村の店舗案内〜その7〜素材を買いましょう?!
さて、競りを終えたロウジ達はまたピアリスの魔法屋へ向かいます。
そこで買い物を、と考えているロウジですが・・・・
「そういえばさ?ピアリスさん、ピアリス様ってさ。精霊って事は精霊使いにはやっぱりある程度の正体って分かるものなのかな?」
アンジェリカさんに俺は戻る前に聞いておこうと思った事を聞く。
腕時計、正式名称はタイムバングルらしい、をいじくりながら。
腕輪部分の付け根にボタンみたいな突起、これは似たような別の石かもしれない、がありそれを押す事で腕にフィットする仕組みになっているようだった。これも魔石のおかげなんだろうけど、この腕輪が手に吸い付く感じがなんとも病み付きになりそうだ。
「そう、ですわね。全ての精霊使いが分かるわけではないとは思いますが強大な力は感じ取れるかと思いますわね。ロウジが神の眷属として同じような存在のピアリス様の力を感じ取れるように、ですわね。それにエルフであれば大精霊なのはすぐに分かるでしょう。」
ん?
「あ、ぁあ〜そうか、そういうことか。俺は俺の能力値が高くてピアリスさんに他の人よりは近いから、かと思ったんだけど。似たような存在だからって事かぁ。・・・似たよう、な?」
「似たような、ですわよ?創造神の力を形はどうあれ受け入れて眷属となった者なのですから。それとやはり強さの差を感じ取って漠然とではなく実際に強い、怖い、と現実的に感じるのはロウジの強さから来るものではないか、と思いますわよ?」
「え?あ、やっぱそう?なのかな?」
「ふふふふ、そうよぉ?普通は強大な存在だと認識したからって具体的な強さまでは、ましてや自分との力量差なんて想像もつかないと思うわよ?」
「あ。ど、どうも。」
ビクッとしちゃったけど声を掛けられるまで近くに来てた事に店と逆側、アンジェリカさんの方を向いてたから気がつかなかったよ。
うん、もちろんわざと顔を向けないようにしてたんだけど、ね。
「いらっしゃい。初の競売はどうだったかしらぁ?こちらでも今度こそ何か買って行ってくれるのかしら、ねぇ?」
う、うぅむ。
買わないとパクリ、とはいかないだろうけど何か危険な目に遭いそうな気がする。
「ふふ、あらら?ロウジ、君?そんな態度だと貴方達が忘れてる大切なことについて進言してあげないわよぉ?良いのかしらぁ?ねぇ?」
「・・・え?」
忘れてる?俺が?
「わかりませんわ。」「なんのことでしょうか?」「・・・・・」
3人に顔を向けたけど分からないという答えが。ポリーちゃんは黙って首を振っている。
「はぁぁ。仕方ない坊やたちねぇ。良いわ?教えて・あ・げ・る。これも手のかかる子程可愛いというもの、なのかしら、ねぇ」
ため息つきながらもウィンクで返してくれるピアリスさん年齢不詳。
うん。畏れ多くて、とか申し訳なくて、じゃなくて単純に怖くて見る気が起きませんて。
「すみません。何か凄く大事な事のような気がするのでお願いします。」
「お願い致しますわ」「お願いします、ピアリス様」「す、すみませんっお願いします」
すると気怠そうに前屈みになっていた姿勢を正して俺たちを見回して。
「ふふふ、ほんとに仕方ないわね。これはお嬢様達、特にメイドの2人は身に付いていて当然の事。であるから本来なら貴女達がロウジに教えるべき事よ?それを心して聞きなさいね?」
アンさん、ポリーちゃんの順に見て言う。
顔と違い少し口調は厳しい気がする。
「え。は、はい。」「は、はは、ははははい!すみません!」
・・・・うわぁポリーちゃん直立不動。
「ふふふふ。素直な子は好きよ。それじゃぁ、ね。どうしようかしら。ねえ?ロウジ?」
「あ、は、はい。」
「その木箱が落札した物よね?何を競り落としたのかしら?」
「・・・あ!」「「あ」」
「はい?はい。錬金粘土、ですけど。」
?はてな?
