村の店舗案内〜その5 〜冒険者ギルド二階での出逢い
なんとか冒険者ギルド一階でのトラブルを良い形で納めて二階へ上がったロウジ達。
そこでアンジェリカが会わせたかったある大物と会う事になるのですが。
さて、どうなることやら。
「あら?あれはポリーかしら?まぁ。ポリーだわ。」
「え?あ、本当ですね。どうしたのでしょうか、素材屋なんて」
「ん?」
魔法屋の方と素材屋の前で行われている競売とを交互に見ていた俺はそれを聞いてハテナ?と2人を見る。
ぽりポリー?・・・あ。メイドの女の子か。
確か一番年下っぽい女の子か。
「競売に参加、しているのかしら?」
「そういえば朝バート様に呼ばれていましたので何か頼まれたのかもしれませんね」
話しながらメイド服の2本のお下げをした女の子に近づいて行く。
・・・・なんだろう?アンさんもだけどメイド服って意外に目立っていない・・・
それよりもやばいよっ?!ネコミミ!ネコミミがっ!!隣には垂れたイヌミミがっ!!よく見たら一番前にはなんとウサミミがっっ!!
やばいっやばいよっ?!俺の第3希望がぁ!!
「そうなのね。ポリー!」
「きゃぃ・・・え?アンジェリカ、様?」
俺の内心のアタフタに気付かずアンジェリカさんはポリーさんに話し掛けた。
「どうしたの、ポリー?何かお使いかしら?」
いや、競売会場の方に集中してたんだろうね。背後からアンジェリカさんに突然呼び掛けられて可哀想なくらいビックリしてる。
「あぁ、あ。アンジェリカ様はどうしてこちらに?・・あ!ひょっとしてロウジ様のご案内先にこちらも?!まさか?!」
途中で俺の顔を見てそこまで言って、両手で口を押さえ固まってしまうポリーさん。・・・見るからに俺より年下だけど幾つなんだろう?
それにまさか、って。どういう事だろう?
「ポリー?」「どうしました?」
うん。さすがに心配になるよね。2人が声をかける。
でも俺を見たまま固まってるんだけど。
・・・「えっと?」
「あ、あのえとえと、ですね」
うん。困るね、これは。
「あ!すみません!申し訳ありません!アンジェリカお嬢様、アン様。お力をお貸ししてはいただけないでしょうか!」
困ってたかと思ったら急にそう言って2人を、正確にはアンさんの手を引っ張って行こうとする。
「え?ええ?」「え?はい?」
・・・えぇっと。・・・俺はどうすれば?
「あ。申し訳ありませんロウジ様。子爵様からのご指示がありますので少しの間3人にしていただいてよろしいでしょうか。」
「ん?あ、はい。・・・えぇっとそういう事ならあっちの魔法屋を覗いてますね?」
ポリーさん、ちゃん?はなんか慌てた様子だけど偶然会ったみたいな感じだったしな、そんなんで内容なんか全然想像つかないけど。
「あ!ごめんなさい、ロウジ。ピアリス様の所には挨拶に行きたいから少し近くで待っててくれるかしら?」
「申し訳ありませんロウジ様。」
2人して謝ってくるけど
「うん。別に良いよ、少しの間だけみたいだし。ここにはいるわけだしね。」
そう言って俺は一旦魔法屋の方へ離れる。
★★★★★
ロウジを案内していた私とアンの2人をメイドのポリーがロウジから引き離して入り口側の壁面に向かって歩いて行く。
「申し訳ありません。ロウジ様に聞こえなければ構わないのでここで良いです」
ポリーがお下げを振り謝罪してくる。
「一体どうしたって言うの?いつものお父様のお使いではないの?」
私、アンジェリカはポリーに対しもう少しキツく問い詰めたい気持ちを抑えながら問います。
「アンジェリカ様、少し落ち着いてとにかくポリーの話を聞きましょう。早く聞き終えればまたロウジ様とご一緒出来ます」
