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迷惑創造神とのんびり異世界生活を?!  作者: ミカ=エル
2.ウッドレイク子爵家の居候
11/71

マンドラゴラと噴水広場?!

放牧地を後にしたロウジ達。

今度は反対側の農地へとやって来ました。

そこに植えられているのは普通の野菜。

しかし本来の用途は他の地で栽培されているものや各地で自生している植物の試験栽培であり。


ロウジの村案内、第2回です☆

引き返して真っ直ぐ。子爵邸の前を今度は右に行く。


「そういえばロウジ様」

「そういえばロウジ。アイテムバッグを替えたの?」

アンさんが何かあったみたいだけどそのままアンジェリカさんが聞いてくる。

ショルダーバッグタイプで大きさも少し小さいだけで色も同じだからな。

言わなければ分からなかっただろうね。


「あ。はい。あのアイテムバッグはかなりの重量入るようなのですが・・・素材が気に入らなくて。」

中級回復薬が結構高そうだと思ったから改めてアイテムバッグの中身を確認してた俺はバッグを触りながら返事をする。


「そう。村の中ならそんなに物を入れる事もないでしょうしね」


「ですね」


「何の素材だったのですか?」


「う」

アンさんの質問に詰まる。


「?ロウジ?」「ロウジ様?」


「いやぁ、なんかジャイアントキャットという動物の皮だったみたいで。」


「ジャイアントキャット、ですか」

「ジャイアントキャットの皮ですか」

「はい。そうなんです」

そう、そうなのだ。

ジャイアント、とついてるけどまず間違いなく猫。ネコ科なのは間違いない。

日本でも猫の皮は三味線に、なんて話があるが俺は猫好きなのだ。犬も好きだけど猫ラブリーなのである。

だから持ち物を鑑定していてアイテムバッグ(500kg)の素材にジャイアントキャットの皮、と表示された時に鑑定を止めて中の物を全部出して・・・と言ってもほとんどがボックスの中だから今のバッグに入ってる物で全部だったんだけど。

素材がシーサーペント(!)だったので移し替えたこの200kg制限のバッグを持ち歩こうと決めたわけだ。


「猫好きなものらですからね」


「そ、そうなのですね」

「・・・・猫好きでジャイアントキャットの皮を拒否する人も居るのね」

なんか納得されてない気もするけど、まぁこれは個人の好みの問題だからね、良いでしょ、別に。

・・・・

後になってジャイアントキャットの実物を見ることになるのだが、その時のロウジの反応は見ものである。

・・・・


「あ。ロウジ様、申し訳ありません。ご質問に答えるのが遅くなってしまいました」

ん?

何かあったっけ?


「牛や馬を供養する際に祀られている神様はいらっしゃいますよ。ちゃんと。ゴシールシャ様とアシュヴァシールシャ様が居られます。」


ん?

「ゴシールシャ様とアシュヴァシールシャ様、ですか。どういった神様なんですか?・・・なんだろうな。どっかで聞いたような名前なんだけど。」


「はい。お二人共怖い神様です。ゴシールシャ様は牛の頭を持った男の神様で。アシュヴァシールシャ様は馬の頭を持った女の神様です。牛や馬を直接飼っていない普通の人達からはゴズキ様、メズキ様と呼ばれています。」


・・・・・あぁ。なるほど、ね。


「牛頭大王と馬頭観音か。でも牛頭馬頭の名前で居るってのは・・・うわぁ、嫌な予感しかしない。」

ゴズキメズキのキって漢字では鬼だし。

やっぱり奥さんのカーリーとかの他の女神も居るのかな、これは。


「ゴスダイオウニバトウカンノン、ですか?」


「あ、い、いや。やっぱりあっちの世界でも動物関係で崇められている・・・神様、ですよ。うん。」

嘘は言っていない。うん。

しかし下手すると牛や馬の扱いは気を付けないと後ろからバッサリだ?!


「そうなのですね。やはり。タウロス族からは守護神として祀られていますし。」


「そうなのね。ほら、ロウジ、そこからが農地よ。と言っても今はほとんど普通の野菜しか植えてないけど」


「そうですね」


「ん?」

なんか変な事を聞いたような気がするけど?


