村の店舗案内〜その3〜これで俺も冒険者?!
すみません、書きたいとこまで書いたら長くなってしまいました。
昼食を取りながら話をしてその後冒険者ギルドへ☆
「あ、お父様だわ」
アンジェリカさんが言う方を見ると馬車が走って来ていた。
おお!馬車だ。
馬が1頭で馬車を引いている思っていたのとは違って小さめな馬車が左に曲がる前に目の前に止まる。
「商人ギルドでの登録は終わったようでございますね」
見ると御者さんは執事のマクイーンさんだった。
「はい。お陰様で。」
軽くお辞儀をして返す。・・・馬車って座る位置結構高いんだな。
「お父様、今から見回りですか?」
「あぁ。予定通りまた何日か留守にする。今回はマクイーンも同行するが後の事はハイネとノーラにいつも通り頼んである。よろしく頼むな」
「わかりましたわ。いってらっしゃいませお父様。お気をつけて」
「ロウジ、アン。マクイーンから報告は受けたがまた良ければ話を聞かせて欲しい。しばらく留守にするが気にせず楽しく過ごして欲しい」
馬車の中からバートさんが言ってくる。
「はい。そうですね。色々覚える事や気になることが多くて大変ですが、がんばります。いってらっしゃいませ。バートさん。」
バートさんにも頭を下げて言う。
「いってらっしゃいませ。お気をつけて下さいね。叔父様」
「お。う、うむ。行ってくるな。何日かすれば帰ってくるがではまた、な。昼食は言ってあったように外で摂ると良い。」
・・・・ふぅむ。バートさんを叔父様と呼んだアンさん。叔父様と呼ばれて驚いたけど呼ばれて喜んだ様子のバートさん。
うん。良い感じだね。良い感じ、なんだよな?
「はい。」
頭を下げるアンさん。
「では」
マクイーンさんが馬車を走らせる。
左に曲がりあっという間に村の出口に。
「結構揺れそうだね」
馬車が走っていった様子を見て言う俺。
「そうね。あれは2人乗りでしかもあまり良い馬車ではないから速度を上げるとかなり揺れるわね」
「村や街の中では良いですが街道で雨が降った後などは大変ですね」
「やっぱりそうなんだ。バートさんは何日か留守に、って言ってたけどどこへ?」
買い物なわけないよね。
「領地の見回りですわ。いつもなら先に南から回るのですが、今回は東から回るのでしょうね。」
「へぇ」
そうか、領地がここだけなわけないよね、さすがに。
「ここは主な街道から逸れて森の入り口という意味合いが強い村ですが、バート子爵様は他に東の街道の向こう側と南の国境の街ゼファール、ヤマニシ公爵領との境近くにも村をお持ちになっています。」
「へぇ〜・・・ヤマニシ公爵領?ヤマニシ?」
山西?
「はい?」「何かしら?不敬になり兼ねないから気を付けてね?」
「え?あ、ああ?あぁ。公爵様を呼び捨てはまずいよね、うん。いや、さ。ヤマニシって響きが日本人、あぁ〜、あっちの世界の名前っぽくて。ね。」
過去に世界を渡った山西さんていう人の子孫とかじゃないよね?
「?・・・タソガワ、ヤマニシ。。。?響きが似ているかしら?御先祖様の事まではさすがに知らないけれど何代かは確実にこの国にずっと貢献している王家の親類にあたる大家よ。」
「ロウジ様、子爵家の人間はともかく外での呼び方には注意して下さいね」
「・・・はい。」
アンジェリカさんの説明とアンさんのお叱りを受けて少しシュンとなる俺。
だってしょうがないじゃないか。
フォレスタさんの話を聞いてひょっとして次元の穴みたいなのに、あの駄神様の事だから穴を放置しまくってて、そこからこっちの世界に来てしまってる人も居たりしてとか考えちゃったんだから。
もし居たら話をしてみたい、って思うじゃないか、思っちゃうんだからしょうがないじゃないか。
「ロウジ?」
「・・・大丈夫ですかロウジ様?」
「あ、うん。ごめん、大丈夫。」
なんか変な顔してたのかな?心配させちゃったみたいだな。
「本当、大丈夫?昼食時だしそこで一息つきましょう?」
道の向こう側の大きな店、多分宿屋?食堂?を指差すアンジェリカさん。
「腕のって時計?」
右手首にあるブレスレット・・・バングル?が腕時計になってるみたいだ。
「えぇ。そうよ?未だ普及はしていないから結構な貴重品ね」
やはり1日は24時間らしいがそのまま24時間制で午前正午午後という区分けは無いらしい。
「あ。やっぱり昼飯時かぁ。ごめん、少し気落ちしてた。腹が減ってきたのも感じてたから昼飯を食べられると分かってもう大丈夫。」
軽く笑って言う。
商人ギルドのパンフレットもそこで読めるかな?
