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飲んでも飲まれるな!

 ブランデーやウィスキーはブラウンリカーなんて呼ばれてる。呼び方は違うが大元は一緒である琥珀色した蒸留酒の事だ。

 それから派生して、色々な原料や原産国に別れて種類分けされていく。


 その中にはブランデーをオードヴィー……フランス語で命の水なんて呼ぶ場合もある。それは国を超えて、その地方毎で呼び名を変え、遠い極寒の地ではこう呼ばれる……ヴォトカ・ヴトゥカ、俺が一番馴染のある呼び方はウォッカだ。

 蒸留に蒸留を繰り返してアルコール成分よりもスピリッツ……スピリタス成分なんて呼ばれるようになる、火のつくアルコール度数の酒だ。強烈だ、飲んだら喉を燃え上がらせ、身体の芯を焦がし、鼻息荒く熱風を噴き出す位に体温を上げてくれる

 日本の四季程じゃないが、俺の住む場所も寒暖の差があるので季節によって暑かったり寒かったりする。ウォッカが必要な気候じゃないのは確かだ、でも造ってみたいし飲みたいからやってみた。


 こちらはブラウンリカーに対してホワイトリカー……無色透明の蒸留酒、水の様だがエタノール臭がするのですぐ分かるはずである。

 本当は連続式蒸留機で純度を上げていく方が早いのだが、設備が単式蒸留機しかないので何度も蒸留を繰り返す作業をする。女神の加護がある俺はそこにも効果を発揮する……常人が2回蒸留するなら俺は1度で済む程度の地味な加護だけど、その分純度を上げる速度が早い

 

 あまり元が上等な物ではないので、等級的には現代に出回っている物には遠く及ばないだろう事は確かだ。でも、やっぱ強力だねこいつぁ……

 通常なら70回以上蒸留を繰り返さないと駄目なんだけど、俺なら35回で終わりました。地味だけど半分で済むってのは十分チートである。

 アルコール度数96%のお酒スピリタスの完成です……


 「本当に飲む気かい?ドモンがそれだけ蒸留を繰り返したのなら、とんでもない事になってそうだが……」


 「そうだね、ディエンさん。これ以上は、俺達でも度数を上げる事は出来ないと思う……今、出せる酒の最高度数だと思うよ」


 世の中には98%まで達した物もあるみたいだけど、これ以上は五十歩百歩だろう……5%から7%の違いならともかく、96%から98%の差にどれ程の違いがあるのかは知らないけど、今はコイツで十分だ。

 酒精スピリタスとはよく言ったもんだ、ほぼ純粋なアルコール……エタノールなんだもんな。


 度数が分かるってのも便利だね、適当に水入れてもこの位だろ?って適当に止めた所が大体狙った所になるからね。

 女神の加護のお蔭で酒造りに関しては失敗知らずだし、酒の解析に掛けては最高位の解析能力を発揮してるから度数まで完璧に分かる。恵まれた才能と言っても過言じゃないね!

 ウォッカはこいつを40%位になるまで水を入れて活性炭でろ過して作る予定だけど、多分失敗する事はないだろう。


 「96%だからね……火気厳禁だよ……」 


 「それだけ度数が高ければ医療用にするといいんじゃないか?私達は80%程度で造成していたが……よくもまぁそこまで上げたもんだ」


 「折角、あれだけの酒を蒸留して出来たのがこれだけだからね。売るよりも、まずはやっぱり飲まないと!」


 「確かに、あれだけお前が材料から仕込んで準備して出来たホワイトリカーが瓶三本分になってるからな……逆に飲むのが怖くなってくるよ……」


 「飲むよりも、舐める様にチビチビとやる方がいいと思うよ……風味付けにレモン…じゃなかった、ライモンドの果汁を絞ってみるのもいいかも」


 「それもよさそうだが、まずは96%そのものを味わってみるとするよ。お前が頑張ってくれたんだしな」


 「さすがディエンさん!話が早いね!それじゃあ……」


 「ああ……乾杯」


 ショットグラスサイズのコップについだスピリタスを口に持っていく俺達

 近づけるだけでエタノール臭が鼻を刺す……最後の蒸留からしばらく経っている冷たい液体からは静かな熱気が伝わって来る様だ……口に含んだ瞬間に二つの刺激が舞い込んできた