「あぁ。ここは他国から持って来たりウッドレイクの森に自生している珍しい植物を試しに育てたりするのに使われるのよ。だから。」


「ここでは主に新しい特産品になりそうな物を試す場という意味合いが強いのです」


「なるほど。」

うん。試作の場、というのは聞いたね。

ただ、さ。普通の野菜とか言うのはどうなのかな。普通じゃないものの想像しちゃったよ。なんかその前にタウロスがどうとか。・・・まぁ良いか。


「うん、畑、だね。」

いや、そうとしか言いようがないね、これは。柵に囲まれた中、道を挟んでも辺り一面畑しかないんだもの。


「この村の特産は未だこれ、と胸を張って言える物がドワーフのオグリンさんが森の木で作る彫り物とお茶くらいしかないもの。」


「まだ村自体が新しいって言ってましたね。バートさんが領主になってから作った村って事ですよね?」


「?」「ん?」

2人がキョトン、とした顔で固まる。

2人共が小首を傾げてる姿はかなり可愛い。


「あぁ!違うのよ?父が・・・・ナースル男爵領を襲った魔物の群れを撃退して、更に近隣の村や街にも色々と貢献したから元の男爵領のあった土地と周囲のこの辺一帯の肥沃ではあるけど未開だった土地を領地として頂いたの。それから村を再建すると同時に新しく作り始めたのよ。」

アンさんをチラチラ気にしながら話すアンジェリカさん。なんだろう。

バートさん、あ、ハイネスタさんもか。元冒険者って言ってたけどかなり強いんだね。


「男爵領のあった土地?」


「え、えぇ。」

やはりアンさんを気にするアンジェリカさん。


「ナースル男爵領は一度魔物の群れに蹂躙されて人の住める状態ではなくなってしまったのです。本来の主一家が王都に出向いていて不在の間留守を任されていた弟はその日急な発熱で一日中寝込んでいて対応も後手に回ってしまいました。屋敷も村も破壊され弟夫妻も亡くなってしまい男爵様自身も他に被害を与えた責を咎められ廃嫡と爵位没収も検討されました。その後の調査で魔物の群れの尋常でない規模の大きさとそれから周辺を救ったという功績が認められ廃嫡は当時領主の任に就いていた弟一家にのみ適用されてナースル男爵はウッドレイクの森一帯を治める子爵となられたのです。」

アンさんが俯きながら説明してくれる。


なるほどなぁ。バートさんは王都から駆け付けたわけか。しかし弟さんは災難だったとしか言いようがないね。

・・・・・ん?

・・・バートさんの弟さんて・・・(弟のビートの娘なのだ)・・・アンさん、か。

うわぁ、こういう時なんと言えば良いんだろう?どうしたら良いのかな?笑うわけにはいかないよな?


・・・いや。

「・・・そっか。じゃあこの村の人達って元の生き残りだったりするのかな?すごいね。」


「?」

「すこい、ですか?」


だから敢えてそっちには触れないで大事だと感じた事だけ言おう。

「うん。だって。悪いけど元がそんな大きな村だったとは思えない。と、いう事は村人全員が知り合いや友人だったんじゃないのかな。もちろん領主一家とも知り合いだったろうと思う。そんな知り合いばかりが死んだ、魔物に襲われて死んだ村になんか普通は近寄りたくないんじゃないかな?それをバートさんを始めとして生き残った人達が戻って来て復興するだけじゃなくて更に新しい村を作り出してる。それってすごい事だと思うんだ。」

素で伝える。


「そう、ね。」

「・・・・そう、かもしれません」

それに

「それにさ、そう考えると村人がやっぱり全員村を好きだったんだ、と思うんだ。治めていた人間を含めて人や建物、村全体を、さ。

でなきゃまた戻って来よう、再建しよう、なんて思い付かないんじゃないかな。って俺は思うんだ。バートさんもね、俺だったら弟が殺された土地には供養にしか訪れない気がするし他の事をしようとはしない気がする。

でもその時弟が守ろうとした土地、不運に見舞われてしまった土地、と考えたらやっぱり自分が守ろうとするんじゃないかな、と思う。その結果が今の村でこれからの村の姿なんじゃないかな?」


