としてはその反応に戸惑うわけだけど。
「・・・え、えぇ。何か怖い、と言うか真剣な表情で考え込んでいるように見えたわね」
「はい。すごく深妙な顔付きをしておいででした」
「はっ、はいっ。真面目そうな顔付きをしてらっしゃいました!」
「・・・そ、そう。ちょっとアイテムとか魔法について考えてたから。」
・・・・いや、ポリーちゃんの言葉には少し傷付いて良いだろうか?
「ポリー?それだとまるでロウジが普段は真面目な顔をしていないように思われるわよ?ほら、ロウジが少しショックを受けているわ?」
(しょっくしょっく)(しょっく?)(まじめまじめ)
「「あう」」
見事に俺とポリーちゃんの言葉が重なった。
「ふふ。さぁ。では良い感じに気持ちの入れ替えも出来たかしら、ね?次の段階に進んでも良いかしら?」
「あ、うん。そうだね。そうだった。」
「はい。大丈夫です。」
「はっはいっ。よろしくお願いします」
「とは言っても今回は本当にやり方の講義だけになるかしらね」
「へ?そうなの?」
なんかアンジェリカさんがやる気の抜ける事を言ったぞ?
「えぇ。・・・・まぁ、アンとポリーのがんばり次第なのだけれど、こればかりは、ね」
ん?
「え?俺は?」
精霊術を使う為の契約?と精霊魔法の使い方に関する話だよね?
「・・・ロウジはもう必要ないもの。後は魔法と同じように使い方を軽く教えるだけね」
「へ?そうなの?」
なぜ?
「そう、ですよねぇ〜。やっぱり羨ましいですっ」
「やっぱりそうです、よね。ロウジ様は凄いです。ですけれど少し悔しいですし羨ましいです」
「へ?」
な〜ぜ〜?
(な〜ぜ〜)(なぜなぜ)(なぞなぞ)
「言ったはずよ?ロウジは精霊魔法や精霊術を使えるように、使えることになっているし精霊使いにももうすでになっているから、後は実際に精霊を見て精霊と対話を出来るようになるだけだ、と。」
「・・・・あ。あぁ〜。確かに言われたけど・・・・え?」
どういうこと?
「精霊の側はすでにロウジを認識していたから後はロウジが精霊を認識するだけだったのよ。先程精霊と会話をしたでしょう?その時点で契約完了と見なされてすでに精霊使いとしての能力を使えるようになっているはずよ?試しに出来ることを思い浮かべてご覧なさい?」
「ん?うん。・・・精霊使いで出来ることを、だよな・・・・ありゃ、ほんとだ?」
びっくりだ。
「理解したかしらね?」
(わかった?)(わかった?つかえる?)(使える?仕える?)(つかえるつかえる)
「あ、うん。分かった。・・・そう言えばこの精霊が見えてる状態はずっとなのかな?回路閉じたり開けたりみたいには出来ない?」
なんか相手をするとキリがなさそうだから相手してないんだけどさ。
(ひどい)(ひどいひどい)(ひどひど)
「え?・・・あ、あら。ごめんなさい。私にはこれが普通なのだけれどロウジは違ったわね。ポリーやアンはもうすでに一度解除しているはずよ?そうよね?」
「あ、はい。そうですね。今は見えないようにしています。」
「は、はいっ!今は見ていませんっ!」
ぇ''
「・・・・ひょっとして忘れられてた?」
(アハハハハ)(キャハハハッ)(キャッキャ)
ううぅ。
「あ、い、いぇ。忘れていた、と言えばそうなのだ、けれど。その。・・・魔法使いの目とは違ってほとんどMPの消費は・・・あ、いえ。ロウジも精霊使いなのだから消費するものは全くないわね。気疲れで気力を消耗するかもしれないけれど、それだけだわ。」
「・・・忘れられてたんだね」
少し恨みがましい目で見ると面白い程狼狽えるアンジェリカさん。
「あ、い、い、う、いぇ。・・・ご、ごめんなさい忘れていたわ。ほんとう、ごめんなさい。」
「あ、あぁ、うん。大丈夫。別に怒ってたりしないし。これに慣れなきゃいけないのかな?とかMPの消費とか大丈夫なのかな?とか思っただけだから。」
「あ。え、えぇ。そうね。今言ったように精霊使いなのだから選択肢がいくつかあるわ。1つはマナのように目を閉じて全然見えなくするということ。1つは姿だけは常に見えるようにしておいて精霊魔法だけは使えるようにしておくということ。1つは今のまま姿も声もいつもあるようにして精霊術も精霊魔法もいつでも使えるようにしておくということ。あ、全然見聞き出来なくしても存在さえ感じ取る力があるのなら精霊魔法は使えるわ。ちなみに私は領地に居る時は姿も声も聞けるようにしているわ。」
「あ。そうなんだ。・・・どれが良いのかな?」
声を聞いていると疲れる気がするし、なぁ。
これで他の・・・あれ?
