村の店舗案内〜その8〜鍛冶屋はドワーフでしょ?!
冒険者ギルドから出る為に二階への直通階段を使った4人ですが、ちょっとしたミスが発覚。
鍛冶屋に入ります。
そこでロウジが見聞きする物は?
階段を下るとそこは冒険者ギルドの裏手だった。
「あ」
「あら?間違えてしまったわね」
「「え?」」
最初に声を上げたアンさんとアンジェリカさんに俺とポリーちゃんが首を傾げはて声をかける。
「何を?」
別に道は間違えてないよね。階段1つだし。
村の道に面していて左手側に冒険者ギルド、十字路の向こうに商人ギルドがある。
「あ、いえ。」「あぁ〜、ええと、ね?」
はて?
「次は農場へ向かうつもりでしたので。」
アンさんはそこまで言って恥ずかしそうに顔を伏せる。
「うっかりしたのですわ」
「あ、アンジェリカ様っ?ふ、普段ご利用なさっている場所ではないのですから。」
し、仕方ないです、よ、と慰めるポリーちゃん。
それに笑って返すアンジェリカさん。
まぁ言う程気にしてはいないかな?
「あ〜。そうだね。ここってギルドの裏だよね?って事は商人ギルドの方に行かなきゃ、か。」
納得。農場ってこっちからだと冒険者ギルド越えて十字路の左側か。
「仕方ないので先にそれ程見て回る物のない村の入り口までご案内致しますわね?」
「すみません、ロウジ様。」
なんか謝ってくるけど
「いや、ポリーちゃんの時にも言ったけど俺は案内されてる身だから、ね。お任せします」
軽く笑って流す。
昼飯は食ったし特に目的地が無ければ別に構わないよなぁ。
「はい。ありがとうございます、ロウジ様」
「ロウジ、感謝致しますわ」
「いやいや、だから感謝されても困るだけなんだけど。。。」
笑うしかない。
「では。冒険者ギルドのこちら側の隣3店舗分があちらから武具屋【ウッドクラフター】、隣が鍛冶屋の【ウッドレイク・ドワーフ鍛冶連】です。どちらも繋がっていてドワーフのオグリンさんが中心の工房兼店舗となっています」
・・・鍛冶・武具屋なのにウッドクラフターとはこれいかに?!
ちゃんとした言葉かは分からないけど木工専門店みたいなイメージになっちゃうんだけど。
オグリンさん、て事はオグりんじゃないんだよね、多分。
知らずにドワーフのオグリンです、なんて挨拶されたらやばかったかも。
「あ。オグリンさんて木彫りを作ってるんだっけ?」
名前を頭の中で反芻してたら思い出した。
「はい。とはいえわざわざその為だけに木を伐ったりはしていないのですが、ドワーフの繊細な造形でいつの間にか村の特産品になっていますね。金属だけでなく木などでも細工物を作らせたらやはりドワーフは優秀なようです」
「そうですわね。それにドワーフ鍛冶連なんて店の看板を掲げていますがエルフの弟子も何人か居るようですし、ドワーフの中でもオグリン様は凄い方だと思いますわ」
アンさんの後にアンジェリカさんがそんな事を続ける。
「エルフ??ドワーフの弟子に??え?仲は悪くないの?エルフとドワーフって仲悪いんじゃ?」
なかなか新鮮な驚きだよ。
「え?ああ、はい。そうですわね。エルフの中には未だにドワーフや人族を毛嫌いしている部族もあるにはあるようですわね。ですがドワーフ側は別にエルフと仲が悪いという話は聞いた事ありませんわね。」
「え?そうなの?」
エルフの一部が一方的に嫌っている、と。しかも人族も含めての物の話なのかな?
「はい。ドワーフの方は木を使っての細工もなさいますし鍛治にも木は不可欠ですから元々エルフと同じ様に木や森を大切にしています。それに同じ自然から生まれた妖精族ですし、お互いに嫌う道理はありませんから。それに住んでいる場所が大きく離れていた事からあまり交流がないまま過ごしていた部族も150年前の大戦で共闘した事で親交を深めていったようですね。」
うん?
