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迷惑創造神とのんびり異世界生活を?!  作者: ミカ=エル
2.ウッドレイク子爵家の居候
10/71

村を案内。まずは放牧地です?!

可愛い女の子2人に連れられて村を案内して貰うことになったロウジですが。

両手に華を意識してしまい?!


書きたい事書いていたら区切りが付けられず少し長く。


放牧地でのロウジに御注目下さい。

うわーうわー

意識し始めたらヤバイよ。

俺の右少し前を振り向きながら歩くアンジェリカさん、アンジュは活発系スレンダーな (そう見えるだけかもしれないけど)美少女。

俺の左側、半歩くらい後ろをこちらを見て歩くお下げ髪のアントワンヌさん、アンさんはメイド服で胸の大きさが少し目立つ素朴系?純朴系かな?の美少女。


2人の笑顔に挟まれている俺は坊主頭でこそないものの短髪の (多少目立つのかな?)どこにでもいるような男子。黒髪黒目も結構居るっぽいし本当にただの人、という感じで歩く俺は内心ドキドキしっぱなし。

左側に肩から掛けてるアイテムバッグ(200kg)の蓋となる部分をロックを外してパタパタといじくりながら歩いている。


「子爵邸出て正面の道が大通りよ。先の十字路手前右側に商人ギルド、奥の左側に冒険者ギルドがあるわ」


「この道の右側が農場。左側が牧場となっています。子爵邸の左横は厩舎もあり馬を放しています。その向こうが牛舎などになってまして馬の向かい側が牛や羊を放している牧草地になっています。右側も左側もここから見えるように壁になっていて外の街道には出られないようになっています。」


・・・・子爵邸の敷地から出るとアンジェリカさん、アンジュが振り返りながら、アンさんが指を差しながら説明してくれてるけどなかなか頭に入らない。右から左だ。


「左側は街道と森にぶつかるからそこまでだけど右側についてはまだ拡張出来るようなら拡張する予定ではいるわ」

「子爵家の土地というのは実はそこの少しのお庭と2つある内の1つの厩舎の部分だけだったりします。」


・・・・


「「ロウジ?/様?」」


「!あ、あ、あぁ、すみません。聞いてます。聞いてましたよ?」

・・・・仕方ないじゃないか。

少しくらい幸せな気分で浮かれてたって許してくださいよ。ね。


まず放牧地へ行き次に農場へ、と言っても農地は子爵邸とは反対側にちゃんとあるらしくこちら側のは小規模な畑の集まりと言っても良いくらいの規模との事。

試作なんかもこちら側でするようだ。


「・・・牛だ。馬だ。羊だ。山羊だ。」

子爵邸側には馬と山羊が。

道を挟んだ側には牛と羊が草を食べていたり寝転んでいたりした。

おや?そういえば?


「昨夜の食事に少しだけ出てたのって牛の肉でしたよね?牛はミルクだけじゃなくて肉も食べるのですか?」

乳牛・ホルスタインではなく皆茶色い牛なんだけどこの世界ってシヴァ神が創って基本的にインドを踏襲してるなら牛を食べるのは禁忌なのでは。


「あ、はい。普段から食べるわけではありませんが、何かお祝い事や特別な日には食べられています。ただ、何十年か前までは牛は神聖なものとして肉は食べられていませんでしたしミルクをとるにしても食用に個人が飼う何て事はありませんでした。それを考えると料理としてはまだ今から、でしょうね」


「昨夜はロウジの歓迎という事で特別に、よ。この国では未だあまり食べられてないわね。美味しいのに」


「ふうん。やっぱり牛肉だったんですね」

小さい皿でハーブが添えられていて美味しかった。慣れた味だったから気にしなかったんだけど・・・ナンディは居ないという事だよね、とりあえず。でもシヴァ神本人としてはどうなんだろうか。

そういえば牛は関係ないけどシヴァ神やパールヴァティ女神とかは神道、というか日本神話にも組み込まれてたなぁ。


「あら。ロウジは牛を良く食べてたの?」


「そういえば。食べて分かるくらいにはロウジ様は食べ慣れているという事でしょうか?」


「そうですね。ウチは寺だったので、あ。寺というのは仏様・・・は分からないかな。死者を弔って神様を祀る職業なんですが。でも食べ物にはうるさくない宗派なので結構食べてましたね。毎日、ではなかったですが結構な頻度で。」