「あれ?ねぇ?今、見えているのはいくつかの色の光の玉の下級精霊と風の精霊なんだけど。他の精霊も見られるんだよね?」
「あ、あら?・・・あ。ごめんなさい。それも忘れていたわ。今は風にしか目が合っていないのよ。・・・風しか意識しないで目を開けたから。他の精霊にも目を向ければすぐに見えるわ。ただし」
「そうなんだね。水もあるし土もあるもんね・・火は居るのかな?・・・あ。うわ。うんぁ〜」
(やっとですね)(やっとみえたわね)(やっとです)(やっとか)(やっとだな)(みえたか)(みんなみえた?)(みえたのかな?)(みたみた)(みえたみえた)(みえたわ)(みたわ)(みたな)
「ロウジの場合はロウジの側が見ればもう精霊の声が届くようになるのだから注意が・・・・必要ですわよ、って人の話を最後までお聞きなさいな」
「あ。う、う、うん。ごめん。なんとかならない?」
困った。
頭が痛い。
目もおかしくなりそうだ。
びっくりしたのは火の精霊、火蜥蜴のサラマンダーが足元に2匹・・・2体?足元にいる事。正確には居たんだけど女性の姿になって飛んでいる事。水の精霊は噴水からも出てるけど飛んでもいる。2体ともシルフよりも大人だ。・・・・うん、青、水色・・・と赤、オレンジっぽい赤で半透明なんだけど、こう・・・出るところは出ていると言うか。そういうのがしっかりと分かる体型をしている。
火の精霊の方はサラマンダーで良いのかな?
すでに蜥蜴じゃなくてショートカットの女の人なんだけど。
水の精霊はイメージ通りの・・・うん。髪の長い綺麗な女の人だ。
花壇の花の陰から覗いている土の精霊は小さくて丸っこい土人形・・・いや、泥人形みたいで性別があるのか分からない・・と、いや?そもそも女性型をしていてもしているだけで性別は無いんだよね。
(おんながいいのか?)(いいのんか?いいのんか?)(いいのか?)
「うわマジ?」
(キャハハハッ)(まじまじ)(アハハハ)(わ〜い)
なんとただの土人形だった土の精霊も形を変えてスポーツ刈り?風の・・・つまり男性っぽい女性の姿に変わってしまった。
「・・・アンジェリカさん・・・あ、いや、アンジュ。これって?精霊に性別は無い、んだよね?姿は変えられるの?」
だとしたらびっくりなんだけど。
男性型のウンディーネは見たくないが。
「え?・・・・ん?・・・精霊を見るのはこっちの世界へ来てからが初めて、よね?」
「え?あ、うん。」
実は寺や学校で変なものは見た事あったりするけど。
「ロウジの居た所でどう言われているかは分からないけれど基本的には皆人型とそれ以外の型の2つの姿を持っているのだけれど人型を取る場合は女性型よ?・・・これは「母なる大地」と人が呼ぶ事と無関係ではないみたい。命を育む世界は母親、という事ね。大地から生まれて生命を見守る精霊は母性を宿している、という事で女性型になるらしいわ」
「・・・あ、あぁ、そうなんだ。そういう事なんだね。」
そう言えばあっちにも水の精霊が魚の姿になったり、なんて話があったかもしれない。
・・・でもサラマンダーは火蜥蜴のだよなぁ。・・・こんな綺麗な女の人になられるとなかなか困るかもしれない。
(?こまる?)(コマル?)