・・・そう、ね。アンはいつも的確な箇所をついてくれるわね。良いのか悪いのか分からないけれど。
「そうね。良いわ。それで?何があったのかしら?」
「あ、は、はい。実は、ですね・・・・」
・・・
「歓迎会?そんなに後日に?」
「はい。バート様が戻って来てからホールにて改めて館の者を集めて行いたい、と仰られて。」
「それで今日の内に贈り物を、とバート様が、ですか?」
「は、はい。今日でないと、と。」
私とアンの2人で詰問したところ、やはり腑に落ちない所はあるのだろう。ポリーの声が萎んでいく。
「・・・そう。お父様がそう仰ったのね?今日でないと、と?」
「は、はい。それでロウジ様は自分で何かを作りたいと考えておられるようなのでここで行われている競売で何か材料となる良い物を見繕って来なさい、と金貨を8枚も頂いて。」
薬なんかの買い物は時々しますが競売なんか来たことないのですよ、と少し泣きそうになっている。1人で全く勝手を知らない買い物を命令されてしかもこんな場所なので不安で一杯だったのかもしれない。
しかもこんな子に金貨8枚も持たせるとは。
「バート様がそんな指示を・・・」
アンも首を傾げている。
これは私でも明らかにおかしな指示だと思う。そもそも本人が今日から数日、下手すれば10日間は留守にするのに何故今日なのか。
そして何故一度も競売を利用したことがない最も歳の若いポリーに指示を出したのか。
それに今日大体このくらいの時間に私達がロウジを連れてここに来る事は分かっていた事。
「そう、なのね。お父様のある意味悪戯だわ、これは。」
思わず笑って言う。
「悪戯、ですか?」「バート様、の?悪戯?」
「いえ、もちろん買い物の指示は本当よ?競売も、良いものがあれば利用しろ、という事でしょう。」
「どういう事でしょう?」「アンジェリカ様、お教えください!」
アンは更に悩みポリーは涙目になり縋り付いてくる。
「そうね。あら?」
これはロウジが居ないと仕方ないのでロウジの歩いた方を見遣るとカウンターからは未だ少し離れているようであるのに店主と話をしているロウジの姿が。
「あら、いけない。出遅れてしまったみたい。これはロウジに私達と一緒に歩き回って欲しい物を買って良いぞ、というメッセージよ。それと恐らく歳の近い私達に少し一緒に村を歩いて来なさい、という事だと思うわ。だから行くわよ?ロウジが大変そうだし。」
恐らくはギルドに入った時から今まででロウジの事をある程度分かった上であちらから話し掛けたのだろう。まず間違いなくからかい半分興味半分で。
「あ。そういう事ですか。さすがはアンジェリカ様」
「え?え?どういう事でしょうか?競売は、しなくて良いのでしょうか?え?え?」
「良いから来なさい?悪いようにはならないから。」
未だ良く分かっていない風なポリーと全てを理解した風なアンを連れて再びロウジの元へ歩いていく。その困った様子を見て早足で向かう。
ある意味フォレスタよりも厄介で、あらゆる面に於いてフォレスタよりも大切にしなければいけない相手と相対する為に。
★★★★★
「あらぁ?こんにちは、いらっしゃい。初めてのお客様ね。向こうで競売が行われているのだけどぼうやは良いのかしら?」
・・・ぼ、ぼうや??
他に商品を見てる人は居るのに店に近寄ったら何故か話し掛けられた。
ダイナやガリバと同じくらい、20代後半〜30歳いってるだろうか?という感じの帽子から出ている長い髪は深い緑色で青のような碧のような色の目でなかなかに色っぽい眼差しの女の人・・・いや、違うな。耳が少し大きくて先がしっかり尖っている。これでもか、というくらいに。エルフ、かな?・・・それにしてはなんか雰囲気が?