そういえばここの宗教も知らないといけないな。


それに部屋が、しかも多少ドタバタしても怒られない上に手伝い付きの部屋があるのだからアイテム作成や調合もしてみたい。

今日村の案内をしてもらうついでに何か簡単な素材を買うか拾うか(草むしりとも言う)するつもりでいる。


「へぇ。ロウジは神官見習いだったの?」

「ロウジ様は神職の出だったのですか!」


・・・・うーむ神職とは違うんだけど、それは日本の話で、まぁ似たようなものかなぁ。見習いと言えば見習いだし。うーむ。でもなんか釈然としない。


「まぁ家がそういう家系なだけで跡継ぎじゃない俺は手伝いはしてましたけど普段は結構自由にしてた感じですね。代々の家系だからある程度の事は世間体もあって求められてましたけど。」


「う〜」


「それで?牛が食べられるようになったきっかけって何かあったんですか?それまでは信仰で禁止されてたんですよね?」


「はい。30年くらい前と伝えられていますが当時の王様がお生まれになった時に与えられて一緒に育つように大切にされていた牛が亡くなってしまった際に食す事で一体になる、と言い出して騒ぎになって。それで創造神の神殿長様が神託を求めたらしいのです。」


「ほ〜う〜。直接食べて良いか聞くためか神様から注意をして貰うためですかね?」


「う〜」


「はい。当時もこの国の王様は治世を全うされていて種族問わず国内外で慕われていたそうです。なので王様の考え方も理解出来るものでしたので直接創造神様にお伺いを立てたのだと。」


「なるほど。それで結果として良いとなった、と。」

俺が言うとアンさんは苦笑しながら


「はい。なのですが、それだけなら良かったのですが食した王様が「美味い!美味だ!」と叫んでしまい。」


「あ、あ〜あぁ」

気持ちは分かるけどそういった流れでそれはダメだろう。


「うぅ〜・・・あ!ロウジ、アン!ちょっと待って!」

「あ!そうでしたっ!すみません話過ぎましたか?」


ん?

なんかさっきから唸っていたアンジェリカさんが急に話を止めてきた。アンさんも何かに気付いたように口を押さえて話を止める。

なんだ?


「ロウジ/様」

「はい?」

反射的に返事をする。


「う〜。ロウジ?称号は?」

「ん?称号?何?」

「ロウジ様、称号を入手なさいましたか?」

2人して聞いてくるが

「?なんのこと?」

なんだろう?


すると2人は俺の顔を見て。

2人で顔を見合わせて。

「はぁ。とりあえず良かったかしらね」


「まぁ、この村はもちろん1つの村や街だけで生活するなら別にどちらでも構わないと思うのですがロウジ様は分かりませんものね」

と話す。


「ん?」

なんだか分からない俺は首を傾げるしかないよ。


「あ。すみません。あまりする話ではないので失念してましたがこの話をする場合には1つ注意事項がありまして。」


「うん。」


「この話を聞いて牛について、牛の肉を食する事について何を思ったかによってある称号が与えられるのよ。2つの内どちらを与えられるかによって時と場合、場所によっては生きていけなくなる事もあるから注意して。」


「え。」

どういうこと?

「どういうこと?」


「申し訳ありません。称号の詳しい事を伝えるわけにはいかないのです。伝えてしまってからだと更に余分な称号が付いてしまいますので。」


「そうね。これが伝える限界よ」


「うーん。それなら仕方ない。話にはまだ続きがあるんだよね?」

2人に聞く。まだ特別に1回だけ特例が認められただけの話だもんね。


「はい。続けますね」

「よろしく。」

放牧地を見ながら言う。


「はい。では。実は王様がそう叫んだ時に追従の声が上がったのです。上げてしまった、というべきですが。声を上げたのは王宮の料理長様でした。初めてする料理、初めて食される料理でしたので料理長様しか調理を許されませんでした。ですが、だからこそ料理長様も味見をしながら試行錯誤しながらの作業だったようです。」


「あぁ、それはそうだよね。でも当然ながら牛を食べてしまっていた、と。しかも王様より早く。」

まぁ言われてみれば当たり前だけど言われなければ気が付かない事だよね。


「はい。王様は味がどうであろうが友であり家族であった牛を食する事に躊躇いもなく、そして味を想像出来なかったからこそ、予想外の味に声を上げてしまったのですが、料理長様は違いました。心から自分が調理をした料理に対しての自負もあったのでしょうけどそれは美味い料理だ、と口に出してしまったのです。」