メイド2人だけじゃなくアンジェリカさんも何かに気が付いたみたいだけど。
「あら?それが錬金粘土、なのね?」
ん?
「は、はい。はい?」
「ロウジ様!申し訳ありません!」
アンさんが謝ってくる。けど意味が分からな、い?
あ、いや。
「あ、そういうことか。木箱を競り落としたわけじゃないですよね。中身が重要なんだ。」
うん。うっかりしてた。
現代日本でも一般常識的に普通に溢れてる話なのに。
アンさんから貰った物はちゃんとその場で確認したのになぁ。
ちょっと浮かれてた、うん。多分浮かれてたんだろうな。
「ふふ。皆分かったようね?そうよぉ?ここは冒険者ギルド内でギルド管轄だから下手なことはないと保証されているしわたしも保証するわぁ。け、れ、ど。それと品物をきちんと確認するかどうかは別の話よ?ちゃんと自分の目的の物が間違いなく手元に来たか?目的とした物が実際はどんな物か?手元に来た時点できちんと、スキルも使用して確認するのが当たり前の事よね?これを怠れば最悪命を失う事にも繋がるわ。せいぜい気をつけなさい」
「う。確かにそう、ですね。」
ハマグリと言われたのにアサリだったり、爆弾入りだったり。ミスリルの剣を買ったのに手元に来たのは銅の剣だったり、とか。しかもそれが頼まれ物、特にメイド2人にしてみれば貴族から頼まれた物がそんな物だったり貴族同士の贈り物に使われたりしたら・・・うん。考えたくはないけど命が軽くいくつも飛ぶのだろうね。
「特に錬金粘土のような魔法加工物は材料によってピンキリよぉ?自分が欲した効果を得られそうかはちゃんとその場で確認しておきなさい?本物か偽物かではなくいちいち帰宅してから確認してたらまた買い物に出なければ行けなくなった時に二度手間よ?そうなればせっかくの鑑定や解析スキルが台無しだわねぇ。」
「は、はい。確かに。そうですよね。ありがとうございます。」
「はい。じゃあぁ〜。授業料、よ?これも落札した金額で買い取ってくれないかしらぁ?」
そう言ってカウンターの上に出したのは・・・バターの塊?じゃないよな?
薄い黄色のこんもりとした山となった物体。
見た目はほんと、色が薄いバターの山みたいなんだけど。
「これが錬金粘土よ。木箱の中身と一緒にスキルにかけてみなさい、な。」
「あ、はい。」
解析の方が良いよな?
木箱の蓋を開けると確かにそこにも確かにこんもりとした黄色っぽい塊が入っていた。
【錬金粘土】(錬金素材) アイテムレベル6-3
錬金術により生み出される高位素材。魔法建築資材・焼き物・装備品等の汎用素材となる。
(材料 : ウッドレイクの森土 . 水 . 蒸留水 . 妖精の羽 . 魔力草の花びら . アブラナの雫 . 土の調合薬 )
必要錬金術レベル5
なんか思ったより材料が多いんだなぁ。
流石にアイテムレベルも高い。
ゲームでも気になったんだけど妖精の羽はむしり取るのだろうか?
後は水が2種類入ってるのとアブラナの雫というのが少し気になるくらいか。
それで、こっちのピアリス様のは?
【錬金粘土】(錬金素材) アイテムレベル6-00
錬金術により生み出される高位素材。建築資材・焼き物・装備品等の汎用素材となる。
( 材料: ウッドレイクの森土(深土) . 水 . 精霊の涙 . 森蛾の羽 . チューリップ(黄色)の花びら . 食用油 . 土の調合薬 )
必要錬金術レベル5
・・・・んぁ?
・・・うん?