バッグに入れずに手でパンフレットを持っている俺は完全な新人君状態ではないだろうか?正に称号通りの。
と、そこまで考えてまた笑えてくる。
「ロウジ?そんなに嬉しいの?」
「ロウジ様?顔がにやけてますよ?」
2人もなんとなく笑っ感じでツッコンで来るけど
「あ、いや、食事が嬉しいんじゃないよ?そうじゃないよ?」
2度言ってみた。
「そうじゃなくて。まるっきりど素人でど新人だけど、なんかこれで商人になれるのか、商売出来るのか、って思ったら、ね」」
やっぱり嬉しい、んだろうな。
(あら。これは、言った方が良いのかしら?)
(いえ、別に差し支えは無いのでよろしいのでは。)
(そうよね?わざわざがっかりさせることも無いわよね)
(はい。この村だけで暮らすわけでは無いのでしょうし)
「どうかした?」
なんだろうな?なんな内緒話始めたけど。
「い、いえ。それではそちら側のテラスに座りましょう?」
「そうですね。冒険者ギルド側に座りましょうか、ロウジ様?」
「あ、うん。分かった。」
そんな話をしながらテラス席、というか外の席に3人で座る。
普通は色を塗ったりするんだろうけどここのテーブルも椅子も木のままのようだ。
宿屋兼食堂の大きな建物。
【木々のさえずり】というここは国で珍しい事にエルフの夫婦が始めた店だそうな。
「エルフらしく肉料理は少ないのだけれど。豆を中心に健康的なメニューが多くて分量も申し分無いから男女問わず人気があるわ。逆に肉や魚を中心に食べたい人は陽気な猫亭に行くわね」
「へぇ〜エルフの料理って楽しみかもしれない。」
「いらっしゃいませ。こちらが本日のメニューとなっております。ご注文が決まりましたらそこにある琴棒を叩いて下さい」
木のコップに水?を入れて持ってきてくれたウェイトレスだと思われる人が・・・薄い長袖のシャツを着てる以外には他の客と区別がつかないので悲しいことに断言出来ない・・・指し示した先、丸テーブルの端っこに銅色の棒が2本縛られて吊るされている。
更に紐で木の棒がぶらさがっているからこれで叩くのだろう。
少しトライアングルを彷彿とさせる。
「ありがとう。」「ありがとうございます」
あ。
「ありがとうございます」
2人が笑顔でお礼を言ったのを見て慌てて俺も礼を言う。
あぁ、日本でも昔はこういう風に礼儀があったのかな?ウェイトレスや店員にお礼を言ったことなんて無いなぁ、と考える。
そして2セット持って来てくれたメニューの1つを女性陣が見てるのを確認して1つに手を伸ばす。
1枚1枚のメニューをファイリングしてあるようなタイプの少し厚めの冊子になっている。
それを読んでいくけど。。。
「ごめん。メニューは読めるけどどんな料理かが分からない。」
料理は説明文が1、2行あるんだけど残念ながら味が想像出来ない。
「あ?いや、わかるのもあるけど。・・・トーフって豆腐で良いのかな?豆から作った食べ物って書いてあるけど。」
「あ、ごめんなさい。漢字でどう書くのかは知らないわ。けれど書いてあるように確かにトーフはソイという豆から作った食材よ。」
「ソイ?ソイか。」
うん、間違いなさそうだね。
英語だとソイビーンだったかソイビーンズだったはず。
醤油がソイソースだもんね。
「ん、じゃあ昼飯には少し重いかもしれないけど豆腐、トーフステーキで。後紅茶を貰うかな」
パスタとかもあるみたいだけどタラノミをまぶした、とか書いてあってもそれが鱈の身なのかタラの実なのかそれともタラノミという食材なのか全く分からないし。
あ、でも?
2人が居るなら2人のオススメを選んでそこから覚えるのが良いのかな?