元々そういう嫌い合うような関係は無かった、という事か?
「そ、それにエルフもドワーフもお酒好きな方が多いですよねっ?」
「あ、ええ。そう言われるとそうね。」
「飲み方は少し違うようですが確かに」
「なるほど。確かにそう言われるとそうかも?」
納得はいく説明だよね。
でもなんか釈然としないものがあるのはやっぱりイメージ、だろうか?
「ロウジ様は」
「ロウジはどうしてそんな事を?」
「何故、でしょう?」
3人が3人が共不思議そうな顔をして聞いてくるって事はやっぱりあまり無い質問なんだろうな。
「あ、いや。俺の居た国だとエルフとドワーフは犬猿の仲とされているんだよ。だから、それで。」
大きな理由はなんだったか。
「まぁ!何故でしょう?」
「驚きです」「びっくりです」
うわ、さっきの俺みたいな反応を逆にされてしまった。
「えっと。主な理由はドワーフが火を平気で使う事、だったかな?後は酒の飲み方が合わないとか?住む場所が洞窟の奥とか土にばかり囲まれた場所と木々ばかりに囲まれた場所っていう真逆な場所だから、とか。ドワーフが木を切る金属製の武具を造り出すから、というのもあったかな?」
思い出してる内に段々分からなくなってきたけど大きな理由はそのくらいだったような気がする。
「あぁ、火を平気で使うは分かりますわね。ドワーフや人族を嫌う部族は大抵それを言うようですわ。ですが他の部族からは落雷や自然発火を否定している愚か者呼ばわりされているようですわよ。火災もまた森の自然の一部という事ですわ。」
「お酒の飲み方は今出ましたね。一緒に飲んでいる姿を拝見するとよくわかります」
けれどそれが何故個人ではなく種族間で嫌う理由になるのか分からない、と首を傾げている。
・・・・確かに。
「ドワーフというのは酒飲みのイメージが強いけれど中には全く飲めない人も居るようですし。けれど工房の熱さに耐えられる水分という事と、鍛治の際に酒を切り吹く為に工房内にもお酒を持ち込んでいるのがそのイメージの発端ですわね」
「あ、そうなんだ」
そういう理由があると言うなら納得だ。
酒嫌いなドワーフはなんとなく見たく無いけど。
絶対ツッコミを入れたくなるはずだ。
「す、住む場所についてはある程度仕方ありませんよね?でもドワーフの方が全員採掘場にこもるわけでは無いですし。こうして街や村で暮らしたり鉱山の近くに村を作って暮らしたりもしますからそれも単なる思い込み、なのではないでしょうか?」
わたしは、そう思います、とポリーちゃんも言う。
「ですわねぇ。どちらにしても精霊の力が強い場所に住むのは同じですし。」
「あ。そういう事もあるのか」
エルフは森から恵みを得る為に、ドワーフは山から恵みを得る為に。それぞれ違う精霊の力を求めるからどうしても離れてしまうけど逆に住み分けは出来てるとも言えるわけだ。
「それでもやはり精霊に近い性質を持つ純血種のエルフは金属製の武具を嫌いますからドワーフだけではなく人族からは少し距離を置く、というのは確かにありますね。それでもドワーフ限定ではありませんけれど」
「純血種のエルフ?ってフォレスタさんみたいな?」
そういえば純血のエルフって部分、聞き流してたけど。
「はい。古代種の、精霊種の、等呼び名はいくつかありますけれど肉体を持っていても精霊に近い性質を持っているエルフ、あ。エルフだけでなく他の妖精族にも存在する種族の事ですわ」
「あぁ。ハイ・エルフとかエルダーエルフとかって奴か。」
「あ。ハイ・エルフやハイ・ドワーフは禁止ですわ。お互いにどちらも立場に高低などなく我々もエルフやドワーフには違いないのだ、と主張なさいますので。お気をつけ下さいな」
「あ。了解。エルダー、って呼び名は大丈夫なんだね?」
「はい。大丈夫ですわ。この国では純血種やピュア・と呼ぶ事が多いですが、通用致しますから」
「わかった。気をつけるよ」
まぁ多分区別されるのがあまり本人達に好まれないのなら単純にエルフやドワーフで構わないよね。
「ただ、細工の腕前については良く言い争いはあるような事を聞きますね」
「あ。それは聞くわね。悪い意味では無いのだけど。どちらの工芸が優れているか、では良く競っているようだわね」
そ、そうなのか。
それはでもライバル的な争いっぽいよね。
「まいった。降参」
言って両手を挙げる。
「ぷ。なにそれ?」「ふふ」「ロウジ様可笑しいですっ」
「別に勝負事ではないでしょうに」
笑って言ってくる。
「その隣は工房の隣なのでわざと空き家にしてあるのですが。それでこちら側のこの先は民家と疲れた時に休む為だけにある休憩所、ですわね」
「せっかくなので工房に寄って行きましょうか?」
「うーん。そうだね。鍛治にも細工にも興味あるし。これからお世話になるかもしれないしね。お願い。」
「はい。では武具店の側に入りましょう」
「いらっしゃいませ!」
お?