「ふふふふ、どぉ〜う?」
微妙な顔を向けたらそう聞かれたよ。
「あら。まぁ?」「これは」「え?えと?同じ錬金粘土、ですよ、ね?」
おや、ポリーちゃんも鑑定は持っているようだ。
「どうしてピアリス様のは魔法建築資材になっていないのでしょう?」
「何が違うのかしらね?」「?」
「あ、そうか。皆材料は見られないのか。」
「ふふふふ。面白いでしょう?わたしの作った物はこれで水を蒸留水のような魔力の帯びていない物にしてしまうと錬金粘土にはならないのよ。今のままでも魔力は帯びていても魔法建築資材には少し向かないの。ただしこちらの方が多少装具や装飾品には向いてるのよぉ?」
「いや、確かに面白いですけど。勉強にもなりますし。ただ、この材料のチョイスはもう少しなんとかならなかったんですかね?」
水はただの水だけだし。花びらはチューリップだし。妖精の羽は蛾の羽になってるよ?!
真面目に作ったのかな?かな?
「あら?これでもわたしの涙が入っているのだから素材としてはなかなかのものよぉ?」
・・・・うん、ビックリだ。
精霊の涙って何かの回復系のアイテムかと思ったら貴女の自分の涙か!!!
土の調合薬が分からないけど食用油にしか金かかってないんじゃないかな?!
「うわぁ〜」「まぁ」
うん、多分俺とアンジェリカさんの驚きは少し意味が違うと思う。
「土の調合薬について聞いても良いですか?」
この際だ。分からない部分は聞こう。
「あら?ふふ。やる気になってくれたのかしら、ね?」
「ピアリス様、それではこちらの落札価格の金貨1枚と銀貨4枚で購入させていただきますわ」
言ってお金をしずしずと差し出すアンジェリカさん。
・・・うん、まぁ精霊の涙って普通はなかなか手に入らないのだろうし?錬金粘土としてちゃんとしてるみたいだから別に良いけど、ね。錬金粘土も手に入るし授業料としては安いかも知れないね。
「ふふふふ。かなり安い授業料よぉ?だいたいわたしが自分の涙を入れて自ら作った物という触れ込みで競売にかけてごらんなさい?幾らになるかわたしでも想像つかないわよ?」
「あ、う。確かに。」
確かにそうかもしれない。
俺がこんな状況になった原因の鼻水だって『創造神の鼻水』と言って本人の証明付けて売り出したらとんでもない値段になったりするのかもしれないし、なぁ。
「ふふ。分かったかしらぁ?それで土の調合薬、ね。これがそうよ。錬金術で作る物の土の属性を強く安定させる為に使うの。役割は緩衝材、に近いかしら、ね」
そう言って三角フラスコを少し小さくしたような瓶をカウンターに置く。
緩衝材、か。所謂中和剤に強化剤みたいなのを加えた物、というイメージで良いかな?
おっと。
解析するのを忘れないように。
【土の魔法薬】(魔法薬) アイテムレベル2
土の魔力を強化、補完する為の薬。土に撒けば養分を増し飲めばしばらく土魔法が強化される。少し甘い味がする。
( 材料: ウッドレイクの森土(深土) . 水 . 魔力草 . アブラナの雫 )
必要錬金術レベル1
・・・ん?
「あ、あの?これって。土の魔法薬ってなってますけど。。。」
そのレモンジュースみたいな物を持ってピアリス様に聞く。
「ふふふふふ。今度は良く出来ました。正解、よ、ロウジ?これでまたそのまま買おうとしたら永遠にぼうや呼ばわりだったわよぉ?」
笑いながら言ってくる。
そして今度は横に避けてあった小瓶、コーヒー缶くらいの物を目の前に置いた。
「ふふ。それはねぇ?所謂土の栄養剤、よ。土にも人にも良い物。それでこれが土の調合薬。こっちは飲んではダメよぉ?それでこれが他の調合薬、ね。」
【土の調合薬】(魔法薬) アイテムレベル2
土の魔力を強化、安定させる為の薬。錬金術や魔法で土属性アイテムを作成する場合には必須となる物。身体に取り入れると量により段々と土に近くなっていく。
( 材料:ウッドレイクの森土(深土) . 水 . 魔力草 . 魔石の粉 )
必要錬金術レベル1
飲んだらダメなのか。
うえ?
