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稲の精  作者: 抹茶あいす
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精霊馬と稲の精

みなさんは精霊馬というのを知っていますか。

しょうりょううまと読みます。


お盆のときにナスとキュウリに足をつけて牛と馬に見立てたものです。


お盆はご先祖さまをこの世にお迎えし、食べもので供養して

またあちらの世界に送り出すという大切な行事です。


精霊馬はご先祖さまたちの乗り物なんです。


キュウリは馬。

馬にのって少しでもはやくこの世に戻ってこれるよう。

ナスは牛です。

歩みののろい牛にのって少しでもゆっくりあちらの世界に帰れるように、という願いが込められています。



村人たちはお盆の準備におおわらわ。

お迎えがすんだら、すぐ盆踊りの支度をしなければなりません。


子どもたちは大はしゃぎですが

おとなたちは汗をびっしょりかいて忙しく働いていました。



旅の僧と稲の精もみんなの邪魔にならないようお手伝いです。


僧は村人から預かった大きなナスビに竹串を通して足をつくっています。


四本の足がうまく刺さらないとナスの馬はうまく立ちあがりません。


むつかしいなあ、これは。



稲の精はざるの中から手ごろなナスとキュウリを選んでいます。


し~ちゃん

し~ちゃん



え?なに?

そうだね。

味噌をつけて食べると美味そうだ。



僧はほんとうは稲の精の言葉はわかりませんでしたが

稲の精が言いたいことはなんだかわかる気がしました。


それにそうやって何か話しかけている方が楽しかったからです。



し~ちゃん

し~ちゃん



あ、こら。乗ってはだめだよ。



みると稲の精がナスの牛に乗ろうとしているところでした。



まあいいか。


僧は稲の精をふわりと手で支えて

ナスの牛に乗せました。


納屋に風が吹いて

稲の精のピンクのストールをひらひらさせました。


まるで牛にのって駆けているようです。



し~ちゃん!


し~ちゃん!



ああ、こらだめだったら。

そんなにはしゃいじゃあ。



ぐぐっと串がしなったかとおもうと

ポキンと足が折れてしまいました。


すってーん!!



ナスの牛はぺしゃんこになり

稲の精は土間に放り出されました。



し~ちゃん…



いいよいいよ。

心配しないで。

また作り直せばいいからね。


それより怪我をしなかったかい?




し~ちゃん!


稲の精はにっこり笑ってうなずきました。



さあ急ごう。

ご先祖さまたちがお待ちかねだ。



し~ちゃん!


し~ちゃん!




稲の精と僧はまた元気に

精霊馬を作りはじめました。





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