鑑定とか解析とかあっても書かれた文字からは何も分からないという不便な所に気が付いた。
(解析)
【宿屋木々のさえずり本日のメニュー】アイテムレベル4
木々のさえずりで提供している本日のメニューが書かれている紙の束。マスターが考え毎日作り替えている。
(材料: パピルス . コダッコのスミ . 鉄)
メニューの材料・・・日本語的には微妙に合ってるんだけど惜しい!
残念だ!!
コダッコってなんだろ?蛸、かな?
「それじゃぁ私は」
「あ、ごめん。ここは料理とメニューの内容を少しでも覚える為にも2人のオススメを頼んで貰って良いかな?」
「あら?そうね・・・わかったわ。アン、少し良いかしら?」
「分かりました。オススメですね。」
・・・・
・・・
そして2人がオススメしてくれたのはトマトソースパスタでした。
・・・残念っでしたっ!!
でもね
「お?美味しい」
「でしょう?このトマトソースが濃いのにくどくないのが素敵よね」
「うん。すごくトマトの味、甘みも酸っぱさも濃い感じなんだけど。パスタの味もしっかりしてて・・・うん。これは2人がオススメしてくれたの、分かるよ。美味しい」
そう。すごく美味しかった。
とりあえず満足したよ。
無念感は否めなかったけどね。
・
・
・
「それじゃあ一息ついたことだから次の目的地、冒険者ギルドに行きましょう」
3人分の代金銅貨3枚を払ってアンジェリカさんが言ってくる。
ちなみに王都で同じ物を食べると1人石貨30枚以上は最低でも高くなるという。世知辛いね。
しかも案内だから、ということでアンジェリカさんが全額支払ってしまった。
どうやら商人ギルドでも払う気満々だったらしい。・・・まぁ、よしとしよう。
支払いもその場でウェイトレスさんにして貰えるので楽ではあったけど。
「了解」
「行きましょう」
だからそのまま道を渡り正面のまばらに人が出入りする建物に向かう。
「おお!!憧れのドアだ。」
「はい?」「?ロウジ様?なんでしょう?」
「あ、いや、えっと、ね。こういう半分くらいしかない、酒場〜!っていうイメージのドアに少し憧れがあって、さ」
そうなのだ。ウチは両親共に昔の映画が好きで。中でも西部劇が好きでよく見てたんだけど。酒場の入り口の独特なドアになんとなく憧れみたいなものがあったんだよね。
それがこの冒険者ギルドの入り口に付けられていた、と。
「あぁ、なんとなくは分かる気がするわね。荒っぽい酒場の感覚かしら?」
アンジェリカさんが言ってくる。
「そうそう、そんな感じ。荒くれ者の溜まり場の入り口のような?」
・・・うん。そう考えると冒険者ギルドの入り口には合っているのか。
そうなると商人ギルドのドアが両開きなのは貴族とかを意識してたりするのかな?
ドアをくぐる。
・・・入ってもいらっしゃいませの挨拶はなかったし。思ったよりも静かだし。
中は正面が通路。
右側にカウンターがあって奥に向かって窓口が4つかな?並んでる。商人ギルドと違って椅子は置いてないみたいだね。
そして窓口から手前に目を戻していくと入り口手前の壁面に紙がたくさん貼られているのが見えた。あれはクエスト用紙かな?呼び名は分からないけど。
そして窓口横に木のボードが置いてあってそこにも張り紙がいくつかしてある。数は少ない。
そして窓口横の奥にトイレらしき表示がされている2つの入り口がある。
一番奥の窓口に2人、2人組かな?が居る。
その向こうは更に通路が左右に伸びてるっぽい。
左側は・・・四角いテーブルに4つの椅子が・・・8セット並んでる。うん、ここも食堂になってるみたいだけどやっぱり酒場のイメージだな。
その奥には長いカウンターと奥に厨房が見える。
カウンターのずっと右横、食堂の奥に観葉植物が並んでるけど向こうに階段が見える。
食堂の客は手前側に男性4人組と奥に男女2人組の計5人。
「おい、なんか狼系の毛皮が段々高騰してるんだってよ、知ってたか?」
「あぁ、あちこちで一気に森の開発を進めたせいじゃないか、とかどこかでデカイ群れが出来てるんじゃないか、とか言われてるが確実に近隣の狼の数が減ってるらしい。」
「なるほど〜それで需要に対して供給が出来なくなりつつあるわけか。」