「身体が土に近くなっていく?」
どういう事だろう?
「言葉の通りよぉ?普通精霊でなければ肉体は色々な属性が混在して形を成しているわよね?それは分かるかしら?それが土属性一辺倒になっていくのよ。」
・・・・
うん、肉体に色々な属性がっていうのはなんとなく分かる。でもイメージ的に土と水のような感じなんだけど違うのか。
「つまりは土に還る、と?」
「そうねぇ。肉体だけが、ね。サラッサラッの土になれるわよぉ?」
「え''?」「まぁ」「うわ」「や」
聞きたくはないけど聞くしかないよね、流れ的に。
「肉体は、ですか?」
あ、先にアンジェリカさんに聞かれた。
「そうよぉ?魂はその属性が少し強化されるくらいで済むわ。その結果として本人はゴーストになったりサンドマンやマッドマンになったり。レイスになった者も居たわねぇ。ま、肉体が無くなっただけで本人は取り入れた魔力のおかげで元気だからその後は色々ね」
うわぁ〜い
「絶対に飲まないように飲ませないように気を付けます」
大精霊様に誓います。
見ると3人とも青ざめているようだ。
ポリーちゃんは両手で口を押さえて固まってる。
でも、さ。
飲んでも良い物が三角フラスコ型で飲んじゃいけない物がコーヒー缶型って多分わざと、だよね?この人の悪戯的な。
うーむ。
【風の調合薬】(魔法薬)アイテムレベル2
風の魔力を強化、安定させる為の薬。錬金術や魔法で風属性アイテムを作成する場合には必須となる物。身体に取り入れると量により風に近くなっていく。
(材料: 風見鶏の羽根 . 水 . 魔力草 . 魔石の粉)
必要錬金術レベル1
【火の調合薬】(魔法薬) アイテムレベル2
火の魔力を強化、安定させる為の薬。錬金術や魔法で火属性アイテムを作成する場合には必須となる物。身体に取り入れると量により火に近くなっていく。
( 材料: 火成岩 . 水 . 魔力草 . 魔石の粉 )
必要錬金術レベル1
【水の調合薬】(魔法薬) アイテムレベル2
水の魔力を強化、安定させる為の薬。錬金術や魔法で水属性アイテムを作成する場合には必須となる物。身体に取り入れると量により水に近くなっていく。
( 材料: 蒸留水 . 水 . 魔力草 . 魔石の粉 )
必要錬金術レベル1
「そうねぇ。昔に大量に取り入れれば自分も精霊になれるのではないか、と考えた人間が居たわ。意思を持つ精霊になって崇められたい、とねぇ。結果は・・・・そうねぇ?ロウジの宿題にしようかしらぁ?」
「え?」
いや、そこまで話したら話して欲しいかなぁ、と。
「ロ、ロウジの宿題ですか?」
「えぇ。ロウジなら釜が無くても材料さえあれば調合薬は作れるはずよぉ?だ・か・ら。どれでも1種類調合薬を作ってきなさいな。それで作りながら今の話を深く考えてみなさい?それで答えが出ても出なくても答え合わせをしてあげる。ヒントはぁ。さっきの話には無い、という事かしら、ねぇ。あぁ、お嬢様は教えてはだ、め、よ?」
あ、アンジェリカさんは知ってるのか分かるのか。
「わ、わかりました。作って来ます。」
うん。作れるって言うなら作ってみよう。
「まいどありがとうございま〜すぅ」
「はい?」
「4属性の調合薬セットで銅貨1枚。蒸留水が1瓶石貨25枚、魔石の粉が1瓶で銅貨5枚になりまぁすぅ、サービスしておきますよぉ」
おおぅ
「おお〜ぅ」
綺麗な人のあざとい仕草でクリティカル大ダメージだ!!