「ふふふ。正解よ?ぼうや。私も確かに森の一族の一員ではあるけれどエルフではないわ。それに初対面の、しかも女性にいきなり鑑定や解析を使わない様子も好感触よ?ふふふ」
・・・・う。
なんだろう、怖い。
綺麗な、本当に綺麗な人、なんだけど。
フォレスタさんに見つめられた時よりも威圧されてるような・・・うん。迫力を感じる。
それよりもなんか心を読まれたような気もする。
「ふふふ。心を読まれたとか感じてるのかしらね。さすがに細かくは分からないわ。心の動きが分かるだけよ?安心して?」
またふふふ、っと笑いながら言ってくる、けど・・・うん。それって安心出来ませんよね?
「えぇっと。ピアリスさん?」
うーん、本当になんか雰囲気が怖い。
「あら?あらまぁ。ふふふふ。アンジェリカお嬢様に聞いていたのかしら?そうよ。わたしはピアリス。よろしくね、タソガワ、ロウジ、君?」
言ってウィンク1つ。
「・・・・っっ」
言葉が出ない、とはこの事だね。
フォレスタさんのウィンクとは何かが違う。
気圧されたのとビックリしたのとで声が出ない。
しかも名前の呼び方。
「あら、やだ。そうね。・・・一応神の眷属として大した力を持っているのよね。無自覚にでも相手の力量をある程度は理解出来てしまうのかしらね?並みの冒険者相手なら今のも普通に色仕掛けと受け取られるのだけれど。力は持っているのに訳がわからない、というのは思ったよりもなかなか困った状態だわね。」
「う」
あぁ、なるほど。なんとなく言ってる事、言いたい事は分かった。うん、分かる。日本には色々な本やアニメなんかが溢れてるから。
今言われた通りなら多分これが相手と自分の力量差を感じる、という奴なんだろう、と思う。
ベテランが身に付けるという奴だ。
でも俺はそんな、そういった戦い、闘い?の世界なんかに触れた事なんか一度もない。だから状況が理解出来ない。これは普通は自分の力量を伸ばしていく中で、或いは闘いの中で身に付けていく能力のはずだから。
それを俺は突然手に入った高い能力値のおかげでそういった真似が出来るようになっている、と。いつの間にか出来るようになってしまっている、と。
そう考えてみると多分だけど。店員風のフォレスタさんには少し警戒をしたのに冒険者然としたウルフ達には特に何も感じず良い人達だとしか感じなかったのも同じなのかもしれないな。
自分より能力値的にはかなりの格下だから安心感みたいな物しか感じなかったんだ、きっと。
と、そこまで理解出来た所で
「なるほど?頭も悪くないようね。ますますお姉さん好感触よ?」
「う。」
だからこそウィンクやら流し目をされても固まるしかなくなるんですけど。
蛇に睨まれた蛙とはこの事か。初めての体験だ。
「ロウジっ!」「ロウジ様?」「お待たせして申し訳ありませんでしたロウジ様。ロウジ様?」
そこへ後ろから3人が、ポリーさんも一緒になって早足でやって来た。
「あら。ふふ。ぼうやをからかうのもこれでお開き、かしらね?」
なんか残念そうに言うんだけどその感じはあのシヴァ神にも何処かしら似てる気がする。
「挨拶が遅れてしまい大変申し訳ありませんでした、ご無沙汰しております。ピアリス様。こちらが当家にて暫く預かる事となりましたロウジ=タソガワです。先程冒険者登録も済みましたのでこれからどうぞよろしくお願い致します」
そう言ってアンジェリカさんが深々と、深々と!頭を下げた。
「あ、アンジュ?」
さっきまでとは違う意味で固まる俺。
「子爵家メイドのアンです。未だ成人には至らない身ではありますが改めてよろしくお願い致します。」
「あ、あのあの。同じく子爵家メイドのポリー、です。あの。お買い物はしてましたが改めましてよろしくお願い致します。ピアリス様」
「ふふ。確かに冒険者でない一般客の1人1人とは挨拶くらいしか交わした事はないかも知れないわねぇ。わたしの方は知っているけれど、ねぇ。はい。よろしく、ねお嬢様方?それと、ロウジ=タソガワ君。改めて名乗らせて貰うわね?わたしはピアリス=ノクカチ=ヴェーダ。ここ冒険者ギルドウッドレイク支部支部長兼リアルデ王国冒険者ギルド統括よ。よろしく、ね、新米冒険者さん」
言ってまたウィンク1つ。
・・・なんだろう?森の妖精族の間でウィンクするのが流行っているのだろう・・・か?ん?んん?
