1話:赤竜と子供
1話:赤竜と子供
もう15年も前のことだ。ルナティス国が山を住処にする魔物を討伐すると決め、麓にあるイグール村に討伐隊を送り込んだ。
その結果、大陸でも最も栄えていた国は魔物の元に討伐隊が来た翌日に滅ぶことになる。
麓の村にも被害があった。月の始めに食物と財宝を供えていたのだが、協力していたことを咎められ、村の宝を持ってこなければ滅ぼすと脅された。
そもそも村には財宝なんて元から無い。いつも収めていたのは、近くの鉱山から鉄鉱石を採掘するときに稀に出る宝石だ。
そんな頼りの鉱山も今では資源が無くなりつつあり、宝石なんて採れない。結局財宝を用意できなかった村は、半年前に生まれたばかりの男の子を差し出した。
「ナンダコレハ?」
「財宝は尽きてしまいました。今差し出せるのはこれから村を支えていくであろう村の宝である子供しかいません。どうかお許しください」
そういって村の代表であろう人間は土下座し懇願した。
「フム、デハ今回ダケ見逃スコトニシヨウ。次ハ無イゾ?」
「あ、ありがとうございます!で、では失礼いたします」
村の代表は子供を置き小走りで逃げるように出て行った。
残されたのは言葉も喋れない人間の男の子と世界数匹しかいない竜と呼ばれる伝説の魔物だけだった。
-5年後-
「ママーきょうはなにをおしえてくれるの?」
「今日ハ昨日教エタ事ヲ試シナサイ」
「はーい!じゃあいくよ!」
どうみても本当の親子ではないだろう。
子供は集中し魔力を掌の上に溜めていく。
魔力が目に見えるほど溜まり渦を巻く、それを今度は丸くして小さく圧縮する。
子供は作り上げたピンポン玉サイズの玉を握りつぶした。
「いくよー!ぷろみねんすぴあー!」
掛け声と共に、子供の3倍はあるであろう大きさの炎の槍が掌に握られていた。
「ママ!できたー」
「フム、一発デスカ……。デスガ、ヨクデキマシタ。デハソレヲアノ岩ニ向カッテ投ゲナサイ」
入り口を出た先にある不自然に崩れた崖の上ある目立つ大きな岩が今回の的のようだった。
「はーい。そりゃー」
大きな岩には当たらなかったが、岩の下に当たり槍が崖に吸い込まれる。槍が当たった部分は熱で真っ赤になり溶けていくとそこにはトンネルができ崖を貫通していた。
「はずれちゃった……ごめんなさいママ」
「威力ハ合格デス。狙ッタ所ニ当テル練習ヲ明日カラシマショウ」
「はーい」
「今日ハ良クデキタカラゴ飯ハ好キナモノニシマショウ」
「やったー!ぼく、こかとりすのやきとりがいい!」
「子供ガ魔獣ヲ食ベタガルノハ母親トシテドウイウ風ニ思エバイイノカシラ? 狩リニ行クカラ乗リナサイ」
「わーい!ママだいすきー」
この親子にとってはこれが日常だろう。赤竜の背中に乗った5歳児はコカトリスを何匹狩ることになるのかは、お母さんのお腹の減り具合なのかもしれない
思うままに書いていきます。150%自己満足です。