「・・・・さすがですわ」
うん。そうとしか言えないよね。
「ワカリマシタジャアスミマセン。えっと。ついでにアブラナの雫と火成岩と妖精の羽と風見鶏の羽根ってありますか?」
どうせなら森の土以外は買っていこうじゃないか!
「あらあら。ふふふふ。それらはあちらの素材屋でお買い求めくださいませな、お・き・ゃ・く・さ・ま」
うわぁ、語尾にハートマークでも付けてるイメージだよね、絶対。
俺にはライオンの息吹だけど。
「あ。はい。分かりました。じゃあ、「銅貨6枚と石貨25枚になりまぁすぅ」」
・・・
「はい。幾らだったか聞こうと思ったんですが。では石貨が無いのですみませんが銅貨7枚で。」
「あらぁ、貰ってしまって良いのぉ?」
「違います!お釣りは下さい!」
うわ、絶対、やっぱりシヴァ神と同類だこの人!
「では素材屋の方へ行きますね。また言われたように調合薬作れたら来ます」
再び頭を下げて別れの挨拶。
「あぁらぁ?ほ、ん、と、う、に、行ってしまって良いのかしらぁ?何か他に聞くことはなあい?」
「・・・え?」
うわ。多分こうやって聞いてくるって事は聞かなきゃいけない事があるんだよね、きっと。
なんだろう?
素材は聞いた。買うのもオッケー。
って事は作る方か?
あ。
「作る時の分量と道具ってどうなっているのでしょうか?」
確か分量は前になんとなく見たら分かったけど。
「ふふふ。なんとか合格、かしらね?良いわ。作り方は簡単。作成スキルがあればそれによってこれを作る、という意識を持って完成品を見るか思い浮かべればある程度の基本的な事は分かるわ。後は自分でアレンジ出来るかどうか、ねぇ。それもなんだけど。わたしがまず言いたかったのは貴方は創造神の眷属として擬似錬金術である魔法によるアイテムの簡易合成が出来るはずよ?それを使えば調合薬なんかは道具は必要ないわよぉ?・・・・と、いう事ね。まぁ、がんばりなさいな。」
「あ。ありがとうございます!色々助かりました!ではこれで失礼します!」
そう言えば簡易合成あったな。
それでさっき俺なら材料さえあれば、なんて言ってたのか。冗談かと思って軽く流してた。
道具も分かればアイテムボックスの中に基本的なものなら入っている、はずだ。
しかし。なんだかんだと頭が上がらないね、これは。
「ふふふふ。はぁいまたねぇ。早くて良いから出来は期待しないで待っているわぁ」
手をヒラヒラと振りながら言ってくるピアリス様。なんか最初と違ってやけにフレンドリーな感じだ。
・・・プレッシャーは消えないけど。
「では、失礼致しますわ。また機会があれば。」「ピアリス様失礼致します」「あ、ありがとうございました!し、失礼致しますっ!」
「はぁい。またのお越しをぉ〜」
な、なんだかな。
・
・
・
「そしてやってきました素材屋さん。」
「はい。ですが。」
「未だ混んでます、ね」
「すごい、ですね」
「うん。だね。でもカウンターに行く人は少ないみたいだ。行こう。」
「うん?いらっしゃい!ははっそこの嬢ちゃん達はさっき大活躍だったな!坊主は村で見たことない顔だが他所から来たばかりかい?ギルド長となんかえらく話し込んでたみたいだが。」
正面から近づいていくとおっちゃん・・・・頭に黒くて何かの模様が白く描かれているバンダナをした顎にチョビヒゲを生やした全体的に日焼けした・・・おっちゃんっ!と言いたくなる男性が声を掛けてきた。
ここの世界か国では店に近づいて来た人間には店主から話し掛けるものなのだろうか?