「ドワーフじゃ・・・ない」
若い男性の声に顔を向けると右側にカウンターがありやはり男性が。スラリとした高身長で、金髪で、結構なイケメンの!男性が!立って!居た!
・・・いかん、ドワーフを期待してたのに裏切られたのと余りにも場違いなイケメン振りに少し怒りが。
これがもしドワーフの真の姿だと言うならば今すぐこんな世界は壊して貰っても良いかもしれない。
「オグリン様に挨拶をしたいのですが、いらっしゃるでしょうか?アンジェリカが来た、とおっしゃって頂ければ分かるかと思いますが。」
「あぁ。はい。アンジェリカお嬢様ですね?いつもお師様共々お世話になっております。しばしお待ち下さい」
そう言ってイケメンさんはアンジェリカお嬢様、いや、アンジェリカさんの言葉に応えてカウンターから出て奥の階段を登っていく。てっきり多分階段横からが工房へ繋がる通路で、そっちへ行くと思っていたのだが。
まぁお師様、とか言ってたから今のが多分さっきも話に出ていたドワーフに弟子入りしたエルフの1人なんだろうと思う。
・・・違ってたらシヴァ神呼ぶかな。
そしてカウンター周りには木彫りの馬に乗った騎士や・・・騎士、いや、隣も同じかと思ったら隣はデュラハンだ。兵士や弓矢を構えたエルフ等の人、それに馬やら狼や熊などの動物が棚やケースの中に入っている。
上側には
「うわぁ。」
デカイ斧。
黒々とテカテカとした俺の身長 (165cm)くらいの両刃の斧が壁に飾られている。
武器。
銃なんかとは違う手で直接相手を傷付けるタイプの武器。
しかも斧、とはなんと強暴性が分かりやすい物なのか、と思った。
でもそれでいて。
なんだろう?ある種の芸術品のような綺麗さ壮麗さみたいなのがその斧には感じられて・・・見惚れてしまっていた。
「よぉ、坊主。その斧の素晴らしさがわかるのかい?」
「うを?!」
近くから突然声を掛けられてビックリしてしまう。
それ程に見入っていた。
「を?!わ、わりぃな、驚かせちまったかい。」
そちらを見ると
「あぁ、よかった。ドワーフだぁぁ」
少し力が抜けたのが分かった。
「あん?なんだなんだ、坊主?ドワーフに何かあるんかい?」
ドワーフは眉毛も濃くて年寄りは目も埋まってるようなイメージなんだけどこの人は目がパッチリとしてる。
「ドワーフは背が低め。オッケー。ドワーフは髭モジャ。これもなんとかオッケー。ドワーフは鍛治や細工が得意・・・これは文句無くオッケー。ドワーフの体型は酒樽・・・?これは微妙。」
「おいっ!こらっ!髭の事は言わんでくれっ!気にしてんだ。酒樽?誰が酒樽だぁ?ってかお前さんはなにもんなんだい!」
「ドワーフは頑固者が多いが陽気で気さくな性格が多い・・・あ。」
・・・あ。
「はぁ。ロウジ?せめて確認するなら口に出してはいけないと思うわ。」
「・・・ロウジ様」
「・・・・」
アンジェリカさんとアンさんは呆れてしまってるようだが、ポリーちゃんは笑いを堪えているようだ。
よし、大成功。
・・・・うん、違うね。
「す、すみませんっ!ドワーフの方を見るのって、会うのって初めてでっ!後っ、自分はロウジと言います!自分も何か色々と作ってみたいと思っています!」
そこまで一気に言い尽くす。
