野原のドーナツ
いい天気だなあ
旅の僧は空を見あげて汗をふきました。
すると風にのってどこからか、お香をたくような匂いがしてきました。
なんだか懐かしいようないい匂いです。
僧は一息つこうと思い、野原の中に入っていきました。
いい匂いは野原の中からしてくるのです。
ガサガサガサ…
僧はついでに用を足すことにしました。
そして腰をかがめた時
目の前に不思議なものがあることに気がつきました。
それはドーナツでした。
でもひとつではありません。
三段重ねのドーナツでした。
はて?
僧はいちばん上のドーナツを手にとりました。
砂糖がいっぱいついています。
僧はゆびについた砂糖をペロリとなめてみました。
うん 甘い!
たしかにこれはドーナツだ
食べようかどうしようか迷っていると
近くの草むらがパタパタと揺れました。
僧は急いでドーナツを元どおりに重ねて、息をひそめました。
てけてけ~
あ、稲の精だ!
稲の精はこんどはピンクのストールではなく
ピンクのポンチョをすっぽりかぶっていました。
しかも頭にはビニールカバーをつけています。
くびから下はピンクのポンチョ。
まるでてるてる坊主のようです。
僧は笑いを必死でこらえました。
ドーナツの三段重ねは稲の精がつくったもののようです。
稲の精はドーナツの高さや位置をなん度も確かめると
輪の中に葉っぱを投げ入れました。
それからなにかぶつぶつと呪文のような言葉を唱えました。
しばらくするとドーナツの輪の中から煙が出てきました。
ははぁ
さっきの匂いのもとはこれだな
でもいったい何をしているのだろう…