「あ。」

「・・・・そう、ね。そう・・・・かも、しれないわ」


「うっ、うっ、うぅわぁぁあん」

「わ」

「うっ、うっ、うっううっうっ」

アンさんは俺に抱き付いて泣き始めてしまった。

どのくらいそうしていただろうか。

アンさんが俯いたまま離れる。

あぁ、良かった。手を背中に回して抱き締めてはいたけど、どうした良いか分からず固まったままいた俺はほぅっと息をつく。

身体が熱い。まぁ、シャツが熱い涙で濡れているのもあるけど。


「ロウジ様、ありがとうございます。」

俺にまだ涙で濡れている顔を向けてアンさんがお礼を言ってきた。


「い、いやぁ、俺は何も。」

うん、本当に何もしてない。


「そしてアンジェリカ様、今まで数々の不躾無礼極まり態度があったと思いますがお許し下さい。ここに謝罪致します」


「えっ?」

今度はアンジェリカさんが固まった。


「従姉妹だし。何も気にしなくて良いのよ。今まで特に気にした事はなかったのだから。むしろ何かあったかしら?と思うくらい。」

アンジェリカさんがなんか助けを求めるような顔を向けてくる。

けど、ごめんなさい。事情がわからないので何も言えないし出来ません。


「そう。アンジェリカ様、アンジュとわたしは従姉妹で仲良く過ごしていて。いずれは兄が子爵、弟が男爵、娘達も跡を継いだ後も仲良く親と国を支えていくだろうと言われていて。でもあの日あの時貴女は。貴女たち親子は王都で生活していて。母様はお父様と最後まで村を、領主不在の間の領主は自分達だから、とわたしだけ逃して。幸せに、と。貴女だけでも逃げ延びて幸せに、と。うっ、うっ、うぅ。・・・それなのに結果として貴女達一家は昇叙されてわたしは廃嫡となったのよ。貴族の娘とも名乗れなくなって貴女の家のメイドになって。アントワンヌではなくアン。今のわたしはただのアンよ?恨まない方がおかしいでしょ?そう。内心恨んでいたのよ!貴女を!貴女達一家を!バート叔父様を殺そうとした事もあるわよ?もちろん返り討ちにされたわ。毒殺?わたしの手で殺さなければならないと思っていたから手段として最初から省いていたわ。・・・でもね、今の話。あ、今の話だけじゃないのよ?それは勘違いしないでね?そもそもわたしがここでメイドにならなければわたしは他の国に追放されて恐らく生きてはいないわ。あるいは生きていても奴隷制度がある国に居たかもしれないわね。叔父様はわたしを助けていたのよ。アンジュ付きにはしなかったけどそれだって恐らくわたしの恨みに最初から気が付いていたから。でもそれだけ。それだけだと思ってた。でもロウジ様の話を聞いて。・・・・アンジュ。館の裏にある小さな庭園があるじゃない?館の中を通ってでしか入れないあそこの噴水の下に石板が嵌められているのを知ってる?確かめていないけどアレって。アレは。多分アレはわたしのお父様とお母様の名前が彫ってあるのだと思うの」

「え?」


「わたしね、叔父様の後を付いて回っていたわけだけど。見てしまったのよ。遠出をした後や何か重大な事があると必ずと言って良いほどあそこで膝をついてお祈りしているの。良くある女神像もなあんにもないただの噴水に向かってよ?それで噴水の台座に石板が嵌められている事に気が付いたのだけどいかんせん書かれて文字までは読めなくて、ね。でもロウジが供養は必ずするだろう、みたいに言ってくれて。」


「あぁ、なるほど。」

「・・・そう」


アンジェリカさんには色々ショックな事ではないだろうか。


「そうね。わたしとアンジュだけではなくてお父様と叔父様もお母様と叔母様も。すごく仲良かったのよね。だからこそ叔父様達の帰る場所を守ろうともしたんだわ。命を捨ててでも。ロウジ様の話を聞いてそれを思い出して。・・・いいえ、違わね。そんな事にも気が付けないほど目が曇ってたの。だから。本当にごめんなさい。」

言って再び頭を下げる。


「・・・いいの、いいのよ、ぐすっ、本当に良いのよ。私こそ気が付かずにごめん、なさい。アンがそこまで思い詰めていたなんて。思いもしなかった。名前だって。家族の一員なのだからアントワンヌではなくてアンと常に呼んで良いんだ、って。ごめんなさい。わたしの方こそ貴女の、貴女達ご家族の事を深く考える事をしなかったわ。」