苗字持ち、しかも2つ?貴族、しかも領地持ちか?
いや、それに冒険者ギルド支部長・・・?
いや?兼冒険者ギルド統括?・・・統括?
・・・領地持ちで領地の名前がヴェーダ?・・・・でもヴェーダって・・・んんん?
「なんだろう?凄く、もの凄い事を聞いたような気がするけど頭が追い付かないよぅ??」
いや、多分ヴェーダって王国のどこかにその名前の領地があるんだよね、きっと。
そうじゃなきゃオカシイ。オカシイ、よ?
オカシイ、よね?!
「ふふふふ。ロウジ?神の加護が幾つも付いている上に眷属の末席として高い能力を持っているのであろう?それにより私との力量差を漠然とではあるが感じ取れているはずであろう?創造主たるシヴァ神とも直接相対して会話した事のあるお前が未だ理解が及ばないか?」
う、あ。
あああああ。
うん。そうだ。そうだよね、やっぱりこの感じって。
「神様?ですか?」
恐々と聞いてみる。
「・・・んんん〜?そういう風に祀られてる場所もあるにはあるけれど。ふふふ、そうなのね?神の加護は持てど精霊の加護は未だ持たず、か。・・・様々な精霊術をも軽く使いこなしそうなのに本当に歪な存在よ、ねぇ?」
途中で雰囲気が最初に戻ってアンジェリカさんに言葉を向けるピアリスさん。いや、様だな。これは。
「本当にそうですわね。精霊術に関してはこれから教えていきますが。ロウジ?この方、ピアリス様は森の大精霊様でいらっしゃいます。」
・・・んん?はい?
「はい?大精霊、様?・・・もり、の?」
うん?んんん?森?
「精霊?大精霊?」
身体は?森のって?
「ふふふ。未だ理解が及ばないの?なかなかに困った物だわねぇ。」
「うん、と?木のドリアード、ドライアード。じゃなくて木々のトレント、じゃなくてエント?・・・うん?いや、でも?」
「ふふふふ、良く知っているわね。やっとそこまで思考が動いたのかしら?でも残念。エントなら森の名前であるノクカチとは名乗ってもヴェーダとは名乗らないわよねぇ?」
え?