「うーん」

それも分かる気がする。

自分の初めて作った料理を美味しいと言って貰えた、という喜びもあったんだろうね。

でもその食材は特別な、王様個人にとっても国にとっても世界にとっても特別なものだった。


「それで王様はお怒りになられて料理長様は一家全員が処刑されました。」


「え」

おいおい。

・・・・ってまぁ、気が付かなければスルーされたのかもしれないけど一度意識しちゃったら王様としては我慢ならなかったのかな。


「ただ、話はそれで終わらなかったのです」


「うん。」

そうだよね。それならやっぱり牛は食べられるようにはならないはず。


「処刑の場に出された料理長様は王様に対して謝罪の言葉を告げるなど処刑自体には納得をされていたのですが、民衆の前であろうことか牛の肉の美味しさとその美味しい料理を作っている最中の肉の様子まで語り出してしまったのです。」


「うわぁ〜」

なんという反乱を。食のテロ行為か?!


「そのまま処刑は行われたのですが、そこで民衆の一部が牛を食べさせろ、と神殿や王宮、果ては街や村の食堂、宿屋や酒場にまで押しかけたのです。さすがに自分で牛を手にかけた人間は皆無だったようですが。」


「・・・うわぁ〜ぃ」

まぁそれはそうなるだろうけど食べ物に関しての人間の欲ってどこも同じようなものか。そして信仰心の恐ろしさも、かな。


「それで仕方なく王様の命令で再度神託を求めたらしいのです。」


「うん。」

そうするしかないよね。


「その時の神殿長様はかなり追い詰められていたようで。このまま牛を食するようになったら国が、世界がどうなってしまうか、や逆に牛を食べさせろと迫る民衆にちゃんとした回答を与える事が出来なかったからどうなってしまうか、など事細かに神様に告げられたらしいです。」


「ほうほう。それで?」

まぁそれで特別な日にだけは、となったのかな。


「はい。それでその創造神様との対話はかなり長い時間続いたらしいのですが。答えは「思うようにせよ。必ず良い方向に向かうであろう」だったそうです。」


「へ?」

どういうこと?なんだそれ。なんか拍子抜け。


「要は神殿長様が考えた対応策通りで構わないという答えだと思われるのですが、あっさりと返された為に神殿長様はかなり戸惑われたそうです。」


「それはそうだよね。ああしてはいけないこうしてはいけない。だからこうしろ、とか返って来そうなところ、その答えだとねぇ。」

本当に良かったのかシヴァ神。


「はい。まぁそれで、ですね。最初に肉を扱う料理人や関係者を集めて試食会のようなものが行われて。食された牛の供養祭なども決まり、王国の創立記念日や創世祭等の特別な行事に加え家庭でも誕生日や結婚式なんかでも食べて構わないという事になったのです」


「ふう〜ん。でも食べる用には飼われてないんだよね?」

なんかシヴァ神の対応が一番問題あるような。悪く言えば丸投げっぽいし。


「はい。なので主に食べられるのは野生の牛か年老いた乳牛になりますね。」

あぁなるほど。もう牛乳の出が悪くなった牛とかもか。

野生の牛は軽く怖そうだけど狩りに行くその価値はあるだろうな。


「でもさ、供養祭って言ったけど崇められてる牛の神様とか神獣って居ないの?」


「わああああああああっ!!!」


へ?

なんだ?


アンさんに向けていた顔を牛の放牧地へ、声の聞こえた方に向ける。


「あ!まずいわ!」

「あ!」

「ちょっ!!」


「サードスさん!!」

どっしいぃぃぃんんん


「うわぁっ「きゃあっ!」」

「きゃんっ!」


いや、なんか背後で可愛らしい声が聞こえたけどそれどころじゃない。


「だ、大丈夫ですか!!」


少し高くなっている放牧地から牛に追われてた細身のおじさん、おそらくサードスさんというのだろう。

太い木の柵の隙間に身体を通すようにして転がり出て来たのだが、すごい勢いだったので心配になり声を掛けながら近づく。


「う、う、うう」

見ると左足を左手で押さえ更にその左手首を右手で押さえてうずくまっている。

「んぶもぅぅぅ」


「いけない!折れてるかも?!」


「すぐに人を!」

「どうしよう」


特にこういう場面に遭遇したことのない俺は軽くパニック状態。


「ロウジ!館に行けば回復薬があるわ!行って持って来て!」


「ロウジ様、庭師のハイセさんや執事のマクイーン様に言えば分かると思います!お急ぎを!」


「わ、わかりました!!」

子爵邸に向けて走り出す。

と。

てか俺?