「あぁ、狼系の魔物を狩るなら今だぜ」
「でもなぁ見つからねぇんじゃぁなぁ」
「だがウルフ、お前は四男とはいえ貴族の出で良かったよなぁ」
「は?なんでだよ?」
「とりあえずファミリーネーム名乗っとけば乱獲されずに済むぞ?」
「ちょっお前っ!何言ってんだよ!?」
「そもそもこいつ、1人だけなんだから乱獲って無理じゃね?」
「ははははっ!こいつの素材で荒稼ぎ出来るなら乱獲したいな!」
「おぃぃ〜?お前も大概ひでぇ事言ってんなぁ」
「はっはっはっは」
「アッハッハ〜」
男だけ4人組だけどなんか良いな、ああいうの。冒険者パーティかぁ。
「ロウジ、とりあえず今はそっちじゃないわ。こっちで冒険者登録よ。」
おぅ。二階にも興味があるんだけど。
「了解」
4人組の冒険者が話してる内容も気になったけどとりあえず未だ冒険者じゃないからな。
「こんにちは。いらっしゃいませ。初めての方、ですよね?本日はどのような御用件でしょうか?」
・・・ポニーテール流行っているのだろうか。4箇所ある窓口の内の3人がポニーテールの女の人だった。
皆多分基本的な髪の色は黒っぽいんだけど色が混ざっている。
「どうなさいました?」
20代半ばくらいの髪に赤毛が束で混じっている女性が聞いてくる。
「あ、すみません。初めてです。受け付けの皆さんが皆精霊使いだったりするのかな、って見惚れてました。」
見惚れてた、は少し違うかな?いや、でもそうだよな。
「あら。そうですね。私と隣のアイダ、あ。私はクレッセと言いますが。2人は精霊術を使いますが奥の2人は魔法使いではありますが精霊使いではありません。素質はあってもその道に進むかは個人の意思によりますので。」
「あ。なるほど。そうですね、確かに。」
確かに素質があるからと言って必ずその道に進むかは分からないか。
「今日はこのロウジの冒険者登録をお願いしに来たの」
「あ、はい。承りました。」
あっと。アンジェリカさんが横から助け舟を出してくれた。
「よろしくお願いします。」
とりあえず頭を下げる。
「はい。まず簡単に当ギルドの説明させていただきますが。冒険者、と言っても依頼によっては街や村から出ずに完遂する事が可能な物も結構ありますので成人さえされていればどなたでも冒険者登録する事は可能です。当ギルドは依頼の斡旋をし、討伐された魔物の解体や素材の買い取り等を通して冒険者となる方をサポートさせていただくのが仕事となっております。登録料は銅貨60枚になりまして、他に費用は無用です。もし依頼を受注される場合は張り出されている用紙を剥がして受付までお持ち下さい。ここまではよろしいでしょうか?・・・では次にこちらの用紙に素直な気持ちで記入をお願いします。」
一度こちらの顔を確認して俺が頷くと1枚の用紙とペンを差し出してくる。
「はい。はい?」
素直な気持ちで?
ペンと一緒に出された用紙を見る。
(街中を歩いていると突然目の前に短剣を持った男が現れました。貴方はまずどうしますか? ・逃げる ・話し掛ける ・自分も武器を構える ・問答無用で倒す. ?)
「あの、これってアンケート、ですか?」
「はい、そうですね。別にこれで冒険者になれなくなることはないので気軽に丸をつけたり答えを書き込んでいってください。記入は出来ますか?代筆も可能ですが。」
「あ、はい。書くのは大丈夫です。」
うーん?気軽に、と言っても明らかに査定みたいなの入ってるよね?
書く時に平仮名じゃなくてカタカナで書くのを意識しないとな。
でもまぁ、普段の自分と違う答え書いて結果として困るかもしれないから正直に答えるべきかな。
まずは話し掛ける、に◯と。
(洞窟の奥に立派な剣が台座に刺さっているのを発見しました。今その場には貴方しか居ません。さて、貴方はどうしますか? ・とりあえず抜こうとする ・まず台座や周りを調べてみる ・一度周囲を良く観察してみる ・とりあえず一度洞窟を出る. ?)
うわぁ〜。草むらとかじゃなくて洞窟の奥なんだよね?これはまずあっちこっち調べてみる、かな。周囲と台座周り、どっちかな?まずは近付けるかどうかを周りから確認する、か?