 一つは刺す様な痛み、そして強烈な焦燥感……口の中で転がしてる内に甘くも感じる。飲み込んで喉を通ると、全てを焦がしつくすマグマの様な熱を感じる。

 二つめはレベルアップの肉体が強くなる実感……レベル50を過ぎて上がり辛くなった俺は、ワインでは滅多に上がらなくなっている。にも関わらず、こいつは少し含んだだけでレベルを一つ上げてくれた。

 酒で強くなる俺は、アルコール……エタノールの純度が高ければ高い程、取得する経験値の量の様な物が多いのだろう……飲みなれたワインでは二か月に一回、上がるか上がらないか位だったからね。


 多分、このショットグラスを飲み干せば、それだけで今レベル56なんだけど80位はいきそうだ……確実にレベルアップ酔いを起こして、吐いて下がるけど……一日にレベルを上げるのは、2か3迄に留めておいた方がいいってのが俺の経験則から導き出した答えだ。

 何度か飲んで吐いてを繰り返していたので、ある程度はレベルアップ酔いにも強くなってきてるけど……吐くのも勿体無いから、なるべくやりたくないしな……

 口つけちゃったけど、どうせ飲むのは俺だし多少の雑菌なんざ殺菌してしまう度数だ。一回戻して、40%にしてから飲み直そう。あれ?ディエンさん?


 「これは……なんかクセになりそうだ……この焦燥感……これが恋……くっ、フェイイェン……」


 「いやそれはない」


 なんかグラス片手にディエンさんが大泣きしてた……酔っぱらうのは早いけど、それからが長いんだよなこの人。一口でこうなるとは……泣きながら飲むから付いたあだ名が『給水ポンプ』……水魔石が水道代わりになってるこの世界にもポンプってあるみたい……

 フェイイェンさんはフォウの母親、ディエンさんの亡くなった奥さんの事だ。飲んだら何かにかこつけて奥さんの事を想って泣く……付き合うと面倒なのでこのままフェードアウトするとしよう。






 さて、フレーバーウォッカは薬草の調合があるので門外漢な俺だ。なので今回はレギュラータイプのウォッカにする。

 白樺の活性炭が本式らしいけど、見当たらなかったので竹炭を粉末にしてろ過してみる。焼酎のろ過には最適らしいから、似たようなもんだろ多分……


 スピリタスに水を適当に入れたら度数が40%になったので活性炭フィルターに流し込んでろ過していく……回数なんかで特色を出すみたいだが、俺なら一回でいいだろう

 炭になっても竹のほのかな香りがするのは気のせいだろうか?ドリップされていくコーヒーの様に、一滴づつ落ちてくるウォッカとなった液体……


 「あら?来てたのドモン。なんかお父さんが昼間から泣いてるのは何?」


 「俺達の努力の結晶が上手くいった故の結果かな……」


 フォウが帰って来た。もはや平原のモンスターに後れを取る様な俺達じゃないので、森や山に入らない限り、俺はこうして酒造りか畑の手伝いをしている。

 アイレンはそれが不満みたいなんだが、俺の傍だとおっぱい揉まれるのに不思議な事である……そして長年揉み続けた甲斐あってか、もはや12歳とは思えない大きさになっている。


 アイレンのおっぱいはワシが育てたと言っていいだろう……それは双子の姉ビャクカのツルペタっぷりからも一目瞭然である。

 やはり酒もおっぱいも手間暇かけてじっくり育てるのが大事(キリッ)


 「なんかアホな事考えてるでしょ?」

 

 大きくも小さくもない普通、じゃなかったフォウが俺の偉大なる功績を一蹴してくるが仕方ない。天才とは誰からも理解されないのだからな……


 「自分の才能に恐怖していたのさ……ふ、今回も成功してしまったよ。失敗を知りたいね……」


 「アホな事言って無いで、静かになったからお父さん運んでくれる?そのお酒の瓶詰めは私がしておくから」


 「ああ、頼む。アイレンはここに来るんだっけか?」


 「すぐ来るわよ、これから新作に挑戦するんだ~って張り切ってたから」


 アイレンの新作……それは砂糖を定期的に取得できる様になった事によるお菓子作りである。甘い物より、酒が好きな俺としては同じ糖質なら酒の方がいいのだが……それを抜きにしてもアイレンのパティシエ能力はメキメキ上がっていると思う。

 甘い物に限らず食い物だったら何でもいいケンブはともかく、好き嫌いのハッキリしているビャクカを毎度唸らせているのは流石双子なのだろう。まぁビャクカはアイレンにだけは甘いんだけどな……

 

 