「お、お、おう。ロウジか。俺はオグリン。見ての通り頑固者で陽気で気さくなドワーフだ。酒樽の腹は残念だがしてないが、な。」
わっはっは、と笑って言う。
「あ、あう。」
「はあ。ごめんなさい、オグリン様。この度事情があり当家でしばらく預かる事になりましたロウジ=タソガワです。他所の大陸から来たのですが、本人は錬金術や道具作成に加えて武器や防具なども自分で作ってみたいと考えているようでして。今回はオグリン様と顔合わせを、と思った次第ですわ」
アンジェリカさんが腰を折り紹介をしてくれる。
うん、丁寧だ。
「ほほぅ?」
【黒竜の戦斧 『ブラドナーグ』】(武器) アイテムレベル7-5
黒竜の鱗を使用して作成した対竜武器。神器には劣るが人が作る中では最高位の武器の1つ。黒竜の性質を持つ為に使用者は限られる。
効果: 対竜属性付与・闇属性強化 (中)・闇属性耐性付与・狂暴化 (弱)・狂化耐性下降付与・暗黒魔法耐性付与・スキル (威圧)付与
( 材料: ミスリル鉱 . 鋼鉄 . 黒竜の鱗 . 黒竜の骨粉 . 魔石の粉 . 黒竜の血 )
必要鍛冶レベル7
「うわぁあ」
凄い。としか言えない。
正に黒竜で作られた武器だった。
「ロウジ?」「ロウジ様っ?」「ロウジ様?」
んぁ?
「あ、あぁ、ごめん。黒竜の戦斧を見てた。すごいね、あれは。黒竜の鱗とか骨とか血とか正に黒竜で出来てるんだね」
「ほほぅ〜?」「ええっ?」
ん?
店の2人がなんか顔つき変えて見てる?
「ほほぉう?お前さんもしかしたら解析持ちかい?このブラドナーグの素材を一発で見抜くたぁな」
あ。
「は、はい。解析スキルで見てしまいました。マズかった、です、かね?」
店で売り物の素材を見るのってマズかったか?・・・いや、普通ならマズイよな。
吸い込まれるように思わずやってしまった。
「あ、いやぁ?それは別に構やぁしないんだが、な。ただ、まぁ。こいつには鱗以外の詳しい素材なんか教えてなかったもんで、な。」
頭を掻きながら弟子のエルフの方を見る。
「あ、あぁあ。どうもすみませんでした。余分な事を。」
「あ、ああ、いや、な?別に素材を知られたりは構いやしないのよ、ほんと。どうせ誰でも素材を集められるってわけじゃねえし、例え集められても同じ物をこさえられるわけでもねえからな。ただ、教える順番とかが、な。ただそれだけだ。だから別に坊主は気にしないで良いぞ」
「あ、ありがとうございます」
「それで、ロウジ。こちらがオグリン様の弟子のバドさん。エルフよ。バドさん、こちらはロウジ、しばらくの間当家で預かる事になりましたのでよろしくお願いします。」
アンジェリカさんがお互いを紹介してくれる。
・・・うん、良かった。
世界は救われた!なんて素晴らしいんだろう!
・・・いや、冗談はともかく金髪イケメンエルフさんはバドさんか。
「改めてロウジと言います。冒険者登録したばかりです。鍛冶や細工等、アイテム作りについて質問に来る事もあるかもしれません。よろしくお願いします。」
親方であるオグリンさんにも頭を下げる。
「あ、はい。よろしくお願いしますね。それで、ですが。あの。貴方は、その」
「はい?」
なんかバドさんが言いにくそうにしているが、なんだろう?