「終わりました」
そんな感じで8個程の設問に答えて用紙を返す。
「はい。では次にこちらが登録用紙となっておりますのでこちらも記入をお願いします。」
ペンはそのままに用紙を替えてまた差し出してくる。
「はい。」
氏名・性別・年齢・誕生日は商人ギルドと同じだね。
「すみません。正確な誕生日が分からないのですが今日の日付けでも大丈夫でしょうか?」
一応確認する。
「はい。大丈夫ですよ。」
ニッコリと笑って返してくる。
うん。じゃあ、次に使用武器と盾を使うかどうか?・・・・使用武器?!
「あ。すみません。未だ使う武器が決まってないのですが・・・」
決まってないと言うか何の武器も使った事が無いね。剣は出して部屋に置いてあるけど使った事があるのは竹刀くらいだよ。
・・・村の中だし別に剣持ち歩かなくて良かったよね?アンジェリカさん達も何も言ってきてないし。
「あ。それでは戦士タイプでしたら剣、と。魔法使いタイプでしたら杖、と書いて下さい。」
う、うぅむむむ。
それも悩む所だったりして。
まぁ理想は高く魔法剣士かな。剣で良いや。
「はい、わかりました」
次に自分の徒歩以外の移動手段を持っているなら記入?
無し、だな。自分の徒歩以外、って誰かにおんぶとかじゃダメだよね。まぁ仲間居ないからどちらにしろ無いけどね。
他の人間とパーティを組む気はあるか?
ある、と。いや、一応はある、という項目があるからこっちにしとこう。
そうしていくつかの項目を埋めていき用紙とペンをお姉さん、クレッセさんだったか、に返す。
商人ギルドでも名札が左胸に付いてたんだけどそこは目をやりにくいんだよ!!
「はい。ロウジ様ですね。ではギルドカードの作成に入りますので少しお待ち下さい。」
そう言って立ち上がり奥へ行く。
「あ、はい。」
「ギルドカードってどういう風に作ってるんだろう?知ってる?」
後ろで静かに待っていてくれる女の子2人に聞いてみる。
「そうね。魔道具を使う事は知ってるけれど詳しくは知らないわね」
「昔は魔法で書き込んでいた為にギルドカードの発行は早くて翌日だったようです。今は魔道具もどんどん改良されて即日発行が可能となったようですが。けれどわたしも作業内容までは・・・」
「そっか。まぁ、そうだよね。普通に考えれば企業秘密、機密だよね。」
しかし魔道具、か。
「魔道具って魔法を込めた道具だよね。水道とか冷蔵庫とか。結構造れる人は居るのかな?」
出来れば造れるようになりたいな。
「あ。ロウジ、少し違うわ」
「そうですね。魔道具作成は職人自体は結構な数は居るかと思いますが腕の良し悪しも結構ありますね」
「そうなんだね。ん?違うって何が?」
アンジェリカさんに聞く。
「魔法を込めてその魔法を使えるようにしただけならそれは魔法具よ。魔道具は魔力や魔法を動力にして何かを行う事が出来る道具の事なの。」
ん?
「以前冷蔵庫は魔道具。だけれど氷結庫は魔道具か?魔法具じゃないのか?という議論があったようです。」
んん?
「冷蔵庫は分かるけど氷結庫って?冷凍庫?」
んんん?
「冷凍庫、というのは氷室を改良した魔道具になります。氷結庫とは中に入れた物にフリーズの魔法をかけて瞬間的に凍らせる物です。」
「瞬間的に?」
「はい。」「ですわ」
ふうん?イメージとしては電子レンジの冷凍版か?
「それが魔道具か魔法具かってなんで問題になったの?仕組み的に?」
「はい、そうですわ。氷結庫にはフリーズの魔法を込めた魔石が使われているので型としては魔道具で間違いないのです。ですけれどただ中に入れた物に同じ威力のフリーズの魔法をかけるだけですのでそれは魔道具とは言えず魔法具ではないのか、という意見が出たようでして。」
「あ、あぁなるほど」
つまりなんの調整機構も無くただフリーズの魔法が使えるだけなら魔道具と言えないのではないか、と。
・・・うーん微妙な気が。
「それで結局結論は出たの?」
「えぇ。結局結論はそのままの状態で戦闘にも使用可能な魔法を使える物は魔法具、暮らしの中でのみ使用し威力を発揮するものは魔道具となりましたわ。氷結庫も少し改良されましたが魔道具とされました。」
「・・・はい?」
・・・氷結庫がどうこうじゃなく概念自体が少し変わった、と?