ん?待てよ?


「回復薬?」

サードスさんの背中に手を当て声を掛けているアンジェリカさんとアンさんに聞く。


「回復薬でなんとかなるの?」


「はい?はい。むしろこういう場合は魔法での回復よりも回復薬の方が良いですから。ですから急いでお願いします!」


「ンンブモゥゥ」


「回復薬なら俺が持ってる!今!」


「「え」」


「回復薬、回復薬」

アイテムバッグから青色の液体の入ったコルク栓のされた瓶を出す。


「これで良い?んだ、よね?」

アンジェリカさんに聞く。


「それです!」

横からアンさんが俺の手から回復薬を奪い取り (!!) 栓を抉じ開けサードスさんの患部と思われる箇所にビシャビシャとかける。

うわぁ。


すると薄い青色の光の粒子みたいなものが立ち昇り腫れていた箇所どころか擦過傷や切り傷のようなものまで消えていく。

「おおおおおお」

「ンンブモゥゥゥゥ」

感動だ。

正に魔法、じゃないけど魔法のような光景だった。

だけど。

「あら?」「え?」「え?」

それを知っているはずの2人とサードスさんがもう治った箇所をじいっと見てる。


と、言うか見つめたまま固まってる?


どうしたんだろう?


「ロウジ、様?」

やっとアンさんがこちらに振り向いて話しかけてくれた。

「は、はい?」

なんか目が怖い。

「ンンブモゥゥフッフッフ」


「ロウジ」

アンジェリカさんもこっちを見るけどアンさんと同じような顔。


「な、なんでしょう?」


「「ごめんなさい!」すみません!」

「ひっ」


・・・って、え?

「え?」


アンジェリカさんとアンさんが顔を見合わせてアンジェリカさんが口を開く。

「ロウジ、これって中級回復薬よね?使ってしまってごめんなさい。」


「え?」

中級回復薬?


「普通の回復薬、初級のものだと良いものでも表面の傷しか治せないから折れていたら腫れは引かせられるけど表面の応急処置だけで治せないもの。それにかなり良い品質の物だったでしょう?多分一瓶は要らなかったのじゃないかしら。」

振りかけながら経過を見れば良かった、と謝ってくる。


「あ、そうなんだ。気にしなくて良いよ。」


「あ!あぁあああ!」

ん?


「あ!牛が!」

んん?


「フゥッフッフゥッ」


叫んだサードスさん ?(腰が抜けたように座り込んだまま)とアンさん (やはり座り込んでる)の見てる方向に目を向けると牛が柵の向こう側で

「なにやってるんだあれ?」


「まずいわっロウジ!」

「早く助けないと!」「助けなければ!」


へ?


「早く!」

少し登ってしっかり見ると

「ありゃ」

柵になっている下側の太い木に角が刺さったまま牛がもがいているのだけど。

「折れてる、よね」

後ろ右足が確実に、前の左足も少し膝から下がおかしいし右足もやっぱりおかしくなっていて角を抜こうともがいてる、というよりも一生懸命まずは立とうともがき苦しんでいるように見えた。

って、そうじゃなくて!