エルフでもこんな風にオドオドと話す人も居るんだね。
「あの。貴方は別に親方の弟子に、なりに、あ、いえ。つまりこの工房で働きに来たわけでは、ないの、ですよね?」
ん?
あぁ、もしかしてそういう事か?
「あ、はい。別にそういうわけではないです。もちろん工房の仕事には興味ありますが、俺は自分のスキルを活かして色々やってみたいので。」
「あ、良かったです。また強力なライバルが増えてしまうのかと」
うわ。正直な人だ。
「あ、いえ。そもそも冒険者ですし。村には一時期滞在するだけの予定ですし。」
あれ?なんでこんな事言ってるんだろう?
「はい、ありがとうございます。安心しました」
笑って言うイケメンエルフのバドさん。
うん。エルフじゃ仕方ない。むしろこれこそエルフ。
エルフ万歳、ドワーフ万歳、この世界に万歳。
「おいおいおい!バド!そこで安心してんじゃねぇよ!むしろ他所の人間に負ける可能性ある方がヤベェって事に気づけよ」
「あっ!?は、はい!すみませ、ん!」
おおう。
オグリンさん、ナイス発破。
「坊主、あ、いや、ロウジ、だったか。お前さんも解析なんていう物作りの人間にとっちゃあ垂涎モノのスキルを持ってるんだ。ちゃんと色んな事を学んで一歩ずつ進んで行けよ、な!」
「あ、はい。ありがとうございます。がんばります!」
・・・他所の人間に、とか言ってたのに俺まで発破をかけられてしまったよ。
「良かったですわ。とりあえずの顔見せ成功ですわね。後2人ドワーフの方とお弟子さんが1人いらっしゃいますが、また次の機会、ロウジが1人で来た時にでも。」
アンジェリカさんが締めのような事を言う。
うん。
「うん。そうだね。鉱石や鍛治に関しては何しろここが一番だろうから色々お世話になると思う。早目に挨拶出来たのは良かったかも。」
「おぅ。嬉しい事言ってくれるじゃねえか!鉱石や鍛治についてなら確かに任せてくんな。教えてやれる事なら教えてやらぁ!」
はっはっは、となかなか豪快に、うん。ドワーフのイメージ通りな感じで笑って言うオグリンさん。
いや、弟子のバドさんはそれを聞いて慌ててますが誰にでも教えられる事しか教えないから大丈夫だと思います。
「それでは失礼しました。またお世話になりますわ。これからもロウジ共々よろしくお願いしますね」
「あ、失礼します。また買い物にも来させて貰います!」
「失礼します」「し、失礼しました」
「おう!またな!色々とがんばれゃ。」
「ご来店ありがとうございました!」
武具店を出る。
「ロウジ?1つだけ言っておくわ。ドワーフは髭の事を褒められると喜ぶのだけれど、オグリン様に髭の話はしてはいけないわよ?以前鍛冶の失敗で髭から燃え移った火で顔を焼いてしまってからどうも髭や眉の伸びが悪いらしいのよ。私達からしたら普通に見えるのだけれど本人がすごく気にしているから注意して?」
「あ、り、了解。そういえば何か髭で怒っていたような。」
そう言われるとなんか怒っていた気がするなぁ。
ドワーフにとって髭が命、みたいなのはこの世界でも同じようだね。ドワーフと話をする時には気を付けよう。
「この隣はわざと空き家にしている物と民家がいくつかになります。そしてそちらは転移屋です。」
そこは奥と縦に長い建物だった。
「あぁ、転移魔法陣があるんだっけ?」
「はい。同じく転移魔法陣が置いてある村や街へ国内なら銀貨1枚、国外なら1番高い場所でも金貨2枚で送ってくれます。往復希望なら8割引きですね。」
「でも国内で村に転移屋があるのはこの村だけよ。」
「あの、物だけ、と言うのは送り先でのトラブルが予想されますので禁止されていますっ。物を送りたい場合でも誰かが付いて、という形になりますっ。あとあと、代金は物ではなく人数で取られますっ」