 そんな事を考えながらディエンさんを担いで、ディエンさんの部屋のベッドに寝かせる。男を脱がせる趣味はないので、そのまま部屋を出てろ過室に戻ると……


 「戻ったぞーって、フォウ!?」


 「アハハハハハハハ!ありがろ~ロモン。なんれ、二人いるの?」


 しまった、度数が40%の酒だと言い忘れていた。1年前に漬けた杏子酒をいたく気に入ったフォウは、最近薄い酒を味見程度に飲むようになった。今回も俺の新作に興味が湧いたのだろう……

 フォウも父親に似て酔っぱらうのは早い、そこからが長いのも同様……違うのが笑い上戸である事……そして……


 「ん~ろっちが本物のロモンら~?こっちかにゃ~?んーっ……」


 キス魔なのである……この迷惑な酒乱の被害はまだディエンさんか俺かしか遭遇していない、後ビャクカもいたか……最近目鼻立ちがハッキリしてきて美人になっていくフォウと、凛とした美少女であるビャクカの百合百合しい瞬間は眼福でした!

 ……じゃねーや、ビャクカ涙目だったしな……それどころじゃない!


 「よせ、フォウ!こんな所をアイレンに見られたら!」


 「……何をしてるのかな?ドモンちゃん……」


 ケタケタと笑い声が響く部屋に、底冷えのする……もはや俺には絶対零度の声が背中から聞こえる……


 「浮気はね……駄目なんだよ……?許されないんだよ……?」


 振り向くと其処には、瞳からハイライトの消えたアイレンが立っていた……アイレンの手には氷魔法が、もう片方の手には炎魔法が浮かんでいる


 魔法は常人なら発動体である魔法の杖が必要になる……アイレンもガードの時は持ち歩いている、回復魔法・・・・の為に。

 困った事にアイレンは常人ではなく天才なのだ、攻撃魔法にかけては超天才と言ってもいいだろう……発動体など必要とせず、通常であれば対立属性である炎と氷を同時に展開している。

 

 唯の天才だったら打ち消し合うだけの二つの魔法だが、アイレンが使うと別の魔法になる……『対消滅魔法』……兎に角、威力がオカシイのだ!二人の魔術師から同時に炎と氷魔法を喰らったとて、アイレンの威力には遠く及ばない。

 アイレンの才能はお菓子作りと、攻撃魔法と、そしてヤンデレに極振りされている……俺がアイレンのおっぱいを揉むのは、俺自身の自衛手段でもあるのだ!アイレンの傍にいる限りは、アイレンのヤンデレスイッチが入る事はないからな……


 「誤解だ!アイレン!フォウの酒癖の悪さはビャクカから聞いただろ!?」


 「そうだね……フォウちゃんだから我慢するけど、ドモンちゃんなら避けれるよね?力づくでも押さえれるよね?」


 「避けただろ!押さえてるだろ!まずは落ち着け!度数が40%になったとはいえ炎は不味い!」

 

 「それじゃあ今はどこを押さえてるのかな?何で揉んじゃってるのかな?」


 あ?そりゃオメー、フォウの顔と……




 ……気づかなかった……大きくもなく小さくもない程度では、アイレンを揉みなれた俺にとっては存在しないも同然だった。

 

 「んも~ろこ触ってんのよ~アイレンが二人もいるのに~この変態ロモン!」


 「誰のせいだ!誰のッ!?待てアイレン……俺が飲みたいのは酒で、俺が揉みたいのはお前だけだ……だから落ち着け、な?」


 「どの私を揉みたいのかな?私は二人もいないよ?もう一人の私を揉むなら、残された私はどうなっちゃうのかな?」

 

 「落ち着く所じゃねぇ!正気じゃねぇーーーーーーッ!!」




 ……その後、背後の酒とついでにフォウをアイレンの脅威から守る為、我が身を犠牲にした俺であった

 ……いつからだろうな、魔防力が防御力を追い越したの……




 名前:ドモン 年齢:13歳


 レベル56 状態:衰弱


 HP 108/260(520)

 MP 170/200(400)


 攻撃力 195(390)

 防御力  98(197)

 魔攻力  90(180)

 魔防力 154(309)


 スキル:中位格闘術 中位体術 中位解析 中位気配察知 サドンアタック 


 パッシブスキル:全ステータスアップLV.2 上位魔法耐性   


 加護 :豊穣の女神の加護(等級ゴールド・酒限定)


 称号:呑兵衛 ザル 統率者 ノートリアスハンター スピリッツ 

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