あぁ、うん、そうだよね。うん。
「ん?え?ええっと〜?・・・森の精霊でもあるけど世界の名前を名乗る?・・・森と大地そのものの精霊?・・・え?まさかぁ?」
「ふふふふ。おめでとう、ほぼ正解、よ。私は大森林地帯であった頃から畏れられていたノクカチ大森林そのものから生まれた精霊。ドライアードでもありエントでもありノームでもありウンディーネですらありヴェーダそのものの一部でもある。神の分け御霊とも言えるモノ。だから精霊でありながらも最初からある程度のしっかりした肉体を持つことも出来たのよ」
今の純血の森のエルフの最長老よりも少し年上なくらいかしらね?と笑って言う。
「いや、なんか凄すぎて。」
どう接したら良いのかなぁ
少し、の範囲もどのくらいやら。
「ふふふ。冒険者登録をしたのでしょう?そうであればギルド統括として接してくれれば構わないわ?本当なら他の人間のようにここのギルド長で全然構わないのだけれど。貴方はわたしの存在がなんなのかを本能で識り、彼我の力量差までも普通に感じ取れてしまうものね?ギルド長扱いは無理かしらね?」
う。
「確かに。ただの一ギルド支部長との接し方をしようとしても何かが全力で拒否するような感覚が。」
「ふふふふ。そうでしょう?だからその感覚を誤魔化せるか慣れるかするまではその接し方で構わないわよ。わたしが我慢するから。それとわたしは名乗る価値があるとみた相手以外には、た・だ・の、ピアリスで通っているから。よろしく、ね?わたしがどういう存在かはある程度は知られてはいるけれど名乗らない限りは正しく理解出来ないと思うわ」
言って軽く微笑みながらウィンク1つ。
うん。周りの冒険者はそれで喜んでるのも居るみたいだけど、とてもじゃない。
常にライオンと睨み合っているような・・・違うな。目の前に居るのに平穏な空気の中で四方八方から睨まれているような、そんな変なプレッシャーを感じている。
わたしにも敵が見えるっ!とか言ってみたいけどすでに探すまでもなく万の敵に囲まれてる状態、みたいな、ね。
睨み合う、じゃない。こっちが睨んでも相手は気にしないんだ、きっと。そんな感じ。
でも他の冒険者は俺たちがこんな話をしてても気軽に挨拶していったり商品見てるって事はこのピアリスさんについては確かにある程度知られてるんだろうね。
力量差がありすぎて怖くもなんとも感じないんだよ、きっと。
「それで?どうかしら?挨拶は済んだのだけれど。何かお探しの物がおありですかぁ?お・きゃ・く・さ・ま?」
・・・・うわーい。
あざとい仕草が恐怖を誘うだけ、という・・・まぁ多分俺だけなんだろうけど。
俺はこれからいくつこんな異世界初体験をしていくのだろう、と気絶出来るものならしたいな、などと少し現実逃避気味に考えていた。
でもそう言われると改めて店に並んでる物が気になる。
気にならない方がおかしいと思うね。
なにせギルド長が自ら・・・自ら?・・・おや?あれ?
「まさかいつもギルド長様自ら店に?」
なんかおかしくない?
いや?それを言ったら存在自体が、か?
「ふふ。そうよぉ?ギルドの仕事は木人達でも精霊達に頼んでも分体を作ってでも大抵の事は出来るものぉ。それよりもトラブルが多い場所にわたしが居た方が良いし、ね?わたしくらいにしか作れなかったり扱い切れない物もあるのよ?まぁ、実際にはこの店じゃなくてこの土地に居る事に意味があるのだけど。そ・れ・に。もちろん必要ならいつでもどこにでも行くわよ?安心してね?」
うぅむ。
もうね、なんだか感覚がおかしくなるよ。
何か気になる事を聞いた気もするけど問い詰める気にもならない。
・・・・考えてみると今のこの状態であのシヴァ神と対面するとやっぱりこんな風に気圧されたりするのかな?
「ロウジ。お話中にごめんなさい?まず改めて紹介させて貰って良いかしら。子爵邸のメイドのポリーよ。厨房の料理人のジョージーの妹でもあるわ。ロウジとは3歳年下になるわね。子爵邸での一番年下の娘だからよろしくしてあげてちょうだいね?」
言ってポリーを前に押し出す。
「あ、あの。朝に挨拶はさせて貰いましたけどっ改めてポリーです。13歳です。兄のジョージーと2人で暮らしてます!よろしくお願いします!」
お下げを振るように頭を下げてくる。
「あ。こっちこそごめん。そうだったよね、ポリーさん、ちゃん?の用事が何かあったんだよね?終わった?」
聞くと困ったようにアンジェリカさんとアンさんの顔を交互に見ている。
どうしたのかな?
「その事なのだけれど。ロウジ。ポリーも一緒に案内に加わって良いかしら?」
ん?