「へぇ〜そうなんだ。じゃあ急ぎで大量に送ったり引越しとかには便利なんだね。ありがとう。まぁでも今は用事があるわけじゃないから入らなくて良いかな。」
「おう。休憩所って本当に休憩所か。」
そこは一段高い座敷になっていて靴を脱いで座ったり寝転んだり出来るようになっていた。
「ではロウジ。村の入り口の兵の方々にも挨拶して行くかしら?向かいの入り口側にあるのが詰所と兵舎になるのだけれど。」
あ、なるほどな。
転移魔法陣で変なのが来てもほぼ真正面が詰所なわけだ。
「あ、いや、どうしよう?顔はかなり合わせるだろうけど正直そんなに世話にはなりたくない気もするんだけど。」
「ふふっ。村を出入りすれば挨拶くらい交わすでしょうけれど。まぁ、良いわ。兵舎と詰所の裏には櫓と倉庫があるわね。そうね?確かに村の出入りをする時に自分で挨拶して顔見知りになっていくのも良いかもしれないわ。あ。ただ、帰りに館の警備についている2人にはちゃんと紹介するわよ?交代だけれど領主が館に居ない時に何かあった場合にはロウジにも何か報告や質問が来るかもしれないから」
「あ、うん。分かった。あれ?でも出てくる時には居なかったよね?」
そういえば?
「えぇ。今は人よりも魔物や森の動物の方が警戒対象だから。館には夕方から明け方までしか来てもらってないの。」
「そ、そうなんだ。」
うわ、子爵邸の警備がゆるゆるですよ?
「それにお父様とお母様とマクイーン、ついでに私の方が義勇兵が多いここの兵達よりも強いもの。あまり守られてる感じが無いのよね。」
「あ、そ、そうなんだ、ね。」
うわ、ビックリだ。
確かにそうかもしれないけど。そうなのかもしれないけど。
それで良いのかなぁ、と思ってしまう。
やっぱり冒険者から成り上がった貴族、という事なのかもしれないかなぁ、とか少し失礼な事を考える。
「あら?ですが明日からはしばらく一日中ずっと2人体制で兵士の方が館の警備に着きますよね?」
へ?
「・・・あ、あら?そうだったわね、アン。すっかり忘れてたわ。ロウジ、お父様が長い事不在の場合はそれでも3交代くらいで常時館の警備がつくようになるの。今日もうお父様は出掛けられたけど今夜から、になるわ」
「あ、あぁ、なるほど。納得」
「そこは向こう側から焼き串屋さん、団子屋【ギフトボール】に果物屋【アマカ】、あ、アマカは本当は漢字で甘い果物と書きたいそうです。」
あれ?
「ヤキグシって書いてある店には名前は無いの?」
良い匂いをさせてるヤキグシってカタカナで書いてあるのが名前の店かと思ったんだけど。違うのか。
「あ、は、はい。そのままヤキグシにしようという考えもあるようなんですけど・・・御兄弟で意見が合わないようでして。」
なんか申し訳なさそうに言ってくるポリーちゃんにこっちがなんか申し訳なくなってくる。
どうするよ、この申し訳ないスパイラル?!
「?そういえばロウジに質問があるのですけれど。」
「では今度こそ農場へ向かいましょうか」
「へ?あ、あ。了解」
「・・・えぇ。そうですわね。」「は、はいっ」
そしてまた農場へ向かって歩き始める。
実はヤキグシに興味あったんだけど俺だけだったか。
お読みいただきありがとうございます☆
携帯の方々の為に長くても7000文字くらいに収めたいのですがなかなか上手くいってません。
スペースを作って少しでも読みやすいようにしているつもりではあるのですが。
さて、次回は農場です。
農場を回って帰りに行きとは逆の店舗を案内していきます。
店舗案内を終えたら一度登場人物紹介を入れたいと思っています。
更新予定は23日です☆