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稲の精  作者: 抹茶あいす
11/15

僧の夢

年が明け、寒さもいっそう増していきました。


あたりはもう一面の銀世界です。


旅の僧は風邪をひいてとうとう寝込んでしまいました。

旅の疲れが出たのかも知れません。


ごほごほっ。


あばら家のせんべい布団に身を横たえて

僧は寒さに震えていました。


すきま風が枕もとを通りすぎるたび

僧の体はどんどん冷えていきました。


いつもならしばらく寝ていれば治るのになあ。

ごほごほっ。


どうやら流行り病にかかったようです。


なにか食べなければと思うのですが、身体中が痛くてだるくて起きあがる事ができません。

そのうち体がポッポと暖かくなってきて眠ってしまいました。


こんなにゆっくり眠るのは久しぶりだなあ…。



僧が寝ていると戸がすっと開いて何かが入ってきました。


トコトコ…


トコトコ…



しーちゃん


しーちゃん



稲の精は布団のまわりを走りました。


てけてけ~


てけてけ~


でも僧がいつまでも起きないので

稲の精は僧の顔のすぐそばまで来ました。

よく見ると僧はなんだかしんどそうです。


はぁはぁ…


稲の精はもっと近づこうとしました。

僧のおでこに小さな手のひらを添えて。


ぴゃっ!!



稲の精はあわてて手を引っ込めました。

僧のおでこは火のように熱かったのです。


稲の精は僧にしがみつきました。


しーちゃん

しーちゃん



僧は夢を見ていました。

稲の精と夏の野原を散歩する夢です。

夢の中では夕日が真っ赤に燃えていて

二人の影法師が長く長く伸びていました。


今日も暑かったね。汗びっしょりだ。

あとで行水でも浴びようね。




ぱしゃぱしゃ。


稲の精はおわんに雪を入れ、溶けた水で僧のおでこを冷やしていました。


ぱしゃぱしゃ。


それからピンクのストールで胸元の汗を拭いてあげました。


一晩中雪と格闘していたので

稲の精の手はしもやけになりました。


夜が明けると僧の熱は少し下がりました。

あとは食べものさえあれば。


稲の精は朝陽がきらめく雪の中に飛び出していきました。


すたすたすた~



稲の精が戸を閉めずに出て行ったので

あばら家の中は冷たい風が吹き込みました。


さ、さむい…。



僧がうっすら目をあけると

ちょうど稲の精が帰って来たところでした。

どこで拾ってきたのか、小さな土鍋を両手にかかえて。


ヨタヨタ…


あ、あぶない。



土間の真ん中ですってんころりん。

土鍋は大丈夫だったようです。


稲の精は上がりかまちを器用によじ登って

床から少し離れた所に土鍋を置きました。


どん。



いったい何を始めるのでしょう。


安心した旅の僧はまた眠くなってうとうとしてきました。


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