「む。それで、ロウジ?ただ閉じるだけなら魔法使いの目と同じで元の普通に見えない世界をイメージしてから目を開ければ良いはずよ?姿だけを見たままにしたいのなら精霊達の姿をイメージしてから1枚壁を隔てているような、声は届かないようなイメージをすれば良いわよ?どうするのかしら、ね?」
「あ、あぁ、うん。どうしようかな?・・・うん。さすがにこのままだと日常生活を送れなくなりそうだから一旦見聞き出来なくするよ。・・・あ。でもそうすると精霊魔法も使えなくなるのかな?さっき存在どうのこうの聞いたけど。」
「あら。ロウジの場合はどうかしらね?まだ初めて精霊の姿を見て声を聞いただけなのだから普通は使えなくなると思うわね。だけれど貴方の場合は精霊の存在については感じ取る事が出来そうなのだけれど?どうかしら?」
「うん?・・・うん。試してみるしかないね」
精霊達を見て、見渡してから目を閉じる。
「存在を感じ取る」、か。
「あ、うん。大丈夫そう。・・・でもな。・・・うん。風よ・・・うん、出来そうだ。」
右手を上に挙げて手の平を上に向ける。
「・・・ハリケーン!」
最初は音もなく。
段々ヒュルヒュル音がしてきて。
ぶごおぉぉぉ〜と。ガサガサガササッ
周りの樹々の枝が、葉がそこに引っ張られるような形で音を立てる。
顔を向ければそこには細長くはあるけれどイメージ通りのモノが出来ていた。
「ふっ」
そのまま大きくしないで手で握り潰す感じにするとバサァッと風の音がしてソレは打ち消される。
「うん。イメージ通りにコントロールも出来そうな感じだ。」
右手の感触を確かめる。
「・・・・ロウジ、様」「・・・ふわぁぁ」
「・・・・・ロウジ・・・・」
「うん、ぁ?」
声に顔を向けると3人がそれぞれ呆れたような凄いモノを見たようなとんでもないものを目撃したような、そんな顔を向けていた。
「・・・・まぁ、良いわ。多少噴水の水が巻き上げられたみたいだけれど被害が無かったようだから。だけれど。他の広い場所で精霊術や精霊魔法についての実践はやりましょう、と言ったわよね?」
「・・・・あ。うん。・・・うん。そうだった、ね。ごめん。ごめんなさい。」
うぅ。
「で、ですが凄いです!小さかったですがハリケーンの魔法ですよね、あれ!普通なら上位魔法ですよ!凄いですロウジ様!」
アンさんが興奮している。
興奮はポリーちゃん担当かと思ってたけど。
・・・そうか。ハリケーンは上位魔法なんだ。風の精霊と出来ることを頭の中でやり取りしていたらなんか出来そうだったから。
「本当に凄いっ!ですっ!びっくりしましたっ!精霊っ魔法っ!なんです、よね!あれ!」
うん。ポリーちゃんはもっと興奮してた。
「うん。多分だけど精霊の力を借りないとまだ普通には使えないと思う。イメージは出来てるから分からないけど、威力の調整とかは精霊魔法の方が良い気がする」
「そうね。力そのものである精霊が補佐してくれるのだもの。その感じ方が正しいわ」
「あ、そうか。そうだよね」
「・・・はぁぁ。・・・でも、やっぱりロウジには契約の話は必要無かったわね。だけれどアンとポリーには必要なのだから、どうしましょうね?」
「「「あ」」」
うん、そうだった。
やっぱり俺だけ、なんだろうけど、俺はそのまま、今のままで精霊魔法も精霊術も使えてしまえるんだね。
さて、この後はどうしましょうね?
お読みいただきありがとうございます☆
と、言うわけで次回持ち越しになってしまいましたが、次回はアンとポリー用に講義となる感じです。
更新予定は15日ですヾ(@⌒ー⌒@)ノ
0時に投稿したかったのですが書き終えたのがギリギリでした。すみません。