「はい。事情がありまして、しばらくこの村に滞在する事になりました。こちらはロウジ=タソガワと申します。とは言え先程冒険者登録を済ませたばかりの新人ですのでどうぞ色々教えてあげて下さいませ」
アンジェリカさんが言って俺を前に出す。
「よろしくお願いします。ロウジです。まるっきりの新人なので色々教えていただけると有難いです」
頭を下げる。
「おう!よろしくな!・・・それにしてもアンジェリカ嬢ちゃんとメイド2人が付いて案内かい?それにギルド長があんな楽しそうに誰かと話してるのなんて久しぶりに見たぞ?坊主、いや、ロウジ、だったか。お前さん、なにもんだい?」
む。
口調と内容は軽めだけど目はなかなかに鋭い。この人も元冒険者、ベテランなんだろうな、という雰囲気を醸し出している。
でも、まぁそんな風に冷静に分析している自分を自覚してもいるわけだけど。
「いえ、最近他所の大陸から来たんですけどたまたま子爵様と伝手がありまして。ギルド長様とはまぁ、以前にも会った事があるものですから。」
アンジェリカさんが苗字付きで紹介してくれたから子爵家に世話になるに当たって考えていた言い訳と適当に誤魔化してみたが、どうだっ?!
すると顎に手を当て
「ほおぅ?・・・するってえとお前さんもあれか?ギルド長に助けられて少しの間でも面倒を見てもらったって口かい?」
そんな事を言って来た。
「え?は、はい、まぁ。」
びっくりだ。
「なるほどなぁ。だから子供に会えたみたいに楽しげだったのかねぇ。」
ふむふむ、と頷いている。
ふむ。
どうやらピアリスさんはあちこちでそんな感じで人助けをしてきてるんだね。
「で?競売の後にわざわざ来たって事は何かお目当の物があるのかい?」
聞いてくる。
「あ、はい。そうでした。ええっと。アブラナの雫、火成岩、妖精の羽、後・・・なんだっけ?風見鶏の羽根か?その4つって置いてありますか?」
後ろでアンジェリカさんが頷いていた。
どうやら助け船を出してくれようとしたのだろうね。
見ると微笑んでくれた。
俺も軽く笑って返す。
「ほうほう。ほうほうぅ〜お?」
なんか変な感じで頷かれた気がするけど気にしない方が良いかな?
「ひょっとして錬金術やるのかい?それとも何か魔法で作るのかな?今なら全部あるが幾つ欲しい?」
「あ、はい。錬金術の真似事をしてみようかと。あ、どうしようかな?量は分かると思うけどいくつ作れるかとかまるっきり分からないか。」
と、そこで言われて気が付いた。
作成するのは良いけどさて、どうしたもんか。
「ふむ?本当に試してみる、程度の事というわけか?なら、そうだな。火成岩は砕いて使うのだろうからデカイのが2つもあれば良いだろう。2つで石貨50だ。後はアブラナの雫は油としても他に使い道があるからかなり買っても良いんじゃないか?小瓶が1瓶石貨30、大瓶が銅貨1だが?後は妖精の羽は1枚、これは本当に1組じゃなくて1枚な。1枚で銅貨15だ。風見鶏の羽根は・・1袋で銅貨1だ。どうする?本当なら冒険者であればアブラナと風見鶏は自分で取りに行くのを勧めるんだが。」
最後の方は俺ではなく他の3人を見て言う。
「ロウジ、別に良いわよ?まだまだお父様から預かったお金は有り余っているもの。どうせ持てるならここで多めに買ってしまってはどうかしら?」
「あ、あの!アブラナの雫は調理にも使えますので。不要であればスホーグさんに渡せば喜ばれると思いますっ」
「確かに風見鶏やアブラナであれば農場にも居たかもしれませんが確実ではありませんし、購入してしまいませんか?」
3人が3人共に購入を勧めてくれる。
・・・スホーグさんて誰だっけ?