「ロウジ!ひょっとして薬ある?」

「ロウジ様」

「薬、まだ持ってますか?」

やっぱり3人の顔がこちらに。

さっきよりも必死にも見える。


「大丈夫!ある!」


「回復薬、回復薬」


アイテムバッグから一応2本、さっきと同じく青色の薬瓶を取り出す。


【中級回復薬】アイテムレベル4

HPや体力を大きく回復する薬。これを扱えれば店も調合士も一流。

HP回復200〜300 体力回復50


うん、一応鑑定してみるけど確か俺は中級以上の薬しか持ってない。

「でもどうしよう?このままかけちゃって良い?」


「まだ持ってたんだ」

「良かったです!まだあるんですね!」


3人が近寄って来て口々に言う。

「それよりもこの状況どうすれば良い?教えて下さい」

足が治ったら角が・・・変な体勢でもがいているから角が折れないかも心配なんだけど。

角が抜けてこっちを襲ってこないかな、と。


「大丈夫です。本来こいつは頭良くて大人しい奴ですから」

「・・・」

サードスさん?が言ってくるけど信用ないよ。


「多分大丈夫。サードスさんが言うように頭良いから治してあげれば理解出来ると思うわ」

「ほんとう?」


「多分。」

アンジェリカさんの言葉なら信用するかな。まぁ角がしばらく抜けなくてそのままになるかもしれないしね。・・・それはそれでマズイんだろうけど。


「じゃあ。念の為3人は少し離れていてください。」

覚悟を決める。


まず1本コルクの栓を開けて・・・開けて・・・固いよ?これ。アンさん一発で開けてたよね?

爪を食い込ませて思い切り引っ張るとなんとか開いた。少しこぼれたけど。


「ブモォォゥゥ」

「はいはい。大丈夫、大丈夫。今足を治してやるから少し大人しくしてくれるかな」


と言いつつあまり近寄りたくないから横倒し、というか斜め倒しになった足が届かない位置から瓶を思い切り振って中身をぶちまけた。ビシャビシャッシャッ


「ブモォォゥゥッ!!」

ヒィッ怖いよぉ〜

「ひっ」


青色の光が立ち昇る中もう1本、今度は歯で開ける。一発で開いた。

今度は牛の反対側に周りながら振りかける。

ビシャビシャッ


「ブモォォゥゥ!」


「フッフゥ」

ブキッ

「うわぉえっ?!」


まだ牛の周りに青色の光が漂うのが見える中、なんかあっさりと角を抜いてこっちを下から()め上げるように見てるんですがっ?!

俺、今、軽くピンチ?!!


「ステイ!!」


「はいっ?!」

「ブモッ」

叫びに硬直する俺と牛。


「ステイ!!駄目じゃないか。落ち着いたならちゃんと状況確認をする!怪我を治して貰ったなら感謝をする!」


「はいっ・・・はいっ?」

はてな?


「ん?なんであんたまで返事をするんだ?なんか固まってるし?」

サードスさん (仮)が不思議そうに言ってくるけどそこで頭が冷えて理解が及ぶ。

ステイと言われてなんで俺が固まった?

恥ずかしいじゃないか!

しかもさ

「この牛、ステイという名前なんですか?」


「え?あ。はい。そうですが。あぁ申し訳ありません。私はサードスと言いましてこの村で乳牛を扱っている者です。」

やはり。


「初めまして。昨日から子爵様の家でお世話になっているロウジと言います。」

流そうとするが


「ロウジ?なぜ固まってたの?」

「ロウジ様?ステイ、という言葉に何か?」

突っ込まれた。


「いや、なんでもないよ。あの状況で大きな声を出されたから固まってしまっただけ。」

誤魔化す。

当たり前!

決して近所の猛犬の躾風景に慣れてたから、なんて言えるわけがない。

猛犬を猛犬よりも恐そうなおじちゃんが大声で躾ててビクッとなっちゃうなんて言えないよ。これって軽く弱点だよなぁ。


「それはそうと本当にありがとうございました!貴方様方が居なかったら私もステイもどうなっていたかわかりません!」

声、大きいですよ。


「あぁ、いえ。良かったですよ。たまたま薬を持ち歩いてて。」


「いや、中級回復薬を持ち歩くのもどうなのかしらね」

「すごいです、ロウジ様」


「本当に助かりました。それで、なんですが。」


「いて、いて」

さっきから暴れ牛改め乳牛のステイが頭を擦り付けて来てるんだけど結構立派な角が脇腹に当たって痛い。

・・・・あれ?

・・・ん?

「乳牛、ですよね?オス?」


「・・・ん?あぁ!こいつは乳牛ですが貴重な優秀な種牛なんですよ。角も立派なものでしょう!」


「あ。なるほど。」

考えてみればメスばかりじゃ子供居なくなるし子供産まないと乳を出さないんだよね、確か。


「それで、ですね。」

急にトーンを落として深妙な顔付きになるサードスさん。


「はい?」


「お代はいくらほど払えばよろしいでしょうか?」


「・・・・・・お代?何の?」

「何の、ですか?」

びっくりし過ぎて言葉遣いが微妙になっちゃった。


「もちろん回復薬の、それも中級回復薬のお代です。貴重な物を3本も使わせてしまって申し訳ありませんでした」

言いながら頭を下げてくるが

「あぁ!あれは本当に気にしないで下さい。サードスさんが無事でしたし、この牛もあのまま見過ごすわけにはいきませんでしたから。こっちがやりたくてやったことです。牛も、ステイも無事で済んで良かったですよ。」