アンジェリカさんも頭を下げる。


俺は・・・下を向いていた。

こんなやり取り目の前でやられたら俺だって涙くらい出る。


「それは。良いのよ。仕方ないもの。わたしだってあんな出来事が無ければ騎士団や冒険者の立つ現場がどんなものか想像する事しかなかったもの。」

地獄よ、と言う。


・・・うん、俺を始めとしてあっちの世界では小説やコミックの描写や映像化もすごくて想像も結構リアルで出来るとは思う。けど想像は想像でしかない。俺も体験するのかもしれないけど辺り一面に立ち込める煙や血の臭い、なんてのは現場でないと体験出来るものではないからね。そしてそこから必ず生きて帰れるわけじゃあない。

その独特の空気だって現場のものだよな。


「ロウジ様。ありがとうございます。おかげで何か新しいことを始められそうです。これから何か新しいことが始まりそうです」


「っ」


「ロウジ?」「ロウジ様?」


・・・いや、だから。

従姉妹、というのもあるんだろうけど。

今のアンさんはヤバかった。と、言うかヤバい。

言葉通り何か晴れ晴れとした・・・泣いたというのもあるかもしれないけど、そんな顔でお礼を言われて。

ドキドキしてる、しまくってる俺がいた。


「それで。そんなことを聞いたらわたしとしてはさっそく今からでも庭園を確認しに行ってはどうかと思うのだけど?」


「・・・もしできるのならわたしも確認したいです」

さっきまでのお嬢様風の口調が消えて丁寧な言葉遣いに戻るアンさん。


「その前に聞きたいんだけど良いかな?」

行くのは俺も賛成、なんだけど。せっかく畑に来たんだし聞けることは聞いておきたい。


「なにかしら?」「なんでしょうか?」


「今この畑に植えてあるものについて教えて欲しいな。料理は良いから何かしら他の薬とか道具の材料になるものがあるのかどうか。」

解析しまくっても良いんだけど聞けるなら聞きたい。


「あぁ、そうですね」

「そうですわね」


「お願いします」


「とは言っても先程も言ったように今はほとんど普通の野菜で料理の材料ですね。ジャガイモ、タロイモと言った芋類にニンジン、カレーリーフ、ピャーズ、テンドゥリ、ですかね。カレーリーフ、テンドゥリは両側で栽培しています。」


「後は手前奥に見える低木の列がお茶ね。反対側の一番奥の畝に植えられているのが唯一異質なマンドラゴラよ。これは薬や毒にもなるし錬金術の材料になるわね。」

アンさんは指折り、アンジェリカさんは指を差しながら教えてくれた。

・・・って?!


「マンドラゴラっ?!」

おいぃ〜


ちょっと見に行く。

ニンジン、だと思うけど少しギザギザの葉っぱが出ている野菜が2通り。その隣に似たような、だけど葉っぱが丸めで大きい野菜が植えられている。


「こ、これが。」

これか?これがあの伝説級のお野菜、もとい植物のマンドラゴラ、か?


「知っているみたいだから大丈夫だと思うけどいきなり抜かないでね?ちゃんとしないと下手すると死んじゃうから。」

アンジェリカさんが後ろから言ってくる。


「うん。大丈夫。ちゃんと植えられているものだし変な事はしないですよ。(鑑定♪)」


【マンドラゴラ(未熟)】(特殊素材)

まだ形を成していないマンドラゴラ。一応植物である。料理に調合等様々な用途がある。


「ん、もうっまた。」

「マンドラゴラを知っているのですか?」


「はい。本当に一応は、ですが。あっちの世界では伝説の魔物、と言うか植物なので。」


「う〜ロウジ?言葉遣いは丁寧にしなくて良いわよ」

少し唸りながらアンジェリカさんが言ってくるが。

「あ、はい。すみません、ってすみませんって言うのも癖というか習慣なんですがこればかりは。」

困ったように言う俺。

でもひょっとして?