「うん?いや、案内されてるのは俺の方だから。別に教えてくれる人が増える分には良いんじゃないかな?」
「あら、そう?良かったわ。どうやらお父様がロウジに贈り物をしたいらしくて。ポリーが結構な額のお金を預かって来ているからロウジが何かを作る為に必要な物であったり欲しい物があったら遠慮なく言ってちょうだいね?」
「え?うぁ。そうなんだ?確かに何かをそろそろ作ってみたいかなぁとは考えていたけど。良いの?」
結構な額って・・・確かに村を見て回るなら何か買おうか、買って何かを作れないか、とか考えてはいたけど。
「本当に良いの?」
「えぇ。お父様がわざわざポリーを寄越してくれたのだもの。使わないと逆に悪いわよ?未だ競売も行われるようだから行ってみる?」
「ポリーも良いわね?ロウジとデートの予行練習だとでも思っておきなさいね?」
「で、でえと、ですか?良いので、しょうか?」
恐る恐るといった感じで聞き返すポリーちゃん13歳。
「来なさい。そもそもがお父様の指示よ?」
それを見て笑いながら返すアンジェリカさん。
「競売は決まった日にしか行われませんしどんな品物が出るかもその日まで分かりません。目録も頂きましたし覗いてみてはどうでしょう?」
「ろ、ロウジ様。宜しければ行きませんか?」
「うぅ〜ん」
「ふふふ。何事も経験よ?競売が終わった後もお店は開いているのだから覗いてみたら?それに後になればなる程希少品だったり高価な品物が出るわよ?」
うーむ。
希少とか貴重ってなんかここに並んでる中にもありそうな気もするんだけど、ね。
「分かりました。ではすみませんが一度お暇させていただきますね?ありがとうございます」
「あら。ふふ。本当に礼儀正しいのね。素直な子は好きよ?いってらっしゃいな。」
「はい。では失礼します。行ってきます」
「あ、ごめんなさいね?先に礼儀正しいぼうやにお母さんからアドバイスよ?まず1つ。貴方は魅了無効を持っているみたいだけど他にも無効化スキルは持っているのかしら?貴方は関係無くとも周りの人間が同じだとは限らないわよ?ちゃんと自分と周りの能力の把握に努めなさい。・・・次に今の事にも繋がるのだけど貴方の今の表示されている能力値でもかなり上位だから色々と気を付けなさいな。さすがに強化無しでトロル並みの体力はどうかと思うけれど神の眷属を隠蔽しているのは感心ね。」
え''
「う。はい。」
何故か隠蔽している内容もバレてるけど今更か。
「さぁ。では今はこれで終わりよ。今度こそいってらっしゃいな」
「あ。はい。ありがとうございます。行ってきます」
「失礼します」「失礼致します」「また来ます。失礼致しますわ」
「ふふふふ。良いわねぇ。いってらっしゃい」
ウィンクにも変な話、慣れてきたかもしれない。
・・・目の前で口を開けたライオンにされている感はあるんだけど。
それに今の話からするとさっきまで下手するとドライアードの魅了の力を込めたりしていたのかもしれないなぁ。
俺が平然としていても周りはそうはいかないかもしれない、か。・・・そうだよね。
そもそも生命力減らないという正にトロル以上の再生力でもって寿命まで死なない事は決定だろうし。でも周りは怪我もすれば命を落としもするんだ。
実力を伴わない能力、か。意識していかないと、だな。
それにしても競売か。
初めての経験だ。
金は出してくれると言うし、少し甘えようかな。
俺は貰って左手に丸めて持っていた目録を広げながら少しワクワクしていた。
お読みいただきありがとうございます☆
森林地帯の精霊、という存在でしかも冒険者ギルド全体のボスというピアリスと顔見知りになったわけですが。
実は世界にはシヴァ神の力が満ちているわけでそこから産まれる精霊にもどこかにその影響が出ていたりします。
冒険者になったこともありこれからの生活でちょいちょい絡んできますがお楽しみに☆
次話は競売と他店舗を物色する4人です。
更新予定は17日の予定でいます☆