料理長か副料理長さんだよね、確か。
「うん。分かった。じゃあ、すみません。火成岩は4つ。アブラナの雫は大瓶で5本、妖精の羽を10、風見鶏の羽根は・・・これも5袋下さい。」
「あいよ、ちょっと待ってな」
後ろの棚を弄り、時にしゃがんで、時にカウンターの下を弄りとやっているのを見ながら、あぁこれだけのスペースのどこに何があるか分かってるんだなぁ流石だなぁとか考えていると
「ロウジ。本当にあれだけで良かったのかしら?まだまだ買い物出来るわよ?」
アンジェリカさんが聞いてくる。
「うん。とりあえずはピアリス様からの宿題を終わらせる事を考えるよ。それと帰ってからシヴァ神にもアイテム作成について聞きたいから本格的にはその後にしようと考えているから。」
「そう。それなら構わないけれど。」
「うん。ありがとう」
「ふふっ。どういたしまして。」
あぁ、ピアリス様やフォレスタさんの微笑みと違って癒されるよ。
「おうっ!待たせたな。火成岩4つで銅貨2と石貨40。アブラナの雫が大瓶の方を5本で銅貨5。妖精の羽が10枚で銀貨1と銅貨70。風見鶏の羽根が5袋で銅貨5だ。占めて銀貨2と銅貨2、石貨40だ。他には良いのかい?」
「はい。ありがとうございます。とりあえず今日の所はこれで良いと思います。」
うん、今は良いと思う。
「じゃあ、これで。」
あ。アンジェリカさんがやっぱり金を払っていた。
うう。ありがとう。
「アンジュ、ありがとう」
「ええ。じゃあギルドを出ましょうか?」
「おう!ありがとな!っと、いけねえ。こっちの名前を名乗ってなかったな!俺はバーデルってんだ。他のロンとモレロとジャダにラードって奴らと5人で交代で解体の方と店をやってる。もし解体も頼むようだったらそっちでもよろしくな!」
おう?
そういえばこっちは名乗ったけど名前聞いた覚え無かったね。
「解体ですか?」
討伐して来た獲物を捌いてくれるんだね?
「おう!ギルド一階の一番奥の窓口になる。大物の時は倉庫に行ってもらうが、な。ギルドで買い取らない物でも解体だけ手間賃でやる事も出来るからな、まぁ、利用してくれると有り難いな。」
「なるほど。捌いた事がないので結構頼むかもしれません。」
考えてみれば素材を取るためには捌かないといけないのか。
「おう!任せておきな。じゃあ、またな!待ってるぜ!」
そう言うと他のお客さん、恐らく常連さんの方に行ってしまった。
なんというか
「解体も行うとの事でしたがなかなか豪快な方ですわ」
「あ。やっぱりアンジュもそう思った?」
「ですわね」
「なかなか頼り甲斐がありそうですね」
「ですです。けど少し怖いかも、です」
「ははは」
確かに「おっちゃん!」「おう!」という会話が普通に成立しそうな相手と言うのは端から見ると怖く感じることもあるかもしれないね。
「さ、ではギルドを出ましょうか」
「そうだね。いやぁ勉強になった!」
「良かったです。」「ふふっ良かったですわ」「良かったですっ」
「折角ですからそこから降りましょう」
「了解」
そして俺たちは外に出て階段を降りる。
「次は農場を案内してから森の入り口側に向かいますわ」
「うん。任せるよ」
なんか冒険者ギルドで結構時間潰した気もするけどそうでもないのか。
時間を見ると14:43と表示された。
次は農場か。
お読みいただきありがとうございます☆
冒険者ギルド案内編これにて一旦終了です。
次は村の森側入り口まで歩いて戻ってくる形で農場にまで行けるかどうか、になります。
少し話に出たドワーフ、オグリンさんの鍛冶屋に寄ります☆
更新予定は21日になります☆