「ひょっとして、ですけど。なんか唸ってたのってそれが原因だったりしますか?」


「あ。なるほど。」


「そうよ!そうよ?だってロウジったら呼び名はちゃんとしてくれたのに言葉遣いがやたら丁寧なんだもの。」

なんか拗ねてるようなアンジェリカさん、可愛いな。


「あぁ。ああ、いや。確かに。」

でも心の中ではさすがにまだアンジェリカさんだけどね。そこで切り替えないと慣れない内はなかなか愛称でも呼べないよ。


「そうですね。確かに家族扱いをなさるのでしたら。そしてもしわたしを友人扱いとして下さるなら言葉遣いは砕けさせて下さいませ」

アンさんも言ってくるけど。


「さっき牧草地では良い感じになってきたと思っていたのに」


ああぁ〜。

まぁ良いか。問題がないなら意識して変えていくようにしよう。


「わかったよ。友達として、子爵邸の一員としてよろしく!」


「まぁ、よろしいですわ」

「別によろしくてよ」


「なんかひどっ!」

なんか2人の口調が今度は変わった。


「冗談ですわ」「冗談ですよ」

笑い合う。

・・・うん。考えてみるとアンジェリカさんはあまり変わってないかも。

俺も釣られて笑いながらそう思った。


「ああ〜んと。それで?なんでこんなにマンドラゴラ植えられてるの?かな?危ないよね?普通に抜けないし犬とかの動物使うにしても毎回死んじゃうんじゃ大変だよね?」

一畝分抜くだけで死屍累々。

やだな。


「確かに野犬や猪などが抜いてしまい被害が出る事があるようですわね。未だここではないけれど。」


「ですね。野生で生えている場合は注意が必要です。」


「ん?他に抜く方法が?しかも安全なのかな?」


「はい、もちろん安全な方法がいくつかありますわ。」


神官や巫女様に包囲結界を張ってもらいロープや魔法で引き抜いたり、もっと簡単にサイレンサーやサイレンスの魔法を使えば普通に手で抜けます。」


「おお。」

魔法があるとそんな簡単に出来る事なのか。


「一流の魔法職が居るのならマジックシールドで囲んで浮遊(アンチグラビティ)の魔法や魔法生物を使って引き抜く方法もあるわね」


「おおぉ」

即死必至なイメージの彼奴がこんな簡単に攻略されているとは。・・・こういうのもカルチャーショックって言うのかな?


「手作業にこだわるのであればカウンターマジックやアンチマジックをかけてもらい手で抜くというのもありですね。その上で包囲結界やマジックシールドがあれば完璧ですが。」


「おおぉぉ」

しかもどうやらマンドラゴラの叫びは魔法扱いなのか。

「包囲結界?」

文字通りかな?


「はい。」「ええ」

顔を見合わせて

アンさんが答えてくれる。

「神職が使える指定した場所を囲んで害意あるものから護る結界術です。逆に相手を囲んで出さないようにしたり攻撃を防いだりも出来る結構便利な術です。」


「レベル4以上の神職に就いている人間が使えるようだけど結界の大きさや強度はその人によるみたい。」


「ん?どういうこと?」

MPの量とか気力の問題とか?


「慣れ、と言うかどれだけ術に精通しているか、熟達しているか、でどうやら変わるようなのです。」


「へぇ〜」

どんな神官でもいきなり大きくて強い結界は張れないって事か。


「なので魔法職のマジックシールドやアンチエネミーバリア等の方が使い勝手が良いとも言われています」


「ほうほう」


「魔法職の場合はレベルが高ければ高いほど強くなるから分かりやすいのよ」


「なるほど、ね」



そんな魔法に関する話をしながら子爵邸へと歩を進めていく。


「あれ、おかえりなさいませ、お嬢様方。お早いですが何かございましたか?」


「いいえ。何もないですわ。ただ、ロウジ様を裏庭の庭園へもご案内したいとアンと話していて急に思い立ったの」


「はい。そうなのです。ですから庭園を周ったらまた村へと向かいますので。ありがとうございます、マクイーン様」


「っ!アン、トワンヌ様、そんな勿体無い。あ。いえ。そうですか。ロウジ様のご案内よろしくお願いします、アン。」


「はい!もちろんです。」


「ふふっ」


「アンジュ?」

「なんでもないですわ」


なんかすごく驚いていたな、マクイーンさん。かなり慌ててた。

今も目を細めてこっちを見送ってるけど半分くらい放心してるんじゃ?