うーん、なんか微妙な話だけどあっちでもそんな事はあったかもしれないな。トマト論争とか木と草の違いとか。
「大変お待たせして申し訳ありません。今しばらく掛かりますので先に私の方から冒険者について説明をさせていただきたいと思いますがよろしいでしょうか?」
隣の窓口のお姉さんが来て言ってくる。
うん。その方が良いだろうね。
「はい、よろしくお願いします」
「はい。では冒険者ランクについての説明をさせていただきます。登録したばかりの方はほぼ全員がランク1からになります。このランクは初級の1から中級の8まであり8まで上がると次に上級である銅・鉄・銀・金・魔法銀のランクとなります。この銅から魔法銀までのランクも1から8までありますので上げるのはかなり大変な事です。ですが、銅ランクからは依頼の報酬に1割上乗せされるようになったり、初回登録したギルドが所属している国から月末に報謝という名の給与が多少支払われるようになりますのでそこまで上げるだけの事はあるかと思いますよ」
「ほう。なるほど。」
まぁ、ある程度予想した通り、かな。
大抵ランクがあれば数字かアルファベットで順にだしね。大きい順か小さい順かの違いくらいだろう。
ただ、ここでも8で繰り上がりなんだね。
「次にランクの上げ方ですが。あ。カードが出来上がったようですが説明させていただきますね?基本的には依頼をこなした数、達成した数でランクを上げるかどうかをギルド側で決めさせていただきます。1と2の初級の場合はそれだけですが、3からの低級、中級以上の場合は達成の仕方、達成するまでに掛かった期間なども加味させていただきます。そして銅ランクに上がる為には昇級試験を指定ギルドにて受けてもらう形になります。以上までで何かご質問ありますでしょうか?」
「うーん。受ける依頼のレベルとか。あとは依頼毎に評価点、ポイントなんかは設定されているのか、ですね。」
まぁ多分間違いなく冒険者ランクに合った依頼しか受けられないし評価点は今の説明だと冒険者側には隠されてるかな、とは思うけど。
「あ、はい。ギルドカードの・・・良いですか?はい、ついでにこのまま説明してしまいますね。本来ならカードのお渡し時に説明する部分なのですが許可が出ましたので。依頼にはそれぞれ難易度によってランクが設定されていまして。冒険者の方の1つ上のランクまでが受注可能な依頼のランクとなっております。とはいえランク8の方が銅ランクの依頼を受注する事、銅8ランクの方が銀ランクの依頼を受注するという事等は出来ませんのでそこだけはご注意下さい。次に評価点なのですが。これは基本的にランクと危険度と達成内容の3つとなっております。残念ながら依頼に最初から点数を付けることはしておりません。その方が冒険者側もギルド側も楽じゃないか、という意見があるのですが・・・依頼の最中にトラブル、特に予期せぬ魔物に出会ってしまったり事件に巻き込まれたりした場合に放置してはいけない場面で放置をしたり一辺倒の対応しか出来ないようでは困る、との考えから付けてはいないのです。今のところは、と一応付けさせていただきますが。」
「あ、なるほど。分かります。」
ポイントにならないからって余分な事を見過ごす人間も居るということでそれは困るって話だよね。
逆に何が評価に繋がるか分からないぞ、とする事でやる気も上げる、と。
「ではギルドカードの受け渡しになりますので交代しますね。」
そう言ってまた隣の窓口へ戻っていった。
うん。ここの2人は分かりやすいね。
「大変お待たせして申し訳ありませんでした。」
「あ、いえ。色々と聞けたので。」
「そうですか。良かったです。ではこちらがギルドカードと冒険者のしおりになりますね。それで登録料が銅貨60枚になります。」
「あ、はい。そうでした。」
また支払いを忘れる所だった。
「あ。」
しまった。銅貨50枚しか無いや。
「すみません。じゃあ、銀貨でお願いします」
1枚出す。
「あ、はい。確かにいただきました。ではこちらお釣りの銅貨20枚になります。お確かめ下さい」
ん?
「20枚?」
「はい?はい。」
ん?
