冬の虹
起きては眠り、眠りは起きて、僧は夢とうつつのあいだを彷徨い続けました。
見えるはずもないのに
稲の精が真っ白な雪の上を走り回っているのが見えました。
しーちゃん。
あはは。何をしてるんだい。
だあーっと走っていたかと思うと
急に立ち止まって鼻をくんくんさせます。
そして雪の中に飛び込むのでした。
寒くはないのかい。あはは。
しーちゃん
しーちゃん。
稲の精は雪を掘って遊んでいます。
とても勢いよく掘るので、かいた雪が空高く散らばってキラキラ輝いていました。
冬のお日様がどんなに照りつけても
積もった雪はこれっぽっちも溶けやしません。
稲の精が開けた沢山の穴の上には
舞い上がった粉雪が小さな虹の橋をかけました。
うわあ。綺麗だなあ。冬の虹なんて生まれて初めて見たよ。
しーちゃん。
見ると稲の精の手には芽吹いたばかりの野草が握られていました。
ほお。よく見つけたね。ぺんぺん草じゃあないか。
稲の精は真っ赤な頬っぺたをしてにっこり笑いました。
雪の下には新しい命の息吹が隠れていたのです。
もうそんな時節なのかなあ。
旅の僧はふと何か忘れているような気がしました。
とても大事な何かを。
しーちゃん。
しーちゃん!
あはは。そうかい。他にも見つけたのかい。
すごいなあ。お前は。
稲の精は小さな鼻を膨らませると
摘みとった野草を自慢げに天に向かってかざしました。
高く。高く。
高く。