裏庭の庭園へは入って左側、バートさんの執務室の逆側にある扉を入った向こう、厨房を抜けた先のドアをくぐるとある。

館の中を案内して貰ってすでに訪れてはいたけどここは何か雰囲気が違うと思う。

普通の噴水広場で周りを段になった花壇に囲まれているだけの庭園。

普通は噴水の近くにありそうなベンチは入ってすぐの両脇と噴水の裏側にある花壇の手前にある。

別に寛ぎに来たわけじゃないけど座れるなら座りたいかも、という欲求を押し退け噴水に近づいて行く。


「確かにプレートが嵌まってるね」

噴水に対してかなり小さい。

写真立てくらいしかないソレには確かに何か書かれているようだけど。

「水が邪魔で良く見えませんわ」

「はい」

「だねぇ」

そうなのだ。

アンさんが読めなかった、という意味がよく分かった。

噴水からは絶え間なく水が噴き出ていてその水のシャワーで小さいプレートの文字が読みにくい。・・・まるで読む人間を拒んでいるみたいだ。


「もうっ!ウインドッ!!」


へ?


凝視していた噴水の水が傘に当たったみたいに弾けている。


「早く読んでしまってくださいな。制御は簡単ですけど長い時間は辛いです」


「あ、アンさん!」


アンさんが噴水に乗り出していた。水の中には入らないように縁に足を掛けて身を乗り出していた。


「やっぱり。・・・叔父様・・・」

アンさんが口を両手で押さえてまた泣き出してしまった。

理由は・・・分かった。俺も読めたから。

良かったよ読めて。全然見た事ない字、字かな?としか認識出来ないけど何故か読めたから。

やっぱり人の名前だった。

それとただ一文。

ビート=ナースル

カグラ=ナースル

偉大な領主であり大切な家族ここに眠る


・・・・うん。

泣くしかないよね、これは。


「読めたのですわね」

アンジェリカさんが俺に言ってくる。

「うん。」

多分俺の目にもまた涙があると思う。


「ひょっとしてアンジュは知ってた?」

聞いてみる。

噴水広場に誘ったのもアンジェリカさんではなかったか。


「はい。結構前に。ここは静かでなかなか誰も来ないので精霊術の練習をしているのです。それで。」

少し恥ずかしそうに言うアンジェリカさんだが

「・・・あぁ。それで。」

「はい、ですわ」

今も、かな?

噴水の水を多分だけど風の精霊か水の精霊か分からないけど避けて貰って読んだんだろうな。

さすがは薄れてもエルフの血、という事だろうか。

「知ったのは作られて少ししてからなのですが、ここにこんな風にしてある意味を知ったのはつい最近なのですが。国により罪人、ともされた一家ですので大っぴらに祀ったり弔ったりなどが今でも出来ないのですわ。それでお父様はこんな風に隠すようにして。ただ。まさかアンも知らなかったとは思いもよりませんでした」

アンジェリカさんが俯く。


「・・・ありがとう。ありがとう、としか言えないわ。今となっては。」


「アンさん」


「けれどお父様には黙っていましょう。本来ならあまり口外出来る事ではないのですし。何かの際に話題にするか、もしくはお父様から話されるのを待つ方が良いと思うわ。アンにまで教えていないというのはそういう事だと思うし。」


「・・・そうです、ね。分かりました。」


「ん、それで良いの?」


「良いのですわ。村の住人なら恐らくは問題ないでしょうけど、いえ、むしろ知ったら押し掛けて来る方も居そうですけど。今は私達3人の秘密にしておきましょ。知られていたと知った時のお父様の様子が楽しみですし」

少し笑いながら言うアンジェリカさんは少し怖かった。

バートさんとしても複雑な心境なのだろうな。多分それは今でも。


「ありがとうございました。これで本当に前へと進めます。」


「もう、良いの?」

「はい。いつでも来られますから。それに」

笑顔で言ってくるアンさんにアンジェリカさんがもう少し居ても構わないのだけど、と聞く。

「お父様とお母様がここで見守っていて下さると分かりましたから。それに叔父様も。叔母様も。」


「そうだね。」

「そう、ね。・・・そうよね。」

俺もアンジェリカさんもその言葉に納得する。


「それでは村の案内を再開させていただきますね?次は大通りを通って農地へ向かいましょう」


「了解。案内お願いね、2人共。」


「はい。」「もちろんですわ」




こうして3人共にどこか晴れ晴れとした顔で館を再び後にする。

お読みいただきありがとうございます☆


すみません、やはりなんか修正してる内に長くなってしまいました。

めげずにお付き合いいただき本当にありがとうございます。


次回は村の中心地、色々な店がある通り沿いになります。


次回更新は7日の予定です☆

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