2話:赤竜と子供と名前
2話:赤竜と子供と名前
-10年後-
「お母さん、今日の夕ご飯何か食べたいものある?」
「そうね~何がいいかしら、たまには海産物もいいかもしれないわね」
「海だと、リヴァイアサンのお刺身かクラーケンのイカ焼きあたりかな?」
「イカ焼きいいわね。今日はイカ焼きにしましょう」
「じゃあ準備するね! 魔力的にこいつかな?次元貫通穴!」
「違うわ、そいつはメガロドンよ。もう少しクラーケンは魔力が大きいからしっかり探しなさい」
「はーい!おっ!今度は自信あるよ! 次元貫通穴」
「合ってるわね。できるだけ傷を付けないように頑張ってみなさい」
「じゃー行ってきます!」
狙いを定めた後、ひとり通れるくらいの穴を作りディメンションホールに飛び込みクラーケンのはるか上空から落下する。
その間に魔力をいつも通り掌に集める。どんな魔法にしようか考えてる内に目標が見えてくる。
「傷を付けないようにね……まぁいいや。(ライトニング)」
海に稲妻を放つと感電したクラーケンは浮かび上がる。
「あとは、首元とひたいに衝撃っと……(インパクト)!」
クラーケンの上に立ち首元とひたいに衝撃を与え〆る。その後は腰に下げた小袋にクラーケンを詰める。どう見ても入りきらないがこのカバンは詰めたい物に近づけると、意思を持たないものならば吸い込んでいく。昔、母さんがどこかの国から貰ったらしい。
「玄関扉!」
「おかえりなさい。うまくできた?」
「バッチリだよ!出すから待ってね」
「上手になったわね~初めは足を切り落としたりしてたのに」
「もう何年前の話だよ!黄竜のお姉さんに雷魔法教えてもらったし、そんな事もうしないよ!」
「ふふふ、じゃあご飯にしましょうか。半分はお刺身にして半分は焼きましょう」
「はーい」
食事を終えたときに来客があった。
「あっ、黒竜のおじさん!いらっしゃ~い」
「オウ坊主、大キクナッタナ!元気カ?」
「元気だよ。さっきクラーケン取ってきたんだ!」
「ソリャ元気ダナ! 赤竜ハ居ルカ?」
「お母さん?今洗物してるかな?ちょっと待ってて! おかーさんおじさんきたよー」
「はいはい、ってあんたかい。どうしたの?こっちに来るなんて珍しいじゃない。あー洗物途中だから手伝ってもらえる?」
「はーい」
「オ前ノ姿ノ方ガ珍シイダロ、ドウシタンダ?」
「財宝整理していた時に身体操作できるアイテムを見つけたから試しに使ったら上手くいったのさ。今ではこの子に合わせてこの姿でいる方が多くなったけどね」
「変ワルモンダナ、トコロデ人間ハ子供ニ名前ヲ付ケルラシイゾ、坊主ノ名前ハ何テイウンダ?」
「まだ決めてないのよね、一生物だから悩んじゃって……」
「モウ10歳ダロウソロソロ決メテヤルノガ良イト思ウゾ」
「あんたにそんな事言われるとはね。で、今日は何しに来たのさ」
「アァ、白竜ノ爺サンガ先ガ長クナイソウダ、皆ニ伝エルヨウ頼マレテナ」
「もう1万年以上生きてるんだし充分でしょ。でもわかったわ、今度この子を連れて一度会いに行くと伝えてくれるかしら?」
「了解シタ。ソノ時ニハ子供ノ名前ガ聞ケルコトヲ祈ル。デハナ」
「ちょっと待ちな、黒竜のおじさん帰るって、挨拶しなさーい」
「おじさんまたね! 今度は魔法教えて欲しいな!」
「坊主ノ名前ヲ教エテクレタラソノ時ハ魔法ヲ教エヨウ。約束ダ」
「名前って何?」
「ソレハ母ニ聞クトイイ、デハ元気デナ」
「ばいばーい」
「お母さん、名前って何?」
「個人を表す言葉だよ」
「クラーケンみたいな?」
「ちょっと違うね、クラーケンは種族名だから個人は表さないんだよ」
「僕の名前は?」
「ずっと考えてるんだけどね……」
「無いの!? じゃーお母さんの名前は?」
「えっ、私の名前……考えたこともなかったよ」
「えーっと、じゃあ僕がお母さんの名前考えるからお母さんは僕の名前考えて」
「そうね、うん!そうしましょう」
名前を考え始めて1ヶ月が経ちようやく決まった。
「決めたよ、名前は今日からアリウムだ!」
「アリウム……僕の名前、お母さんありがとう! お母さんの名前はイグニス!どうかな?」
「私が名前を持つなんてね……大切にするよありがとう」
名前は決まったが、話せる相手もいない親子はとりあえず自慢しに白竜の元へ向かおうかと考えていた。