「ほ、本当に (新しい称号、癒し手、牛の守護者を手に入れました!) よろしいのですか?」


「え?」


「はい?」


「あ、い、いえ。なんか称号が」


「ロウジ?!まさか今頃あの話の称号が?」

「ロウジ様?まさか牛関連の称号でしょうか?」

「?称号ですか?」


「うん。何か癒し手と牛の守護者、っていうのが手に入ったみたい?」


「?何でしょう、それ」

「何か違う。」

「何でしょうか?」


「ん?2人が言ってた牛の称号じゃないの?」

はてな?


「はい。癒し手は普通に誰かの傷や病を癒した者に与えられる称号なのですが。もう1つは・・・とりあえずどんな物か教えていただいて良いですか?」


「うん。見てみるね」

(称号詳細、牛の守護者)

《牛の守護者》 牛に感情移入し牛肉を食する事をどちらかと言えば忌避する者に与えられる《牛肉食を忌避する者》が実際に牛を護る行動を起こす事により変化した称号。正に牛の護り手である。

効果:牛に好かれる。 突進力が上がる。


・・・・なるほど、こうやって称号を指定すれば個別に見られるのかぁ〜。じゃなくて!

「なんか牛肉食を忌避する者が牛を護る行動を起こした事で変化、進化?した称号みたい。」

でも突進力って。


「・・・なるほど」

「・・・そんな称号に変わるのですね」

「私も知りませんでした」


「牛肉食を忌避する者なんて称号なかったんだけど?」


「それがあの昔話の称号なのです。話を聞き終えて牛自身や牛肉食に関して何を思ったかで牛肉食を勧める者のどちらかが手に入るのです」


「そうよ。絶対に手に入ってしまうの」


「・・・また面倒な」

ん?って事は?


「恐らくロウジ様は話を聞き終えるかどうか、何かを思う前に今の出来事でこの牛を助けたから。ではないでしょうか」


「そうね。そう思うわ」


「例の話をされていたのならそうでしょうな。」

3人が3人とも何か納得した感じで言ってくる。


「・・・この称号って要は敵対するのがあるタイプの称号だよね?大丈夫なの?」

牛肉食推進派か排斥派か、とも見えるんだけど。


「そう。だから始めに言ったのよ。でも大丈夫よ。」

「未だ牛肉を食する事は忌避されがちですので、そちら側の称号でしたら何も問題ないかと思います」

「別に推進派か排斥派ではなく自分は好んで食べる派か好んでは食べない派か、というだけなのでこの国では大して問題になったという話はないですな」


聞くとアンジェリカさんは牛肉を食べてみたいと思ってしまったらしく食べる派、他2人は忌避派だそうだ。

この3人が言うなら問題ないのだろう。


「まぁ称号も手に入ったしいくつか知らなかった事を教えて貰いましたので薬の対価はそれだけで良いですよ。今は村を案内して貰ってる最中なのでもう行きますね」


「え」


「アンジュ、アンさん、行きましょう」


「「はい」」


「ではまた」


「はい。そ、それではまた良ければお越し下さい。いつでも歓迎いたしますので。」


「はい。しばらくは村に滞在しますのでよろしくお願いしますね」


サードスさんに挨拶をして俺は逃げるように来た道を引き返す。


「良かったの、ロウジ?」

「本当に対価を貰わずに良かったのですか、ロウジ様?」


「良いんですよ。薬もたまたまアイテムバッグを替えて持って来てたのがあっただけだし。自分で作った物じゃなくて最初から持たされた物だしね。」

そう。アイテムバッグ (500kg)に入っていた物を移し替えただけなのだ。

そんなので俺がお金を貰うわけにはいかないと思う。


「すごいです、ロウジ様」

「はぁ、すごいわね、ロウジは」


なんか勘違いされてる気もするけどそんなこんなで次は反対側の農地へ行ってみよう。

お読みいただきありがとうございます☆


すみません、多分思いの外長かったのではないかと思います。

区切り考えていきたいと思います。


次回更新は5日の予定です。

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