あ、そうでしたそうでした。
80枚で1枚だったよね。
「はい。確かに20枚。いただきます」
「はいっ。次にギルドカードの説明ですが。こちらに先程記入していただいた内容が記録されておりまして身分証ともなります。もし他人に鑑定や解析を使われた場合には即時その場で警戒音が鳴る仕組みとなっております。これは止まれ、と念じるかその場で強く振っていただければ鳴り止むようになっておりますので慌てずに対処をお願いします。また、街や関所の番兵は専用の魔道具にてこれを解除し読み取れるようになっていますのでそれを持たない他の人間に騙されないようにご注意下さい。後は依頼を受注したけど期限切れになってしまったよ、なんらかの失敗をしてしまったよ、という場合ですが。その場合は損害賠償として報酬の倍額をギルドに支払っていただきます。ここまでで何かご質問はありますでしょうか?」
うーん。
失敗だとまさかの倍額支払いかいな。
まぁギルドの名誉だったり依頼人の信用だったり下手すると命なんかが失われたりするからな、これは仕方ないか。
「すみません。さっき商人ギルドにも登録したのですが。あちらでは身分証の部分、街や関所についての説明が無かったように思うのですが。」
聞き逃したかな?
「あ、はい。そう、かもしれませんね。商人の場合はそれ自体がある程度保証されてる身分ですから番兵の対応も違う場所があるかもしれませんし商人を目指すなら最初からそのくらいは知っているだろう、と説明をしていない可能性もありますね。」
「あ。あぁ〜そういう事もあるんですね。」
なんだろう、所詮は冒険者、みたいな対応の場所もあるんだろうか?商人に対しては丁寧、と。
しかし知ってる知らないは仕方ないね、こればかりは。別にこの世界で商人を目指して暮らしてたわけじゃないし。
「はい。では最後に重要事項になります。これは商人ギルドと重なる部分ではありますし、冒険者のしおりを読んでいただければ大丈夫なはずではありますけれどこちらでも説明をさせていただきます。最初に説明したように冒険者には登録料のみでなれますし基本的にノルマなどは無いので気が向くまでずっと冒険者ギルドに所属する事が可能となります。ですが、たまに、ですが。魔物の群れの異常発生や災害救助など緊急事態への対応を求めて近場のギルドから緊急招集がかかる場合があります。大抵はギルドランク指定ですが、基本的に指定されたランクの冒険者は必ず招集に応じなければなりません。これは人や国を守る、助ける為ですので。もしこれを理由無く断った場合は即ギルド追放となりますのでご注意下さいね。またそのギルドからの連絡はギルドカードに文書にて通達されます。その文書に返信する事が出来ますので何らかの事情がある場合は返信をお願いします。尚この通信機能は友人としてカードに登録した冒険者同士であれば利用する事が出来ますので情報交換を始めとして御存分にご活用ください。以上になりますが何かご質問は、ございますでしょうか?」
「いえ、多分大丈夫かと思います。ですがしばらくはこの村に居るつもりなので分からなくなったらまた聞きに来て良いでしょうか?」
少し商人ギルドと違うんだね。
冒険者ギルドはなんかゲームっぽい。
しかも冒険者のカードは材質は似てるけどなんか白っぽい。
悪く言えば安っぽい感じがなんとも。
「はい。しおりを読んでいただければ恐らく大丈夫かとは思いますが、いつでも来られて大丈夫ですよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。じゃぁ大丈夫です。」
「そうですか。ではこちらこそありがとうございました。しおりに冒険者ギルドの理念が書かれていますが、これから冒険者としてがんばってください、ね。二階で購入可能な駆け出しセットを始めとしてギルドはサポートさせていただきますので。」
「はい。よろしくお願いします」
二階でそんなものを買えるのか。
まぁ多分要らないけど。
「よろしくお願いします」
(称号: 駆け出し冒険者、を入手しましたよん)
こうして俺は冒険者になった。
・・・なったんだよね?
《駆け出し冒険者》
冒険者としてそのちっさな一歩を踏み出した者に与えられる称号。その一歩目が固い土を踏むか泥沼に沈むか、はたまた奈落に踏み出すかは本人次第。
効果: 体力+3 気力+3 幸運度+4
・・・ちっさな、って・・・
うん。がんばろう。
お読みいただきありがとうございます☆
今話本当長くなってしまい申し訳ありません。
少しでも楽しんでいただければ幸いですが。
次回は村の店舗案内その4です☆
更新は13日の予定です。